それではお楽しみ下さい。
“古代樹の森”
新大陸に上陸すると、恐らく一番最初に訪れる事になるであろうフィールド。フィールドの大半を占める巨大な大樹を中心として生態系が築かれており、新大陸独自の生態系を感じると同時に、そこで生きるモンスター達の逞しさを感じる事のできるフィールドである。
古龍の襲来も他のフィールドに比べれば少ない方である為、火竜を筆頭にその地の主と言えるモンスターがいれば安定した環境になる。
しかしその生態系は、現在崩壊の危機に直面していた。
そこら中にモンスターの血が散乱し、フィールドに出れば自然と感じられる生命の息吹すらほとんど感じられず、何より夥しい量の血痕こそ確認できるが、死体そのものはほとんど見受けられないという事である。
それが示す事は、その血痕を残したモンスターは完全に死体が消えた事を意味する。捕食されてしまったと考えるのが妥当だが、骨の髄まで喰らい尽くすモンスターもそう多くない。ましてやフィールド一帯のモンスター全てを喰らう程の食欲を持つモンスターなど二種類に限られる。
一種は超大型古龍の骸龍であり、その被害規模は一夜にして村が壊滅する程のものだが、現在新大陸ではその姿は確認されていない。水中の環境にも適応しているのでいつ姿を現してもおかしくはなく、油断はできないが今の所は特に不穏な動きは確認されていない。
となると、可能性は自然と残りの一択に絞られる。こちらは直接的な被害規模や戦闘力は骸龍に一步劣るものの、異常なまでの環境適応能力と神出鬼没さでハンターズギルドから警戒されている古龍級のモンスター。
「グルルルル…!」
刺々しい牙が顎を貫いて表面にまで覗かせ、不吉さを感じさせる深緑の皮と鱗、背中にかけて異常なまでに隆起した赤く染まった筋肉、口元から涎を絶えず垂らし続けながら森を練り歩くのは恐暴竜イビルジョー―の、特殊個体だった。
新大陸では現大陸よりも何故か恐暴竜の特殊個体の目撃情報が非常に多い。その理由としては新大陸の生物は他の地域に生息する生物よりも栄養を豊富に蓄えているが故にそれらを喰らう恐暴竜も長生きしやすく、結果として特殊個体まで至る個体が多いのではないかとされている。
恵みが豊富な結果それを破壊し得る存在が増えやすくなるというのはなんとも皮肉なものだが、調査団としても今の現状には参っている。緊急性の高い問題ではあるのだが、大半の人員をセリエナ側に割いているのでアステラ側に恐暴竜に対抗し得る人員がいない為、戻って来るまでは泣く泣く先送りにされている。
もはや古龍や金獅子と言ったモンスターと同士討ちが起こる方が早いのではないかと言われているが、その危惧は奇しくも叶う事となる。
「グオアアアアア!!」
「! グオオオオオ!!」
恐暴竜が次の獲物を求めて森の中を彷徨い歩いていると、突然横から巨大な影が恐暴竜に襲い掛かった。獰猛に吼えながら膨大な量の龍属性を口元に滾らせるその姿は、同じく特殊個体の恐暴竜。
今古代樹の森で暴れている個体を除けば他のフィールドでの恐暴竜の目撃情報は入っていない―筈であったが、恐暴竜は元より神出鬼没であり、調査団も動ける人員が限られている今は、目の届く範囲も狭くなる。恐らく偶然監視の目に留まらずにここまでやって来れたのだろう。
「グオオオオオ!!」
「グアアアアア!!」
そして同じ特殊個体である以上、同格相手だろうと引き下がるつもりは一切なく、マウントポジションを取った恐暴竜は、そのまま喉元に噛み付いた。
常に古傷が開いている事で感じる激痛と、満たされる事のない飢餓感に見舞われている恐暴竜は更にダメージが上乗せされた事により、あっという間に怒りの沸点を越えた。
「グオオオオオォォォォォン!!!」
そしてドス黒い血をまき散らしながらも龍属性を溢れさせて吼えた恐暴竜は不気味に光る赤い瞳で襲い掛かって来た恐暴竜を睨み付ける。
「オオ━━━━━━━━━━ッ!!」
「グオアアアアア!?」
喉元への噛み付きをものともせずに怒り狂った恐暴竜はゼロ距離でブレスを放つ。多少の攻撃であれば怯みもせずに襲い掛かる恐暴竜であっても、今も無意識の内に自身を蝕み続ける龍属性の攻撃は弱点であり、叫びながら後退する。
「グオオオオオ!!」
「ッ…!グアアアアア!!」
自由の身となった恐暴竜は龍属性をまき散らしながら襲い掛かり、ブレスを食らって後退していた恐暴竜もダメージが伺える仕草をしながらも踏ん張り、吼えながら応戦する。
恐暴竜の武器はあらゆる物を噛み砕く牙とそれを可能とする顎の力であり、その二つで古龍とも渡り合える程の力だ。弱点としてはパワーはあるが巨体である為に小回りが利かず、走る速さも決して鈍足というわけでもないが、金獅子のように軽やかに大地を駆けるような事はできない。つまり近付いての接近戦にこそ恐暴竜の本領は発揮される。特殊個体となった今は相手の意表を突いたり自身が有利になるにはどうすれば良いかと言った事が考えられるような精神状態ではない為、やる事は馬鹿の一つ覚えのように突進して喰らいつくだけである。
「グオオ━━━━━ッ!!」
「アアア━━━━━ッ!!」
恐暴竜達は互いに身体を捩じ込むようにして相手の身体に齧り付く。そして振り回そうと力を入れるが、相手も同じように力を入れているので傍から見れば組み合ったまま動かないように見える。
「グ…オオオオオォォォォォ!!」
「…ッ!」
しかし怒りの分だけ土壇場での勝負強さが出たのか、怒り狂った恐暴竜が僅かに相手の身体を浮かせたかと思うと、一気に地面に叩き付けた。
「グオオ━━━」
相手を叩き付けた恐暴竜はダメ押しでブレスを放つ為に大きく息を吸いながら身体をのけ反らせる。抑えつけられた側の恐暴竜もせめてもの反撃としてありったけの龍属性を口内に収束させる。
「「━━━━━━━━━━ッ!!」」
そして数多の生命を束ねた冒涜の龍砲が激突する。とても生物が放ったものから出るとは思えないような音が響く。体格に差はあれど、喰らった獲物の数に大きく差はないのか、双方一切譲ることなく拮抗状態に陥った。それでも互いに相手を喰らうべく、更にブレスの出力を高めると―
ドッガアアアアアン!!
―限界まで蓄積した龍属性エネルギーが大爆発を引き起こし、どちらの恐暴竜も吹き飛ばした。
「…グルルルルル…!」
「…オオオオオ…!」
膨大な龍属性エネルギーに身体を焼かれた二頭だが、互いに致命傷は避けたらしく、ダメージの痕が色濃く見られるが、どうにか立ち上がった。しかしこれ以上続ければ間違いなく死にかねないダメージであり、両方、あるいはどちらか片方は逃走を選んでもおかしくない。
「グオオオオオォォォォォン!!!」
だが、それは普通の理性を持った生物ならではの話。理性のタガが外れてしまっている恐暴竜の特殊個体は死ぬまで相手を喰らう事を諦めない。まだ完全に力を出し切っていなかった恐暴竜も先程の激突で怒りの限界点を越えたようで、頭部から龍属性エネルギーをモヤのように溢れさせ、天に向かって吼える。
「グアアアアア!!」
そして既に怒り狂っている恐暴竜も撤退を選ぶ事はなく、涎が混じったドス黒い血をまき散らしながら襲い掛かる。
今度は噛み付きではなく体格を活かしたタックルであり、単純な噛み付きよりも攻撃範囲が広い為同じ恐暴竜の巨体では回避は難しい。
「アア━━━━━ッ!!」
相手の恐暴竜は大きく上体を持ち上げる。恐暴竜のタックルに上から強引に叩き付ける事で攻撃と防御を同時に行ってしまおうという判断なのだろう。
「「━━━━━━━━━━ッ!!」」
ドゴォン!!
龍属性を纏った牙とはち切れんばかりの筋肉が激突し、衝撃と振動が辺りに広がり、地面にヒビを入れた。
「グググ…!」
「オオオ…!」
噛み付いた恐暴竜はタックルを受け止めた身体が軋むのを感じ、タックルを叩き込んだ恐暴竜は噛み付かれた箇所を龍属性が蝕み、身体に激痛が走る。
しかしどちらも痛みを飢餓感や怒りが上回っており、一歩も退く事はない。
「オオ━━━━━━━━━━ッ!!」
ジュウウウウウ…!!
「グアアアアア…!?」
そこで噛み付いた恐暴竜がゼロ距離でブレスを放ち、恐暴竜の身体を焼く。傷口に弱点の攻撃を直に叩き込まれた事でジリジリと生命を削られる感覚が走るが、噛み付かれてガッチリと抑え込まれている上に、ダメージを受けている事で力が上手く出せない。
八方塞がりのような状態だが、唯一動かせる箇所がある。
「オオッ…!」
恐暴竜は噛み付いている恐暴竜を更に押し込むように身体を突き出す。変わらずブレスは放たれ続けている為激痛が治まる事はないが、そんなものには構っていられない。押し込むと同時に恐暴竜は片足を持ち上げる。そして―
「━━━━━━━━━━ッ!!」
ドズン!!
「!? オオ…!」
―今出せる全力で振り下ろし、入っていたヒビを更に広げた。地盤が軽く崩壊した事で上から体重を掛けていた恐暴竜はバランスを崩す。
「オオオオオッ!!」
「グオオオオオ!?」
恐暴竜はその隙を見計らって噛み付いていた恐暴竜を押し退けて、ひっくり返った所を喉元へ噛み付いた。蓄積したダメージが大きい為、ここで決めなければ後が怖い。身体の中から溢れ出す龍属性エネルギーを滑る出し尽くす勢いで牙に龍属性を籠めて硬い筋肉を噛み千切る。
ドス黒い返り血と痛みからの絶叫を浴びながらも、確実に殺すべく一心不乱に噛み付く。抵抗する力は確実に弱って来ている。ここが正念場だ。
―互いにとって。
「グオオオ…━━」
確実に死が近付いているのを感じ取った恐暴竜は、体内に残った力を全てかき集めて口内に収束させる。しかし自身が仰向け―つまり空に向かって顔を向けている以上、直線状やガス状に放ったのでは決定打になりかねない。ならばどうするか―
「━━━━━」
―恐暴竜は痛みから発しそうになる声を押し殺し、口内に龍属性を収束させる。しかし口を閉じたままである為に、力は外に解放される事なく口内に蓄積されていく。普段は外に向かってブレスとして放つ事で技として成立するようなエネルギーを口内に強引に収束させてしまえば、当然自身が無事でいられる保証はない。しかしそれでも、恐暴竜は自身が勝つ為に自爆同然の攻撃手段を取ったのだ。
「━━━━━」
「!」
抑え込まれていた恐暴竜の口が吐血と同時に開かれる。抑えつけていた恐暴竜の目に入ったのはドス黒い血と、極限まで凝縮された龍属性の禍々しい光だった。抑えつけていた恐暴竜は急いで距離を取ろうとするが―もう遅い。
ドッゴオオオオオン!!!
そして数瞬後、古龍をも殺し得る光が爆ぜた。
―NowLoading―
「グ…オオオ…」
龍属性の雷が滞留し、未だに音を放つ中から起き上がったのは抑えつけていた恐暴竜だった。しかし顔を覆っていた龍属性のモヤは完全に消え去り、全身龍属性で焼かれてボロボロと言ってもまだ足りない程の傷を負っている為かなりギリギリの状況だ。
「……………」
なお爆心地の中心にいた恐暴竜はもっと酷い有り様であり、頭部―だと思われる箇所から爆煙を上げて身体をピクリとも動かさずに横たわっていた。僅かな呼吸の気配も感じられない事から最低でも意識がないものだと思える。
本来生物における戦闘は全て自身の生存の為である。生命を賭けてまで戦闘するようなモンスターはいないわけではないが、勝つ為に自身の生命を投げ出すなど目的と手段が逆転している。何よりそれが異常である事を恐暴竜が理解していない事だろう。
恐らくではあるが恐暴竜は今の攻撃の果てに自身が死ぬとは思っていなかった。あるいはそれを知った上で攻撃に踏み切ったのだ。何故?当然相手を殺して喰らう為だ。そこで自然と自身の生命を投げ出す選択をする辺り、理性が崩壊しているというのは比喩でもなんでもない事が分かる。
これがこの恐暴竜、そして似たような金獅子、怨虎竜の特殊個体の最も恐ろしい点だろう。自身の生命に頓着を無くした生物の出せる強さというのは時に理屈を超える。追い詰めた獣が恐ろしいのは共通した事実だが、理性が崩壊したとなるとより一層恐ろしい。
「グルルルル…」
その事を自覚せず、恐暴竜は一心不乱に同胞の死体を喰い漁る。生きるのではなく、喰らう為に。
はい、今回はここまで。
二頭とも同じだから区別するのが難しかった…
評価、感想もよろしくお願い致します。
それでは次回をお楽しみに。
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