こんな縄張り争い見たい…見たくない?   作:サクラン

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最後の投稿日見たら一月以上空けてたのか…まあこれからものんびり投稿していくので暇な時にご一読下さい。


それではお楽しみ下さい。


矜持の世界

 “龍結晶の地”

 

 異常事態が何度も起きれば平常扱いとなる。それを表すのはこの地であろう。エネルギーの集まりが強いこの場所では、古龍の到来がそう珍しい事ではない。調査員ならば一頭程度であれば通常運転だと理解するし、二頭であれば争いや激突を警戒し、三頭や歴戦王が訪れたのなれば厳戒態勢を取る。

 そんな認識だが、一頭であっても情報収集は欠かさない。生きた古龍というのは汲めど湧き続ける未知の泉であり、それによって得られる情報は計り知れない。

 他のモンスターとの争いで見られる動きも当然重要だ。発見されて日の浅いモンスターであれば他のモンスターとの争いで思いも寄らぬ能力が見られる事だってある。

 

 ―それを省みれば今から起こる事は千載一遇の機会とも言えるだろう。

 

「キュルルル…!」

 

「グルルルル…!」

 

 殺気を互いにぶつけ合い、威嚇するのは高貴さを漂わせる爵銀龍と、全てを打ち砕く拳を持つ砕竜。古龍たる爵銀龍は言うまでもなく、砕竜もまた油断ならない強さを持つモンスターだ。

 砕竜は単純な戦闘力では古龍やそれに匹敵する実力を持つ金獅子や恐暴竜、爆鱗竜には一歩劣るが、特殊個体になればそれらと対等以上に渡り合う事が可能になるし、この砕竜に至ってはかの滅尽龍を相手にしながら一歩も引かずに立ち向かい、あまつさえ手痛い傷を負わせた。

 代償として砕竜はそれ以上の傷を負わされたてしまったが、通常のモンスターの中では間違いなく大金星と言えるだろう。

 

「グルルル…ガアアアアアァァァァァン!!!」

 

 そんな闘争心の塊である砕竜が、相手が古龍だからと言って引き下がるわけもない。砕竜は全力で吼えるや否や優れた跳躍力で腕を振り上げながら爵銀龍に襲い掛かる。

 

「キュルルル…!」

 

「!」

 

 しかし並のモンスターであるならばともかく、古龍の中でも特に肉体派である爵銀龍はそう簡単に攻撃を食らわない。見ていて一瞬美しさを覚える程の優雅な動きで砕竜に攻撃を躱すと、ある程度距離を取った場所に着地する。

 

「……………」

 

 そして吟味するように砕竜を視界に捉える。今の攻撃の見た限りだとパワーはそこそこ、速さは正直脅威にならない。あの粘菌の爆発を含めれば攻撃力は脅威になり得るだろうか。

 

「…オオオ…!」

 

 しかし総合的には爵銀龍に及ばない。スタミナ量は分からないがこちらを上回る事はないだろう。互いの力関係の間に越えられない壁がある事に変わりはない。

 だからこそ爵銀龍は砕竜を見下す。力の差も分からずに喧嘩を売った愚か者を。

 だがそれ程の差がありながら勝てると思われている事は苛立つので、差を分からせるべく相手をする。

 

「クオオオオオォォォォォン!!!」

 

「ッ…!」

 

 爵銀龍は一瞬翼で身体を覆い隠し、広げると同時に咆哮を放つ。砕竜はその殺気と威圧感に一瞬たじろぐが、なんとか堪えて前に進む。

 

「グオオオオオ!!」

 

 砕竜は真っ直ぐに爵銀龍に向かって行き、拳を突き出す。その速さは巨体に見合わぬ速さであり、小回りの利かないモンスターであればまともに食らってしまう程の俊敏さ。

 

「ッ!!」

 

「!?」

 

 しかし単純な地力で砕竜を上回る爵銀龍にとっては対処可能な攻撃でしかない。自分に向かって振るわれた剛腕を強靭な翼で弾き飛ばすと、反対の翼をランスのように突き出し、砕竜を吹き飛ばす。

 

「クオオオオオ!!」

 

「グッ…!」

 

 そして吹き飛んだ砕竜の延長線上に先回りすると、今度は尻尾で砕竜の身体を串刺しにしようとする。砕竜は吹き飛びながらもなんとか反応し、腕をクロスさせて致命傷は防ぐ。しかしそれでも攻撃を防ぎ切る事はできず、ヒビの入った甲殻の間から血が流れ出た。

 完全に防御ごと貫くつもりだった爵銀龍は砕竜の防御力に僅かに感心しつつも、攻撃の手は止めず身体を旋回させながら砕竜に向かって突進する。

 

「グッ…オオオ…!」

 

 しなやかな身体に見合わぬパワーに歯を食い縛りつつも、砕竜はどうにか爵銀龍の突進を受け止めきって見せた。ダメージは多く負ったが、今は砕竜の射程距離内にも入っている。攻撃を当てるのなら今だと、砕竜は拳を振り上げる。

 

「クオオ━━━━━!!」

 

「!?」

 

 しかし爵銀龍も馬鹿ではない。負けるとは微塵も考えていないが、格下の相手から攻撃を食らうことなど許さない。

 爵銀龍は口を僅かに開くと、そこから龍属性の禍々しい光が漏れ出す。砕竜はまずいと思い、その剛腕を振り上げるが―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 ボゴオオン!!

 

「!!」

 

 

 

 

 

 ―拳が直撃するよりも速く爵銀龍のブレスが放たれた。砕竜の弱点ではないとは言え、あらゆる属性の打ち消すことのできる龍属性を、それも膨大な力を持つ古龍たる爵銀龍の出力で放たれれば馬鹿にならない威力になる。

 

「!」

 

 血を吐きながらも立ち上がった砕竜だが、自身の腕を見ると異常が起きていることに気付いた。

 いつもなら蛍光色の光を発して蠢く粘菌が沈静化しており、それに伴って粘菌の輝きも小さくなっている。輝きが少なくなるだけならば、攻撃に粘菌を多く使うと起こり得ることだが、粘菌の活動そのものが鈍くなるのは明らかな異常事態だ。

 

 その原因は当然先程爵銀龍が放ったブレスにある。龍属性あらゆる属性や状態異常を無力化する効果があり、それは爆破属性も例外ではない。爵銀龍のブレスに晒された粘菌は活動が鈍くなった。

 完全に死滅したわけではないので爆破が全く使えなくなったわけではないが―

 

 

 

 

 

「クオオオオオ!!」

 

「グッ…!」

 

 

 

 

 

 ―ただでさえ地力で劣る相手に己の強みが弱体化するのは更に厳しい戦局を招くこととなる。砕竜が弱体化したのを感じ取ったのか、爵銀龍は更に苛烈に攻め立て、砕竜を追い詰める。

 ほとんどの分野で上回る中で、唯一の不安要素であった粘菌も弱体化させた。これによって砕竜が爵銀龍を脅かせ得る武器は存在せず、あとは一方的な蹂躙で終わる。自身にとっては弱者であるが、本来一撃で終わってもおかしくない攻撃を数発耐えただけでも称賛に値する。内に秘めた養分も中々の量だろう。勝った後の晩餐に期待を膨らませつつ、まずは仕留めようと爵銀龍は翼を振り上げ、砕竜の生命の刈り取る―

 

 

 

 

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

 バゴォン!!

 

「!!?」

 

 

 

 

 

 ―寸前に、それよりも速く衝撃が襲い掛かった。防御の構えすら取っていなかった爵銀龍はもろに食らってしまい、地面に落ちた龍結晶を砕きながら吹き飛ぶ。

 

「グオオオオオ…!」

 

 爵銀龍は衝撃のショックを振り払うように頭を振り、先程いた場所を睨みつける。その先にいる砕竜は今まさに起き上がり、体勢を立て直していた。しかし特徴的な濃藍色の甲殻は不気味な蛍光色に変わっており、まるで粘菌が侵食したような様相になっていた。

 毎日四六時中砕竜の身体に付着している粘菌は砕竜の身体に自然と適応し、砕竜の状態にある程度呼応する。砕竜の怒りが頂点に達すれば、粘菌は活性化し、対象を殴り付けると即座に爆破する。

 砕竜も使う以上は性質を熟知しており、自分の怒りに呼応して粘菌が活性化するのも知っている。それを活かした…という程ではないかもしれないが、実際爵銀龍に一泡吹かせることができたので結果オーライではあるだろう。

 

「ガアアアアアァァァァァン!!!」

 

 肝心の砕竜はまだまだ暴れ足りないと言わんばかりに吼え、猛然と大地を駆けて爵銀龍に襲い掛かる。

 

「グルルルルル…!」

 

 爵銀龍は強く吼える事こそしなかったが、妖しく輝く紅い瞳からは砕竜への強い怒りが見て取れる。

 

「キィィィ!」

 

 するとそこに何処からともなく現れた一匹の小さな虫―キュリアが爵銀龍の身体に張り付いた。キュリアは次々と爵銀龍の身体に張り付き、牙から養分を爵銀龍の身体へ流し込む。

 

「グルルルルル…!」

 

 身体に流し込まれるエネルギーを感じつつも、爵銀龍は砕竜相手に“奥の手”を使わねばならない事に憤りを感じる。

 しかしそれでも敗北するよりはずっとマシだと考え、全力で相対する事を決めた。

 

「━━━━━」

 

 そしてキュリア達が次々と纏わり付く中、爵銀龍は自身の身体を翼で覆い隠す。砕竜はその行動を不審に思うも、策ごと叩き潰してやると言わんばかりに拳を振り上げる。

 そして砕竜の拳が爵銀龍を捉える―

 

 

 

 

 

「グオオオオオォォォォォン!!!」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 ―寸前に爵銀龍が覆っていた翼を広げ、内に隠していた凶暴性を露わにして吼えた。その危険性を示すように瞳は紅の輝きを強め、不気味な光を発している。翼や胸も同じような状態になっていた。

 

「ガアアアアア!!」

 

 しかし姿が変わった程度では砕竜は止まらない。龍結晶を踏み砕きながら、爵銀龍に向かって突進する。

 

「…ッ!」

 

 ドォン…!

 

「!?」

 

 爵銀龍は向かって来る砕竜を相手にするべく攻撃をするのかと思いきや、翼で自身の全身を覆い隠す。すると低く唸るような音がしたかと思うと、次の瞬間には砕竜の目の前に移動していた。

 

「オオオオオ!!」

 

「━━━━━ッ!!」

 

 ドゴォ!!

 

「オオッ…!」

 

 砕竜はすぐに拳を振り上げ、迎撃しようとしたが、反応の差が覆し難く先に攻撃が当たったのは爵銀龍の方だった。そのパワーも変化前を上回る程であり、砕竜は派手に吹き飛ばされてしまう。

 

「オオッ!!」

 

 砕竜は砕かれた箇所から血を流しながらも両腕を地面に突き刺す。

 

「…!」

 

 ドォン…!

 

 爵銀龍は砕竜の行動に特に気にする事なく瞬間移動で距離を詰める。どんな攻撃であろうとも躱す、あるいは防げる自信がある。この切り札まで切った以上は絶対に負けられないし生かして帰す気もない。嬲り殺しにしてやると、爵銀龍は殺意を内心で募らせ、砕竜に向かって翼を振り上げる。

 

 ボンッ!!

 

「!?」

 

 しかしその翼を振り下ろす事はできなかった。足元が急に爆発したからだ。

 

「グオオオオオ!!」

 

「ッ…!」

 

 その行動を隙と見兼ねた砕竜が腕を振り下ろすが、爵銀龍もどうにか翼を盾にして防ぐ。しかし砕竜のパワーと粘菌の爆発力は強力で、食らった箇所から芯に響くような鈍い痛みが走った。

 砕竜は粘菌と共生しており、操れるわけでない。しかし長く扱う中で、その性質はよく理解している。粘菌は爆発する以外にも流動的であり、一定の距離であれば染み広げることが可能であり、それは地中であろうとも例外ではない。相手に直接食らわせるよりは威力は劣るものの、不意打ちとしては十分過ぎる程の威力だ。

 

「オオオオオ!!」

 

「グッ…オオオオオ!!」

 

 爵銀龍をその場に留めた砕竜は休む暇は与えないとでも言わんばかりに連続で拳を叩き付ける。爵銀龍はその威力に怯むが負けじと攻撃の隙間を縫うようにして翼で砕竜を突き刺す。

 互いに一歩も引かない攻撃の速さ比べ、モンスター同士の争いでは滅多に見ることがない足を止めての殴り合いは大迫力だった。度重なる連続突きを食らった砕竜の甲殻はヒビ割れており、その隙間からは血が流れている。爵銀龍も殴った際の重みと爆発の衝撃によって美しい銀色の甲殻は歪み、煤を被ったように薄汚れていた。

 しかしそれでも彼らは引かないし譲らない。目の前の相手には絶対に負けるわけには行かない。そんな矜持を一切揺らがすことなく、相手を屠るべく己が武器を振るい続ける。

 

「「━━━━━ッ!!」」

 

 そしてタイミングを示し合わせたかのように拳と尻尾を打ち付け合い、僅かに距離を取った。互いに全身傷だらけ、ここで決めてしまうつもりだった。

 砕竜はありったけの力をその剛腕に込め、爵銀龍も同じようにしなやかな翼を振り上げる。小細工なしの真っ向勝負、この一撃で決着が着くだろう。そしてお互いの攻撃が相手に直撃する―

 

 

 

 

 

「オオオ━━━━━」

 

「!?」

 

 

 

 

 

 ―瞬間に、爵銀龍は自身の翼を砕竜の拳に擦り合わせるようにして突き出す。すると砕竜の拳は爵銀龍の翼の動きに合わせて逸らされて行った。

 そして攻撃が逸らされたという事は砕竜は一瞬の間防御ができず、無防備な身体を晒す事となる。その一瞬を、爵銀龍は見逃さない。

 

「━━━━━━━━━━ッ!!」

 

「!!」

 

 そして爵銀龍が一瞬で身を翻して振るった尻尾が月明かりに照らされる。その尻尾には赤い血が付着していて―

 

 

 

 

 

「グ…オオオ…」

 

 

 

 

 

 ―爵銀龍の尻尾は砕竜の喉を深く斬り裂いており、それは明らかな致命傷だった。砕竜も遂に限界を迎え、その場に倒れ込み、血の海に沈んだ。

 

「キュオオオ…!」

 

 爵銀龍は自身の身体に付着した血を舐め取りつつ、砕竜の死に様を見届けた。結果的に勝ったとは言え、自身に奥の手を使わせた挙げ句、この状態でもある程度手傷を負わせただけ大したものだと。

 爵銀龍は高いプライドを持つが、だからこそ色眼鏡で相手を見たり、評価にえこひいきや謙遜は含まない。それは自分自身をも貶めるものであり、無様以外の何物でもないと思っているからだ。

 そう言う意味では砕竜は自身には及ばないものの、認め得る強さを持っていた―それだけの話である。

 

「キュルルル…」

 

 そしてその養分も無駄にはしない。砕竜の死体や血の上に何処からともなくキュリア達が現れ、その養分を余すことなく吸い尽くし、主である爵銀龍に還元する。

 

 身体に力が漲る感覚を感じながら、爵銀龍はその場を後にする。

 不気味な紅い光を、その軌跡として残しながら。




こんなもんかな。投稿ペースが遅過ぎますがのんびり書いて行きますので気が向いた時にご覧下さいませ。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。

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