転生先はFSSだと思ってた   作:Delphinus

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キエリラボ ここは何処さ

 

「はあぁ、つまんないんだよねぇ……」

 

「どうかなさいましたか? マスター」

 

 こてん、と首を傾げながら彼女は問いかける。僕は回答した。

 

「だってさぁ、この世界普通過ぎるんだよ。あーつまんない。もうちょっとこう、あれだよ、星間航行技術くらい無い訳? なんですぐ目の前の月すら何十年も前に行ったっきりでさっぱり行けないのさ。あー月行きたい。火星行きたい。でも行けない。ロマン不足だよぉ、はぁぁ」

 

「ふふ、そうですか」

 

 地球史上初となるファティマ「エーオース」はそう言って相槌を打った。ファティマ、それはfssに登場する究極の生体コンピューターだ。モーターヘッドの、そしてゴティックメードの活動を補助する最強のシステム。騎士とマシン、そしてファティマが三位一体となる事で、モーターヘッドは、ゴティックメードは究極の力を解き放つ……筈なんだけど、はぁ。

 

「それにさぁこの世界、永野せんせー居ないわけよ。ヘビーメタルやモーターヘッドどころか!! キュベレイもハンブラビも抜きよ? ゴティックメードとか論外! 信じられない! 、何なんだよこの世界! 、もう大河原ロボに逃げるよ僕!」

 

「おや、何言ってるのか分かりかねますね……」

 

 そう言いながら、デスクに置いたバイファムのプラモを手で弄くり回す。あーバイファムは良いなぁ。いつ見ても和む。可愛い、カッコいい、素敵。僕もこんなロボを作りたい。

 

「所でドクター、ご予定のお客様がいらっしゃいました」

 

「えっそうなの? あー今日だったなぁ。部屋まで通して」

 

「畏まりました」

 

 エーオースは一礼して部屋を退く。またバイファムのプラモを見る。ガンプラとかつまらないし、こーゆーのが良い。

 

「ガンプラは自由だって? 冗談じゃない。プラモは自由何だよ。いや、絶対に自由じゃなきゃいけない訳。だからさぁ、はぁ、バッシュ組みたいぃ……、バッシュぅ」

 

「ドクター、お連れしました」

 

「あっとぉ、まぁ良いや。通して」

 

 デスクを軽く片付けて、姿勢を正して客人を迎えようとする。このラボには結構な頻度で客人が来る。アメリカ政府や軍の関係者。企業の奴らに、それから研究者仲間もね。でも、彼女はそのどれとも違うようだった。

 

(何この人、綺麗。び、美人過ぎない?)

 

 その方はびっくりするくらい美しかった。余りに美しくて目眩がしそうだった。美しい上に高身長。オマケに筋肉質と来た。一種の美の到達点。思わず見惚れた。見惚れてしまった。で、でも! 

 

「初めまして、ドクターキエリ。どんな女が好みだい?」

 

「……はっ? ……は? 、えっ……」

 

 い、今何て言った? どんな、女が、好み? 、ど、どういう意味? なんでそんな事聞くの? 、分からない。分からなさ過ぎて目が点になる。付いていけない。何なんですこれ? 

 

「なっ、あ、え、その、何でそんな事……」

 

「あっはは、済まないね。改めて、私は九十九由基。日本の特級呪術師をしているよ。宜しく」

 

「えっ、あっ、特級、呪術、師? ……、じゅ、呪術師ってそもそも何です?」

 

(それにしても、まさかあのドクターキエリが非術師だなんてねぇ。流石に想定外だよ)

 

 木衿冬嗣、それが通称ドクターキエリの名前だ。年齢は現在16歳。出身は広島市。幼少期は内向的で自閉的な性格だったそうだけど、齢8歳にして突如として開花。大量の論文を読み込み、更にはそれ以上に書き上げ始める。僅か11歳にしてアメリカに留学すると、恐るべき勢いで躍進を開始。飛び級で次々とスクールを進み、14歳の時点で既に大学院に入学している。

 大学院で過ごしながらありとあらゆる分野で夥しい数の論文を書き上げ、博士号までも取得。更にはあの恐るべき発明、超大型人型ロボット「ヘビーメタル」の開発を発表した。

 ヘビーメタル「ブラッドテンプル」の性能は恐るべき物だった。たかが塗装だけで太陽光をエネルギーに変換するツインメリットコーティング。更には余りにも圧倒的な破壊力を持つビーム兵器の数々。それでいてプラスチック製という恐怖のメカニズムに全世界が驚愕した。

 アメリカ軍もその性能に着目し、彼にヘビーメタルのアメリカ軍への導入、更には軍用機とすべく本格的な改良を開始したくらいだ。

 今やドクターキエリの名は全世界に響き、世界中が彼の動向に注目している。ドクターキエリとはそう言う存在だ。

 

 私は、彼の才能は術式によるものでは無いかと疑っていた。この世界に無自覚な術師は少なくない。無意識に術式や呪力を使用し、知らない内に恩恵に預かっている術師は少なからず居る。彼も、その1人では無いかという仮説を立てた。でも、違った。彼からは呪力を感じない。彼は一般人だ。

 

(正直、彼は術師だと思っていた。違った。ドクターキエリが非術師だなんて)

 

 驚いた。でも直ぐに思考を修正する。いつまでも驚いて、思考停止したままでは特級なんて務まらない。言葉を掛けようとして、

 

「あ、あの、女の好みですけど、貴女が好きです。結婚して下さい。いや、その、冗談ですけど」

 

「おや、それは有難う。嬉しいよ」

 

 冗談じゃ無ければ、もっと嬉しいんだけどねぇ。なんて私は思っていた。実際、ドクターキエリは驚異的に可愛い。伸ばした水色の髪と女性的な顔立ち。これなら女の子だと言い張っても通用するだろう。一貫して男性だとは分からない。小さく、そしてあどけない顔。あとちょっと、いやかなりアホな所も。頭の良いアホとは、つまりこう言う奴なんだろうねぇ。

 

 

 

 

「呪力……それに、術式? 、ま、マジですか? この世界そんなだったんですか? はぁぁ、そんな話聞いてませんよぉ。あーぅ」

 

「済まないね。いきなり話してしまって。証拠が欲しいなら私の術式でも見せようか?」

 

「いや、いーですよ。貴女の話なら信じます。はあ、この世界オカルトかよ。つまんなぃ。あっでも、その術式というのがあれば宇宙進出が捗ったりしませんか? 僕月行きたいんですよ月! アポロ計画の後をちょっとは継ぎたいんです!」

 

「月か……確かに面白いかも知れないな。呪術界もそういうアプローチはあんまりしないし。呪術を上手く宇宙進出に役立てられれば先行者有利が取れるかも知れない」

 

「呪術界? 、あー呪術って業界って感じでやってるんですか。その、呪術の話もっと細かく教えてくれません? 興味出ました。出来れば専門の本とか欲しいです、ありったけ、いっぱい」

 

「ふふ、マスターも面白くなって来たようですね。私も嬉しいです。感謝致します、九十九様」

 

 そう言って、ぺこりと頭を下げる彼女。ドクターキエリの、従者なんだろうか。気にしていると、ドクターは説明を付けた。

 

「あっすみません。紹介してませんでしたね。彼女はエーオース。ファティマ……つまり、生体型の人工コンピュータです」

 

「改めまして、エーオースと申します。宜しくお願い申し上げます」

 

 えっ生体型の人工コンピュータ? 、私はまた驚いた。どうやらドクターキエリと居ると、随分と驚きが尽きないようだった。

 

 

 

 

「へー、あっ、えー。んー、呪霊、呪霊ねぇ。人間の負の感情が形を取った存在。それを祓うのが術師と、あっ! あああ!」

 

 ぺこり! 、彼はいきなり90度頭を下げて礼をした。今度はまた何を考えたんだ? 

 

「有難うございます! 自分の生活が呪師のお陰で守られていたなんて今までさっぱり気にしていませんでしたァァァァ!!! 、大変に申し訳御座いませェェェんん!!!」

 

「い、いや、そこまで気にしなくても良いさ」

 

 ドクターキエリは一々奇行が目立つ。顔立ちは女性的で美しいのに、言動と振る舞いからどうにも残念さが伝わって来るというか。まぁ

 

(感謝されるのは、悪くない気分だよ)

 

「そ、それで、何ですがね、えっと、その、あー、呪術師の活動について、僕なんかで良ければ何か支援出来る事ってありません? その、僕の命にも関わりますし、見えない恐怖とか本当どうにもならないんですよぉ。ちょっとくらいで良ければお助けくらいしますから」

 

「良いのかい? それは有難う。じゃあ取り敢えずはね……」

 

(それに、キリエ博士は随分な善性の持ち主と見える)

 

 これで人類史上最低最悪の殺戮兵器の開発者だとは信じられない。あの核ですら凌駕する機動兵器、モーターヘッド「LEDミラージュ」を作り上げたなどとは。

 それに、あのインフェルノナパームは。

 

(霊魂ですら焼き尽くす火炎放射器を、呪術も知らずに作ったと?)

 

「ああ、有難うございます。これで少しは安心ですかね……、あ、それと、九十九さんが秘密を話してくれましたから、折角ですし、僕も秘密を話そうと思うんです。僕は普通の人間では有りません。僕は異世界から、この世界の外から来たんです」

 

「はっ? 、えっ?」

 

 いや、異世界から来た? えっ? ……今度は私も驚愕した。

 

「それを話して宜しいのですか? マスター」

 

「構いませんよ。九十九さんは呪術の秘密を教えてくれましたから。特別扱いです」

 

「分かりました。それでは私は何も言いません」

 

 

 

 

「つまり、ドクターキエリは本来別の世界で生まれたと?」

 

「そうなんです。その世界で死んだ後、よく分からない白い部屋とディスプレイしかない場所に居て、そのディスプレイをコンソールで操作すると、転生先やステータスを自由に弄れたんです。だから転生先はfssにして、年代も決めて、ファティマ・マイトの才能も貰って、なのにここ何処なんですか? 何でジョーカー星団じゃ無いんですか? そんなの可笑しいと思いません?!?」

 

 ドクターキエリの話は、余りにも予想外の物だった。ドクターは異世界で生まれた? 死んだ後謎の白い部屋に辿り着いて、コンソールを弄って転生先と才能を決めた? 

 

「それで、これってどんな術式だと思います? 、これって呪術なんでしょうか……」

 

「いや、申し訳無いがそんな術式は聞いた事が無いんだ。済まないな、力になれなくて」

 

「あー、呪術かどうかは分かんない、と……はぁ、あの部屋の事、知る望みが絶たれたなぁ。どうしよう」

 

(それにしても、ドクターキエリは呪霊の存在しない世界で生まれた、なんて)

 

 そう思って、考え直す。いや、キエリ博士は前の世界でも呪霊を知らなかっただけかも知れない。前の世界でも呪霊が存在し、人々を食い殺して居たのかもしれない。まぁ、結局確信は取れないのだけど。

 

(それでも凄いな。ドクターキエリの事情は)

 

 キエリも呪術の存在に驚いていはいたけど、私はそれと同じくらい、いや、それ以上に驚かされた。転生者だって? そんな話は聞いた事が無い。彼はこの世界に唯一無二の存在。本当に貴重な怪物なのだと言える。これは間違い無く。

 

「それにしても、あー、呪術師かぁ、呪術師って、よく分かんないけど人類を超越した超人とかそーゆーのなんですよね。その超人に、やらせる事が一般人の感情のドブさらい、感情のゴミ処理業者だなんて。んーぅ申し訳無いなぁ、はぁ。もうちょっとこう、折角の超人類なんだし、超人らしい凄い事やった方が世界が面白くなるのに」

 

「呪術師なんて、別に超人って言う程良い物じゃ無いけどね。それでも、気にかけてくれるのは嬉しいよ」

 

 あーうー、そう言って頭を抱えながら、ドクターキエリはブツブツと言う。呪術師如きが、超人と言う程御大層な訳が無い。それでも、術師のいた方が世界が面白くなると言ってくれた。まぁ、それだけ言ってくれたらもう十分だと私は思った。

 

「それと、呪術の専門書だけど『それ取り敢えず一万冊下さい!』……1万冊だと、漢文の古書も入るけど良いかな?」

 

「良いです! 漢文は気合で読みます!」

 

「そ、そうか」

 

 

 

 

「お願いです、またここに来て下さいね? 呪術の考察をもっと深めたいんです。あ、後、呪術について論文書いたら駄目ですか? 良いなら書き散らかします!」

 

「あはは、程々にね」

 

「わーいやったー! 、僕論文書いちゃう! 超書いちゃう!」

 

(彼が論文を書くと、間違い無く世界が動くだろうな)

 

 ドクターキエリの論文の影響力は絶大だ。なにせ世界中の凡ゆる研究者が、彼の動向に注目しているのだから。彼が呪術について論文を書くと、世界中に呪術の存在が露呈する。圧倒的な勢いで、世界を巻き込んで動かす事になる筈だ。

 

(だが、それも悪く無いか。現状を是正するには良い一手だ)

 

 だが、それを私は悪く無いと思った。私はこの世界を変えたい。呪霊を無くす、それが私の目的なのだから。

 

(世界に呪術の存在が露呈すれば、世界中が呪霊の脅威を知る事になる。もう昨日までのように呑気にしてはいられない。誰もが対策を取らざるを得なくなる。それに)

 

「それと、呪術の本もお願いしますよ? お願い申し上げます。本当に。必要なんです。金が必要なら大枚はたいてでも買います」

 

「ああ、それは任せておいてくれ。責任を持ってきっちり集めておくよ」

 

「私からもお願い致します、九十九様。どうかマスターの願いを叶えてあげて下さい」

 

「大丈夫さ、心配はしないでくれ、エーオースさん?」

 

「あ、後追加でお願いです、結婚して下さい。……えっと嘘です」

 

「ふふ、有難う」

 

 別に嘘じゃ無くても良いんだけどねぇ。何て、そう思いながら私はエーオースさんに見送られて、ドクターキエリのラボを後にした。

 今日は余りに多くの収穫が有った。早く内容を整理しなければ。

 

「それにしても、呪霊を無くしたい? それが九十九さんの目的なんですか?」

 

「ああ、そうなるね。この世界は今も呪霊の被害に脅かされている。喫緊の課題だよ」

 

「でも、呪霊にも知性を持った種がいるんですよね……だ、だとしたら、何とかして共存の方法を探るのが先じゃ無いですか? 、あー、その、九十九さんの事否定してるんじゃ無くて、えっと、僕は、呪霊も呪術の可能性の一部だと思うんです。呪術の可能性を広げる為には、やっぱり呪霊だって必要何ですよ。この狭っ苦しい世界に人間だけなんて、そんな世界つまんないですもん。あー多分、ですけど」

 

「ふふ、成る程。キエリ博士が仰ると説得力もあるね。覚えておくよ」

 

(それにしても、呪霊との共存か。キエリ博士は凄い事を考えるな)

 

 さっき話した事、ふと思い出した。人間と呪霊の共存。キエリ博士は確かにそう言った。それを否定する気は無い。確かに、それが叶うなら理想的なんだろうとは思う。

 

(でも、私は呪霊の消滅を目指させて貰うよ? そこは譲らないさ)

 

 

 

 

 ワシントンD.C.近郊。郊外にある一軒家。その内の一つが僕のラボだ。元々は大学の寮住まいで自前のラボを構えるとか全然考えて無かったんだけど、ロボを作るにあたって段々と巨大な実験や設備が必要になって、何やかんやでワシントンD.C.郊外にそこそこ良い物件を見つけて移住した感じな訳。

 

「んっふふ、呪術の論文、凄い反響だねぇ」

 

 ドサッと並ぶ凄まじい数の本に溺れながら、僕はパソコンで自分が書いた論文の反響を確認していた。本の中身は全て呪術についての物。九十九さんにお願いして送って貰った大量の呪術文献だ。これがもう本当に凄い宝の山なの! 漢文読めないけど気合いで覚えて読んでる! ファティマ・マイト舐めんな! 

 この文献を片っ端から読み込んで、内容を論文に仕上げてサクッと発表。それはもう大惨事。世界中が面白いくらい転がってる。

 

「アッハハ、本当面白ーい! 、世界が面白くなってるじゃん! 、あははは!」

 

「マスター、ご予定の九十九様です」

 

「わーい、直ぐ通して」

 

 九十九さんは恩人だから優先待遇。それに美人だし、結婚したいし。はぁ、結婚するなら九十九さんが良いなぁ。でも見向きもして貰えないんだろうなぁ。だって僕モテる機会とか無いし。どんなに顔が良くても声掛けられるとか論外だし。女の子に近付いても逃げられるのがオチだし。ホントはもっとモテたいんだけどさぁ、あー。

 

(まぁ、結婚はいっか。僕なんかと九十九さんみたいな超絶美人じゃ、全然吊り合わないんだよねぇ)

 

「やぁ、お久しぶり。博士の論文私も読んだよ。世界中凄い事になってるね」

 

「あっ読んでくれました? わーい、て、あれ? そちらは?」

 

 子供? な、何コイツ? ……九十九さんは先日会った時と変わらない美貌だった。でも、今は違う所が有る。誰か連れて来ているのだ。な、何この筋肉ダルマ。気持ち悪っ、うわぁ、気持ち悪い。と、思っていた、誰か分からないその子供が

 

「初めましてだな、どんな女が好みだ?」

 

「はえっ? あっ、えっ? ……えっ?」

 

 な、何コイツ。果てし無く気持ち悪いんですけど……えっ? なんでそんな所九十九さんと同じなんです? えっ? 

 

 

 

 

「聞いているぞ、ドクターキエリは非術師だそうだな、それでも呪術を学んで論文を書いたとか」

 

「まぁ、そうですけど……こちら誰です?」

 

 なんか凄まじい筋肉野郎がそう言った。僕は適当に答えたけど、はぁ、無駄に身長高くて余計に気持ち悪い。低身長な僕への当てつけ? 何かフレグランスの良い匂いがして余計にキモいのは何? はぁぁ、僕野郎とか嫌いなんだよぉ! 筋肉とかホントに無理! あっち行けよぉ!?? 

 

「すまないね、この子は東堂葵と言うんだ。私の弟子だよ」

 

「まぁそう言うわけだな、宜しく、博士」

 

「えっお弟子さん? 、す、すみません。木衿冬嗣です。宜しくお願いします」

 

 まさかお弟子さんだとは微塵も思って居なくて、いきなり恐縮してベコベコ頭を下げる。

 

「フッ、気にする事は無いさ。それにしても、随分と筋肉が足りんな。おまけに身長も低い。少しは鍛えようと思わないのか?」

 

「思いません! 、鍛えるとか死んでも嫌です!!! 、後身長低いとか言うな!!!」

 

「紅茶をお持ちしました、マスター」

 

「あ、あんがとエーオース。その、客用の紅茶です。皆さんどうぞ」

 

「ふふ、気遣い有難う。頂くよ」

 

 エーオースが紅茶を用意してくれた。それを出して話をする。話したい事は沢山ある。送ってくれた本の内容についてや、論文の内容はどうだったか、本物の呪術師の目から見て不備は無いかなど。まあ一杯だ。

 

「そういう訳ですから、僕は呪術を応用して宇宙開発したいんです。月行きたい! 火星行きたいんですよ! 呪術師から見てどう思いますこの計画!」

 

「ほう、火星か。それは面白いな。キエリ博士は呪術界の想像力を超えているようだ」

 

 もしかして呪術師って、呪術をもっと面白い事に使おうって考えないんだろうか。呪術で月に行こうとか、地底潜ろうとか、海底行こうとか思わないのかな? 九十九さん達の話を聞くに呪術師はどうにもそういうロマン溢れる呪術の使い方はしないらしい。ちょっと、いやかなり、いや凄く勿体無い。

 

「はぁ、呪術って、話聞いているとなんか辛気臭いですよねぇ。術師はホントに凄い超人なのに。呪力ってそもそも負のエネルギーだそうだし。正のエネルギーを出すのは大変だって」

 

「ああ、そうだな。正の呪力を出すには負の呪力同士を掛け合わせる必要がある。それが反転術式さ。怪我の治療に役立つ」

 

「んー、怪我の治療かぁ。まぁ悪く無いけど、僕的にはやっぱり宇宙、せめて深海行きたいですよねぇ、はぁぁ。あっ! そう言えば、少し前夢に見たんですけどね! 何かいきなり和服のキモいおじさんが出てきて!」

 

「ん? 和服のキモいおじさん。それはどう言う意味だい?」

 

「初めましてって言ってから、何か喋って来たんですよ! 僕はうゔぇぁっ、て驚いたんです! そうすると、ははは、そんなに驚かなくても良いよ。君がドクターキエリだねって」

 

(誰かが夢を通して接触した? 、誰だ……)

 

「名前は聞いてもはぐらかされましたけど、ソイツ多分けんじゃくって言うんですよ。僕のファティマ・マイトの能力にかかれば言ってない事見抜くくらい余裕ですから! 、それと、ソイツ本当に凄いんですよ? 何と1000年生きてて、1000年前の呪術全盛の時代を復活させたいらしいんです。何か知らんけど凄いですよね! そのけんじゃく? さんは1000年生きてる間に6眼の術師に2回負けてて、負ける度に生き延びて頑張ってるそうなんですよ! ……所で6眼って何ですか?」

 

「……!? 、何だって!??」

 

 九十九さんの目の色がものすごい勢いで変わる。えっと、ぼ、僕何かやっちゃいました? 

 

「済まない。博士は直ぐにでも護衛をつけた方が良い。このままでは危険だ」

 

「えっ? いや、護衛? そんな事いきなり言われても……」

 

「このままでは居られない。申し訳無いがお喋りは中断させて貰う。護衛については私がすぐに手配する。それと」

 

「貴重な情報を有難う。本当に感謝するよ」

 

「……? 、は、はい?」

 

 その後、九十九さんは物凄い勢いで荷物を纏めると、東堂さんを連れてさささっと帰ってしまった。そして飲みかけの紅茶が残った。

 

「はぁぁ、どうしよう。護衛? 僕の身が危ない? だったら、良い? エーオース」

 

「はい、お任せを」

 

 

 

 

 キエリラボの地下には、それが安置されている。圧倒的な巨体。圧倒的な出力。異形の姿を備えた、絶対的な力を持つ機械の神。ツァラトゥストラ・アプター・ブリンガー、その未完成形の姿。火炎の神の抒情詩の名を冠する、星団史上最低最悪の機動兵器。これはその劣化品の、更に試作品に過ぎない物。

 

「本来のツァラトゥストラ・アプター・ブリンガーに比べて、こいつは圧倒的に弱い。しょうがないんだよね。天照帝の、本物の神が作り上げた最高のGTMと、中途半端な環境で僕なんかが作った中途半端な機体じゃあ、絶対に勝負にならない。比較するのも烏滸がましい」

 

 それでも、この地球上では絶対的な力を持つ。持つのだ。僕にはツァラトゥストラどころか、LEDミラージュすら、いや、ブラッドテンプルすらも満足に作れない。ジョーカー星団と技術レベルが違い過ぎるこの地球では、どんなに頑張った所で絶対的な限界があるのだから。

 

「それでも、この程度は作れてしまうんだから。ホント、凄いもんだよねぇ」

 

「乗り込みましょう、博士」

 

「はーい」

 

 機体に乗り込む。僕の身が狙われているなら、ここが安全だ。ここは最強の機動兵器の内部。世界で最も安全な場所。

 そこに座ると、安心感がする。でもそれと同時に寒気が来る。ここで少しでもガットブロウを振れば、街だってあっさり滅ぼせる。今、僕が絶対的な力を握っている。怖い。恐ろしい。

 僕の才能はファティマ・マイトの他に騎士も少々。騎士の才能はちゃあに毛が生えなかった程度、つまり最低レベルだけど、それでも動かすくらいは大丈夫。

 

「はぁぁ、狙われてなきゃ、こんな所座らないのに」

 

「大丈夫です。私も付いています」

 

「そっか。お願いね、エーオース」

 

「はい、お任せを」

 

「はぁぁ、少し眠るよ。今日は疲れた」

 

 そう言って、僕は暫く眠る、つもりだった。

 

「やっほー、九十九から言われて来たよ、宜しくー」

 

「えっ、何この目隠し、えっ?」

 

 起きた後、すぐ隣に何か凄い目隠しをつけた物凄い高身長のイケメンがいきなり喋って来た。……えっ?

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