何やかんやで呪胎九相図を引き込んだ後、脹相も見つけて呪術高専に引っぱりこんだ。その結果。
「兄弟ファイヤァァァー!」
「おおおー!」
虎杖と呪胎九相図が、いつの間にか兄弟になっていた。
「は、あ、いや、えっ? 、え……何で、あ、えっ? 馬鹿なの、これ、何でこんな事になるん? いや、付いていけない。何で虎杖と呪胎九相図が兄弟? えっ? …………えっ? ……、あ、あああ、あっ、う、うぅ、もう僕の頭は駄目なのかもしれない」
「お、お気を確かに、マスター」
「あああご、御免エーオース。でも、今回は本当に、本当に果てしなく無理かも。脳内高田ちゃんと同等、いや、下手したらそれ以上に……あ、あああああああああ、ああああ!??」
(何やってんですかこの馬鹿虎杖は、本当に果てしなく馬鹿じゃ無いですか!)
付いていけない。何なんだろうこれ。何で虎杖が当たり前のように兄弟の輪に入ってるの? 全然分かんないんだけど……駄目だ、これは本当に理解出来ない。い、いや……。まさか……。
「……ど、どどどどどどうしてこんなったんでででしょう。……うぃ、呪胎九相図の製作者は、確か加茂憲倫? で、虎杖は、人造人間……。だとすると、まさか、虎杖は加茂憲倫に作られた? だから兄弟なの? いや、まだ証拠が足りないし、あーもう無理全然分かんない。僕は今から研究に逃げます!」
「えー、こんな所で逃げんのかいキエリさんよぉ」
「しゃけ」
「僕は逃げますよ! パンダ! 狗巻さん! こんなの想定外です! もう僕にはどうにもなりません!」
「虎杖、お前何やってるの?」
「いや、違うんだ、そう言う意味じゃねぇよ釘崎、そのだな」
「そんな事は無い、俺達は兄弟だ!」
「は、話がややこしくなるから今は少しだけ黙っててくれぇっ」
(はぁ、どうやらあれでも苦労してるみたいですねぇ、虎杖の癖に)
虎杖の分際で苦労してるとか生意気ですけど、まぁ良いでしょう。ああもう兄弟とか鬱陶しっ。絆とか何とか無駄に暑苦しいんですよあいつらぁ!
「あっはははははは、最高じゃんこれあはははははは、虎杖と、呪霊が兄弟になってるアハハハハハハ」
それに、五条先生は死ぬ程笑い転げて楽しそうだった。呪胎九相図と虎杖が何か兄弟になった、その余りにも絶対的なインパクトは高専中に広がって、そりゃあもう修復不能なレベルで酷い事になった。
「はぁ、あああっ、何が起こったんだ、あれ……うぅ、今になっても全然分かんない」
兄弟の事はもう思考停止して一旦忘れました。あんな事考え続けてると、本当に頭が可笑しくなる。そして、今は
「ねぇ、キエリ。カラオケとか行った事ある?」
「カラオケですか? いえ、さっぱり無いですけど」
「じゃ、折角だわ。高専の皆んなでカラオケしましょう」
と、釘崎さんに言われて始まったカラオケのパーティー。何ですけど
(はぁ、皆んな何歌ってんのか全然分かりませんね)
歌とか全然リサーチして無いんですぅ。今の僕は暇があったら論文とか文献読み込んでますし。歌なんか見てる暇無いと言うか……どうしましょう。僕が知ってるレパートリーの中で、カッコいい奴。そろそろ、僕にもマイクが渡される。
「キエリ、大丈夫か? 歌分かんねーのか?」
「ええ、全然分かりません。まぁ一応やってみましょう、虎杖」
(どうすれば良いと思います? エーオース)
(好きに歌って良いと思いますよ。マスターもお気に入りの曲くらい少しはあるでしょう?)
(はぁ、だとしたら、んー、曲目は……アレですね)
「さて、曲目はエースコンバット4よりMegalithです。歌っちゃいまーす」
僕が歌うのはMegalithだった。今の僕にはですねぇ! ボーイソプラノくらい余裕何ですよぉ!?
「うわ、何だこれ、まるでオペラ歌手じゃねーか! 、無駄にカッケェ!」
「キエリの高音って、本当にボーイソプラノみたいねぇ、でもそれカラオケで歌う奴じゃなく無い?」
「こ、これ、もしかしてゲーム音楽か? 変な物チョイスするな……」
「五月蝿いですね伏黒! 僕にはこれくらいしか分からないんですよ!!?」
Megalithの反響は、まぁそこそこだった。
「はぁ、まぁ、まぁこんなものですよ。ラテン語歌詞は何か知らんけどかっこ良く聞こえる効果を味わいなさい、アハハハハ!」
「おー、何か知らんけど凄かったじゃ無いか?」
「しゃけ」
パンダと狗巻はそう言った。パンダはこれはパンダの着ぐるみです扱いでゴリ押しして入店。狗巻さんは……あー、歌えないんだ。そっか、そう言えば。そうだったなぁ。
「……狗巻さんが喋れる方法、その内何か開発しましょうか」
「ツナマヨ」
「おや、やってくれんのか? 天才科学者ドクターキエリさんよぉ」
「まだ具体的なシステムは思い付いてませんよ。ま、気長に待ってて下さいね」
「すじこ」
狗巻さんは、否定しなかった。まぁ一応、期待はされてると思っておきましょう。
そんな感じで、カラオケは続く。カラオケパーティーの間、時間を見つけて釘崎さんが言った。
「思ったんだけど、私もゴチックメードに乗せなさいよ。私もあれに乗りたい訳」
「ふふ、アレは普通の人間には乗れませんよ?」
「えー」
釘崎さんはあっけらかんと言った。
(ゴチックメードに乗れる純正の騎士は僕以外に存在しません。そして、僕は騎士としてはちゃあ並みです)
ちゃあはfssに出て来る中でも、最弱級のとんでもなく弱い騎士。帝とのコネで得た最強のGTMと、超強力なファティマ、ヒュートランに支援されてスペックを遥かに超えた力を発揮する。今の僕の能力も割とそんな感じなのだ。
僕のファティマ、エーオースのパワーゲージはバランシェファティマに匹敵する。その中でもスペック上はヒュートランが一番近いですね。
まぁ、自己鍛錬プログラムみたいな変なシステムは積んで無いけど。代わりに呪術変換システムとか言うとんでもないシステム積んでますから、騎士とGTMさえ互角なら、呪術が有る分ヒュートランにも競り勝てる筈です、これ机上論ですけど。
「まず、ゴチックメードに乗れるのは騎士だけです。そして、騎士の才能は遺伝でしか得られない。つまりGTMは特定の選ばれた人間にしか扱えない代物です」
「ふーん、面倒臭いのねぇ。でも、それって呪術師も似たような物じゃん?」
「ええ、その通りです。ただ、騎士の血統は地球上に存在しません。ですから運用出来ないんですよ」
「えぇ何それ、滅茶苦茶じゃない……」
「まあその代わりと言ってはなんですが、とっておきの話があってですね」
「あーもぅ、この際何でも良いわよ! 何か出しなさい!」
(さてと、日本に供与するGTMですか……)
実は、日本政府、更に自衛隊からはかなり前からヘビーメタルの、更にはモーターヘッドの配備協力について要請が来ている。日本側に提供する機体はもう決めてあって、今は絶賛配備作業中って所。
「ガイラム。そしてジュノーンを」
「ん、ガイラム? ジュノーン? 何よそれ」
「あはは、まだ秘密です」
取り敢えずこの場では伏せておいた。ま、後で話をしましょうか。
「エーオース、自衛隊のヘビーメタル配備計画はどんな感じですか?」
「進行率は約60%です。当面先ですね」
「んー、急いだ方が良いでしょうか……。でも、ああいう大組織への配備計画って、急いだくらいじゃ進まないんですよねぇ」
「はー、ん、そうです。今は羂索先生の宿題やりましょう」
昨日、久々に羂索先生が来て頂けた。相変わらず教え方が正確で楽しい講義でした。しかも次の宿題まで貰えたという訳です。
順平の予後も確認しましたし、後は……
「……あー、そうだ。もう直ぐハロウィンだなぁ、さっぱり忘れてた」
10月も後半だ。もう直ぐハロウィンが来る。ハロウィンって実は一回も楽しんだ事がない。そう言う行事の日だろうが構わず論文読むのが僕のやり方だったし。でも今年は、
「もしかしたら、僕もハロウィン祝うのでしょうか……遠慮したいなぁ正直」
正直パーティーに行くとか自信無い。自分がパーティー? 冗談じゃない。そう言う楽しい所はとことん縁が無いもの。でも、呪術高専に入ってから何やかんやで縁が出来たんですよねぇ、良くも悪くも。
「……僕なんかに楽しめるのかなぁ、まぁ良いや。宿題解こう」
「ふふ、楽しめますよ、大丈夫です」
「だと良いんだけどさぁ、エーオース」
「最近、また羂索先生が来てくれる様になったんです。昨日も来て頂けて」
「ふーんそっかー、成る程、羂索がねぇ」
五条先生に偶々会って、羂索先生の事について話した。最近嬉しい事に、良く夢で羂索先生に会うようになったのだ。
(この調子で、あわよくば呪術高専の教師にもなって欲しいんですけどねぇ……)
「それで、五条先生は昨日は見ませんでしたが、どちらに?」
「昨日は上層部と折衝さ。もう面倒臭いよ? ホント、呪術総監部の連中ってさぁ、マジで鬱陶しくて、どいつもこいつもジジイばっかりなのに権力欲は凄まじいったら。正に腐った生ゴミみたいさ」
「……そ、そうなんですか、すみません、苦労をお掛けして」
「あはは、学生がそんな事気にしないで良いって」
そう言って笑う五条先生。目隠しだから表情は結局分からない。
(あ……そう言えば、五条先生ってどうしてそんな上層部に従ってるんでしょう)
呪術界の上層部がとんでもない連中だって言う事は、こうして高専で過ごしている内に嫌でも分かった。僕はヘビーメタルやモーターヘッドの配備協力のあれこれで、複数の権力者とちょっとした伝手がある。だからこそ比較すると分かる。呪術界の上層部は、幾ら何でも度を越してる。暗殺とか当たり前、余りに恐ろしい。
「五条先生は上層部より遥かに強いじゃないですか、なのに、どうして上層部に従うんです?」
「あーそこ気になる? まぁねえ。上層部の連中皆殺しにしようなんて、そりゃあ今まで何度も思って来たさ。でも駄目なんだよ、そんな事したら、皆んながついて来れないだろ?」
「あー成る程、そう思っていらっしゃったんですか……」
五条先生の言う事、間違っては無いと思った。でも、ちょっと勿体無く無いでしょうか。
「つまり、皆んなが付いてこれて、上層部を排除出来る方法なら良いのでしょうか?」
「へー、それどう言う意味?」
「まず、先生は五条家を握っていらっしゃるでは無いですか。つまり、先生が号令を掛ければ、五条家は確実に従います」
「ふーん、それで?」
「しかも最近、御三家の一角、禪院家が落ちました。禪院家の現当主は真希さんです。つまり、真希さんに声を掛ければ禪院家の同意を獲得出来ます。これで御三家の二つは抑えました。後の一つは加茂家ですが、京都高専の加茂憲紀さえ引き込めば良いでしょう。例え反対されても、2対1の差で押し切れば何とかなります」
「しかし、何より重要なのは特級呪術師です。まず、特級呪術師木衿冬嗣の同意はこの場で直ぐに獲得出来ます。第二に九十九由基ですが、僕が説得します。自信はあります。九十九由基先生は呪術界の変革を望んでいるからです。参加を要求すれば、恐らく断りません。第三に乙骨憂太ですが……すみません、こちらは良く分からないです。ともあれ、これで特級の3人を引き込めました。乙骨は、正直分かりませんが、例え反対しても数の差で押し切れます」
「東京高専の皆は五条先生を非常に慕っています。五条先生には人望が、そしてカリスマがあります。今なら、皆んなが付いて来てくれます。京都高専も、五条先生の力を知っています。だから拒絶は出来ないでしょう」
「御三家の二つ、特級呪術師の協力、その上両高専も引き込めば、呪術界上層部を権力者の座から退場させる事が出来ます。これがシナリオです、上層部相手にクーデターしましょう。そろそろ、体制を覆すにも良い時期が来ていますよ」
「へえぇ、中々面白い事考えるじゃん」
五条先生は、否定しなかった。
「でも駄目」
「あ、駄目ですか?」
「うん、駄目」
「あーすみません、変な事考えて」
「あはは、気にしないで良いって。クーデターやるなら、もっと派手にしなきゃさ」
「……えっ?」
そう、五条先生は意味深な事を言った。何考えてんのかさっぱりだった。
「取り敢えず、今度のハロウィンまで何かしたら駄目ね、分かった?」
「はぁ、ハロウィン? ですか? 何で……わ、分かりました、はい……」
「うん、それで宜しい」
何でハロウィン? ハロウィン超えたら何かしても良いの? 全然分かんなかったけど、でも拒否は出来なかった。
「はぁ、僕の考え甘かったよねぇ……でも、何でハロウィン?」
五条先生が去った後も、何でハロウィンなのか全然分かんなかった。
「ねぇエーオース、どうしてハロウィンまで何もしたらいけないのか、分かる?」
「いえ、情報が無いので、私にも分かりません。申し訳有りません」
「いや、御免。はぁぁ、エーオースが分からないなら僕も分かんないんだよなぁ」
そして10月30日。夢の中で羂索先生にお会いした。
「やあ、勉強はどうだい?」
「先生のお陰でとても捗っていて、本当に有難うございます!」
「あはは、気にしないで良いよ」
羂索先生は相変わらず気さくにそう言った。それにしても、羂索先生は本当に凄い方です。どうして高専に来て下さらないんでしょう……あーいえ、教師なんか嫌なら別に来ませんよね、当たり前ながら。
「私はね、人類の進化の可能性が欲しいんだ。そして君は、その多くを齎してくれた」
「ん、確かに、前にそう仰っていました。ですが、僕は先生とは違って、自然の進化の可能性が欲しいのです。人間以外のどんな生物も、それこそ宇宙人だろうと自然の可能性の一部の筈です」
「ふふ、確かに、そう言っていたねぇ。君の考え方はとても立派だ。でも君のやる事には少し問題があるな」
「問題? ですか?」
羂索先生の言う事が分からなくて、聞き返した。
「なにせ、君の技術は衰退するんだろう? それこそ、呪術と同じさ。確かに君は多くの可能性を開くだろう。人類は宇宙に進出し、更なる繁栄の時代を迎える事が出来るだろう。でも」
「私が見るに、君の技術は後退史観の産物だ。時間が経てば経つ程に駄目になる。呪術と同じさ。平安時代こそが最高、それ以降は、少し盛り返す事はあっても全体的には悪くなる一方。私はその衰退が不快でしょうがなかった。かつても、そして今もさ」
「君の技術は今こそが最高。君が生きている間が黄金時代だ。君の生きている内は良いが、死んだ後はどうなる? 人々は君の遺産を追い求め、激しい争奪戦を繰り返すだろう。君の血筋が世界中から求められ、争奪の対象になる。そうして奪い合いを繰り返す内に、世界は再び凝固するのさ。黄金時代が終わると、世界は閉ざされ、技術は失われ、段々とつまらなくなって行く。私にはそう断言出来る。何せ呪術がそうだったからね」
「……そ、それは」
否定は出来なかった。fssは後退史観の世界だ。時間が進めば進む程に悪くなる。そんな世界の技術を地球に持ち込むのは、もしかして失敗だったの? これから、地球は悪くなる一方?
「それでも、良いじゃないですか」
「ほう、その意味は?」
「衰退は世の常です。別に憂う事は有りません。例え世界が衰退したとしても、人々はかつての遺産を用いながら、存外幸せに暮らしている物です。例え衰退が進み、遂に人間が滅びてしまったとしても、もしかしたら何億年の後には、新しい種の、新しい霊長が現れているかもしれない。その可能性だけでまあ十分では有りませんか?」
「それに、衰退するのは呪術と僕由来の技術だけで、科学そのものは例えゆったりでも進歩を続けるかもしれませんよ?」
「ほう、成る程。やはり君は私には思い付けない事を考えるね。衰退は世の常。あはは、如何にもその通りだな」
「では、そんな君に私からのプレゼントだ」
「は? プレゼント、ですか?」
「その通り。私の持っている呪術についての全ての文献、資料、呪具、これら全てを君に譲渡しよう。後で君の所に送らせて貰うよ」
「えっ? あ、えっ? そ、そんな? 何で……?」
羂索先生は貪欲で収集癖の凄い方だって、何度も話す内に分かっていた。知識欲旺盛で、どんな文献も集めて手放したがらない。だと言うのに、何で、僕なんかに?
「よ、宜しいのですか?」
「良いとも、これは私からの餞別さ。後」
「君のおかげで随分と楽しめたよ、ありがとう」
「えっ? は、はい……。あ、それと」
「その、もう一度お願いです、どうか高専に来て下さい! もっと羂索先生の教えを乞いたいんです」
「あはは、そうだねぇ、それも悪くない。ま、考えておくよ」
それっきり、夢は終わった。また目覚める。五条先生の言った、ハロウィンの日が来た。
前話は動かし過ぎて失敗したと思いましたので、一旦削除致します。余裕があれば書き直します、申し訳ありません。