リナの星間貿易異聞録 第二期   作:ayasaki

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必要悪という言葉は有名ですが、現代は私から見れば「必要正義」です。
賢いでなくずる賢いやり方こそが正しい。良識をどぶに捨てても罰されない儲け方なら堂々と出来る。
……頭の悪い犯罪者より悪質で狡猾な悪党ですな。


ファクトフルネス

「……本当にいい子だ」

 マルデリタ嬢とフェルクルの帰還を見送った私は、素直な感想をつぶやいてしまう。

 同時に会談前まで悲鳴を上げていた体の不調が和らいだことで、改めて自分の体が相当酷かったことを実感する。

「これなら、もう少し動けるな」

 本音で言えば休みたいのだが、状況がそれを許してくれない。

 ため息をついてから、私はいつも通り上司の部屋に向かう。

 部屋に到着すれば上司も迎え入れてくれるが、その疲労具合は会談前の私と似たようなものだ。

「ご苦労だったな」

「いえ、今の現状のことを考えれば、マルデリタ嬢との会談は心が洗われますよ」

「……そうだな。だが問題なかったかね?」

「私の憔悴具合から、少し気にされました」

「回復してもらったそうだな。下らん輩だと騒ぎそうだが立ち会った者達なら大丈夫だろう」

 警護の者たちも私の状況を知っているので、問題ないということだ。

「おかげでだいぶ体はよくなりましたよ。

 まあ、その分でまた酷使しなければなりませんが」

 ああ、ダメだ。

 軽いジョークにしているつもりだが、言った直後に頭のほうは回復してないのが理解できてしまう。

「はっはっは、やはりお互い無理が祟っているな。

 それでも今片づけねばならないのは分かっているからな」

 そんな私の頭の回転具合に上司はすぐに気づいてしまう。

 しかし、それでも私達は業務を再開しようとするが、新しく受信したメール内容に顔がひきつってしまう。

「……ボス。また日本とアメリカの政治家です」

「こいつらを全て的にしてやりたい」

 その言葉に完全に同調してしまう。

 そしてメールの内容を読み進めれば、絶対にわからないように隠滅された証拠を手に入れたので確実に立証できるとのこと。

「もう、魔石は医療用よりこちらで使うほうが世のためになると考えてしまうのが悲しいなぁ・・・」

「私もです」

 それは魔石を自白用として活用した結果である。

 医療用という名目の裏で、魔石を自白に活用した結果は劇的なものだったのだ。

 まず完全にクロだが証拠が無いことで捕まえられなかった犯罪者に関係する人物。

 既に牢獄に入れてはいるが証拠不十分で立証できなかった内容で使用したところ、本人でさえ朧気にしか覚えていない犯罪履歴を自白したのだ。

 この結果をもとに調査すると、すぐに証拠は発見される。

 これで自白への魔石活用は有効だと証明されたことが、私や上司どころか様々な分野で波乱を巻き起こす切っ掛けとなる。

 犯罪というのは嫌な言い方だがビジネスにもなる。

 そしてビジネスということは一人でなく、相手がいるということであり、その相手も犯罪に手を染めているということでもある。

 だが、お互いが犯罪者であればお互いが弱みを握っているからこそ、協力することもある。

 その中には当然だが企業・権力者・宗教団体を隠れ蓑にしている輩もいる。

 また、そんな輩はとてつもなく狡猾でもあるし、他者など己の欲望を満たすためだけに存在していると本気で考えている。

 だからこそ、良識も何もないのだが捕まらないためにも、社会常識というのを正確に理解していることも多い。

 それにより社会に影響を持つ人間や弱みを持つ人間に近寄り、その力を上手く利用する。

 そして一度でも利用した人間はもう抜け出すことはできないようにしていき、そこからまた輪をひろげていくように仕向ける。

 宗教団体は特にそのやり方がうまく、心理学で確立された理論を悪用する方法については最早様々な犯罪者や心理学者が参考にしているほどだ。

 誘導し、視野を狭くさせ、恐怖心を煽り、自分で選択させたと思い込ませ、犯罪さえも正当な手段で許されると教義に組み込む。

 実際に現代では金儲けするために狂信者を作り出す。

 そんな邪悪な宗教団体はいくつも存在している。

 そして、そこまでくれば宗教団体にとって狂信者は人形も同然になる。

 そうすることで合法的な人形が完成し、少し示唆するような言葉を呟けば人形は思い通りに動く。

 しかも、その場合は本人は自主的に動いていると勘違いしているから余計に質が悪い。

 しかし、その人形は合法でもあるから選挙権は勿論持っているし、人権もある。

 結果として、多数の人形を抱えた宗教団体は議会制度を採用している国家の政治家に対してとてつもない権限を発揮できるようになってしまう。

 そして、それを利用して当選した政治家は同様に抜け出せなくなってしまう。

 当然だ。結局は犯罪まがいのズルをしているんだから。

 しかし、それでも世界は回っていて、それも人間の営みだと見て見ぬふりをしていた部分もあった。

 だが、この魔石使用による自白は、その世界さえもぶち壊したのだ。

 つまりはこういうことだ。

 既に牢獄に入っていた犯罪者からの新たな供述により、逮捕できなかった犯罪者を捕まえることに成功。

 そいつにも自白をさせたところ、更に上にいる輩の犯罪履歴が判明。

 またさらに上が捕まる。

 それが芋づる式に繰り返された結果、もう魔石使用を止めることは出来なくなり、今まで容疑者として掲載されていなかった者までが逮捕される。

 その中には政治家・大企業役員・宗教団体も多数いて、それは一国にとどまらず各国にも影響を及ぼしていたのだ。

 無論、そこまでいけば感づいた輩もいて、揉み消しに動き出すが時すでに遅しである。

 自ら司法取引をちらつかせるものもいるが、魔石で自白が可能なのだから効果は薄くなっている。

 結果だけ見れば犯罪者達を一気に逮捕して、犯罪を立証して、法に基づく処罰が出来るのだから傍目から見れば万々歳だ。

 あくまでも傍目から見れば……だ。

 忘れてはいけない。どんな犯罪者であれ、人間である以上消費者でもあるのだ。

 そして犯罪で手に入れた金は、どこかでマネーロンダリングもしているし、何かしらで金も使っている。

 つまりは、犯罪者が手に入れて使用する金を、一部は普通の一般人の収入元にもなっているのだ。

 そうしたらどうなるかは一目瞭然だ。

 犯罪者達がいなくなることで、その収入が無くなれば食っていけなくなる人間も出てきてしまうということだ。

 また、言い方はおかしいのだが犯罪者達の行動とて、内容を考えなければ経済活動となる。

 人口を抑止し、消費活動に貢献し、生産活動も行い、仕事を斡旋する。

 ……昔の漫画でノートに書くだけで相手を殺せるというのがあったそうだが、現実ではそんな単純な話では済まないんだ。

 娯楽として、怒りの矛先の解消として読むなら、面白いのだがな。

 結局は犯罪者であろうとも、経済活動の一環である以上は働いているということになってしまい、そんな犯罪者達でも一気にいなくなってしまえば、業務が滞ってしまうから、そこらじゅうで混乱を招いているということでもあるのだから。

 無論、最終的には犯罪者が減れば、世の中はいい方向に行くはずであると思うからこそ、私も上司も現場の人間も必死に働いている。

 だが、今は様々な部門で明るみに出てきた屑どもを一掃したことで、業務が動かなくなり、その穴埋めでまともな人間が必死に頑張っている。

 ちなみに魔石の研究についても、研究者達は頭を抱えている。

 地球外物質だから納得するしかないが、複数の未知なる元素で魔石は構成されているという結果にたどり着いたのだ。

 つまり魔石を完全に理解するためには、未知の元素を調べるのだから化学式に活用法などから研究が必要なので、数十年単位で研究していく必要性があるとの報告であった。

 理解は出来るが、……本当にマルデリタ嬢との会談は大変だが、癒しになるなあと実感する私であった。




カモのネギには毒がある。
漫画としては面白いですが、人間の良識・法律・感情とか色々考えると、単純に痛い目にあって終わる悪役にもやもやすることが結構あります。

嘘はついてません(誘導はしましたけどね)
ちゃんと書いてますよ(読む気なくすようにしてます+見逃すようにしてます)
言い忘れました(都合の悪い事いう必要ない)
解釈違いですね(言い方変えればいいのさ)
灰色でごまかす方法はいくらでもあるさ(法律にさえ引っかからければどうとでもなるし揉み消す方法も用意してるぜ)

今回はここまで。
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