導入部でもあるし、リナというキャラの人間性考えたら納得できます。
「こ、こんなに未発表のゲームソフトがあるなんて!」
新入社員の人達が目をキラキラさせながら、ゲームソフトの棚を見ている。
……やっぱりゲーム馬鹿ばかりだったなあと思いつつ、その気持ちはとても理解できる。
「今後はお仕事の1つとして、これらをマルデア語にローカライズ。
またテストプレイしてもらうのも仕事の一環になります。
なので、地球言語を勉強してもらう事にもなりますので頑張ってくださいっす」
メソラさんが説明していくのをきちんと受け止めながらも、目は完全にゲームソフトに釘付けだ。
「他にも新作アニメの翻訳とかもあるので、ローカライズメンバーの仕事は重要です。
うちは顧客満足度を特に重要視してるので、そこを重視した仕事に期待しています」
でも、メモをとりながらメソラさんの話は真剣に聞いてくれてるので、これなら仕事への意欲は問題なさそうだ。
「ちなみに質問はあるっすか?」
「はい」
メソラさんが質問時間を設けると、早速1人が手をあげる。
「スウィッツ本体とソフトのパッケージは分かりました。
ただ見た事の無い白くて大きい機器があるんですけど、あれは何なんでしょうか?」
あ~Praystathic5を早速発見してる。
流石ゲーム馬鹿集団。多分直感的に違うゲーム機だと気づいたな。
「あれはスウィッツとは別のゲーム機っす。
将来的には販売予定ですが、現時点では経営戦略として販売は当分先です。
勿論あれも機密情報っすから、社外に漏らしたら厳罰では済まないから気を付けてください」
機密情報に関してはしつこく教えておかないと、漏らしてしまう人は絶対いるっていうからなあ。
「まあ、終業時間後は遊んでいいですから、今はお仕事っすよー」
「分かりました。ありがとうございます」
仕事時間中ということを言って、気持ちを切り替えてもらう。
う~ん、改めて社内案内とか説明してるの見てると、私ってそういう社会人経験をしてないんだなあと実感する。
魔法省に入ってから、すぐに地球親善大使になってガレナさんと起業して、ガレリーナ社副社長となり、ゲームをマルデアに広めていっている。
……普通の社会人経験ってなんだろう?
「リナ、ちょっとここ見てくれる? って眉間に皺よせてどうかしたの?」
少し考え込んだ時にサニアさんから声を掛けられる。
「いえ、新入社員さん達を見てたら、普通の社会人経験って何だろうって思いまして」
「……あ~なるほどね。そういえばあんた魔法省であれだったからねえ」
私の返答にサニアさんが思い出すかのように答えてくれる。
「ここ入社する前にリナの事聞いた時は、変人扱いと思いあがった子供ってやつよ」
「思いあがった子供?」
変人扱いは、まあ野蛮認定してる地球に行くってことだろう。
実際ガレナさんと初めて会った時も、似たようなこと言われたし。
「う~ん、私も初めてリナと会話したのは、あの研究室で試遊してた時だったのは覚えてる?」
「はい、スウィッツに戸惑いながらも遊んでくれたんで嬉しかったです」
思い出す。
あの時サニアさんは最初は楽しそうにやるというより、興味本位だけど長時間遊んでくれていた。
そしてゲーム攻略に詰まったところで、私が少し教えた後はどんどん楽しそうにプレイする姿。
「正直ね。あの時は当時研究中の事で行き詰まってたのよ。
マルデアの権威である魔法省に就職出来て、ある程度の成果は出せてきた。
でも、別にやりたい事だったかと聞かれたら、全然そんなことない。
寧ろ研究そのものが惰性に近かった部分があったわ」
「そうだったんですか?」
「ええ、だからスウィッツに初めて触れた時は、見た事の無いものに触れる事で気分転換したかったってのもあったのよ。
まあそこからは結果だけ言えば、ゲームにはまって転職だけど、やりたい事を仕事にするっていう意味がようやく実感できたのがあるわ」
「会社に突撃してきたときのサニアさんは、凄くエネルギッシュでしたからね。
でもサニアさんがいてくれて助かった事はいっぱいです」
会社ホームページ・宣伝・配信・営業・事務・ローカライズ・司会だとか、他にも雑務もやってもらったりなどだ。
「ありがと。
まあ、それは私だから当然よ。
話戻すと、リナって魔法省に入ったばかりで、いきなり上司達に喧嘩売ったも同然のことしたからよ」
「え?」
「いや当時思い出してみなさいよ。
私はその場にいないから分からないけど、職場のお偉いさん達が集まる場所で意思決定を伝える会議でもあったんでしょう。
そこに入ったばかりの新人が、事情もよく知らないで意思決定に異を唱える。
しかも飛び級で魔法省に就職した15歳の少女。
そこだけ聞いたら世の中完全に舐めてる頭でっかちな青二才になるわよ」
「……」
い、言われてみれば確かにそうなる。
あの時は地球ともしかしたら交流できるかもという気持ちが先走った部分と、悪く言われたことで無意識にお偉いさんたちへ悪い感情を向けてしまったのかもしれない。
「それでも地球親善大使という立場と星間ワープを用意してくれたけど、予算とか人員とか何もなし。
まあ十中八九、当初は星間交流は失敗するに決まってると思われてたでしょうね」
自分の行動なのにサニアさんの意見を客観的に聞いたら、否定できる要素が無い。
いやまあ確かに現在を見れば成功してるからいいじゃんとなるけど、実際自分の行動が勢い任せだったのは事実であった。
「ところが今じゃマルデアで社会現象にもなろうとしてるほどの娯楽として知られる。
う~ん、上司以前に誰も想像できるわけ無いわねえ」
……ちゃ、ちゃんと一度は上司である部長と話し合わないといけない気がしてきた。
もし私が上司の立場だったら、どう話し合えばいいか全然分からないよ。
というより、大概の事を報告しても放置されてる理由ってこういうことなんだろうか?
「サニアさん、私一度上司にきちんと謝罪しないといけない気がしてきました」
「……もしかして、今も上司と上手くいってない?」
「というより、報告と連絡は仕事としてこなしてますが、きちんと話し合った事全然ないです」
「……いきなり上司に連絡する前に、社長に相談したほうがいいわね」
右ひじを左手で支えながら、右手を口元に持っていくサニアさん。
「私はもう魔法省に在籍してないから、今の魔法省の事情分からないもの。
でも社長とリナは魔法省所属だから、社長なら少なくとも私よりは事情が分かるはずよ。
リナ、上司と仲が悪いってのは社会ではよくある事だから気にすることは無いわ。
だけどその関係性が続くのは駄目よ。
感情と仕事は別として考える事は必要だけど、人間である以上切っても切り離せない。
だけど、確実に言えるのは意味も無く敵対したって、損するだけだからね」
サニアさんの言葉に私は納得するしかないのであった。
その後、私はガレナさんに改めて相談することとする。
ガレナさんも、私と上司の関係をそこまで詳しくなかったのと、ガレナさん自身も魔法省での人間関係はそこまで気にしてなかったらしい。
ただ、私の現状を聞く限りは最悪にはなってないと判断してくれる。
少なくともガレナさんも職場に報告に行けば真面目に相手はしてくれるし、ワープなどの手続きだって受け入れてもらっている。
じゃなければ、正確なワープの使用許可が時折でも、使用許可を貰えるわけが無かった筈だからと。
星間移動の出来るワープは貴重とは言わないが、誰でも安易に使用許可が出る機器ではないのだから。
それに報告した内容もきちんと精査されているらしい。
私が上司に渡している報告書類も、マルデアの書式に従って提出しているけどやり直しとかは言われたことは無いんだけどなあ。
とにもかくにも一度私はきちんと部長と話し合うべきなんだと思うのであった。
転生しても社会人経験無かったリナでもあるし、普通に社会人で働いた目線で、どっちが常識的かと言われたら部長側かなあと。
予備知識なしで、お偉いさん達が集まって話してる時の決定事項みたいな案。
それを入社したての本来ならまだ学生である飛び級の社員が反論したら……同僚から見たらドン引きしてもおかしくないと思います。
リナと深く付き合えば魅力を理解できるけど、魔法省側は殆ど関わり無かったですし。