【ヘスティア・ファミリア】の本拠、教会にて。
「と、いうわけでスズネリアはこれから我々の管轄下になる事になりました。どうかお許しを」
「……分かった、とは言いたくないけど分かったよ」
跪き頭を垂れるキリエに、ヘスティアは納得はできないが、頷く。
ルシア・マリーンが率いる【グウィネヴィア・ファミリア】の意向に噛み付けるわけがないからだ。
彼女はスズネリアを見る。
「……スズネリアくん。こんなお別れになるなんて、残念だよ。でも、君の息災をこれからも祈っている。これは僕の切なる願いだ」
「ヘスティア様……すまねえ」
ヘスティアの言葉がしみて、スズネリアは噛み締める。
そして、彼は荷物を纏め……とある男を睨む。
「で、テメェがベル達にモンスター押し付けたっつー奴か?」
「……そうだ。俺の指示でやった」
スズネリアは、桜花と睨み合う。
こうして向き合って、改めて気に食わない。
スズネリアにはわかる。
この男はまるで反省していない。
それどころか悪びれる様子もない。
ヘスティアに対する謝罪もない。
「おい。なんか言うことあんだろ、ゴラッ」
「……ないな。俺は今でもあの判断が間違いだとは思っていない。 責めるならいくらでも糾弾すれば―――
「そうじゃねえだろうがッッッ!!!!」
『……っ!!』
スズネリアが椅子を蹴り飛ばす。
彼の怒りは頂点だ。
彼は、道徳を問う。
「謝罪ってのはぁ!テメェのためにするんじゃねえよ!テメェのお気持ちはどうでもいい!どう思ってようが、相手を想い、誠意を見せる!それが礼儀だろうが!!」
スズネリアは吠えた。
そして、【タケミカヅチ・ファミリア】を見渡し、睨む。
「こいつの態度を良しとして諦めて放任してるテメェらも同罪だ!テメェらは自分の行いが、テメェらの信仰する神様の品格に関わることを自覚して無さすぎるんだよ」
『……!!』
命も、桜花も目を見開く。
スズネリアの言葉は癖のある彼らを納得させるに至る論調だった。
誰もが正しいと思う。
思わせる、彼の倫理観と価値観はここにいる慈愛を誇る女神の産物だ。
「……スズネリアくん。その辺にしないか。もう彼らには充分伝わってるよ」
「了解。ヘスティア様に感謝しな、テメェら。ベル達に会ったらちゃんと謝れよ」
スズネリアは彼らに睨む。
そして。
「じゃあヘスティア様、俺行くわ」
「スズネリア君……」
「あと【
「いいのかい?あれは【グウィネヴィア・ファミリア】の所有物だろ?」
「ちゃんと許可は取ってるから安心してくれ。ルシアがいいってさ。じゃあな」
「あっ。スズネリア君……!」
そう言って、ヘスティアの呼び掛けにも止まらずスズネリアは教会から出ていった。
消えた彼の背中が見えなくなるまで、【タケミカヅチ・ファミリア】は見つめる。
「……何者なんだ、奴は」
「僕の大切な
「め、滅相もございません。糾弾されて当然です……」
命は俯いた。
暗くなった場を、ヘルメスが手を叩いて切り替えさせる。
「さて!それじゃあ改めてキリエくんも加わったということで編成部隊を組むが……君は俺達2人の神をアスフィと共に守り切れるということでいいのかな?」
「
「おやおや。それは頼もしい」
ヘルメスが帽子の奥から覗く。
キリエもその視線には気付いている。
キリエはLv.3。
アスフィはLv.4。
正直、もう1人欲しいところだが……まあいいだろう。
「よし!じゃあ出発だ!」
「うん!」
ヘルメスの号令にヘスティアが頷き、救援部隊が教会を出る。
すると。
「……」
「おや、君のお仲間かな?」
「……!」
教会を出てすぐ、銀腕を有する覆面の冒険者が待っていた。
彼女は剣を腰に、完全武装だ。
ローブとマスクで銀髪以外の容姿はよくわからないが、そのマントには【グウィネヴィア・ファミリア】の紋章がある。
それでヘルメスはキリエの仲間だと判断し、彼女に目配せする。
当のキリエも目を丸くしていた。
「驚いたな。君も来てくれるのかい?」
「……はい」
アイラが静かに頷く。
彼女はLv.4だ。
実力は申し分ない。
「なぜ来てくれたのかな?」
「……スズネリアの仲間を助けてあげたい。困ってる人の力になりたい。それが私の正義だから」
「……なるほど」
キリエは目の下をピクリと動かし、今の言動で彼女を訝しむ。
その言葉からは懐かしさを感じた。
もう彼女が大体誰なのかわかった。
だが、それを敢えて口にはしない。
「神ヘルメス。彼女も同行してもいいかな?実力なら私より上だ」
「そりゃ願ったり叶ったりだ。寧ろこちらが頼みたい」
「……なら、決まり」
アイラが呟き、キリエと共に頷き合う。
こうして救援部隊に騎士が2人、加わる。
この先に待ち受けるは黒いゴライアス。
迷宮の異変だ。