原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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ヘスティアの眷属、スズネリア・モルドレッド

 

「それじゃぁ、スズ坊の帰還を祝って……!」

『カンパーイ!』

 

酒屋で盛り上がるベル一行。

帰ってきたスズネリアを加えて、どんちゃん騒ぎだ。

 

「ったく。俺様が帰ってきたくれーで、んな騒ぐなよ」

「騒ぐよ!だって、スズは僕の唯一の家族なんだから」

「ベル……」

「だから、僕スズが帰ってきて……凄く、嬉しい……っ」

「どぅええ!?なにも泣くことねえだろ!わかったわかった!泣くなよ~!」

 

泣き始めるベルに慌てて、その背中を叩くスズ。

彼もまたグイッと飲む。

 

「しかし、スズ坊。何もこれは大袈裟じゃないぞ?お前を取り戻すのにどれだけ苦労したことか……」

「そうですよ!リリはスズネリア様がいなくなって……いなくなってぇ……!」

「うおっ!?リリルカまで泣くのかよ!今日なんか全員涙脆くねえか?」

 

スズネリアは泣き喚いて抱きついてくるリリルカを一度は仰け反り避けるも、なんだか嬉しくなって穏やかな表情になり、腰に抱きつく彼女を受け入れる。

そして、彼が飯に手を伸ばすと……向かいの女ヒューマンと目が合った。

 

「おっ。そういや、ベルのパーティに加わったんだっけか。確かパス・パレードの時の……やべ、なんだっけ」

「じ、自分としたことが!名乗り遅れました!名はヤマト・命。生まれは極東。特技は素潜り。趣味は―――」

「長ぇ長ぇ!見合いか!あと地べたに正座すんな!!目立つだろ!」

 

スズネリアの近くまで飛んできて土下座しそうな勢いの低い姿勢で語り始める命。

それを慌てて止めるスズネリア。

また癖が強いのが寄ってきたなと苦笑いする。

 

「それでスズはこれからどうするの?」

「おっ。確かに。基本はキリエとダンジョン潜るのか?」

「んにゃ。お前らと一緒にいるよ。キリエもたまに来るってさ」

「マジか。Lv.3だろ?あいつ」

「思わぬ強力な味方をゲットしましたね!」

「おいおい、俺が戻ってくるより喜ぶなよ……」

 

微妙な顔をするスズネリア。

まあ、仕方ない。

Lv.3がパーティに加わるとダンジョン攻略も一気に進む。

ベルもLv.3だし、これで2人のLv.3がパーティに存在することになる。

中層への挑戦権も得たと言っていいだろう。

 

「なーにがLv.3だよ」

「あ?」

「ひっ……!」

 

スズネリアの背後で小人族(パルゥム)が煽り、スズネリアが睨むと萎縮した。

だったら最初から言うなよ……と思うスズネリア。

しかし、彼はなぜか萎縮したあとも続けようとする。

 

「ハ、ハッ。モンスターから逃げまくってランクアップ!なんてオイラなら恥ずかしくて本拠から出られねえよ~!」

「やれやれ。気にするなよ、ベル」

「無視してください。ベル様」

「うん……」

 

頷くベル。

彼らの卓の周辺を小人族は歩き回る。

 

「しかも仲間は寄せ集め!他派閥ばっか!ま、インチキルーキーにはお似合いか~」

「……」

「まあ仕方ないか。インチキルーキーの派閥は最下層。なんたって主神は威厳も尊厳もまるでない。あるのは胸だけの落ちこぼれ女神が率いてるんだからなぁ!!」

「~~~~っ!!取り消―――」

 

「くだらねえっ!!」

 

『……!?』

 

ベルが立ち上がる前にスズネリアがドン!!とジョッキを置いて叫んだ。

ベル達も目を丸くして彼を見る。

 

「ハッ!どんな悪口言ったって、ヘスティア様には響かねえ!!あの方の懐の広さと慈愛の精神は尋常じゃねえ。そんなことも知らねえなんて、人生の八割は損してるぜ!!」

『……!!』

 

誰にでも聞こえるように大声で叫ぶスズネリア。

言い切ったあと、ベルに笑みを向ける。

ベルも目を見開いた。

 

「そうですね。リリもスズネリア様の言う通りだと思います。ヘスティア様の優しさに触れたことがないなんて寧ろ可哀想です」

「だな」

「自分も完全同意です!あの慈悲は天下一品です!」

 

深く頷く仲間の同意にスズネリアは口角を上げる。

 

「な、なんだよ。もう既に懐柔済みか?あのでかい胸に毎日奉仕でもされて―――」

「……」

「ひっ……!」

 

小人族が顔を真っ青にして尻もちをつく。

スズネリアの無言の眼光は凄まじいおぞましさだった。

彼にとって、性的罵倒は最も許せぬこと。

それも敬愛する女神を巻き込んで、となると怒りは頂点だ。

だが、爆発はさせない。

それがヘスティアの品格を保つことだと知ってるから。

 

「ヘスティア様を知らねえからそんなこと言えんだ。あの方の優しさに触れてねえなんて、もはや哀れで仕方ねえ」

「スズ……」

「気にすんな、ベル。ヘスティアがここにいてもそう言うぜ」

「うん!」

 

スズネリアの言葉は気持ちよかった。

ベルも一点の曇りもなく頷ける。

これが、ヘスティアの最初の眷属。

ヘスティア×スズネリアの真骨頂!!

 

「よく見りゃ奥に団長さんもいるじゃねえか。コソコソと伺って、格が知れるぜ。テメェの格も、主神の格もな!」

「貴様……!」

 

隠れていたヒュアキントスを見つけて煽り返すスズネリア。

彼は眉間に皺を寄せて立ち上がった。

スズネリアは【アポロン・ファミリア】の紋章を一瞥して、彼らの相手をしない。

 

「ハッ。かかってくるなら来な。抵抗しねえ。けど、そん時はテメェらが加害者確定だぜ!」

「くっ……!」

 

舌を出して言い捨てるスズネリアに、ヒュアキントスは下唇を噛んで足を止める。

ここで手を出せば主神であるアポロンの命令と真逆の行いをとったことになる。

しかも【アポロン・ファミリア】が不利になる。

彼にとってそんなことは絶対に許されない。

手を出せない彼を見て、スズネリアは先導して皆を呼ぶ。

 

「さぁ、帰るぜ。皆。俺達の最高に尊敬できる神、ヘスティア様が待ってるぜ!」

『おー!』

「くっ……!おのれ、覚えてお―――」

 

ヒュアキントスが気持ちよく帰らせまいと捨て台詞をはこうとしたがその前にスズネリアが扉を閉めた。

キリエが言ってた。

相手の話は最後まで聞かなくていい時があると。

そして、彼らは帰路につく。

先頭を歩くスズネリアは、気分が悪くなったであろう仲間を鼓舞する。

 

「何がどう言おうと気にすることはねえ!俺達ぁ帰りゃヘスティア様の笑顔が待ってる。あいつらにはねえ。この差はデカイぜ!」

「うん!」

「だな」

「ですね!」

「完全同意です!」

 

全員が笑顔になる。

これがスズネリア・モルドレッド。

恐ろしい精神性の持ち主。

ヘスティアの男だ。

 

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