原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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神の宴 スズネリア同伴ver.

 

「うおおおお!生き返った!ピンピンしてるぜ~!よく回復できたな。サンキューな、ヘスティア様!」

「えっ?あぁ、うん……」

 

【ヘスティア・ファミリア】の本拠で声を張上げるスズネリア。

ヘスティアは感謝されるも微妙な顔をして目を逸らした。

彼を助けたのはルシアだとなんとなく言わなような方がいい気がしたから。

ともあれスズネリアは完全回復してはしゃぎまくっている。

そんな彼をヘスティアは呆れたように見あげる。

 

「まったく。ベル君の為に戦ってくれるのは嬉しいけど無茶しないでくれよ?君を失ったら元も子もないよ」

「へへっ。ヘスティア様はやっぱり最高だぜ。安心してくれ。その愛情ビシバシ伝わってるぜ!!」

「本当かい?最近の君を見てると疑わしいよ。僕は君がグウィネヴィアに連れて行かれた時だって本当は嫌だったんだからね」

「おうよ。わかってら。ごめんな、ヘスティア様」

「別に謝らなくてもいいけど……とにかく無茶はもう禁物だ。君が使った僕由来の技(ウェスタ)もなるべく使用は控えてくれ」

「ほーん。力を使うと逆にそういうこともあんのか。了解。わかったぜ」

 

スズネリアはサムズアップして応える。

そこへベルが帰ってきた。

 

「ただいま。あれ?スズ?どうかしたの?」

「んにゃ、何でもねえよ。それよりなんだよその手に持ってる手紙は」

「えっ?あぁ……これは、【アポロン・ファミリア】の人に渡されて……」

 

そう言ってベルが差し出した手紙をヘスティアが目を通す。

眷属のふたりはそれを覗き込んだ。

 

「げっ。このタイミングでアポロンから神の宴の誘い……さすがに断るわけにはいかないよなぁ」

「連中も懲りねえなぁ。まだベルを狙ってんのか?」

「分からないけど……まあアポロンは執念深いからね。それに眷属を1人連れて来いなんて……」

「ふーん」

 

ヘスティアが悩む中、スズネリアは手紙を貸してもらって照明に掲げて見る。

神聖文字(ヒエログリフ)で書かれていて全く読めないのでなんとなく香りを嗅いでみたが、ゲェッとキツイ香水の匂いに鼻をつまんで顔を顰めた。

とにかく、神の宴の誘いを厄介な相手から受けて断りづらい状況。

しかも眷属を連れていかなくては行けないという。

 

「これでベルを連れて行ったら思う壷だぜ」

「じゃあ君が一緒に付いてくるつもりかい?スズネリア君」

「んだよ。ご不満か?俺は男して見れねえの?好きじゃねえの?」

「い、いや、そんなことはないよ。とても嬉しい。けど、君は仮所属だし。どちらかと言うとグウィネヴィアの……」

「あーあーあー!いいんだよ、んなことは。俺の主神はヘスティア様だぜ。それに俺が敬う神は1人だ」

「スズネリア君……わかった、宴には君を連れていく。頼むよ」

「おうさ。バッチリ決めて、ヘスティア様に絶対恥かかせねえぜ」

 

サムズアップするスズネリア。

数時間後、彼は城の門を叩く。

笑顔で。

 

「ってな訳で!なんか高級な整髪店とか礼服の老舗とか連れてってくれよ!」

「……君は独立すると言った割に実家へ帰省くらいの頻度で我々を頼りますね」

 

迎えたルシアは彼を見た時2度見した。

あまりにフッ軽すぎる。

 

「細けぇこと言うなよ~!俺ぁ皆と仲違いした気はねえしさ!」

「はぁ。まあいいでしょう。準備します。とっておきを揃えますので最高の男として全て堕してきなさい」

「おうよ!」

「スズネリアに妙なノリはやめないか……。彼は真に受けるよ」

 

同伴したキリエが制止する。

ルシアが悪ノリして彼に要らぬことを刷り込むともはや止まらない。

とはいえルシアは元々ギャグ担当なのだが、彼女は知る由もない。

 

「よっしゃ!完璧だぜ!」

 

当日。

スズネリアは、スーツに髪もかきあげ完璧に身だしなみを整えた。

そんな彼と主神ヘスティアが馬車に乗る。

 

「ヘスティア様麗しいぜ~!神の宴の為に仕立てたんだ!いつもと違って可愛いぜ!」

「君はサラッと言うねぇ。どこで習ったのかは……なんとなく予想がつくけど」

 

スズネリアは素直に女性を褒める。

出処はもう確実にあの紳士女子アマゾネスだろう。

しかし、最初は狼狽えたもののヘスティアはもう慣れた。

彼のは本心ではあるが社交辞令というか、恋愛感情から出てる言葉では無いと知っているから、ヘスティアも真に受けないようにしている。

結局根底に想い人以外の感情はある程度シャットアウトしているから恥ずかしげもなく言えるのだろう。

ある意味興味が薄いというか、薄情というか、想い人以外に興味がないというか。

まあ悪く言えばいくらでも言えるだろうが、言う必要は無い。

 

「おっ。ここが会場か」

「豪華だねぇ」

 

2人は馬車を降りて、ミアハとナァーザの礼も受け、会場へと入る。

そこで。

 

「げっ。母上」

「何。その反応」

「いや……なんか気まづいっつーか」

 

ドレス姿のリョーカ・アーサが会場にいた。

同じく綺麗な黄色に包まれたグウィネヴィアが同伴している。

だが、彼女は淡白に高貴な振る舞いと食事をしているだけで、何も立ち回ってない無能。

基本ボーッと突っ立ってるだけで周りにどんな駆け引きが行われているのか全く見ていなかった。

スズネリアは、リョーカと対峙する。

そして、その麗しい姿を下から上までジロジロと見てしまった。

 

「は、母上……その……!」

「ん?」

「いや、えっと……」

「スズネリア君。肝心の相手にそれじゃダメじゃないか」

「そ、そうは言ってもよ」

 

肝心のリョーカのことは褒められないスズネリア。

隣のヘスティアにすら小突かれて後頭部をかく。

せっかく整えた髪も台無しだ。

けど、今はそれどころじゃない。

ヘスティアにも押され、母親と向き合う。

 

「そ、その……母上、綺麗だな。今日」

「ふふっ。ありがとう。よく出来ました」

「……っ」

 

撫でられるスズネリア。

ヘスティアは「あぁ、こりゃダメだ」と哀れな目で彼を見る。

完全に女性慣れしてない息子を教育する母親(ママ)だった。

恋愛感情から最も遠い。

その標的から完全に外されている。

実際、彼は女性慣れしてることにリョーカは気づいてもないのだろう。

なんでも知ってる気でいて、何も知らない。

そんなものだ、母親は。

 

「ご、豪華な飯があるぜ。母上も食うか?」

「もう食べた」

「そっか。悪ぃ」

 

上手くいかないスズネリア。

彼は動転している。

リョーカへの対応の失敗を引きずり、しかもずっと目の前に綺麗なドレスに身を包んだ想い人がいる。

視点も定まらない。

どこを見ていいのかわからない。

彼は、とにかく場を繋ごうと口を回す。

 

「そういやなんでグウィネヴィアは母上連れてきたんだ?」

「一応私が団長って扱いだから……。それに、イブキと私を置いてルシアは本拠を離れられないし」

「あ、あぁ……そっか」

 

聞くんじゃなかったと後悔した。

彼はまた気まづくなる。

その様子を見て、今度はリョーカから口を開く。

 

「スズネリアは、私を救ってルシアも止めるって言ったよね」

「えっ?あぁ、うん」

「私は正直無理だと思う」

「……っ!母上、でも……!」

「うん。スズネリアがそうしたいならすればいいと思う。けど、私のやることも変わらない。誰にも期待しない。私はルシアを討つ」

「母上……」

 

リョーカを見るスズネリア。

彼は視線を下に向けて……それでも力強く顔を上げて彼女を見る。

 

「母上、それでも俺はルシアを倒そうとする母上を止める。そんで母上の友達を苦しめるルシアも止める。そこは譲らねえ」

「うん。出来るならそうして。私も、スズネリアも好きに動けばいいと思う。遠慮することはない」

「あぁ。自分が求めるもんは自分で掴む。だよな、母上」

「うん」

 

リョーカは頷く。

彼女も前とは違う。

スズネリアをある意味授かりものだと、出会えたことは運命だと思っている。

そして、彼が齎されたことで提示された新たな運命の道筋(ルート)

それが実現されたら素敵だと思うし、止めようとも思わない。

けれど、それはそれとして自分も他者に期待せず動く。

今はこれがベストだと感じた。

 

「でも、あんまり戦いのこと考えたりずっと神経質なのは慣れてない。今日はイブキにも全部忘れて楽しんでこいって言われた」

「そっか。そうだな」

 

外に出て夜風に当たるリョーカに、スズネリアは笑顔で頷いた。

そして、彼はそんな彼女の横顔に見惚れる。

 

「なぁ、母上。踊らねえか?一緒に。ほ、ほら。折角だしよ」

「……それ、母親でいいの?ペア余った?友達いる?」

「いや、そういう心配要らねえから!本気で不安げな顔すんのやめろ!」

「ごめん。友達少ないのかと思って。それに、お母さんと一緒にこういう場で踊るの恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくねえし。折角一緒に来てんだ。誰にどう思われようが、思い出作る方が大事だろ」

 

スズネリアの言葉と差し伸べる手に、リョーカは目を丸くする。

 

「……そっか。大人になったね。もう狼だ。女の子食べちゃった?」

「いや、急な下はキツイぜ。母上……」

「あ、ごめん」

 

ゲンナリするスズネリアに、ちょっとやらかしたなと目を逸らすリョーカ。

けれど、2人は笑って手を取り合った。

そして、2人で踊る。

リョーカを独占するスズネリアに対する視線は様々だ。

名高く強い麗しのリョーカの手を取れず、悔しがる男。

恐ろしく不気味な【グウィネヴィア・ファミリア】の【騎士王】に恐れをなし、萎縮する者。

そんな視線に晒されて、2人は踊り終える。

ちょうどその時。

 

「諸君、楽しんでいるかね!」

『……!』

 

主催のアポロンが現れた。

そして、彼は一直線にスズネリアの元へ向かってくる。

その間をヘスティアが割って入る。

 

「僕の眷属に何か用かい?アポロン」

「あぁ。この前は私の眷属が君の眷属に随分世話になったみたいでね」

「あ、あぁ。僕の方こそ……」

 

ヘスティアの返しにアポロンはニヤッと口角を上げる。

そして、派手な照明の演出が彼の背後にいるヒュアキントスを照らした。

彼は車椅子に全身包帯巻きでその奥から鋭い眼光だけ飛ばしている。

 

「見たまえ!君の眷属のおかげで私が最も愛する眷属、団長のヒュアキントスはこんな有様だ!」

「スズネリア君!ホントに君がここまでコテンパンにやったのか!?」

「あぁ、うん。やった」

「やったんかい!!でも勝ったんだね!?よくやった!!」

 

『よくやったはダメだろ!』

『本音が漏れているぞ、ヘスティア』

 

タケミカヅチとミアハにツッコミを受けるヘスティア。

けれど、彼女は「ダメじゃないか」と口ではスズネリアを諭しながらガッツポーズは下ろさない。

 

「この屈辱、断じて許さんぞ……!」

「おう。まあ許しを乞うた覚えねえからな。勝手に恨んどけ」

「ぐっ……!」

「強い……」

「強いな」

 

因縁をかけられたスズネリアの返しに感心するタケミカヅチとミアハ。

相手の反応を受けて、アポロンとヒュアキントスはさらに煮えたぎる。

 

「ええいっ!これほどの蛮行の後になんという横暴!ならば仕方ない、【アポロン・ファミリア】は君に戦争遊戯(ウォーゲーム)を申し―――」

「邪魔するぞ」

「は?」

 

突如、会場にヴィヴィアンが入ってきた。

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