突如、会場に現れたヴィヴィアン。
呼ばれてもない彼女が眷属の忍者を連れていつもの格好でド真ん中を横断する。
「おい、アポロンじゃねえか。相変わらずキショい面してやがる」
「ヴィ、ヴィヴィアン。何しに来た!?私は今、大事な話の真っ最中なのだ。ヘスティアに
「別にテメェに用はねえよ。……あ?
顔を顰めるヴィヴィアン。
隣の忍者が耳打ちする。
「
「は?知ってっし。……ほら、あれだろ?派閥同士の争いだろ?字面的に。よし、アポロン。表出ろ。私が殴り勝ったらお前は黙ってろよ」
「いや、
「……早く言えよ。じゃあウチはアルキュオラ1人を出す。ルールはなんでもいい。私が勝ったら黙れ」
「団長殿1人でも過剰戦力では……?」
ヴィヴィアンの発言に、御門のツッコミが追尾してくる。
アポロンもヴィヴィアンに目をつけられたとなっては萎縮してしまう。
「か、勘弁してくれぇ!ヴィヴィアン、お前と
「あ?んだよ、腰抜けが。だったら最初から黙ってろ」
ヴィヴィアンがガンつけてアポロンの前から立ち去る。
その足はそのままグウィネヴィアに向かう。
「あら。ワタクシに用ですの?」
「おう。ワタクシに用だ。神を食ったモンスターが新たに現れた。名はアンタレス」
「……!黒竜以外にも……!」
「そうだ。だから、リョーカとルシアを貸せ。奴を生け捕りにして研究する。黒竜のクソを討伐するためにな」
衝撃的な会話を交わす2人。
周囲は瞠目するが、お構い無し。
ヴィヴィアンはグウィネヴィアを連れて踵を返し始める。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!神を食ったモンスターだって!?」
「あ?誰だ、お前。神か?」
「えぇ!?なんで僕のこと忘れてるんだい!ヘスティアだよ!ヘスティア!」
「ヘス……?いや、マジで誰だ。こんな奴いたか?」
「まあ……」
「ムキー!ヴィヴィアン!なんて失礼な奴なんだ、君は!」
「いや、悪ぃ。マジで思い出せねえ」
怒るヘスティアに困惑するヴィヴィアン。
どうやら本気で認知していないらしい。
「まあいい。とにかくどいつもこいつも口出しするな。神を食ったモンスターに
「またそれかいな!」
「またそれだ。前にも言ったろ、ロキ」
「じゃあ今度のそのアンタレスというモンスターも貴女達が独占するのかしら?」
「そうだ、フレイヤ。それと、アポロン。テメェは私に口答えしたリストにぶち込んだからな。次、テメェがめんどくせぇ動きしたら沈めんぞ?」
「ひぃ……!?」
ロキとフレイヤの問いに答えて、最後にアポロンを壁に追い込み、足を壁にかけて脅していく。
そんなムーヴをして、嵐のように彼女は去っていった。
「な、なんだったんだ……」
置いてかれて困惑するヘスティア。
彼女だけではない。
会場はざわつき、混乱に包まれていた。
ただ1人。
スズネリアは、ヴィヴィアン達が去った方向を見つめる。
「母上が、連れていかれちまった……」
「スズネリア……」
「ミアハ様」
また戦いに駆り出される想い人に歯がゆい思いをするスズネリア。
そんな彼の肩をミアハが叩く。
振り返ると、ナァーザが寄り添ってくれる。
「恩恵が通じない相手。今回は……」
「わーってるよ。付いていってもできることはねえ」
「スズネリア……」
俯くスズネリアに、ナァーザは何かしてあげたいと思う。
「スズネリア。今度お祭りがある。神月祭。気晴らしに行ってみる?」
「……この都市、年から年中祭事ねえか?大丈夫か?」
「さぁ?」
言われてみれば確かにと思いながらナァーザが首をかしげる。
スズネリアは前年の女神祭にも参加している。
四半期に1回くらい祭りやってるなと感じても仕方ない。
「とにかく、行こ?」
「お、おう……わかった」
スズネリアは渋々頷いた。
そこにアポロンがやってくる。
「待て待て!有耶無耶にはさせんぞ!ヘスティア、君に
「そなたが待たんか。それではあまりにヘスティアが不利すぎる。何かヘスティアにもハンデをやらないか」
「ならぬ!」
「あら、怖いの?アポロン」
「……っ!フレイヤ……」
通りがかりのフレイヤに尋ねられるアポロン。
彼は顔を真っ赤にして……プライドを優先する。
「よかろう!ならば、助っ人は1人!そして、都市の外から連れてくること!これ以上は譲歩できんぞ!」
「せこい……」
「せこいな……」
宣言するアポロンにミアハとタケミカヅチが微妙な顔をする。
話を聞いていたスズネリアは思いつく。
「お、じゃあ【グウィネヴィア・ファミリア】から誰か借りよーぜ、ヘスティア様。市壁の外に城構えてるし、あれも都市の外みてぇなもんだろ」
「おぉ!その手があったか!そうしよう是非そうしよう!」
「なっ……!?」
アポロンが愕然とする。
彼は自身が掘った墓穴に顔面蒼白になる。
スズネリアの発案にミアハとタケミカヅチはさらに微妙な顔をした。
「こちらはもっとせこいな。まさかせこさでアポロンに勝るとは」
「恐るべしスズネリア……」
神すら恐れる豪快さ、スズネリアに感服すら覚える。
ぐぬぬ……と震えるアポロンに彼は言い放つ。
「【ヘスティア・ファミリア】は【アポロン・ファミリア】の
『うおー!』
『待ってました!』
「ま、待ってくれぇ……!」
神々を焚き付け、後に引けない状況を作るスズネリア。
逆にアポロンが神々を宥めようと制止する始末。
フレイヤもアポロンを笑う。
彼の結末はもうお察しだ。
「ほんじゃ、決行もルールもそっちで決めてくれ」
「ま、まてぇ……!」
無論、待たない。
スズネリアはヘスティアと手を繋ぎ、二カッと笑みを浮かべる。
「帰ろうぜ、ヘスティア様」
「お、おうさ。頼もしくなったね、スズネリア君」
「そうか?それより誰呼ぼっかな~。ルシアとかにしとくか?」
「アポロンが可哀想になってきたよ、もう……」
ヘスティアの脳裏に浮かぶ獄炎の竜人。
あれを相手にしたら【アポロン・ファミリア】など一瞬でねじ伏せられるだろう。
もはや敵であるアポロンに同情さえしてしまう。
そして、数日後。
案の定。
「ルールは攻城戦。敵を討ち滅ぼし、城を取り、大将首を落とせばいいんでしたっけ?」
「こ、降参だ……降参するぅ。だ、だから、助けてくれぇ……」
「わかりました」
当日を迎えた
ルシアが1人で【アポロン・ファミリア】の城を墜とした。
崩壊した城の天守閣で、カリバーンを手に足ドンするルシアを前に。
ヒュアキントスは両手を上げ、【ヘスティア・ファミリア】の勝利となる。
降参を受けて、ルシアは足を下ろした。
勝利した報酬に、【アポロン・ファミリア】の本拠を貰い、リリルカ・ヴェルフ・命が【ヘスティア・ファミリア】に加わった。
【ソーマ・ファミリア】との問題もリリルカが解決したのだった。