原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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ヴィヴィアンFVSアンタレス

 

―――数日前。

 

 

「……餌に釣られて、めんどくせぇ仕事受けちまったぜ」

 

片腕を抑え、頭から血を流すヴィヴィアン。

その目の前には煩く泣き叫ぶ(タランチュラ)

神を食った古代のモンスター―――【アンタレス】。

 

「どうするでごじゃるか~?恩恵(ファルナ)が効かないんじゃ、拙者たち手詰まりでごじゃる~」

「うるせえ。黙れ。殺すぞ」

「理不尽でごじゃる!?」

 

時代錯誤な上司からの言葉に近くに降り立った御門が二度見する。

実際、彼女の言うとおり手詰まりだ。

ヴィヴィアンが駆けつけた頃にはアンタレスは女神アルテミスを食した後だった。

その後、ヘルメス経由でたまたま近くにいた【ヴィヴィアン・ファミリア】に【アルテミス・ファミリア】救援依頼がきた。

故に、【アルテミス・ファミリア】の団員はヴィヴィアンが保護して無事だ。

犠牲になったのはアルテミスのみ。

まあ彼女達を助ける義理など本来ならないが、神を食ったモンスターという餌をヘルメスにぶら下げられては返事はもう決まったようなものだ。

 

「チッ。生け捕りにする予定だったが、討伐すらアルキュオラでも無理だな。こいつはリョーカがいるぜ」

「アルテミス様……!」

「おい!ちゃんとアルテミスの眷属(ガキ)は抑えとけって言ったろうが!!」

「す、すみません!!」

 

【アルテミス・ファミリア】の団員は主神を助けるために前線に出たがる。

しかし、今回受けた依頼のメインはどちらかというと彼女達の生存。

ヴィヴィアンにとっちゃどうでもいいが仕事は仕事と切り分ける質だ。

請け負ったからには、主神を思って好きに犬死してもいいなんてゴーサインは出せない。

彼女たちは必ず生きてこの地から脱出させる。

これはヴィヴィアンの仕事の流儀(プライド)だ。

 

「それはそうとして……テメェにも興味があるぜ。こっちはよぉ」

 

『―――――――――っ!!』

 

見あげるヴィヴィアンにアンタレスが泣き叫ぶ。

彼女の視界にはあの無敵の要塞に挑む自身の眷属が複数映る。

斬りかかるはアイシャ。

殴りかかるはアルガナ、ヴァーチェ。

たまに御門が攻撃を加えて、受けるは―――無敗のアルキュオラだ。

 

『――――――っ!』

「いつにも増して気合入ってるモンスターだべ。暗黒期に相手した奴らとも遜色ないだな!」

「感心してる場合でごじゃるか!?ていうかそんな余裕あるでごじゃるか!?やっぱり団長殿は化け物でごじゃるか!?」

 

アルキュオラと同時に近いところで着地した御門が二度見する。

アンタレスの攻撃を全員に代わって受け続けるアルキュオラ。

防御力もさることながら、吹き飛ばされても復帰が異常に早い。

まるでダメージが通ってないように見える。

実際はただの忍耐力だけで耐えている化け物だが。

 

「ていうかこの戦いに意味はあるのかい!奴にはまるで攻撃が通っていないじゃないか!」

「こいつ、硬すぎる……!」

 

戻ってきたアイシャとアルガナが表情を苦しくする。

その様子を見て、ヴィヴィアンは限界か、と瞼を閉じた。

 

「……そうだな。出来りゃ捕獲したいがグウィネヴィア待ちだな。こりゃ。それに奴を倒すにはもはやアルテミスの矢を使うしかねえ」

「矢、でごじゃるか?あぁ、神創兵器でごじゃったか」

「あぁ、ヘルメスが言ってたヤツだ。アルテミスが最後の抵抗で遺してるはずだが……そいつが行方不明だ。まあヘルメスが持っていったんだろうがな」

「えっ。じゃあ……」

「私達に奴を討つ手はねえ。捕獲するにしても、こいつがアルテミスの神の力(アルカナム)使うこと考えたら捕獲したあと猶予はあんまねえしな」

「えぇ~!?じゃあ無駄骨でごじゃるかぁ!?拙者、タダ働きは嫌でごじゃる!」

「それでも忍者か、テメェは」

「アイタァ!?」

 

御門を小突いて状況を見渡すヴィヴィアン。

ここで撤退を選択するにしても、アンタレスが大人しく増援を待ってくれるわけじゃない。

誰かが時間稼ぎをしなくてはいけないが、ヘルメスは矢の使い手を探すのに忙しくて、リョーカ達を連れて来れないだろう。

結局、ヴィヴィアンはここを離れなくてはいけない。

 

「チッ。めんどくせぇ……」

 

ヴィヴィアンは頭を掻きむしり、考える。

誰かを残すにしても誰を残す?

アンタレスとある程度やり合えてるのはアマゾネス軍団4人と御門だけ。

そいつらを全員残して帰ってきた時に全員死んでたら?

大損失だ。

 

「ヴィヴィアン様。オラが残るだべ」

「アルキュオラ……」

 

ヴィヴィアンの隣に来た彼女を見上げる。

アルキュオラは清々しいほど爽やかな笑みを向けてきた。

ヴィヴィアンは……瞼をゆっくりと閉じる。

 

「……そうか。死ぬんじゃねえぞ」

「ちょっと気合い入れねえとだなぁ。でも、オラの頑丈さはヴィヴィアン様が1番知ってるべ」

「だとしてもだ。ヤバくなったら逃げろ。いいな?」

「……逃げたらアンタレスは神の力(アルカナム)を暴走させたり蓄積させたりするべ」

「それでもだ。世界の危機よりテメェの命の方が私にとっては価値が高い。わかったな?」

「……んだ!」

 

アルキュオラは元気に頷いた。

嘘だな、と思いながらもヴィヴィアンは彼女に背を向けて歩き出す。

 

「テメェら!!ズラかるぞ!!アルキュオラを残して撤退だ!!」

『……!?』

「時間はアルキュオラが稼ぐ!その間に増援を呼ぶ!わかったらイエスかハイで返せ!!」

『はい!!』

 

ここでは即座な判断が求められる。

全員が頷き、撤退の準備をした。

アルキュオラだけが1人、仲間が置いていった武器が地面に突き刺さるその背景を背に、アンタレスへとゆっくり歩いて向かっていく。

 

「……オラが相手だべ」

 

『――――――!』

 

対峙するアンタレスとアルキュオラ。

アルキュオラは1歩1歩奴に近づいていく。

その途中、副団長の男を通過した。

カウボーイみたいな格好で電子的な機器を身につけるよくわからない格好(ファッション)の男だ。

 

「ユー。命のかけどころ、間違ってやいないかい?暗黒を乗り越えた先、ユーの予後が短くとも、ここは最期じゃないぜ」

「んだ。ありたっけの魔道具(マジック・アイテム)置いてってくれるだろ?ならオラは死なねえべ」

「……ミーの魔道具(マジック・アイテム)は生産が早いだけで質は粗悪品だぜ?ユーの命を繋ぐには足りない」

「自分を卑下するんじゃねえべ。毎日感謝して使ってるだ。……あとは任せるべ」

「任されないぜ、ベイベー。これは死別じゃない。また会おう」

「んだ!」

 

互いに背中に拳を当てて離別する。

ファミリアは副団長に任せて、アルキュオラは大きな二刀包丁を持って、覚悟を決める。

そんな背中をアイシャは逃げながら瞠目して瞳に映す。

 

「本当に奴1人にアンタレスを任せるのかい!?死んじまうよ!」

「……うるせえ。黙って走れ。奴の殿を無駄にしたら殺すぞ。絶対に離脱する」

 

ヴィヴィアンは下唇を噛みすぎて血を流していた。

彼女ほどのプライドの塊が敗走など気持ちがいいわけがない。

それに、あの能天気なアマゾネス頼りなのが情けなくて仕方ない。

彼女を想うヴィヴィアンは、眉間に皺を寄せて視線を下に向けて走る。

 

「【ウチデノコヅチ】!」

「お前……!」

「私の意思で使ったのです!ヴィヴィアン様の命令ではありませんので、契約違反にはなりません。アルキュオラ様、どうかご無事で……!」

 

春姫が去り際にアルキュオラに魔法をかける。

ヴィヴィアンが働かなくていいと眼力をかけるが、春姫の精神も立派に強くなった。

ヴィヴィアンの視線を弾き返し、一瞬振り返り、鼓舞と両手を組んだ祈りを彼女の背中に捧げる。

アルキュオラが背中越しにサムズアップするのを見て、春姫は安心して涙を拭いながら笑顔で前を向いて再び走る。

 

 

【ヴィヴィアン・ファミリア】は【アルテミス・ファミリア】の救出に成功した。

ただ1人、主神のアルテミスを除いて。

 

 

「悪ぃな、アルテミス。テメェを楽にしてやるのはもう少しかかりそうだ……」

 

 

ヴィヴィアンは逃げながら、女神(ダチ)を憂いた。

 

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