原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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逃げたリョーカ

 

「むっ……?」

 

空を飛んでアンタレスを目指すルシア。

その道中、モンスターに囲まれているパーティを見つけた。

 

「あれは……クラネルくんですか。ということは【ヘスティア・ファミリア】」

 

ルシアは見下ろし、急降下する。

 

「【サラマンドレア・ブレス】」

「――――――!!」

「えっ!?」

 

ベル達が瞠目して見上げる。

ルシアは通りすがりに彼らを囲む蠍型のモンスターを全て焼き払った。

そして、そのまま通過していく。

飛来する巨大ドラゴンにベル達は真っ青になりながらその背中を見送る。

【ヘルメス・ファミリア】が彼らに合流しているところも傍目に確認する。

ルシアも最前線の【ヴィヴィアン・ファミリア】に合流する。

 

「すみません。遅れました」

「遅ぇぞ。殺すぞ。沈めんぞ?」

「怖すぎません?」

 

着地してすぐ殺害予告されるルシア。

待ち構えていたのはヤンキー座りしてるヴィヴィアン。

彼女はため息をつく。

 

「遅刻分はしっかり働いてもらおうかぁ……」

「はい。それはもう存分と。焼肉定食50人前食べる時くらい任せてください」

「食いすぎだろ。あと例えよくわかんねえし」

 

ヴィヴィアンが高速でツッコミを回る。

ダメだ、このドラゴンの胃袋は無敵すぎる。

 

「【アルテミス・ファミリア】は保護したんですよね?」

「あぁ。リョーカもグウィネヴィアも合流した。あとはあの蠍野郎を恫喝して有り金全部飛び跳ねさせて絞り出して煮汁にして食ってやる」

「そんな話でしたっけ?目的は捕獲では?」

 

ルシアも困惑する。

互いに交互にボケるから収集がつかない。

案外相性が悪いかもしれない。

そう思いながら2人は歩きながら話す。

 

「真面目に言うと奴の捕獲はムズいな。できりゃいいが、アルテミスの【神の力(タイムリミット)】もある」

「じゃあ討伐するんですか?」

「惜しいがな。とにかくウチはリョーカとテメェを中心に攻める」

「話によると神創武器で殺せるとの話でしたが」

「アルテミスの矢の使用なんて重みを人間(ガキ)が許容できるとは思えねえ。期待するな。テメェとリョーカで狩れ」

「なるほど。わかりました。私達の攻撃は通るんですよね?」

「理屈ではな。試したことはない」

「そうですか」

 

会話を交わしながらルシアとヴィヴィアンはキャンプ本部に着く。

そこでヴィヴィアンは違和感を覚える。

 

「んっ?おい、リョーカはどこ行った?」

「えっ、し、知りませんけど……」

「なに?」

 

その辺で荷運びしている団員に聞くも見てないという。

ちょうどそこに【グウィネヴィア・ファミリア】が戻ってきた。

 

「おい、グウィネヴィア。リョーカを知らねえか?」

「へっ?いえ……我々はマリウスを筆頭に貴女の命令通り防衛線を維持していましたもの」

「は?」

「リョーカは本番以外戦いたくないの一点張りで、貴女もアンタレスが生み出すモンスターは恩恵(ファルナ)で倒せるからとそれを認め、彼女はキャンプで待機してるはずですわよ」

「チッ!やられた……!」

 

ヴィヴィアンが舌打ちして踵を返す。

ズンドコ歩いていく彼女がルシアを通り過ぎ、ルシアが声をかける。

 

「どうかしました?」

「リョーカのやつ、アンタレスにビビって逃げやがった!あの腰抜け……!クソ!」

 

ヴィヴィアンは物資を蹴り飛ばす。

そして、髪をかきあげる。

リョーカが戦わないとなったら……冗談じゃない。

何のためにオラリオに戻って、アルキュオラを死地に置いてきたと思っている。

アルキュオラを失うリスクを背負って援軍を呼びに来たのにこれでは水の泡だ。

これでアルキュオラが死んでいたらただの大損失、シャレにならない。

 

「御門ォ!」

「その恫喝のついでに呼んだみたいな呼び方やめて欲しいでごじゃる……」

 

ヴィヴィアンが叫ぶと御門はどこからともなく現れる。

彼女はマジモンの忍者一族のため。

事情を説明しなくとも、彼女には主人(ヴィヴィアン)の尋ねたいことがわかる。

 

「リョーカはどこ行った?」

「一人でキャンプから絶賛離脱中でごじゃる。あと【アルテミス・ファミリア】もこっそり抜け出してアンタレスのところに行こうとしてるでごじゃる」

「なんでもっとそれを早く言わねえ!!」

「アイタァ!?その報告のために来たから呼んですぐ出てきたでごじゃるよ!?」

 

蹴り飛ばされる忍者は涙目で理不尽を訴える。

されど漆黒(ブラック)

【ヴィヴィアン・ファミリア】に法など存在しない。

聞く耳持たぬ。

 

「【アルテミス・ファミリア】が死に戦に行きやがった!これより我々も出撃する!即刻準備しろ!!」

『ハイ!!』

 

ヴィヴィアンが調教した元気のいい返事が一斉に飛んでくる。

ヴィヴィアンは指揮台を降りて、ルシアの元に来る。

 

「リョーカなしじゃアンタレスにはテメェしか対抗手段がねえ。悪いが、最前線の先頭走って奴に手早く突っ込んでもらうぞ」

「わかりました」

「ヘルメスに先を越されるな。奴が縋る英雄なんざこれっぽっちも期待できねえ。足を引っ張られる前にケリつけんぞ!行くぞ、テメェら!!」

『オー!』

 

武器を手に取り、叫ぶ大所帯。

【ガネーシャ・ファミリア】に匹敵する団員数を従え、【ヴィヴィアン・ファミリア】は進軍を再開した。

その先頭を走るヴィヴィアンは、御門に指示を出す。

 

「御門。テメェはリョーカ捕まえてこい!」

「どぅえぇ!?相手はLv.8相当でごじゃるよ~!?」

「わかってる。だから、期待してねえ。連れてこれたらでいい。頼む」

「……!了解でごじゃる!」

 

主人が真面目モードだと判断してすぐ、御門はパーティから抜けて姿を消した。

いざと言う時のこの女神と忍者の連携は完璧だ。

 

「副団長!移動に便利な魔道具とかないんですか!?」

「……!それだ!」

 

団員の声にヴィヴィアンが振り返る。

しかし、ヴィヴィアンがアルキュオラの次に見初めた男は。

 

「ノー!ミーの魔道具、持ってきたぶんは全部アルキュオラたんにあげちゃったぜベイベー!」

「じゃあなんでついてきた!?あんた非戦闘員のアイテムメーカーだろ!?」

「エンジョイパリーピポー祭りだフーーーッ!!」

 

『ダメだ、こいつ!!』

 

ただノリと勢いと面白半分、冷やかしでついてきた副団長。

全員が突っ込む中、ヴィヴィアンは「何やってんだ……」と自分の派閥に呆れる。

 

「とにかく【アルテミス・ファミリア】が死ぬ前に到着する。ルシア、テメェはもっと早く行けるなら先に行っててもいいぞ」

「あ、そうですか。わかりました」

「えっ。おい……!」

 

皆のペースに合わせていたルシアが翼を広げて先行する。

そんなに早く動けたのかよ……とヴィヴィアンは見送った。

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