原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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鋼心(ごうしん)】アルキュオラ・テオ

 

「私の最強技の1つでしたが、大して効いてませんか。そうですか」

 

アンタレスを見上げて、ルシアは溜息をつく。

まあそんな事だろうと思ったが。

 

「もう到着してたでごじゃるか」

「おや。どうも」

 

リョーカを追って遺跡に来た御門が降り立ち、ルシアに声をかける。

遺跡の入口方向から大所帯の進行の足音も聞こえる。

おそらくヴィヴィアン達もすぐそこまで来てるのだろう。

と、そこで思い出した。

そういえばリョーカが来る前まで、【ヴィヴィアン・ファミリア】の団長、アルキュオラというアマゾネスが殿を務め、アンタレスを相手に時間稼ぎをしていたはずだが。

辺りを見渡すもその姿はない。

 

「まさか……」

「―――いやぁ、死ぬかと思ったべ」

「えっ」

 

ルシアが最悪の想定をしたとの同時。

地面が割れて、下から長身のアマゾネスが這い出てきた。

訛りに訛った口調。

ヴィヴィアンに聞いた特徴と一致している。

おそらく彼女が。

 

「ぐえー!団長殿、まだ生きてるでごじゃる!しかも喋ってるでごじゃる!動いてるでごじゃる!化け物でごじゃる!」

「……御門、開口一番悪口は後でゲンコツだべ」

 

指をさし、怯えてルシアの背中に隠れる御門。

珍しくアルキュオラが青筋を立てて、笑顔で拳を見せる。

御門に対しては普段温厚な彼女も沸点が低くなってしまうのだ。

 

「いやいや、あんな奴を相手に1人で戦い続けて無事なのはおかしいでごじゃる。討伐すべきはアンタレスより団長殿なのでは?」

「さ、さぁ……」

 

御門に問われて困惑するルシア。

まあ確かに数日、いや下手したら数週間アンタレスを相手に生き残ってるのは凄まじいが。

 

「アルキュオラ!お前、無事だったか」

「……無事は言い過ぎだけんど、生きてはいるべ」

「喋れて動けんのかよ。しかも五体満足。上出来だ」

 

ヴィヴィアンも合流して、アルキュオラを労う。

とはいえ当の本人は満足いく結果ではなかったようだ。

 

「油断したべ。地下に埋められて、1時間かけてやっと這い出てこれただな」

「えっ。ってことは……」

「拙者達が離脱してからつい1時間前までアンタレスと戦い続けてたでごじゃるか!?」

「んだ」

「やっぱり化け物でごじゃる!三大クエストの最後はきっと黒竜じゃなくて団長殿でごじゃる!」

「やかましい」

 

アルキュオラにビビり倒す御門をヴィヴィアンがシバキ倒す。

忍者を黙らせて、彼女はアルキュオラの前まで行き、肩に手をおき改めて労う。

 

「本当によくやった。さすがは鋼の身体、鋼の肉体、鋼の防御。そして、何より鋼の心。精神性(メンタリティ)だけで暗黒期を乗り越えた女だ」

魔道具(マジック・アイテム)百点と春姫が魔法をかけてくれたおかげだべ!」

「プラスお前の実力だ。なんせお前は世界で12番目に強いモンスターと1ヶ月不眠不休で戦い続けて、粘り勝ちした体力怪物(タフネス)

―――【鋼心(ごうしん)】のアルキュオラ様だからな」

「んだ!」

 

口角を上げ、肩をポンポンと叩くヴィヴィアン。

アルキュオラも元気よく頷いた。

 

「で、アイツは倒せそうか?」

「ドラゴンになっても渡り合えるかどうかってところですね」

「キツイな。御門、リョーカを起こしてこい」

「了解でごじゃる」

 

御門の命令を出して、ヴィヴィアンもアンタレスと再び対峙する。

 

「よぉ、よくもアルテミスを食いやがったな。そろそろ返してもらおうか」

「先行します」

 

ルシアが先に飛び出す。

彼女は、アンタレスと斬り合う。

ヴィヴィアンも眷属に指示を出して、魔法の砲撃で援護させるが、ルシアが攻撃を避けるための目眩しくらいの効果しかない。

なにせ相手は恩恵(ファルナ)が効かない。

こういう事態の為にヴィヴィアンは質より数を揃えた。

恩恵が効かないなら威力の高い魔法も意味はない。

ならば、せめて視界を覆う爆炎を数で生み、戦略に役立てる。

なによりそのやり方だと費用(コスト)も安く、仕入れやすい。

 

「……チッ。戦力が足りねえな。リョーカを起こして、ヘルメスが合流しても……厳しいな」

 

ヴィヴィアンは下唇を噛む。

ここまで準備してきたのにまだ足りない。

予想はしていた。

それだけ厄介な相手なのだ、アンタレスは。

女神アルテミスをなしにしても、黒竜と同じく簡単には攻略できない神秘的な存在だ。

 

 

「―――僕はそんなことの為に貴女と!貴女に!貴女を……!!」

 

 

「……っ!来たか、ヘルメス」

 

 

ベル・クラネルの声が聞こえて、ヴィヴィアンは振り返る。

すると、【ヘスティア・ファミリア】と【ヘルメス・ファミリア】が戦闘に加わった。

しかし、それでも足りない。

アンタレスには通用しない。

 

そこに、後方からまた援護砲撃が届く。

 

属性は、雷と水。

 

「スズネリアか……!」

 

ヴィヴィアンが見上げると、彼女の頭上で壁を走り、アンタレスを挟み撃ちにする狼人とアマゾネスが目に映る。

 

「よっしゃー!俺達も参戦だぜ!!」

「スズネリアくん……!」

「私もいるさ!」

「キリエさん」

 

ルシアが攻撃したあと、一旦離脱する。

そこに入れ替わるようにスズネリアとキリエが斬撃を加えて通過した。

2人は位置を変えて、またアンタレスへと突っ込んでくる。

 

「接近戦は私に任せてください!相手にお2人の力は通用しません!マリウスくんやユウカさんも後方支援に務めています」

「ハッ!やだね。奴に効かなくてもよぉ……!」

「―――足場は崩せるさ!」

 

スズネリアは胸の鼓動を走らせる。

血脈が打たれる。

キリエは溜め込んだ湖から一気に放出する。

それは決壊させ、彼女の外へと出る。

そんな2人がアンタレスを中心に壁を走り、グルグルと対角線上に巡回する。

そして、アンタレスの左右を取ったその時、剣を振り下ろす!

 

「【叛逆の聖火赤雷(クラレント・ブラッディ・ウェスタ)】ァァ!!」

「【アロンダイト】!!」

 

狙いは足元。

アンタレスの足場を破壊する!

 

『~~~~~~~~ッ!!』

 

崩れ落ちる足場と共にバランスを崩し、落ちていくアンタレス。

攻撃どころではなく、もがく奴を前に。

ルシアは、飛び上がり、剣を振り上げる。

 

 

「【サラマンドレア・カリバー《ストライク》】!」

 

『―――――――――ッ!!』

 

 

竜炎の突きを浴びせるルシア。

アンタレスは痛みに叫ぶ。

けど、決定打にはならない。

 

「【ストライク・エーラ】……!」

「リョーカさん……!」

 

ルシアの背後から追撃の攻撃が飛んできて、振り返る。

彼女も起きた。

頭から血を流し、痛みに顔を顰めているが、なんとか瓦礫から上体だけ起こして突きを出してくれた。

無理してでも戦うことに抵抗がある彼女は、とても嫌そうな顔をしているが。

 

『――――――ッ!!』

 

「……っ」

 

 

ルシアは、その鳴き声に振り返って見下ろす。

アンタレスはダメージを追いながらも奈落から這い上がろうとしている。

このまま戦っていても、奴は倒せない。

 

「……」

 

ルシアは、見上げる。

月が2つある。

もう三日月は完成している。

時間がない。

仮にルシアとリョーカで倒せる力があったとしても、時間切れで間に合わない。

 

 

―――その時、後ろから矢が飛んできた。

 

 

「……!?クラネルくん……覚悟を決めましたか」

 

ルシアは、矢を放った本人を見た。

彼はナイフを手に、アンタレスに挑もうとしている。

ルシアは自身の懐に手を突っ込む。

矢が使われた今、その矢がアンタレスの防御を破る前に。

この試験管を使用するなら今……!

 

「分子と凍結の神の力(アルカナム)よ……!」

 

ルシアは、試験管の蓋を開ける。

そして、試験管2本を投げる。

同時にアルテミスの矢がアンタレスの防御を破る。

そこにベル・クラネルはナイフを手に飛び込む。

 

「うおおおおお!!」

「……っ!間に合ってください……!」

 

ルシアは投げたあと祈る。

もうそれしかすることはない。

アルテミスの水晶にベルは刃を振り下ろす。

その水晶が砕かれる瞬間、

 

 

 

 

―――アンタレスとアルテミスは、《()()》した。

 

 

 

 

 

 

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