「あ?なんだ。テメェら仲良くなったのか」
「はい……!英雄譚の趣味が合って……!」
ヴィヴィアンがキャンプに帰ると、春姫がベルと盛り上がっていた。
尻尾をフリフリとする彼女は嬉しそうだ。
もう【ヘスティア・ファミリア】の輪の中に戻ったベルを見て、頬を染め、羨ましそうに見つめている。
そんな彼女を前に、ヴィヴィアンは目を細める。
「……そうか。向こうに行きてぇならヘスティアに話つけるぞ」
「へっ!?い、いや、そういう訳では決して……!」
「いいのか?チャンス逃しても」
「……っ!」
ヴィヴィアンが本気で言っていると気づいた。
春姫は慌てふためいた態度から真顔に戻り、真剣に彼女を見つめる。
ヴィヴィアンは焚き火を前に、ヤンキー座りし、顔を少し下げる。
夜が彼女の表情を隠し、前髪が垂れ下がっていた。
春姫は彼女の様子を見て……心配になる。
「ヴィヴィアン様、大丈夫ですか?」
「何が」
「い、いえ。どこか元気がなさそうなので……」
「んな事はねえが。まあ、元気一杯って訳にはいかねえな。ルシアもリョーカも大して奴に適わなかったからな」
「……!」
春姫は、目を見開く。
戦いのことは分からないが、その言葉が彼女にどうのしかかってるのかくらいはわかる。
彼女は、今までやってきたことに不安を抱いている。
やるせないだろう。
なんの為にここまでやってきたのかわからなくなる。
それに、自分の存在価値も、見失う。
「おい。何見てる」
「こんっ……!?ご、ごめんなさい!」
ヴィヴィアンが前髪の隙間から睨みを効かせ、春姫は前を向きなって姿勢を正す。
……けれど、やはり下を向いた。
「ヴィヴィアン様。私は……ヴィヴィアン様のファミリアに残ります」
「は?いや、要らねよ。私の気が変わらねえうちに好きなとこ行け。テメェはテメェの幸せと欲求の事だけ考えてりゃ―――」
「そんなわけにはいきません!」
春姫がヴィヴィアンと向き合い、啖呵を切るとヴィヴィアンは目を丸くした。
この娘にこれほどの気概があると知らなかったからだ。
彼女は、みんなが恐れる女神の手を両手で包みとる。
治療中のアルキュオラに変わって、木に背中を預ける御門はその影に隠れて、虚しそうに視線を落とす。
「ヴィヴィアン様……ヴィヴィアン様をこのまま放っておけばどんどんと削れていって、いずれ立ち行かなくなります」
「ハッ。よく言うぜ」
ヴィヴィアンは失笑する。
まさかこんな子供に励まされる時がこようとは。
彼女は、春姫にデコピンした。
「こんっ!?」
「私のことは気にするな。どんな結果になろうと、やることは決まってる。最悪、何とでもなる」
「な、何とでもって……」
「その時は黒竜の糞に殺されるだけだってな」
「……!?」
春姫は瞠目したが、ヴィヴィアンは立ち上がり、背を向けてしまった。
もうとっくに覚悟を決めている。
例え計画が全部無駄でも彼女はもう……前に進むしかない。
全ては友を喰われたその時から始まっている。
「おら。ちゃっちゃと改宗すっぞ。こっちは暇じゃねえんだ」
「アイシャ様~……」
「春姫!?待ちな!あんた……!」
「何度も言わせんな。レベルブーストも
春姫を引きずり、タレイアはヘスティアの元に行った。
そして、仰天した彼女と手続きを交わし、春姫は【ヘスティア・ファミリア】となる。