「タレイア様~!終わったよ」
「さすがだ。暗黒期の
「えへへ」
帰ってくるなりタレイアに褒められて後頭部をかくマイア。
タレイアは、やはりこの男に目をつけて正解だったと口角を上げる。
「ほ、本当に【フレイヤ・ファミリア】を滅ぼしたというのか。ランクで上回ることもなく」
「厳密に言えば上回ってはいるが、使っていない。技術とスキルと魔法で
「いいよねぇ、テシレアは。
「知らん。貴様が弱いのが悪い」
「あー!また弱いって言った。まあ弱いか。殺しはできるけどね」
「……ややこしい」
テシレアが微妙な顔をする。
やはりやりづらい相手だ。
掴みどころがない。
それは長い付き合いでも変わらない。
「【フレイヤ・ファミリア】は実質的に終わりだね。オッタル君以外は確実に今後パワーダウン必至」
「黒竜討伐は女神ヴィヴィアンに委ねるとしても、迷宮攻略の為にギルドも彼女を放任してきた」
「そう。つまり力が彼女の地位を築いていた。その土台が崩れたんだ。もう彼女の暴挙を許すものは何も無い」
だが、そうなると新たな問題が発生する。
「フレイヤの派閥を潰したとなると多少なりとも話題になる。有力派閥やギルドがきっと僕らに目をつけるよ」
「……【ロキ・ファミリア】ですか」
「それだけではないけどね」
タレイアに呼ばれて合流したルシアがその名を口にして、タレイアは返す。
千里眼でここまでの会話は口の動きで見ていたのだろう。
「聞いてたなら話が早い。その新たな敵対派閥の殲滅を君とフィルヴィスに依頼したい」
「……もう全部マイアさんでいいのでは?」
ルシアが見るとマイアが笑顔で手を振る。
まさか彼が【フレイヤ・ファミリア】を潰せるほどの逸材だとは知らなかった。
だから、もう全部彼でいいのではと思ってしまう。
しかし、タレイアは首を横に振るう。
「いや、マイアは切り札だ。出来ればあまり切りたくなくてね。あまり使いすぎると、注目されるだろ?」
「なるほど」
ルシアが一瞥すると、マイアが両腕でバツを作って残念!と言った顔で首を横に振るう。
「そもそもなぜオッタルさんたちの闇討ちに成功したのかまだ納得行ってませんので、構いませんが」
「信用出来ないものは使わない。実に君らしい。マイアはね、信頼築き、無力さをアピールし、無害さを認知させるのさ。だから、相手も油断する。君も恩恵を刻まれていない人間に剣を向けたりしないだろ?」
「なるほど」
わかるようなわからないような。
ルシアは適当に頷く。
「それと、君達に任せたい理由はもうひとつある」
「なんですか」
「少々サボりすぎだ。そろそろ働いて欲しいと思ってね」
「……なるほど」
「このまま僕が世界再構築を叶えたら見返りがなさすぎる。前払いしてもらおうか」
「わかりました。とにかく【ロキ・ファミリア】を潰せばいいんですよね?」
「まるで簡単にできるみたいな言い草だな」
「はい。簡単にできます」
ルシアは躊躇なく頷く。
そして、獅子王の兜【キャリオット】を被る。
毛深いロン毛まで追加されて、もはや背丈以外でルシアと判別することは不可能。
彼女はカリバーンを腰に装備し、いつもと違う歩き方で背を向ける。
「フィルヴィスさんは必要ありません。私のこの手で【ロキ・ファミリア】を攻め滅ぼしてみせましょう」
「そうかい。期待してるよ」
タレイアは興味無さそうに本を顔に被せて眠った。