原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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Lv.12

 

「ギルドから正式に報告があった。【フレイヤ・ファミリア】が討たれた」

『……!?』

 

フィンの報告に【ロキ・ファミリア】の幹部全員が瞠目する。

【フレイヤ・ファミリア】の強さと恐ろしさは何度も対立してきた彼らが1番知っている。

なのに、そんな好敵手が一晩で壊滅させられた。

この異常事態に自分たちは関係ないと胡座をかくほど彼は能天気じゃない。

 

「僕たちも他人事じゃない。【フレイヤ・ファミリア】を潰せる勢力があるということは、僕達も潰せるということの証明と同義だ」

「何者かが動いておるな。それ程の者がどこに隠れておったかは知らんが……」

「隠れていた、か」

 

リヴェリアが呟き、視線を落とす。

そんな彼女をフィンとガレスを見た。

そして、まさか、と目を合わせる。

だが彼らより先に口に開いたのはロキ。

 

 

「………………タレイアやな」

 

『……っ!』

 

 

フィン、ガレス、リヴェリア以外は聞いたことがない。

主神の低い声。

手を組み、口元を隠すロキは真剣な眼差しで虚空を睨む。

そして、フィンに目を向ける。

 

「フィン。自分、どう思う?」

「まだ時期尚早だと思うけど、可能性としては否定できない。それもかなり高い確率だ」

 

フィンの真剣な目つきになり、ロキと同じポーズをとる。

ガレスとリヴェリアも深刻な顔をした。

 

「タレイアか……思い出しくない名前じゃの」

「まったくだ」

 

目を伏せるガレスとリヴェリア。

そんな彼らのやり取りに、ベートが痺れを切らした。

 

「おい、勝手にテメェらの中だけで共感してんじゃねえ。こっちにも共有しろ!」

「そうですよ、団長。タレイアって一体何者なんですか?女神の名前ですよね?」

「あぁ。女神タレイア。繁栄を司る女神。そして、最も食えない女神だ」

「最も……食えない?」

 

アイズが顔を顰めて、首を傾げる。

フィンは頷く。

 

「まだゼウスとヘラが繁栄していた頃、たった一人の眷属を率いて女神タレイアは全ての勢力を出し抜いた。三大クエストのうち二つを攻略し、タレイアの眷属はステイタスの最高到達点へと至ったんだ」

「は?ちょっと待てよ……!」

「三大クエストって、【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が攻略したんじゃないの?」

 

フィンは首を横に振る。

 

「そういう話になってるだけだ。タレイアが眷属の存在を秘匿するためにね」

「三大クエストを単騎で攻略しただと?有り得ねえ。そんな奴が……」

「いたんだ。本当に。実在した。事実だから認めるとか認めないとかじゃない。確かに存在し、多くに目撃されている」

「じゃあ今回もその眷属が【フレイヤ・ファミリア】を……?」

 

アイズが尋ねると、みんなが見た。

普通に考えればそういう話の流れだ。

何故そこに視点が行かなかったのか。

皆、確信を持ってフィンに視線を戻す。

しかし、彼は考え込んでしまう。

 

「……いや、だとしたら今回の手口は」

「地味すぎやな。タレイアの眷属やったら正面玄関叩いて本拠ごと破壊して全員正面から薙ぎ倒して終わりや」

「そう。けど、今回は現場に物損がなさすぎる。彼のやり口じゃない」

 

庭は荒らされていたが、建物は無傷だった。

相手は非力、もしくは力を振るうことになれていない者。

ならば彼ではない。

彼は逆に力を振るうことしかできない。

小細工が苦手な眷属だった。

 

「女神タレイアが他に眷属を有していた……とか?どうかな?」

「いや、有り得ない。奴が他に目移りすることなど絶対にない」

「リヴェリア……?」

 

珍しく気持ちと殺意と怒気のこもった低音を漏らすリヴェリア。

その目つきも見たことの無い剣幕だ。

古株以外は誰も目撃したことがない。

だから、ベートやティオネは息を呑み、レフィーヤを始めとしたエルフ達が怯える。

 

「リヴェリア。落ち着け」

「……っ」

 

フィンに言われてハッとする。

リヴェリアは、持っていたペンをステイタスでへし折っていることに気づいた。

 

「……すまない。私としたことが」

「仕方あるまい。タレイアの眷属はリヴェリアの男じゃからの。取り乱すのも無理はないわい」

「なっ……!?ガレス……!」

 

立ち上がるリヴェリア。

それが答えになってしまった。

ティオネは赤面して口を抑える。

 

「リヴェリアが!?」

「恋バナ!?キャー!」

 

一方、エルフ達は激怒して机を叩き、立ち上がる。

 

「リ、リリリリリヴェリア様に男ぉ!?」

「有り得ません!認められません!そんなものは存在しません!」

「実在まで否定されるのか……」

 

エルフ達が抗議する中、リヴェリアは困惑する。

最後はベートが「うるせえ!」と恫喝して黙らせた。

レフィーヤが涙を浮かべながらモジモジする。

 

「だ、だってぇ……リヴェリア様に意中の異性なんてぇ……」

「そんなもの、頭脳明晰、才色兼備、容姿端麗、品性完壁、家事1級、そしてなによりリヴェリア様よりお強い方でないと許せませんわ!!」

「どこにそんな男がいんだよ……夢見んな」

 

アリシアの力説にベートがドン引きする。

だが、フィンは真面目に返した。

 

「他はともかく……リヴェリアより強いという点はこの上ないと思うよ」

「えっ」

「えっ」

「は?」

 

レフィーヤ、アリシアが目を丸くする。

ベートもフィンも冗談を言うのか、ババアより強いやつなんでそうそういねえだろと言った目で彼を見る。

しかし、フィンは本気だ。

リヴェリアが代わりに答える。

 

「奴は……『レン』は、Lv.12だ。私どころかこの世の誰よりも強い」

「は!?Lv.12!?」

「うっそぉ!?」

「有り得ないでしょ……!さすがに!」

「……!」

 

リヴェリアの言葉にベート、ティオナ、ティオネがガタッと動き、アイズも静かに驚く。

にわかに信じられない話だ。

 

「事実じゃ」

『……!』

 

ここでガレスが証言する。

フィンやリヴェリアが言うより説得力があった。

ガレスは必要でも嘘をあまりつかないから。

 

「ま、ホンマの話やな。少なくともウチらが最後に見た時はLv.11やった。つまり最低でも最高記録や。しかも2つも更新しとる」

「マジ、かよ……」

 

主神すら認め、愕然とするベート。

ティオネとティオナは言葉を失ってしまった。

アイズも瞳が揺れる。

そこで、フィンが手を叩く。

 

「彼の話はここまでだ。今回の件に関係ない」

「フィンの言う通りだ。あいつが姿を消して何年も経っている。戦わないLv.12などいないも同然だ」

 

2人が話を強制的に切る。

確かに言い分は正しい。

レフィーヤやアリシアは気が気でないが、もう個人の感情で口出しできる空気ではなくなった。

話は本題に戻る。

 

「しかし、タレイアは眷属でないにせよ新しい駒を手に入れたということか。厄介じゃの」

「ホンマ。何企んどるんや、タレイアのやつ」

「女神タレイアがどんな目的を持って動き出したのかはわからない以上、下手に触れるのは危険だ」

 

フィンは、親指を唇に当てる。

 

「だが、【フレイヤ・ファミリア】を潰した勢力を野放しにもできない。交渉か、あるいは排除か。実行すべきだ」

「と、言うと?」

「先手を打つ。後手に回ったら敗北確定だ。例え向こうに我々に対する敵意がなくとも念の為に先に叩く。勝機もリスクヘッジもその道しかない」

 

フィンは決意する。

そして、打倒女神タレイアを掲げる。

狙われる前に、狙えという作戦。

仮に放っておいても無害で不干渉だとしても、存在し、目に映るところにいること自体が脅威となり、抑制力となる。

【ロキ・ファミリア】の方針にとって、動きが制限されるのは避けたい展開。

目障りになるなら消してしまいたいのだ。

 

「指針は決まった。僕らは女神タレイアを討つ!」

 

フィンが拳を掲げ、団員達に司令を出す。

 

 

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

 

―――ドゴォン!!と黄昏の館に爆音と振動が響いた。

 

 

 

 

 

全員が即座に察知する。

 

 

 

 

 

これは、誰かが乗り込んできたと。

 

 

 

 

「敵襲……!敵襲ーーーーーーーっ!!」

 

『……っ!?』

 

ラウルの号令が響き渡り、幹部達は武器を手に会議室を飛び出す。

そして、騒動の場所へと一直線に向かい。

そこにいたのは。

 

 

「……何者だ。君は」

 

「―――【獅子王】リチャード」

 

 

フィンが尋ねると、小さな背丈の仮面(かぶと)を覆った女は、名を告げた。

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