原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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リュー・リオン育成計画

 

「帰りました」

「啖呵切った割には見事に任務失敗だねぇ」

「……」

 

開口一番苦言を呈されても、ルシアは表情を歪ませない。

必死に不快を読まれまいとする健気な彼女にタレイアはフッと笑みを零す。

 

「まあいいさ。君の実力は示した。少なくとも【ロキ・ファミリア】が単体で僕らに挑んくることはないだろう」

「はい。下手に手は出してこないかと」

「じゃあ次の標的だね」

「はい?」

 

ルシアは休もうとしていたその動きを止める。

タレイアを2度見した。

その反応を待っていたタレイアの狡猾な笑みが待ち受ける。

 

「……【ロキ・ファミリア】以外に【繁栄の役者(アクターズ)】に対抗できる戦力を有する派閥はないと思いますが」

「あるさ。一つだけ。芽が出ていている者が一つだけ、ね」

「はぁ」

 

ルシアは顔を顰める。

全然わからない。

あと大きな派閥といえば【ガネーシャ・ファミリア】くらいだ。

それかアルフィアとザルド、もしくは学区など。

まさか外に討って出るのか。

それもやる必要はあるとは思うが。

 

「【アストレア・ファミリア】だ」

「は?」

 

ルシアは目を丸くする。

同時に正気を疑う。

アストレア・ファミリア?アストレア・ファミリアと言ったのか?

この女神は。

有り得ない。

ルシアの予言を恐れてもう何年もダンジョン探索すらしていない派閥の何が脅威なのか。

最大ランクもアリーゼ、輝夜、リューのLv.3だ。

暗黒期が終わり、彼女達の役目も終わった。

最近の活動といえば【ガネーシャ・ファミリア】の催事やパトロールの手伝いくらい。

確かにフレイアの派閥を潰して思うところがあるであろう派閥だが、とてもタレイアの計画の邪魔になる戦力を有しているとは思えない。

しかし、タレイアはチッチッチと指を動かす。

 

「甘いな。本当に甘い。君は未練を思い出さないように見ないようにしすぎだ。千里眼で彼女達の本拠を見たまえ」

「……?」

 

ルシアは訝しむ。

確かに闇堕ちしてからは千里眼で【アストレア・ファミリア】の監視を外している。

もう彼女たちが動くことは無いと思ったのと、彼女達の日常を見てしまうと指摘通り戻りたくなるからだ。

言われたとおり、ルシアは窓の外を見る。

そして、千里眼を発動する。

 

 

―――すると。

 

 

「なっ……」

 

 

言葉を失った。

ルシアが見た光景は―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【アストレア・ファミリア】の本拠。

星屑の庭。

そこでは毎日―――"殺し合い"が行われていた。

 

「はぁ……はぁ……!」

「音を上げるな、リオン!」

「……っ!」

 

形式は毎日同じ。

リューVSそれ以外だ。

相手を殺さないようにリューは木刀を持っているが、襲いかかる輝夜は実剣。

 

―――発端は、ルシアが離反してすぐの頃に戻る。

 

 

「アストレア様。我々がルシアの予言に従い、迷宮探索を避けるのはわかります。でも、こうして毎日ただ過ごすだけなど私には耐えられない」

「輝夜……」

 

アストレアに進言する輝夜。

例え、迷宮に行けなくとも、ルシアが悪行を積んでいくところをただ見ていることなど輝夜には出来ない。

何か出来ることをしたい。

それに、正義の使者である彼女たちに何もせず過ごすことなどできない。

例え暗黒期が終わったとしても、悪が滅びたわけではない。

彼女達が動く理由はまだある。

戦う場面もまだある。

 

そして、その為には力がいる。

 

「このまま毎日堕落した日々を送るだけでは、我々の成長は停滞し、周囲に置いてかれる。力が足りなければいざと言う時に無力な民と同じく蚊帳の外だ」

「しかしよぉ。鍛えるって言ったってどうすんだよ。ダンジョンでレベリングもできねえんだろ?」

 

ライラの言うことは最もだ。

冒険者が強くなる方法の大半は迷宮探索による経験値取得だ。

それ以外にも方法はあるが、便利なダンジョンを選択肢から排除しなくてはならないのは厳しい。

それでは仮に強くなってもその強さには限度がある。

 

「あのぉ……テルスキュラの方法を採用するっていうのは?」

「なに?」

 

ルシアが解決させた【イシュタル・ファミリア】。

そこからなだれ込んできた戦闘娼婦(バーベラ)の1人が恐る恐る発言した。

【アストレア・ファミリア】にかなりの数が改宗(コンバージョン)し、本拠も【イシュタル・ファミリア】の資金を使って【フレイヤ・ファミリア】のように大乱闘可能な庭ができるくらい大幅に拡張工事をした。

けれど、棲み分けはきちんとなされており、元イシュタル組と正義の使者達の間には距離がある。

当然だ。

正義の彼女たちは潔癖。

身を売った娼婦に抵抗感くらいはある。

しかし、それでも受けいれたのは彼女達に正義の心があるからだ。

見捨てなかっただけでも優しい。

 

「テルスキュラって……アマゾネスの国だっけ?」

「そう!あの島では眷属同士殺し合……戦って強いやつを殺し……切磋琢磨してランクを上げるの!」

「おいおいおい!全然誤魔化せてねえぞ!?」

 

言葉を濁しまくる戦闘娼婦(バーベラ)にライラが突っ込む。

【アストレア・ファミリア】は一同渋い顔をした。

確かに身内同士で殺し合えばランクは上がるかもしれないし、コソコソやっていればルシアにも目をつけられにくいかもしれない。

けれど、さすがに……抵抗がある。

主に倫理観という点において。

アマゾネスや戦闘娼婦(バーベラ)と違って、正義の使者達の感性はマトモなのだ。

何より、女神アストレアの正義が眷属の殺し合いなど許容するはずがない。

 

「仲間で殺し合うなど正気ではない!そこまでする必要がどこにあるというのですか。正義に反しています。絶対にダメです」

「いや……無しではない」

「なっ!?輝夜!?」

 

リューが輝夜を二度見する。

無論、輝夜も抵抗はある。

だが、深刻な顔で背に腹はかえられぬか精査している。

ライラもその表情を前に息を呑む。

 

「考えてもみろ。悪が栄えた時代は終わり、都合のいい強い敵は消えた。残るはフレイヤやロキの派閥。正義の者達と対立する道だけだ。それと対峙する方が、我々の思想に反している。それに……」

 

輝夜は、俯く。

ルシアを愛する彼女が1番、事態の深刻さを理解している。

【アストレア・ファミリア】を救うために悪に堕ちるというルシアの言い残しを、正義の派閥が看過できるはずがない。

受け入れられるわけがない。

だから、アリーゼを潜入させた。

それでもルシアの暴挙は外部から見ていても止まる気配がない。

リョーカを虐め、スズネリアを殺そうとし、命を大切にしていたはずの彼女が悪を容赦なく殺し回っている。

そして、邪魔をするやつは正義だろうが悪だろうが打ちのめしている。

ルシアの悪行をとめ、取り戻し、我々が救われる方法を今一度考え直すには。

やはりルシアに対抗するための力がいる。

力があれば、ルシアを頼らずに済む。

二つの意味で強くなることは大事なのだ。

ならば、なりふりは構ってられない。

 

「我々が救われる為だとしても、やはりルシアのやり方は間違っている。奴を止めねばならん。だが、ルシアは強すぎる。我々も是が非でも強くなる必要がある。違うか?」

「そ、それは……」

 

リューとて、ルシアを想う気持ちはある。

誰よりも仲間に依存している彼女がルシアの今の姿を見て、我慢出来るはずがない。

だから、俯くのだ。

悩むのだ。

彼女の思想に大きく反していても……揺れるのだ。

 

「お前たちはただルシアの救いを待つだけでいいのか?まるで親鳥を待つ雛鳥だ。その親鳥は……帰ってくる頃には血に染まっているぞ」

『……っ!』

 

リューだけでなく、全員に訴える輝夜。

その眼力と言葉に全員が息を呑む。

自分たちが救われるためなら、他人を不幸にしてもいいのか?

そんなわけがない。

自分たちの為に手を汚しに汚した仲間が、狂気の笑顔でただいまと述べる時、快く迎え入れるのか?

そんなわけがない!

 

「我々はこのままのうのうと過ごす訳にはいかない。今のルシアを認めるわけはいかない。奴を否定する。そして、元のルシアに戻すんだ」

「輝夜……」

 

リューが初めて、輝夜の本心に触れる。

それが伝えたかったことだ。

輝夜は、ルシアに元に戻って欲しいんだ。

それで例え自分が死ぬとしても、落ちぶれていくルシアをただ見ているよりずっといい。

醜くなっていく彼女をそのままにしてまで、救わたいなどと思わない!

 

「誰も乗らずとも、私はやるぞ。敵がいないなら作る。強くなり、ルシアを倒して止める!」

「馬鹿。それじゃあルシアと変わんねえだろ。罪のないやつを傷つけんなよ」

「ライラ……」

 

ライラに指摘され、輝夜の頭が冷える。

だが、ライラにも輝夜の気持ちは分かる。

 

「私は乗るぜ、輝夜。これで2人だ。殺し合えるな。ま、私じゃお前の相手にならないだろうがな」

「ライラ……!」

 

ライラが狂気の計画に賛同して、リューが正気を疑う。

ライラと輝夜の視線は……リューに集中する。

 

「リオン。輝夜には言えねえだろうから、私が言ってやる。正直1番強化すべきはお前だ」

「えっ?」

 

リューが目を丸くする。

だが、輝夜は視線を逸らし、それは双方の共通意識だと判明する。

 

「リオン。お前が1番才能がある。お前が1番ルシアに届く可能性がある。お前が育って、ルシアを倒すべきだ」

「よせ、ライラ。この青二才に仲間を斬れるはずがない」

「じゃあお前はルシア斬れるのかよ、輝夜。お前が1番ルシアに情があるだろうが。私にはあるぜ、泥を被るのは得意だからな」

 

ライラに指摘される輝夜。

手段を選ばず生きてきたライラには覚悟がある。

しかし、力と素質がない。

輝夜には成長できる見込みはあるが、愛するチビの首に刃を振り下ろせる覚悟がない。

そして、リューには…………才能と、仲間の為なら仲間に剣を向けてでも彼女を止める青臭い正義がある。

 

「……」

「……」

「む、無理だ。私には。輝夜と同じだ!ルシアを斬るなんてこと……私にはできない!」

 

至近距離で睨み合うライラと輝夜が、その険悪な雰囲気から突如、2人ともリューに視線を集めた。

その注目に込められた2人の意向に気づいたリューは後退り、眉をひそめて首を横に振るう。

だが、それは不可能だからじゃない。

逆だ。

可能だと本人もどこかで察してるから、だから気持ちで拒否してるのだ。

嫌だ、そんな役は買いたくないと。

ルシアを……あの天然ボケ同胞(エルフ)を斬りたくないと。

 

「本当にそうか?リオン」

「……っ!」

 

ライラに尋ねられ、リューは瞠目する。

その表情は追い詰められた小動物のようだ。

それでも、ライラは心を鬼にする。

 

「わかってるんだろ、もう。お前ならできる。リオン」

「む、無理だ……!」

「いや……お前ならできる、リオン」

「輝夜……!?」

 

いつも素直じゃない、リューの未熟さに苛立ち、キツく当たる輝夜ですらリューに頼る。

彼女を見ると、リューは目を見開いた。

初めて見た。

輝夜の弱々しい顔を。

リュー・リオンに縋るゴショウノ・輝夜を。

彼女は、唇を噛み締めながら……瞳を揺らす。

 

「頼む……リオン。お前なら、いやお前にしか。できない。お前ならルシアを越えられる。お前なら、ルシアを殺すのではなく止められる」

「輝夜……」

 

彼女がそんなことを言うなんて。

自分に物を頼むなんて。

それだけ。

それだけ、彼女の中でルシアという存在は大きい。

リューの背中に、重く、のしかかる。

それは、責任という名前だ。

今、仲間に友を預けられている。

 

「頼む、リオン。ルシアを……取り戻してくれ」

「……っ。輝夜ぁ……」

「リオン。アタシからも頼む」

「ラ、ライラまで」

「こんなこと、委ねられるお前が1番辛いのはわかってる。無力なアタシ達を恨んでくれ。それでも、お前に賭けるしかねえんだ。アタシ達は。それが最善なのが情けねえ現実なんだ」

「……!」

 

ライラの言葉を聞いて、輝夜がその後ろで俯く。

リューもそんな彼女の様子に気づいた。

輝夜の考えることが今日は手に取るようにわかる。

全ては罪だ。

弱さは罪だ。

輝夜は、自身を罪人と称する。

才能がない。

力がない。

だから、酷な役割を仲間に押し付ける。

しかも相手は未熟だとわかっている。

輝夜にとって、これほどの愚行はない。

今、生きてきた中で最も自分を恨んでいるだろう、彼女は。

 

「リオン。お前がルシアを取り戻せ」

「頼む、リオン。お前しかいねえんだ」

「リオン!私からもお願い!」

「ルシアを正気に戻して!」

『リオン!!』

 

「~~~~~~~~~っ!!」

 

リューが自身の正義の次に依存している仲間全員に、頼み込まれる。

これを断れる性格など、彼女は有していない。

こんなのはずるい。

輝夜も顔を顰める。

この頼み方はよくない。

リューが自ら望み、自分の強い意志で挑まねばルシアを超えることも止めることもできない。

 

「頼んでおいてなんだが、流されるなリオン。お前が決めろ。私達はお前に賭けるしかない弱者だというだけだ」

「輝夜……」

「リオン。お前がルシアに対して私と同じような想いがあるなら、強くあの子を想っているのなら。頼む、勇気を出してくれ」

「……っ。あ、貴女がそんなこと」

「リオン。お前の正義と友愛を、私とルシアに貸してくれ」

「――――――っ!!」

 

その言葉は。

絶大だった。

リューに衝撃が襲う。

背景が白くなる。

輝夜は、リューの本質を刺激した。

そして、彼女自身、自分の気持ちと向き合う。

 

 

『リューさん』

 

 

 

―――ルシア。

 

 

 

『リューさんもそこまで自身の実力を過信していないでしょう? 一人で戦える、そんなことを思う人じゃないことはもう知ってます』

 

 

『リューさん、被害を減らしたいと思うのならば我慢が必要です』

 

 

 

……ルシア。

 

 

 

『今まで通りがいいです。お願いします』

 

 

『それは正義ではありません、リューさん』

 

 

『暴力は手段であって本質ではありません。悪を討つことそのものが主目的ではなく、力のない人々を守る方が重要です。奪う者を断罪するのと理屈は同じ。こちらも奪ってばかりでは、何も解決しません』

 

 

 

ルシア。

 

 

 

『マリーン……へぇ。じゃあ君にも尋ねよう。君はリオンちゃんの掲げるモノは正義でないとした。ならば、そんな君にとっての『正義』とは?』

『……その問いに答えはありません』

 

 

 

ルシア……!

 

 

 

『『正義』に、答えはありません。ただし、『悪』には答えがあります」』

 

 

『『正義』とは、答えがないこと。それは悪ほど単純ではないからです。故に、その難しい道を選び、正義を考察し続ける者達は賢者と呼ばれます』

 

 

『つまり、正義とは何か断定してはいけない。これが私の答えです』

 

 

『大丈夫です、リューさん。知能の数だけ意見はあります。人の数だけ、正義はあります』

 

 

『私達個人個人は生涯をかけて考えていくしかありません。もしその結果、辿り着かなかったとしても、研究は受け継がれてゆくもの。だから、人は群れるのです。そこに、意味があるから』

 

 

 

 

ルシア……!ルシア!ルシア!!

 

 

 

 

『リューさん。早く行きましょう。こうしている間にも罪のない人々が脅かされているかもしれません』

 

 

 

「……ルシア」

 

 

 

彼女は、美しかった。

モンスターの肉体なんてどうでもいい。

迫害しようなんて思わない。

その肉体の嫌悪を凌駕する程に、彼女の正義は美しかった。

 

 

リューは、彼女に憧れていた。

 

 

常に自身の論を、正義を説ける彼女に。

迷いなく仲間の命を救う為に、走り出せる彼女に。

誰もが納得する正義を宿す彼女に。

 

 

リューにとって、彼女は理想だった。

 

 

現実主義者なのに、どこか理想を諦めない。

夢を魅せてくれる。

勇者と、正花を両方備えたような人。

でも、彼女独自の個性もある。

今思えば……彼女自身がその肉体から夢を抱いていたからかもしれない。

戦争人間と、夢を見る少女が同居していたんだ。

 

 

 

―――ルシア。

 

 

 

―――そうだ。彼女は、尊敬に値するエルフだった。

 

 

 

『今!!このオラリオにその両方を有していて、尚且つ強い派閥はいるか!?いや、いない!!【グウィネヴィア・ファミリア】のみ!!』

 

 

『私を殺すことは損失だ!!生かせば、全ての問題から解決してやろう!!』

 

 

『今、この瞬間をもって、人類は私に縋らねば滅びゆくと警告する!!』

 

 

『さぁ、オラリオよ!

 

新時代の―――幕開けだ!!』

 

 

『アストレア様が受領してくださらないのであれば、私は【アストレア・ファミリア】を滅ぼします』

 

 

『選択肢は2つです。私の邪魔をせず改宗の手続きをし私に救済されるか。あるいは、私に滅ぼされるか』

 

 

―――尊敬していた人は、死んだ。

 

 

―――彼女は、『正義』を捨てた。

 

 

―――取り戻すには、戦うしかない。

 

 

―――そして、彼女の救済を待つのではなく、自分達で自分達を救う『英雄』にならなくてはいけない。

 

 

―――時代は変わった。お姫様はいらない。『英雄』を待つ女に、価値は無い!!

 

 

「―――私は、ルシアを止める」

「リオン……!」

 

覚悟を決めて、顔を上げるリューにライラが瞠目する。

アストレアが彼女に近寄る。

 

「リュー。本当にいいのね?」

「はい。皆に頼まれたからじゃありません。私がルシアを取り戻し、皆を救いたいのです。誰かに救われるのを待とうなんて、そんなものは正義でもなんでもない!」

「……そう」

 

アストレアは、目を伏せる。

もう、言うことはない。

流されたのではなく、自分の意思で強く立ち上がったのなら。

その正義はアストレアが愛するものだ。

 

「輝夜。貴女は関係ない。私は、ルシアに救われるのなんてごめんだ。自分の大切なものは自分で救う。そして、敬愛するルシアを取り戻す!」

「それでいい。青二才……いや、一皮剥けたな。お前は、もう青臭くない。自分で掴みにいく者は、自立(おとな)だ」

 

輝夜が頷く。

リューも頷き返した。

もう追い込まれた表情などしていない。

曇りひとつない、迷いのない顔つきだ。

 

「リオン。我々は弱者だ。全員がルシアに追いつくなんて幻想は思い描かない方がいい」

「そうだ、リオン。アタシ達はお前に投資する。ここにいる全員でお前だけを鍛えるぜ!」

「輝夜、ライラ……」

 

リューは感動する。

頼まれたからじゃない。

自分の気持ちで、自分勝手に、立ち上がった。

けれど、その個人の意思を彼女達は自身の成長や栄光(キャリア)を投げ捨てて、支持すると言った。

文字通り、リューに全賭けだ。

責任が生じる。

転けられない。

それでも、今までのように震えたり、怯えたりしない。

寧ろ、その重圧(プレッシャー)が力になる。

今まで仲間を頼り縋ってきたから、こんなこと、思ったことがない。

 

―――彼女たちに、応えたい。

 

「リオン。最強になれ。勇者(ブレイバー)よりも、【猛者(おうじゃ)】よりも。貴様が都市で1番になれ」

「……!」

 

リューは、無言で力強く頷いた。

本来、彼女は【剣姫(けんき)】に並ぶ才能の持ち主だった。

それを過去の栄光になんてさせない。

もう置いてかれない。

期待されたその可能性の先を、魅せてやる。

そして、ルシアよりも強くなる。

彼女の齎す救済よりも凄まじい救済で【アストレア・ファミリア】は私が救う。

死の運命を回避する。

回避できないなら、ダンジョンを完全攻略する。

ルシアが傍にいて、滅びが訪れると言うなら、その運命を打ち砕く。

方法は……これから考えればいい!

 

 

こうして、その日を境に毎日、【アストレア・ファミリア】と数十人の戦闘娼婦(バーベラ)が中庭でリューの命を狙った。

リューは死に物狂いでそれら全てを返り討ちにし、稀に格上のシャクティなども相手にする。

 

 

 

そして、リュー・リオンはLv.5へと至った。

 

 

 

 

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