原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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女神連合作戦会議

 

「珍しいわね、ヴィヴィアン。貴女から声をかけてくるなんて」

「またウチら脅しに来たんかー?」

「……だったらアストレアは呼ばねえだろ」

 

女神の茶会。

ヴィヴィアン主催のそれには4人の女神が参加した。

フレイヤ、ロキ、アストレア、ヴィヴィアンだ。

 

「あら。私のリューも今やロキの子に並ぶわよ?」

「それを言うなら私は没落したわ」

「知らねえうちに入れ替わってやがる。タレイアの糞は元気いっぱいみてぇだな」

 

ヴィヴィアンは肘を膝に置き、上から5本の指でカップを掴み、茶を啜る。

そして、空を見上げる。

 

「テメェら。全員やられたんだろ?だったら悔しいよな。私はあの糞女を泣かせようとしてるんだが、お前らにも手伝わせてやってもいいぜ」

「えらい上からやなぁ。ほんまはウチらが協力せーへんとタレイアに勝てへんくせに」

「ほんとね。素直に頼みなさい。じゃなきゃ乗らないわよ」

「私は別に協力してもいいけど……」

 

ヴィヴィアンを威嚇するロキ。

気に食わないと紅茶を口に含み、睨みつけるフレイヤ。

苦笑いのアストレア。

三者三様だ。

ヴィヴィアンは溜息を着く。

 

「馬鹿か?私は奴が都市(おまえたち)を滅ぼそうが知ったこっちゃない。これは有り難~い提案だ。テメェらは縋り、泣きつく立場なんだよ。この優秀なヴィヴィアン様にな」

「……ムカつくけど、一理あるなぁ」

「ヴィヴィアンが加わるのはデカイわね。確かに貴女の気が変わらないうちに頼むべきなのかも」

「それに、この4人が手を組めば、タレイアをきっと止められるわ」

 

全員が目を交錯する。

決まりだな。

 

「よし、一時的だが【女神連合】とする。それとアストレア。お前に言っておくことがある」

「私に?何かしら」

 

目を丸くして不思議そうにするアストレア。

そんな彼女を前に、ヴィヴィアンは少し勿体つける。

何か察したフレイヤと、黙ったヴィヴィアンに訝しむロキ。

ヴィヴィアンは……顔を上げて、アストレアの目をしっかりと見る。

 

「おそらくだが、敵にルシアがいる。奴はタレイアと繋がっている」

「えっ……」

 

瞠目し、固まるアストレア。

これほど衝撃を受ける彼女はあまり見ない。

フレイヤは同情の目を向け、ロキは目を丸くして驚きつつもアストレアに心配の目を向ける。

アストレアは……瞳を揺らし、動揺した後、俯く。

だが、すぐに息と一緒に飲み込んで、瞼と顔をゆっくり上げた。

 

「……そう。ルシアが」

「あぁ。多分だが、予言の回避のため、仲間を救うための餌をぶら下げられてる。だが、タレイアのクソがそんな親切じゃねえのは周知だ。ありゃ利用されてんぞ」

「……っ!ルシア……」

 

下を向くアストレア。

頭を抱えて魘されてしまう。

ヴィヴィアンも、彼女の心労を思いやる。

 

「アストレア。悪ぃが、受け入れて協力してくれ。奴にはテメェのビンタしか効かねえ。このままじゃタレイアに喰われちまうぞ」

「……っ!そ、そうね。ルシアを……タレイアから切り離さないと」

「そういうことだ」

 

ヴィヴィアンは頷く。

アストレアも返した。

かくして、全員の意思は固まった。

 

後日。

【女神連合】によって集められた4人の眷属を前に、フィンとヴィヴィアンが卓上で意見を交す。

作戦会議だ。

 

「よし。まずは敵の戦力を整理する。少なくとも向こうはLv.8相当以上が3人いる。これを叩く」

「厳しいね。Lv.7すらこちらは枯渇している」

「怪我人は?」

「問題ない。全員無事ではないが、この作戦を聞いて寝ているだけの者はいない」

「上出来だ。寝てるやつがいたら叩き起してたぜ」

 

【ロキ・ファミリア】は全員参加できるという。

【フレイヤ・ファミリア】で動けるのはオッタルだけだが、彼も万全では無いため、サポートに回る。

【アストレア・ファミリア】は全員参加。

【ヴィヴィアン・ファミリア】も当然全員参加だ。

そして。

 

「【グウィネヴィア・ファミリア】からは彼女が参加しますわ」

「……」

 

グウィネヴィアが連れてきたのは銀髪のヒューマン。

名をアイラという。

彼女を見て、リュー達が瞠目する。

 

「アリーゼ……!」

『……!?』

 

他派閥が驚く。

【アストレア・ファミリア】に視線が集まり、そして、アリーゼも2度見される。

アリーゼは……マスクを取って、フィンと向き合う。

 

「久しぶり、フィン。私も参加するわ」

「驚いたな。ギルドの登録では改宗(コンバージョン)してなかったはずだけど」

「あー……色々あって?話すと長いわ。割愛させてくれる?」

 

アリーゼは苦笑いする。

フィンも受けいれた。

数年ぶりに、アリーゼは【アストレア・ファミリア】へと帰ってくる。

 

「リュー。話は聞いたわ。強くなったのね」

「アリーゼ……」

「でも、気に入らないわ!」

「えっ」

「だって、そうでしょう?私が潜入して解決するって話だったのに。輝夜ってば私の事全然信頼してないのね!」

「……団長と違い、リオンはルシアを愛している。愛の方が信頼に値する」

「出たわね。またその理論?輝夜」

「大切なことだ」

 

輝夜はアリーゼよりリューを選んだ。

彼女の方がルシアに届くと思ったからだ。

アリーゼは頬を膨らませるが……やがて、納得した。

 

「まあいいわ。リオン、私からも貴女に頼むわね。ルシアを……止めて。【アストレア・ファミリア】は私達が自分達で救うのよ」

「アリーゼ……わかっています」

 

肩に手を置かれて、瞠目するリューは頷く。

そして、彼女たちは現実と向き合う。

 

「フィン。ヴィヴィアン様。ルシアは……どうやったら女神タレイアから切り離せると思いますか?」

 

アリーゼが問う。

ルシアがタレイアの一味に加わってるであろうという話は既に【アストレア・ファミリア】全員が聞いている。

最初は動揺したが、アストレアのルシアを助けたいという想いに彼女達が賛同した。

そして、今に至る。

 

「まあ、絶対存在(アブソリュート・デア)の全貌を本人に話しちまうのが手っ取り早いな。迷宮完全攻略にはモンスターの力が必要なのに、どうやってLv.12の人間と神の融合だけで解決するんだ?ってな」

「問題はそんなことを女神タレイアが許してくれるかどうか、だね」

「あぁ。間違いなく妨害してくる。あいつの計画の根幹だからな」

「私はその……絶対存在(アブソリュート・デア)?ってやつがイマイチまだ理解できないわ」

「簡単に言えやぁ、恩恵(ファルナ)の限界を超え、神すら超越した生命体になるってやつだ。まあ机上の空論だがな」

「机上の空論を成し遂げようとしているのか……」

「それが女神タレイアの目的だね」

「そうだ。本気で信じて実行しようとしてるから奴はタチが悪い」

 

団長(リーダー)とヴィヴィアンが言葉を交す。

ヴィヴィアンは絶対存在(アブソリュート・デア)の話をタレイアの眷属から聞いた。

心の底から馬鹿馬鹿しいと思った。

結局、タレイアの価値観は昔、ゼウスに女として求められたあの時で止まっている化石だ。

 

「僕たちの勝利条件はルシア・マリーンを取り戻すこと。タレイアが彼女を利用しようとしていることを伝えなくてはならない」

「それと、奴の性格上、その【繁栄の役者(アクターズ)】ってのにお気に入りが1人いるはずだ。そいつを殺せば多少は奴の動きも鈍くなる」

 

ヴィヴィアンはそのお気に入りはルシアじゃないと断言する。

タレイアはルシアそのものに興味が無い。

彼女のようなタイプを好まない。

 

「……マイアね」

「マイア、だと?」

 

フレイヤがボソリと漏らして、ヴィヴィアンが訝しむ。

皆がフレイヤに注目した。

 

「私の派閥を潰した小人族(パルゥム)よ。怪人(クリーチャー)でLv.7相当はあると言っていたわ。けれど……」

 

フレイヤは全て話す。

マイアがアビリティや怪人の力に頼らず、罠とスキルと魔法と技術だけで【フレイヤ・ファミリア】を壊滅させたこと。

特異存在。

恩恵が栄えるこの時代に、神が下界に降りる前の技術で無双する者。

殺し屋、マイア・クワイア。

 

「……そいつだ。間違いねえ。そいつがお気に入りだ。いかにも奴が好むスペックだぜ。というかマイアだと?そいつは確か……」

 

ヴィヴィアンはグウィネヴィアを見る。

彼女も目を丸くしていた。

 

「間違いない。マイアがタレイアのお気に入りだ。タレイアの眷属と1000年前に仲間だった奴だ。そいつで違いねえ」

『……っ!』

 

1000年前、というワードに一同瞠目する。

だが、その衝撃に対し、説明している時間はない。

 

「フレイヤ。そいつはスキルと魔法以外は恩恵にも怪人にも頼らねえって言ったよな?冒険者ではなく殺し屋だと」

「えぇ。言ったわ」

「そうか!つまり、その男は……」

「そういうことだ。ルシア達はともかく、そいつは工夫で殺れる。見えたぜ、勝ち筋……!」

 

ヴィヴィアンとフィンが閃き、手を取り合う。

2人とも口角を上げた。

 

「なになに!?2人だけ頭良すぎて全然追いつけないわ!」

「フィン。俺達にもわかるように説明しろ」

「あぁ。わかってるさ」

 

フィンは頷いて、咳払いをしてからみんなの前に立つ。

 

「これより、作戦を伝える!我々は女神フレイヤの情報による女神タレイアの隠れ家に襲撃する!」

『……!』

「【アストレア・ファミリア】とオッタルはマイア・クワイアを叩け!」

「【フレイヤ・ファミリア】を潰した相手に私たちと【猛者】だけで……?」

「おそらくそのマイアなる人物は『戦闘』ができない!そこを突く!」

『……!』

「それに、予言の影響でルシアの近くに【アストレア・ファミリア】がいるとてめぇらは滅びて戦力が減っちまうからな。ルシアの相手は私とロキの派閥でする」

 

フィンの言葉の続きを、ヴィヴィアンが紡ぐ。

しかし、反論がでた。

 

「待ってください。私を……ルシアのところに配置してください」

「あ?」

 

リューが進言して、ヴィヴィアンが顔をしかめる。

 

「話聞いてなかったのか?テメェが傍によれば、てめぇらは滅びるんだぞ」

「なら改宗(コンバージョン)すればいいじゃない。銀髪の子はグウィネヴィアの眷属になって、あの子の近くにいたけど、何ともなかったんでしょう?」

『……!』

 

フレイヤの言葉に一同驚く。

確かに、彼女の言う通りだ。

 

「アストレア様」

「わかったわ。ロキ、頼めるかしら?」

「ウチかいな!まあええけど」

 

ロキは承諾した。

アストレアが彼女を選んだのは消去法だ。

ヴィヴィアンとグウィネヴィアは今回だけの協力関係。

フレイヤは派閥が崩壊している。

もうロキしかいない。

 

「問題はもう1匹のLv.8相当以上と【アストレア・ファミリア】を襲撃したLv.7相当の怪人(クリーチャー)だな。確か、後者はエインとか言ったか」

 

ヴィヴィアンが盤面の駒を動かして、未だフリーの敵2人を睨む。

Lv.8相当が3人と睨んでいたが、1人がマイアとするなら、Lv.8相当以上はルシアを含めて2人。

あとは【アストレア・ファミリア】の報告で受けたエインだ。

 

「……ザルドに協力を求めるのは、どうだろう?」

「なに?ゼウスのガキか」

 

フィンが口にして、ヴィヴィアンが顔を上げる。

確かに死の七日間の八日目、ルシアは【暴食】と【静寂】を連れてきた。

悪くない案だ。

 

「奴は確かルシアと関係があったはずだ。ルシアの名前を出せば手を貸すだろうな」

「そうか……!だから、彼はリチャードを友と……やっと繋がったよ」

「作戦変更だ。ルシアには【暴食】と【疾風】をぶつける。【ロキ・ファミリア】と私の派閥でエインともう1匹の相手をする」

 

ヴィヴィアンはあくまで足止めだという。

エインはともかく、もう1匹はおそらく倒せない。

ルシア以上の力を持ってるのは確実だからだ。

 

「待って。フィン。私も……ルシア・マリーンと戦いたい」

「……アイズ」

 

ずっと黙りだった包帯だらけのアイズが進言する。

フィンは目を丸くして彼女を見て……頷いた。

 

「わかった。アイズはザルドと【疾風】と共闘だ」

「……ありがとう」

「決まりだな。この構成で奴のお気に入りを叩き、ルシアを離反させる!」

 

ヴィヴィアンの宣言に、全員の意思が固まった。

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