原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

137 / 138
全能のルシア

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!【エアリアル】!」

「おや。前回よりちょっと速いですね」

 

アイズの連撃を後退しながら首を動かすだけで全て回避するルシア。

口では前より強いと言いながら余裕をもって避けている。

そんな彼女を、アイズは睨む。

 

「前は……貴女を人間だと思おうとしていた。人々の為に働いてるのを知ってたから」

「ほう。それで?」

「貴女の半分がモンスターなのは生まれのせいだし。貴女をモンスターだと判断するのは失礼だと思ってた」

 

だから、そう思わないようにしていた。

異端児(ゼノス)と違い、ルシアは半分が人間。

人語を解するモンスターとは違う。

彼女には社会的に立場があり、人権も半分存在する。

幼き頃のアイズも悩んだ。

しかし、彼女がその復讐心をぶつけるには彼女の立場は子供で、ルシアは大人で立場があり、周りの大人は止めた。

今のアイズは自由意志を与えられているが、そんな周りの大人の立派な価値観も相まって、大人になったアイズの中でもあの頃のリヴェリア達は正しかったと納得できた。

【グウィネヴィア・ファミリア】として演説した時も、内容は人類の利益に繋がるものだったから、この人を正義の人と、人間の味方と判断した。

演説でも、人類の利益になるから受け入れろと言ったのはルシアだ。

だから、アイズも納得できたし、受け入れた。

 

 

だが、今は違う!

 

 

「今の貴女は……人類の第一線である【フレイヤ・ファミリア】を潰し、人類に損失と危機を齎す邪悪の味方」

「なるほど」

 

ルシアは、もうなんとなく内容を理解した。

だが、女神タレイアが好む演出のために反撃せず回避し続けながら彼女に続きの台詞を言わせる。

 

「人々を不安にさせる存在。あの女神様に加担するなら……貴女をモンスターだと思うことにする!」

「そうですか。それで。詳細は分かりませんが、対モンスター用のスキルが発動していると。アビリティも更新で上がっていますし、ちゃんと用意してきたんですね」

 

褒めながらも一撃も当たらないルシア。

完全に舐め腐っている。

アイズの最大速度もルシアには止まって見える。

欠伸すら挟める。

どうやら自分は強くなりすぎたらしい。

都市や人類との差が生まれてしまった。

 

「スキルと更新でステイタスは上々ですが、対人戦の心得がまだまだですね。あ、ここ隙空いてますよ」

「かはっ……!?」

 

攻め立てるアイズの懐に一瞬だけ潜り込み、腹に拳を入れた。

アイズの勢いが止まり、数歩下がり腹を抱えて上体を縮こまらせる。

たった一撃でこの体たらく。

弱すぎてルシアはもはや憐れにすら思う。

そんな見下した視線を、アイズに向ける。

アイズも気付き、睨み返す。

 

「その余裕、やめて」

「なら無くさせてくださいよ。頼んで強者に敬意を求めるなんて失礼(ナンセンス)

 

ルシアが首を人差し指を少々左右に振るう。

弱肉強食論の冒険者からすれば常識。

弱い方が悪いのだ。

 

「アイズさん。私に真剣を求め、倒したいなら。Lv.6でも全て完璧なくらいじゃないと相手にもなりません。アビリティだけでなく、対人戦の心得くらい身につけてから来てください」

「なら……今ここで貴女から学ぶ。貴女は、なんだか経験豊富みたいだから」

「喧嘩売ってます?」

 

暗に人と対立することが多かったんでしょ?と言ってくるアイズに、ルシアはピキっと若干青筋を立てる。

昔からどうも彼女とは相性が悪い気がする。

じゃが丸を巡って喧嘩した時から思っていた。

だが、タレイアにアイズの背景予想を聞いて、納得した。

 

 

こいつは―――大英雄(リョーカ)と同じ枠だ。

 

 

「はぁ。ムカつくんですよね、見てると」

「……っ!」

 

一度距離をとって剣を構えるアイズ。

ルシアは後頭部をかいて、適当な壁を見た。

リョーカも、アイズも。

人が望む英雄の生まれをしている。

生まれたその瞬間から、人々に求められる存在。

ルシアと正反対。

少なくともルシアの目にはそう見える。

アイズが水晶の中で発見されたことや、精霊アリアと関係があることを知らないから。

何にせよ、モンスターのルシアと違って、大英雄に纏わる2人を人類は歓迎するであろう。

実に楽な人生(イージー)だ。

なのに、モンスターへの復讐に囚われ英雄化資格を無視する娘、ルシアが喉から手が出るほど欲しい栄光を要らないという娘。

反吐が出る。

 

 

―――ムカつくんだよ!!

 

 

「【サラマンドレア・カリバー《スラッシュ》】!」

「【ヴィア・シルヘイム】!」

 

 

なぞるように、口から竜炎を噴射し、剣の刀身に宿すルシア。

それを横薙に振るい、放つ。

リヴェリアが準備していた防御魔法でアイズを結界の中に閉じ込める。

通路は狭い。

アイズを囲うことで通路を塞ぎ、アイズを守る結界がパーティの盾になる。

しかし、それは紙切れのように砕かれた。

 

「なっ……!?」

「……っ!!」

 

信頼していた障壁が一瞬で破壊され瞠目し、即座に反射で剣の刀身を左腕にあてて防御をとるアイズ。

そこに竜炎の斬撃波が衝突し、それもまた一瞬で、アイズを吹き飛ばす。

 

「うあっ!?」

「アイズ!……っ!!」

「他人事じゃない!防御をとれ!後衛は伏せろ!」

 

リヴェリアがアイズを心配したのも束の間。

すぐに彼女も気付いて杖を構えて防御姿勢をとった。

フィンも指示を飛ばしてガレスを筆頭に幹部が全員前に出る。

 

「うおおおおおお!!」

「ガレス!」

 

魔法をアイズに使い、詠唱終わりで魔法を使えないリヴェリアより前に出て、ガレスが盾になる。

だが、斬撃波が到来すると、そんなガレスすら一瞬で浮かせ、吹き飛ばす。

その波は第一級冒険者達などものともせず、パーティを悠々通過して幹部全員を薙ぎ払った。

 

「ぐあっ!?」

「ちくしょうがぁぁ……!」

「きゃあっ!?」

 

後方に吹き飛ばされる者。

一度浮いて、地に落ちるアマゾネス。

得意の獲物を盾にしたその防御も一瞬で剥がれて上に弾き飛ばされる。

やがて、全員が地に伏せると、ルシアは駆ける。

フィンは焦燥から即座に顔だけ上げて叫ぶ。

 

「来るぞ!ぐあっ!?」

「うあ……!?」

「フィン!アイズ!」

 

ルシアは倒れていたフィンとアイズの首を掴み、無理やり起こした。

そして、2人が武器を振るおうとする前に2人を掲げる。

膝をつき身を起こしつつあるリヴェリアが2人の名を叫んだ。

 

「アイズ!」

「【エアリアル】……!」

「【ヘル・フィネガ―――」

 

「【サラマンドレア・ブレス】」

 

ルシアは零距離から火炎放射(ブレス)を吐く!

アイズとフィンが獄炎に包まれた!

 

「ぐああああああ!?」

「うっ……!あっ……!」

『……!?』

「フィン!」

「アイズーーー!!」

 

炎の中に消えた2人。

リヴェリアとベートが叫ぶ。

しかし、2人を心配している余裕は無い。

その爆炎からルシアが飛び出してくる!

 

「【竜人形態 モード岩石竜】!!」

「がはっ!?」

「うっ……!」

「うあっ!?」

 

ルシアはパーティに突っ込み、格闘術だけでベート・ティオネ・ティオナを通りすがりにノックアウトした。

ベートは顔面を殴り飛ばされ、ティオネは腹に膝蹴りを入れられて蹲り、ティオナは飛び蹴りで壁に叩き込まれた。

全員が一発で気絶。

あとはガレスとリヴェリア。

3人始末したルシアが着地し、半身だけ捻り振り返って2人を見る。

 

「化け物め……!」

「ルシア・マリーン!本当に我々を滅ぼすつもりなのか!」

「はい。滅ぼします」

 

斧を構え、顔を強ばらせるガレス。

未だ、ルシアと対峙することに躊躇いがあり、最後まで問いかけるリヴェリア。

しかし、無情にもルシアは二つ返事で頷く。

リヴェリアが顔を顰めた。

その時。

ルシアが爆炎の中に置いてきたカリバーンを呼び寄せるため、後ろを確認せずに背後に手を伸ばす。

体と顔は目の前の敵に集中していた。

そこへ―――。

 

「うおおおおおお!!」

「は!?」

 

ルシアもさすがに瞠目し、驚く。

その雄叫びに振り返った頃にはもう遅い。

ルシアが呼び戻したカリバーンの柄を掴み、飛んでくるカリバーンに連れてきてもらったフィン。

ルシアはカリバーンを諦めて、竜化させた腕を顔の間に交錯させて、鱗の盾を作る。

そして、半身だけ振り返ったまま、壁方向に後ろ跳びして回避行動をとった。

それも遅い!

 

「僕の槍の方が早い!!」

「うああっ!?」

 

フィンは空中で槍とカリバーンを振るい、ルシアを通過した。

ルシアは斬られた。

しかも……首だ。

 

「うっ!うぅ……!」

 

ルシアがLv.8相当になってから初めて受けた致命傷。

パックリと右首側転を斬られたルシアは、首が開いて顔が傾いている。

かろうじて喉は避けたが、痛くて仕方ない。

 

「フィン……!」

「こやつ、やりよったわ!」

「先程の砲撃で瀕死だ。【ヘル・フィネガス】を使っても放てるのは今の一撃がかろうじて。けど、その一撃で急所を討てた」

 

カリバーンを手放してリヴェリア達の前に着地したフィン。

カリバーンはそのまま宿主に呼ばれた行き先を見失って地面に滑り落ちて、回転する。

フィンはリヴェリアとガレスの賞賛を受けながら、片手で制止して、身を起こす。

振り返った彼は、ルシアを見る。

 

「ぐっ、ぐぅ……!引力に引かれるカリバーンを無理やり振るうなんて……!」

 

苦しそうに顔を顰めるルシア。

頭を戻して、グチャっと音を立てながら首を無理やり引っつける。

だが、穢れた精霊の影響を受ける怪人(ゲテモノ)ではないため、繋がったりはしない。

首の傷口を抑えながら彼女はフィンを睨む。

 

「フィンさん。私を殺すつもりで討ちましたね!?」

「君だって散々僕達の命を狙っただろう。まさか逆は許せないなんて洒落はなしにしておくれよ」

 

髪をかきあげるフィン。

全身から始まり、顔も大部分が火傷を覆い、痛々しい。

しかし、彼は片目を瞑りながらも残った瞳に闘志を宿す。

この男に、容赦はない。

悪に身を落としたと自嘲し好き放題暴れて開き直りながらも、中途半端に過去の栄光に縋りまだ自分が正義の側にいて皆の仲間だと無意識に都合よく解釈する女。

だから、フィンの本気の殺意に驚く。

自分に情がないことに戸惑う。

フィンに『可哀想な悪』を思いやる心などはなから持ち合わせていない。

悪事という結果を残したら躊躇なく罰する。

それが勇者の流儀だ。

可哀想な背景など、悪行を起こ者の背後にあるならそれごと斬る!

 

「まあ、殺す気で本気を出したところで力の差を考えれば君を仕留めることは無理だ。その確率の高さに賭けたのはあるよ」

「しょ、正気ですか」

「なに。実際その通りだったんだ。安心したまえ。それと、いつまでも味方面はやめてくれないか?」

「……っ!」

 

フィンの言葉にルシアは泣きそうな顔になる。

最前線の指揮官(リーダー)からの見放された宣言。

それは、なあなあになっていたルシアの立場を明確化させる一言。

ルシアは、もう人類の味方、【アストレア・ファミリア】の妖精軍師じゃない。

もうそこに戻れる立場(ポスト)はない。

そんなこと、最初からわかっていて、覚悟を持って正義を捨てて悪に堕ちた。

……そう、思い込もうとしていただけだった。

結局、予言に仲間を人質に取られ、仕方なく闇堕ちしてるだけの彼女に、地位と栄光への未練は断ち切れない。

 

「僕は君を完全に敵だと思っている。まあ、今回の目的は君を救い出すことだけどね」

「へっ?」

 

目を丸くするルシア。

見放されたと絶望したが、風向きがかわった。

フィンの考えは正義側からすれば単純だが、ルシアの視点では支離滅裂に見えて意味がわからない。

そんなルシアの混乱を無視してフィンは続ける。

 

「君を見捨てない。だが、もう味方ではない。仲間ではあるけどね。だから、君を女神タレイアから解放して目を覚まさせ、然るべき処置を受けてもらう。このまま捕らえて、その罪を公の元で裁く!」

「……っ!」

 

顔を顰めるルシア。

やがて、彼女は開き直る。

 

「そうですか。私はもう味方ではありませんか。まあいいです。最初から覚悟は決めていました。もう元の居場所に戻れないことも、地位を失うことも」

「その割に甘い認識だったけどね」

「はい。認めます。が、未練はここで捨てます。思い出も振り返らない」

 

ルシアは、意識を変える。

この首の痛みは、反省だ。

これを修復する時……甘さも捨てる。

 

「【生きる者よ、死にゆく者よ。我は其方等の生を願う、その命に咲く花を枯らさない】」

「詠唱じゃと……!」

「しまった!彼女は全癒魔法の使い手!あの致命傷も治せる!リヴェリア!」

「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風を巻け】」

 

フィンが訴える前から詠唱を始めているリヴェリア。

フィンはさっきの攻撃で力尽き、もう動けない。

代わりにガレスが飛び出す。

 

「ぬおおおおおおぉぉぉぉ!?」

「ガレス……!」

「……【もし、呪われし我が身を受け入れるなら。其の身体を治そう】」

 

斬りかかったガレスを等身大にした竜の尾で叩き落として、弾き飛ばす。

自身の頭上を通過した彼に、フィンが叫ぶ。

その間にも、2人の詠唱は進む。

 

「【閉ざされる光、凍てつく大地】」

「【父の呪い、塔の呪い、龍の呪いを有した我が求める】」

「【吹雪け三度の厳冬】」

「【理想を身に宿し者、我の名はマリーン】」

「【我が名はアールヴ】!」

 

リヴェリアの方が先に詠唱を終えた。

彼女は、キッ……!と目の前のルシアに狙いを定める。

 

「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」

「【我は冠位(グランド)の称号を持つ者也。花の魔術よ、命を咲かせたまえ】」

 

凍てつく氷結が、ルシアに迫る。

ルシアの詠唱は終わったが、魔法の発動が間に合わない。

しかし、彼女は口角を上げる。

 

「【アヴァロン・リビヴァル】【サラマンドレア・ブレス】」

「なっ……!?魔法を使用しながら竜の息吹もだと……!」

 

ルシアは修復で首が繋がり、他も全回復した。

同時に棒立ちのまま吹いた火炎放射がリヴェリアの凍結魔法を蒸発させる。

湿度で空気に熱が篭もる中、彼女は笑う。

 

「ハッハー!すみませんねぇ!竜の力は恩恵(ファルナ)関係ないんで。いついかなる時も別物として使えるんですよ。そして、この全快。せっかくつけた傷も無意味。Lv.8相当の竜人だけじゃない。私は、回復師(ヒーラー)としても最強なんですよ!忘れてました?」

『……っ!』

 

調子に乗って嗤うルシアに、フィンとリヴェリアが顔を顰める。

振り切ったルシアは、もはや悪役の仕草も厭わない。

 

「もう都市の正義も、人間社会での立場も必要ない!全癒!千里眼!Lv.8相当!推定レベル7の階層主級の力!まさに完全無欠!最強!【全能(チート)】!!誰も私に敵わない。誰かに受け入れてもらう必要なんてない!私はこの力で、一人で!欲しい未来を掴み取る……!」

 

ルシアは、拳に力を込めてその拳を見つめる。

そして、自暴自棄の暴走高笑いの始まりだ。

 

「はははは!ははははっ!誰にも邪魔はさせない!私が全能です!!」

「―――何が全能やねん」

 

思わず突っ込みを入れたのは、最後方にいた思わぬ神物(じんぶつ)

発言主のロキに、彼女の眷属も目を丸くして見る。

 

「ロキ……」

 

フィンは、自身を通過して前に出てくるロキに、珍しく頭を垂れた。

ロキはそれを見て見ぬフリをする。

そして、ルシアと対峙する。

 

「あんな、全能っちゅうんは力が優れてるだけとちゃう。邪神を散々相手にしてきて気づかんかったか?」

「はい?何の話ですか」

「いいから聞けや。邪神共ですら、追い詰められて、慌てふためいたり諦めたりすることはあっても絶望はせんかったやろ」

「……」

「そういうことや。全能の存在っちゅうんは精神も異常で成熟しとんや。自分は力だけや。そんなもん全能ちゃう」

 

ロキが瞼を開ける。

細い目から覗かせるその瞳は、鋭く、恐ろしく、凄みがある。

彼女の眼に、ルシアは捉えられる。

そして。

 

「自分みたいなのはな。ただの"暴力の化身"や」

「……なんでもいいですよ。適当に思いついたの言っただけなんで。誇り(プライド)刺激してすみませんね。とにかく、私の勝利は揺るぎません」

「それはどうかな?」

「はい?」

 

ロキの後ろのフィンがもう動けもしないくせに口は回る。

ルシアはいい加減イラついてきて、ロキもフィンも消し去りたくなってきた。

だが、彼の言葉がルシアの殺意を止める。

 

「君は自分の力で未来を切り開き、望みを叶えると言った。しかし、実際は女神タレイアに頼り、彼女の計画に縋っている。君は自分の力なんて使ってない。他者を頼り、大事な人達の未来を他人に委ねている」

「……っ!」

 

瞠目する。

図星だ。

だから、リョーカという保険を用意した。

それでも、不安は付き纏い、結局タレイアに命運を握られてるのは殆ど変わらない。

故に彼女にこうして従っている。

保険を用意してくるくせに、契約が破綻になるのを恐れている。

 

「敷かれたレールの先に、本当に君の仲間を彼女が助けてくれると思ってるのか?利用されてるだけだとは思わないのかい?」

「……利用しているのは私の方です」

「君は使い捨ての手駒にされてるだけだ。早く気付け」

「利用しているのは私の方です!」

 

ルシアが吐き捨てる。

全員が察した。

もうこいつはダメだと。

完全に外部からの干渉をシャットアウトしてしまっている。

このルシア・マリーンの目を覚ますのは、かなり難しい。

 

「……そうか。なら今はもうこれ以上何も言わない。君を倒して、保護する。そして、落ち着いてから話そう」

「そんな必要はありませんし、私を倒す?笑わせないでください。雑魚共が。貴方達では力が足りません」

 

失笑するルシア。

しかし、笑うのはフィンだ。

 

「僕達は君を倒す。何がなんでも。絶対に。なぜなら君を大切な仲間だと思ってるからだ」

「だから、無理ですって。諦めろよ、雑魚が」

「確かに僕達は弱い。現に僕はさっきの一撃で力尽きた。だから、ここからはもう1人の主人公に譲るよ」

「……は?」

 

何言ってんだ?とルシアが顔を顰める。

しかし、次の瞬間、背後に圧を感じた。

いや有り得ない!

まさか……!

 

 

 

 

 

 

「【エアリアル】」

 

 

 

 

 

 

火事を全て風で吹き飛ばして、姿を現すは剣の姫。

アイズ・ヴァレンシュタイン健在に、ルシアは動揺する。

 

「なっ……ば、バカな……。あの至近距離でブレスを食らって、フィンさんならともかく、アイズさんが生きてるはずが……!」

「―――負けない。貴女にだけは」

 

アイズは顔を上げて、ルシアと向き合う。

そして、ルシアは気づいた。

 

 

彼女の『風』が……何か、"変"だ!

 

 

「私は、負けない。人々を脅かすモンスターにも、怪人にも、貴女にも。私は―――負けない」

 

 

アイズ・ヴァレンシュタイン。

彼女は【剣姫】となってからこの日、初めて。

精霊の加護を、纏う。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。