原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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覚醒アイズ

 

アイズの纏う風はエアリアルじゃない。

正確には、エアリアルの上にもっと上位の"何か"がある。

ハイエルフで、【冠位魔士(グランド・メイガース)】のスキルを持つルシアにはわかる。

その瞳には、他の者に見えない精霊が見える。

 

「バカな。アイズさんに精霊の加護……?なぜ……」

 

困惑するルシア。

ありえない。

リョーカと同じ現象がアイズに起きている。

リョーカならまだしも……彼女にこんなことが起こるはずがない。

 

「……」

 

だが、フィンは違う。

なんとなく脳内で仮説を立てていた。

リョーカ・アーサと関わったことで精霊がアイズに気付いたのか。

真相はわからないが。

彼女の精霊がアイズの……いや、彼女が母親と呼ぶ精霊アリアに纏わる精霊がアイズに力を貸してくれるようになった。

それを、さっき知った。

そもそもルシアのブレスを零距離で受けて生きていたのも精霊の風のおかげだ。

そう。

そうして、最初に合流してくれた精霊も―――『風』だった。

 

それもただの精霊ではない。

精霊女王アリアが呼ぶ、風を司る中で最強の精霊。

 

 

―――『風の精霊王』

 

 

「【エーラ】」

「……!?」

 

ルシアは瞠目する。

それは、リョーカの精霊だ。

エーラもアイズに力を貸している。

エアリアル+風の精霊王+エーラ。

今、アイズは風の加護を3重で受けている。

しかもどれも1級品。

 

 

そんなアイズの今の状態は―――Lv.8に匹敵する。

 

 

「うっ、ぐっ……!」

 

アイズが顔を顰める。

ビキビキと肉体が風に駆り立てられて音を立てる。

血管が走る。

風の精霊王の力は、今のアイズには扱いきれない。

エーラに治癒と相殺の付与をしてもらい、なんとか身体が引き裂けずに繋がっているが、もって5分だ。

その5分で決着をつけなくてはいけない。

ルシアを上回ったわけではなく、互角になっただけだというのに。

 

「な、なぜリョーカさんの精霊まで……」

「……貴女を倒せって言ってる。貴女を憎むリョーカが私に力を貸してくれてる」

「なっ」

 

ルシアが言葉を失う。

リョーカはアイズに賭けた。

今、ちょうど敵対している血縁を、頼ったのだ。

彼女は戦いが嫌いだが、その戦いを他人に押し付けたところは見たことがない。

苦しいのを知ってるからだ。

なのに、アイズは頼る。

血縁が結んだ絆だ。

 

「グウィネヴィア様に聞いた。貴女はリョーカを虐めてるって。無理やり戦わせてるって。許せない。絶対に、許さない」

「そうですか。ヴィヴィアン様は私との契約を破棄しましたか」

 

その事を暴露するということは、ルシアを切り捨てるということと同義。

グウィネヴィアが漏らしただけだろうが、アイズがここで口にしたということはヴィヴィアンも良しとしたのも想像できる。

確かに最初からヴィヴィアンはリョーカを暴力で従わせるルシアに難色を示していた。

ルシアがメリットを提示し、最後に呑み込んだだけで、ヴィヴィアンにとって最初からルシアは相性が悪かった。

黒竜討伐にも、最近こそ軟化しつつあるが終始ルシアは要らないの一点張りの根幹は変わってない。

ヴィヴィアンにとって、ルシアはいつでも切り捨ててもいい存在だったのだろう。

そんなことルシアもわかってる。

だから、鼻で笑うだけで済ます。

 

「何だか親近感が沸く、そんな程度のリョーカさんの為に怒ってるわけですか。お優しいですね、アイズさん」

「うるさい。そうやって煽るのも後に引けなくなってるだけ。もう効かない」

「……」

 

ルシアが舌打ちする。

ついでため息も。

めんどくせぇ。

大体なんでここまで対抗してくるのか意味がわからない。

 

「アイズさん。何でそんなに私に執着するんですか?負けて悔しいからですか?リョーカさんの為ですか?理由薄っぺらくないですか?命をかけるには足りないと思うんですけど」

「理由は単純。貴女が人々を脅かすから」

「へぇ。そんな正義に高尚だったんですね。知りませんでした」

「……わかるから」

「はい?」

 

ルシアは顔を顰める。

彼女はアイズの背景を知らない。

モンスターに奪われる絶望感。

アイズの怒りの根源。

人々に同じ思いをさせたくないという誓い。

それらを知らない。

でも、リョーカは知ってるって言ってた。

あの時。

あの言葉。

本当は凄く共感した。

感動した。

だから、彼女が好きになったし、今でも彼女を想う。

助けになりたいと思うのも……血筋じゃない。

彼女自身が良い人で、好きな人柄だったから―――彼女を傷つけるお前を許さない!!

 

「わかるから。強い者達に踏みにじられて、苦しむ人達の気持ちが……わかるから。だから、貴女に勝って、皆を守りたい」

「はぁ?」

 

意味不明。

ルシアが表情を歪める。

それも仕方ない。

彼女はあの時、【静寂】をリョーカに任せてダンジョンを優先した。

居合わせなかったから、知らないんだ。

 

「まあいいです。とにかく倒します」

「倒されない。倒れるのは……貴女」

 

構える2人。

アイズの強化には驚いたが、所詮は互角。

それにこんな形態が長く続くとは思えない。

それくらいルシアにも看破できる。

強くなっても肉体はLv.6のものだからだ。

ならば、時間を稼いでくちた所をさっさと倒して全員潰して次に行く。

忙しいんだ、こっちは。

 

「【竜人形態 モード斬撃竜】ッッ!!」

「【エアリアル・エーラ】!!」

 

瞬間、視認できない衝突が何度も交錯する。

ルシアVSアイズ。

Lv.8の疑似戦闘(シミュレーション)

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】……!」

「来い、カリバーン……!」

 

互いに刃を振るったあと、交錯して背を向けながら着地する。

それまで腕の竜刃で斬り結んでいたルシアが、背中越しに手を伸ばし、カリバーンを呼ぶ。

直後に半身を振り返り、そのまま地を蹴り反転して駆ける。

アイズも膝を伸ばしたまま地を蹴り、反転して風を纏い直す。

デスペレートとカリバーンが衝突し、競り合う。

 

「【サラマンドレア・カリバー《スラッシュ》】!」

「なっ……!?」

 

競り合ってる途中、ルシアが口から火を噴き、剣に炎を宿す。

そして、一瞬剣を浮かせて、間髪入れずに力一杯叩き斬る。

それでアイズのデスぺレードは押されて後退。

ルシアは叩ききったその軌道をすぐに戻し、なぞるようにもう一度振るい、竜炎の斬撃波を放つ!

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!」

「なっ……!」

 

今度はルシアが目を見開く。

アイズは風をさらに纏い、敏捷を上げた。

無理をして手に入れたスピードで身体を柔軟に扱い、若干仰け反って剣を盾に斬撃波を後方に弾く。

しかも、そのまま上体を戻してさらに攻めに入る。

 

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!」

「は!?」

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!!」

「ちょ……!」

「【吹き荒れろ(テンペスト)】!!!!」

「ふざけっ!?ぐっ……!」

 

アイズは自身の肉体がビキビキと音を立てるのを無視して風を足していく。

どうせ時間制限があるんだ。

この一瞬で果てても、時間切れが来ても同じ。

なら、せめて相手を倒せる方を選ぶ!

加速を重ねていくアイズの猛攻にルシアはその剣を咄嗟に捌く。

だが、最後の突きには剣を盾にして押し込まれてしまった。

ルシアが初めて後退する。

 

「……っ!てめぇ……!」

「次で、決める」

 

アイズが構える。

それは必殺の一撃。

その一撃に全てを賭ける。

残り時間はいらない。

ここで倒さなければ、ルシアに勝てない!

 

 

「―――【リル・ラファーガ・ティターニア】」

「ちょ、待っ」

 

 

待たない。

アイズの必殺の突きは、景色を白飛びさせた。

そして、壁を突き破り、その剣の突きはもはや砲撃の威力を誇る。

それが、ルシアに迫る。

 

「うわあああああああああああ!?」

 

回避不可。

間に合わない。

ルシアは直撃し、白景色に呑まれた。

 

 

……やがて、瓦礫が残り、土埃が降る。

ルシアは遥か別フロアへと吹き飛んだ。

 

 

「……っ!……っ!勝った、よ……」

「アイズ!」

 

リヴェリアの声が遠のく意識の中、響く。

アイズは倒れた。

さっきのが全霊の一撃だった。

精霊の加護も解け、もう1ミリも動けない荷物となって眠りにつく。

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