原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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ダイダロス鬼ごっこ

 

「ぐあっ!?」

 

別ブロックから壁を突き破り、フィルヴィスが転がってきた。

彼女の後から姿を現すのはザルドとアルフィア。

 

「ザルド!それにアルフィアまで。君も来てくれたんだね」

「……ルシアの音を聞いたまで」

 

久しく現れたアルフィアに一同驚く。

そもそも生きてることすら周知ではないが、そこを突っ込むのは後だということは周知。

全員が流して、2人にやられたエルフを見る。

 

「ぐっ……!こんな、ところで……!私は、人間に……普通のエルフに……戻りたい」

「……っ!」

 

仮面が外れ、エインの醜い姿で涙を流しうつ伏せになるフィルヴィス。

その近くにたまたまいたレフィーヤは、そんな彼女の姿を見下ろして、瞳が揺れる。

彼女とは初対面なのに、なぜか、醜い姿からエルフに戻りたいと願う彼女を可哀想だと思えた。

 

「トドメは俺が刺す。お前はあまり無理をするな」

「では、任せる。私の為に馬車馬のように働け」

「遠慮はないのか?」

 

言い出したものの、配慮をふんぞり返って受け取るが如く一切有難いとも思わない彼女にザルドは二度見する。

まあ、彼女の性格は今に始まったことではない。

ザルドは剣を持って、フィルヴィスに近づき、フィルヴィスも死が近づいていると察知して涙を浮かべて首を横に振る。

 

「待ってください!」

『……!?』

 

突然割って入ってフィルヴィスを庇うレフィーヤ。

その背中を驚いた目で見るのも束の間。

彼女は怪人エイン。

隙だらけの背中を前に、刃を研ぎ澄ませないわけがない。

それでも、その刃先が彼女の背中を貫くことはない。

 

「待ってください!この人を殺さないでください!」

「レフィーヤ、何をしている!そこをどけ。ザルドがトドメを刺す!」

「ど、どきません!例えリヴェリア様でも……譲れません!」

「なっ……」

「人に、エルフに戻りたいって至極当然じゃないですか。こんなの……ここで殺されたら、あまりにも……!可哀想です!!」

「……っ!!」

 

レフィーヤの叫びが響きわたり、フィルヴィスの動きも止まる。

剣先は、レフィーヤの服を掠めてるだけ。

振り返る彼女は、その剣を見て、一瞬目を見開くも、すぐに切り替えてフィルヴィスの醜い手を両手で取った。

 

「なっ……」

「貴女は、私が守ります!」

「何を言っている……?私達は今日初めて会ったのだぞ?なぜそこまで私を庇う」

「だ、だって……こんなに綺麗なのに、綺麗だったのに、綺麗な人がこんな姿になって、戻りたいって思うのは当たり前じゃないですか」

 

レフィーヤはフィルヴィスの白い肌の部分に触れる。

フィルヴィスは目を見開き、その瞳全体に目の前のエルフの姿を映す。

 

「だから、女神様に力を貸しちゃったんですよね?私……そんな貴女を責めれない」

「ば、馬鹿か。お前は。私は敵だぞ」

「なっ……なんですって!馬鹿じゃありません!」

 

レフィーヤが起こる。

フィルヴィスは……いつの間にか頬を緩めていた。

 

「ははっ。ははは……!」

「あー!なんで笑うんですかっ!」

「レフィーヤ。お前、やっぱり馬鹿だよ」

 

フィルヴィスは笑う。

レフィーヤは怒りながらも笑う。

2人は、戦場にいることを忘れている。

 

「……トドメを刺さないのか?」

「奴はもう倒された。戦う意思はない」

 

ザルドがアルフィアの元に戻ってくる。

しかし、剣は収めない。

2人は、倒れているアマゾネスを見る。

 

「かぁ……りぃ……」

 

傷口から妖精の呪いが発生し、魔力の蝶が待っている。

リョーカの必殺の威力はLv.8相当。

深刻なダメージは与えられたが、テシレアはその程度では死なない。

まだ寝ているが、次第に身を起こすだろう。

今も虚ろな目で瓦礫を掴み、カーリーを見ている。

 

「これで怪人達(クリーチャーズ)は全滅……いや、主目的(メインディッシュ)が残り1匹か」

 

戦況を見渡して、ヴィヴィアンが口元を拭う。

そして、指示を出す。

 

「アマゾネスの女王にトドメを刺すゼウスのガキ以外で、動ける奴はこの趣味の悪ぃ浮遊迷宮を探し回れ!マイアを見つけて、殺せ!!」

『……!』

 

ヴィヴィアンの怒号に一同頷き、捜索に当たる。

タレイアもどこかにいるはずだ。

どっちも見つけて叩く。

 

「どこにもいません!」

「もっとよく探せ!」

「はい!」

 

報告するラウルにも命令を飛ばすヴィヴィアン。

しかし、この空中迷宮はまだ1%も完成していないはず。

そこまで広くもなければ隠し部屋なども多くはないはず。

そんなに難しい捜索じゃない。

なのに、見つからない。

ヴィヴィアンは顎に手を当てて考える。

タレイアならどう考える?

Lv.8前後の3人がやられた今、彼女が即座に手を打つとしたら―――

 

「地上か!」

「……!」

 

ヴィヴィアンの呟きにフィンが反応する。

2人は目を合わせる。

この2人ともが反応したとなれば間違いない。

 

「降りるぞ、テメェら!タレイアは知らねえが、マイアは地上だ!探し出して殺せ!」

 

そう言って一同来た道を戻る。

しかし。

 

「階段がねえ……!」

「先に手を打たれたな」

 

地上へと伸びる階段が引っ込められていた。

アルフィアも下を見下ろす。

今、この空中迷宮は天空の鳥籠だ。

やられた。

 

「関係ねえ!飛び降りゃいいだろ!」

「バカ!この高さよ!?いくらなんでも―――」

「お主ら、どけぇぇぇ!!」

『……!?』

 

全員を退けて、出来た通路を盾を持ったガレスが走る。

外に向かって。

 

「ぬおおおおおおおお!!」

「マジかよ!おっさん!」

「ワシに掴まれぇ!!」

『……!』

 

ガレスの指示にベートとティオネ、ティオナが頷きあい、彼に飛びつく。

そして、ガレスは跳躍した。

ベートの雄叫びが聞こえ、ガレスは3人を連れて地上へと急降下していく。

それを見たヴィヴィアンは。

 

「アルキュオラ、テメェも続け!御門もいけ!」

「げー!拙者は遠慮するでごじゃる。ほら、この通り軟弱ゆえ―――」

「つべこべ言うでねえで!」

「そうだ、私が行けって言ったら二つ返事でささっと行け!殺すぞ!」

「ごじゃるーーーーーーーー!!もう処刑みたいなもんでごじゃるこれ!!」

 

アルキュオラが飛び降りる。

御門はヴィヴィアンが蹴り落とした。

ガレスは着地した時に頑丈ゆえ耐えるだろう。

アルキュオラは着地した時に潰れるだろうが、まあその後血まみれで這い上がるだろう。

御門は……知らん。

忍者だからなんやかの小細工で上手く着地するだろ。

多分。

 

「……はぁ。致し方ない」

「下は任せる」

「任されたくはない。どっちもお前が行け」

「最近我儘になってきてないか?」

 

女のお姫様横暴に振り回されるザルド。

アルフィアは冗談だとため息をもう一度ついて降りた。

彼女の音の魔法なら着地前に衝撃を殺せるだろう。

 

「うおおおおおお!?うっ!?ぐおおおお!?かはっ!?」

「ぬ、ぬぅ……!」

「痛っっってぇぇぇぇ……!」

「ティ、ティオネ助けて……」

 

最初に着地したのは【ロキ・ファミリア】。

都市で土埃が上がり、何事かと人集りもできる。

ベートは着地前に衝撃を殺すためにガレスに投げられ、家屋に突っ込んだ。

ティオネとティオナはガレスが盾で地面と衝突したあと、彼がつかみ寄せて懐で守ったが、ティオネは足を地面に諸に打って痺れているしおそらく中もやってる。

ティオナはガレスの腕から漏れてゴミ箱に突っ込み、暗闇の中。

 

「ちくしょおおおお!この程度で寝てられっか!おら、テメェら起きろ!」

「……もうちょい静かに起こせんか。老人の頭に響くわい」

 

最初に身を起こしたのはベートとガレス。

しかし、ベートは1度直立したはいいもののふらついている。

 

「痛てて。ティオネ、大丈夫ー?」

「これが大丈夫に見えんならあんたの目は節穴ね……」

 

ゴミ箱から復帰したティオナが足を抑えているティオネに問いかける。

彼女は動くのも辛そうだ。

 

「ティオネは無理じゃの。すまん。ワシのせいじゃ」

「別にガレスのせいじゃ……。私はいいから、あいつを探して早く殺さないと」

「だな。足手まといのことなんか気にしてられっか」

「バカモン。もうちょい言い方っちゅうもんがあるじゃろうが。まあ、ティオネの言うことは一理あるの」

「ごめんね、ティオネ」

「いいから。行きなさい」

 

ティオネがティオナを押して、3人は渋々その場を離脱する。

そうこうしているうちにもマイアは逃げてしまう。

 

「探すっつっても都市は広れーぞ。これ全部探すのか!?」

「その間に逃げられるのがオチじゃの。さて、どうしたものか……」

 

ガレスが考える。

するとそこへ。

 

「見つけたでごじゃる」

「あ?マジかよ!ていうかテメェ……」

「【ヴィヴィアン・ファミリア】のニンジャというやつか。でかしたぞ」

「ついてくるでごじゃる!」

 

一同は駆け抜ける。

都市中がその姿を何事かと見ていた。

そして。

 

「いた!」

「あ?どこだよ」

「奴は大衆に溶け込む天才じゃ。目で見つけようとするな!」

「路地裏に逃げたでごじゃる!」

 

御門が先頭に出て、路地裏へ入る。

ガレス達も後に続く。

すると。

 

「うわー!もう来ちゃったの!?タイムタイム!話し合おうよ!」

「惑わされちゃダメでごじゃる。話術も……全て自然になり、隣人となるでごじゃる」

「あらら。バレちゃったか。ていうか君、忍者?久しぶり見たなぁ。まだ生き残りいたんだ」

「純粋な忍者は拙者が最後でごじゃる」

「なるほど。だから、僕を見つけられたんだ」

 

ナイフを手に口元を緩めるマイア。

でも、目は笑ってない。

御門が制止して、ベート達が前に出ないようにする。

マイアはこの通路に入るのを待っていた。

不意打ちしかしない彼が、何も罠を張っていないわけがない。

 

「あれー?僕を捕まえるんじゃなかったのー?どうしたのかなー?」

「捕まえるなんて一言も言ってないでごじゃる。殺すとは言ったでごじゃる」

 

御門が睨み、告げると。

殺す、というワードにマイアが反応し、初めて笑顔が消える。

 

「僕達本職(プロ)を前にして、暴力で嬲り殺すしか脳がない奴らが簡単に口にするな」

「あー、仕事大好き人間でごじゃったな。誇り(プライド)持っててえらいでごじゃるなー」

「僕にはこれしかないんだ……!」

「生憎、拙者は仕事嫌いでごじゃる。あと、暴力で嬲り殺す生き方はしてないでごじゃる!」

 

御門が跳躍する。

そして、壁を蹴って、あらゆるワイヤーを掻い潜り、何も罠が張られていないマイアの頭上から彼を狙って落ちる。

 

「うわ、まじぃ!?忍者、やば!」

「逃がさんでごじゃる!皆は迂回ルートを!」

 

御門が得物を振り下ろし、着地した頃にはマイアがLv.7相当の身体で地を蹴り、後退していた。

その後を御門は追い、後ろのガレス達には罠を避けていくように告げる。

 

「そっちにはいかせないでごじゃる!」

「どぅあ!?クソ……!」

 

罠を設置しているルートにはいかせない。

御門が回り込み、何度も道を塞ぐ。

そうしてマイアが逃げていく中、御門の中で確信があった。

 

「今でごじゃる!拙者ごときが立ち塞がって衝突を選ばらないということは、ヴィヴィアン様の見立て通り、身体能力と技術はあっても戦闘はからっきしでごじゃる!」

「そいつは朗報だぜ!ギャヒッ!」

「うわ!?」

 

ベートが降ってきて、その蹴りを避けて尻もちをつくマイア。

そのまま慌てて身を起こして目の前の通路に入り、2人から逃げる。

しかし、その先も。

 

「ぬおおおおおおおお!!」

「嘘嘘嘘嘘!!やば!!」

 

分岐で斧を振り回しながら迫ってくるガレスに、マイアは真っ青になって反対方向へ走る。

 

「逃がさないよっ!」

「うわあ!?無理無理、死んじゃう!死んじゃう!!」

「待てー!」

 

繰り広げられるダイダロス通り鬼ごっこ。

馬鹿デカイ得物を振り回るティオナ。

間合いに入ったらミンチにされそうなガレス。

食らったら胃に穴が開きそうな蹴りを繰り出すベート。

そして、狙い通りの道を通らせてくれない忍者。

 

こんなの無理ゲーじゃん!!

 

「―――オラもいるべ」

「うわっ!?」

 

突然、前に現れた血まみれのアマゾネス。

真っ赤に染まりすぎてもはや誰かわからない。

とにかく突っ込んで勝てる相手じゃないのはわかる!!

 

「怖すぎ!何あれ!ホラー!?」

 

マイアはまた別の道に逃げる。

しかし、そこは静かすぎる。

 

 

「【福音(ゴスペル)】」

「うわぁぁ!?って、どぅええええ!?こんなのアリーー!?」

 

 

宙に浮くマイア。

隣の路地裏に落ちて、尻もちをつく。

 

「いてて……」

「待っていたぞ、マイア」

 

その道で待機していたのはオッタル。

全員病棟送りとなった仲間の仇を討つため、この好機を狙っていた。

 

「あれー?オッタルくん戦えるくらい元気なの?ビックリ。凄いね。やっほー!」

「……っ」

 

オッタルは武器を振り下ろすも、彼の笑顔を前に固まる。

マイアは口角を上げた。

これが彼の技術、【隣人ノ如(ネイチャー・ムーヴ)】。

1度懐柔されてしまえば情が湧いて殺せない。

 

「……っ。クソ……!」

「あれれ?どうしたの?」

 

マイアは嘲笑い、挑発しながら背中の後ろに回した手で仕込む。

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