原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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後悔と共に鈴が鳴り止む

 

「はっ……!はっ……!」

 

【アストレア・ファミリア】に逃がしてもらったルシア。

そんな彼女を追い、屋根から屋根へ飛び移る者あり。

ルシアも千里眼で捉える。

 

「あはっ。クズはっけ~~~~ん!」

「ユウカさん……!」

 

現れたのはユウカ。

彼女は飛び降りて、ルシアに斬りかかる。

 

「死ね!悪魔!」

「……っ!貴女まで、どうして……!」

 

ルシアはモード岩石竜でユウカの斬撃を止める。

硬化した腕で剣を受けた、その下からユウカは顔を覗かせ、口角を上げた。

 

「あはっ。口の動き、徹底した甲斐あったなぁ。千里眼ってほんと厄介。でも、厄介なのは"視覚"だけだよね~!」

「最初から裏切っていたわけですか!」

「裏切るって言うかぁ……そもそも最初からルシアちゃんの暴力に賛同したことなんてないからっ!!」

「……っ!」

 

ルシアはユウカを抑えながら背後も一瞥する。

ランとシロウが迫ってるのはわかってる。

それら全てを―――モード飛竜の風で薙ぎ払う!

 

「モード飛竜!」

「……っ!もお~!めんどくさいなぁ、ドラゴンの力!」

「厄介。不快。邪魔くさい」

「……!」

 

飛びかかるのをやめて、ルシアから距離をとる3人。

そんな3人に囲まれて殺意に晒されるルシア。

ジリジリと間合いを保つ彼らに、ルシアは拳を構えて警戒する。

 

「……っ!貴女達の相手をしている余裕はありません」

「そっちになくてもこっちにはあるよ~~ん!!」

 

ルシアが敏捷に任せて包囲網から抜け出し、逃げる。

ユウカ達はその後を追いかけた。

ルシアは遂にバベルの麓の広場まで来る。

そこで、急ブレーキをかけた。

 

「……っ」

「あはっ。諦めちゃった?」

 

足を止めてまたユウカ達に囲まれたルシアに、ユウカは笑いかける。

しかし、ルシアの視線がバベルの……ダンジョンの入口に釘付けになってるのを見て、ユウカも訝しんでそちらを見る。

 

すると、階段を上がって地上に出てきたのは―――スズネリアだった。

 

「あ?ルシア?それにユウカ達も……何してんだ?こんなところで」

「ほんとだ。ありゃ【グウィネヴィア・ファミリア】の奴らか?」

「何か……様子が変です」

「う、うん」

 

【ヘスティア・ファミリア】だ。

ちょうど遠征から帰ってきたところで出くわしたらしい。

先頭のスズネリアにルシアは瞳を揺らす。

 

「ス、スズネリア君……!」

「スズネリア……」

 

ルシアが瞠目して、ユウカが顔を顰めてスズネリアを見る。

凄いタイミングで遭遇したスズネリア。

彼はルシアの傷だらけの身体と剣を抜いているユウカ達を見て……訝しだ。

 

「お前ら……何やってんだよ」

「はぁ~い、スズネリア。ルシアちゃんはイブキちゃんを遂に死なせました」

「あ?イブキ?」

「リョーカちゃんの親友だよ。それで復讐のためにリョーカちゃんが本気で戦うようになっちゃって。ルシアちゃんを殺そうとしてるの」

「なっ……」

「スズネリアは勿論ユウカ達側だよね~?リョーカちゃんを悲しませて、あんなに優しいリョーカちゃんを怒らせたルシアちゃんは殺さなきゃだよねー?」

 

ユウカがスズネリアを誘う。

リョーカに希望をもたせた愚かな子供。

その罪をここで償わせようとしている。

 

「ルシア……マジか」

「……っ」

 

険しい顔でルシアを見るスズネリア。

ルシアにとって彼の実力など取るに足らないが、彼はルシアにとって特別な存在。

そんな彼に睨まれて、ビクッと肩をならす。

 

「母上が……悲しんでる」

 

呟くスズネリア。

彼は、複雑な表情で下を向いたあと……剣を抜いた。

 

「ス、スズネリアくん」

「ルシア。テメェのしたことはひでぇ事だ。母上の友達を虐めて、んで死なせた。許されねえよ」

「……っ」

 

スズネリアの言葉にルシアは瞳が揺れる。

ユウカがほくそ笑んだ。

しかし、状況を理解し、ユウカに問われた彼は……ルシアを通過する。

 

「えっ?」

『……!?』

 

ルシアに剣を向けず、彼女を通り過ぎたスズネリア。

しかも、ルシアを守るように彼女の前に立ち、ユウカ達の前に立ち塞がるようにドンと構える。

その行動にユウカ達も【ヘスティア・ファミリア】も瞠目した。

 

「確かにルシアは最低だ。母上は可哀想だし、母上の友達を死なせたルシアは許されるべきじゃねえ。けど、ここでテメェらが断罪者になる必要もねえ」

「はぁ~~~~?馬鹿じゃないの?リョーカちゃんがルシアちゃんを殺そうとしてるんだよ?じゃあそれは本人の望みじゃん。叶えてあげようって思わないの~?」

「思わねえ。母上は人を殺したことがねえ。ルシアを殺したらきっと後悔する。だから、母上を止めて、ルシアも法のもとに晒す」

『……っ!!』

 

思想を口にするスズネリア。

この場にいる誰よりも真っ当な彼は、今はとにかくルシアを守る。

ユウカ達とリョーカを止めるのが先決だと判断した。

そのあとにルシアに罪を償わせればいい。

 

「正気~?ユウカ達の邪魔するの?リョーカちゃんが悲しむよ?」

「ならその涙を拭う。そして、理解ってもらう。母上には、全肯定(イエスマン)を好む短絡的な人になって欲しくねえ。大切だからこそ、思うんだ」

「……意味わからないんですけど?」

「テメェらにはそんな気持ちが湧いてこねえって言ってんだよ」

「……っ!」

 

ユウカ達を睨み、牽制するスズネリア。

彼は、背後に匿うルシアに告げる。

 

「今は行け、ルシア。ここは俺がなんとかする。母上も俺が説得する」

「スズネリアくん……!」

 

横顔だけ見せる彼を、ルシアは傷口を抑えながら見上げる。

 

「ただし、全部終わったらちゃんと帰ってこいよ。んで、裁かれろ」

「……わかりました」

 

ルシアは俯いてから、背中を向けて走り出した。

その背中を見届けるスズネリア。

だが、ユウカ達は行かせるわけにはいかない。

 

「あはっ!逃げますはいそうですかとはならないよねー!」

「待てよ。そいつは俺を倒してからだぜ」

 

クラレンターを抜き、ユウカ達の前に立ち塞がるスズネリア。

ユウカ達も足を止める。

そして、間合いに緊張感が走る。

 

「あはっ。君じゃユウカ達に勝てないよ?」

「知るかよ。ここで気張らなくてどこで気張るってんだ。倒す気でやる。倒せると思って全力で挑むぜ」

「……ばーーか」

 

ユウカ達が構える。

スズネリアも対峙する。

しかし、そこへ。

 

「おや、加勢が必要なようですね」

「テメェは……マリウス!」

「……っ!」

 

人集りをわけて現れたマリウスに、スズネリアは瞠目し、ユウカは顔を顰める。

マリウスはルシア派の筆頭。

しかもLv.4。

確実にルシアの肩を持ち、ユウカ達より強いマリウスが合流した。

スズネリア1人なら簡単に倒せるが、ここにきて戦力が逆転した。

ユウカ達からしたら面白くない。

 

「おう。マリウス。テメェもルシア逃がすために力貸せや。そして、母上達を止めんだ」

「その必要はありません」

「あ?何言ってんだ、テメ―――

 

瞬間、スズネリアが目を見開いた。

知覚したのは激痛。

見下ろすと自身の身体がパックリと割れていた。

ユウカ達も驚く。

 

マリウスは―――スズネリアを斬った。

 

「……は?かはっ!?……っ!……っ!

テメ……っ!何してんだ……!」

「スズ!」

「ベル……ッ!」

 

ファミリアのやり取りだから口出しするわけにはいかないと傍観していたベル達が、仲間のスズを斬られて発狂する。

血反吐を吐くスズネリアは苦しさで表情を歪ませ、彼らを見る。

そして、すぐにマリウスに視線を戻す。

 

「テ、テメェ……なんの、つもりだ……っ!」

我が主(マイ・ロード)、マリーン様は追い込まれれば追い込まれるほどその才禍に頭角を表す。そして、それは私が主君に求める魅力(カリスマ)となるのです」

「理解る言葉で話やがれ、この狂信エルフが!!」

 

スズネリアが吠える。

しかし、そのせいでまた血を噴く。

 

「うぐっ……!?」

「は、はは……やっぱりあのエルフ、頭おかしいでしょ……」

 

膝を着くスズネリア。

それを見下ろすマリウス。

ユウカは、邪魔なスズネリアが斬られたが、喜びはしない。

何を考えているわからないエルフの倫理観を疑い、警戒する。

彼もユウカ達を見た。

ユウカ達が息を呑む。

 

「……っ!」

「さぁ、お行きなさい。そして、我が主をもっと追い立てるのです」

「あは~。気分悪いんですけど?利用するのやめてくれるー?ていうかぁ、君ってぇルシアちゃんの従者でしょぉ?」

当然(ウイ)

「じゃあぁ~、ご主人様を守るのが仕事じゃないのぉ?」

 

ユウカの問いに、マリウスは瞼を伏せてフッと笑う。

 

「私が彼女に仕えていたのは彼女がこの世界で最も優れた存在になると確信していたからです。竜の血が流れ、神に頼らず強くなれる者。あぁ、王と父に差別意識を植え付けて本当によかった。おかげで精霊の生き血に漬け、竜と知恵以外にハイエルフとして特別な力を得ることも出来た。このまま順調に行けば彼女は最も優れた生命体になる。私が求める『竜王』に!そんな最強生物を、王を生み出すことが私の望み!欲望!それが満たされる時が私の至福のとき……!!」

 

「……キモ」

 

饒舌に語るマリウスを前に、率直な感想が出るユウカ。

ランもシロウも1歩引く。

そんな彼らの様子を見て、マリウスはスズネリアの前に立つ。

 

「貴方達が手を下さないなら私が。我が主(マイ・ロード)の成長の妨げになる者は排除します。私は前から君が気に食わなかった」

「なっ……んだ、と……!」

「君が現れてから我が主は迷うようになり、優秀さにも陰りが見え始めた。邪魔なんですよ、君は」

「……っ!」

 

剣を構えるマリウス。

スズネリアはなんとか構えて抵抗しようとする。

だが、今の彼の状態では勝負にならない。

誰も手出しなければこのままマリウスに殺されるだけだ。

 

「死になさい、害虫よ」

「そんなことはさせないよ」

 

マリウスがスズネリアに振り下ろした剣。

それを妨げる刃が邪魔をする。

マリウスが顔を上げると、少し横を向くだけで至近距離にキリエの顔があった。

彼女は険しい顔で睨みつけてくる。

 

「よくもスズネリアを斬ったね。私の王を狙う者は許さないよ」

「私が許しを乞うのは生涯主のみ。貴女の許しなど不要ですよ」

「君の暴走もここまでだ」

「それはどうでしょう?」

「……!」

 

至近距離でキリエが剣を振るい、それを跳躍で躱すマリウス。

距離と取り、対峙する。

そんな彼が……聖剣を、掲げた。

 

「【ガラティーン】」

「魔法だね。でも、通じない。この広場には噴水がある。私にあらゆる攻撃は無効だ」

 

キリエが真剣な表情で剣を構える。

その一方で、マリウスは対称的に口角を上げる。

 

「狙いは貴女ではありませんよ。私の魔法は太陽光を質量として保存し、蓄積できる。長い間、溜めたそれを……太陽光線として放つ」

「……どこへ?」

「水場ですよ」

 

マリウスが剣を振り下ろす。

キリエが構える。

しかし、太陽光線が放たれた先にあるのは噴水。

それを一瞬で破壊し、水は全て蒸発して干上がった。

 

「なっ……!?」

「これで貴女のスキルは作動しない」

 

口角を上げるマリウス。

キリエは瞠目する。

だが、眉間に皺を寄せながらもすぐに気を取り直す。

確かに無敵化は消えたが、マリウスとて魔法の貯蓄を失った。

あとは剣で勝てばいいだけだ。

 

「そうはなりませんよ」

「えっ」

 

剣を構えるキリエに、剣の衝突は発生しないと告げるマリウス。

それと同時にキリエの腰には小さな女の子が飛び込んできた。

それは、いつかみた闇派閥(イヴィルス)の黒装束を着ている。

まさか……!

 

「きしさま、おとうさんとおかあさんに、あわせてください……」

「マリウス……ッ!!貴様ァ!!」

 

鬼の形相で叫ぶキリエ。

口角を上げるマリウス。

爆破装置を作動させる子供。

キリエは子供を振り払ったり、突き飛ばしたりできない。

景色が白飛びする。

マリウスは闇派閥のやり方を模倣した。

キリエへの対策のために。

彼女は優しく、子供や女を乱暴には扱えない。

そこを利用した。

 

そして。

 

「……っ!!」

「キリエェーーーーー!!」

 

倒れたままのスズネリアが叫ぶ。

バベル前の広場で爆発は置き、黒煙が上がった。

そして、それが晴れると……出てきたのは黒焦げになったアマゾネス。

彼女は、息絶え、そのまま膝から崩れ落ちて―――絶命した。

 

「……っ!」

「嘘だろッ!?」

「そんな……」

「む、惨い……」

 

顔を顰める【ヘスティア・ファミリア】。

人集り(ギャラリー)も騒ぎになり、逃げ惑うものもいる。

その人混みの中で……スズネリアはなんとか身を起こし、フラフラと前に進み、次第に駆けてマリウスに斬りかかる。

 

「マリウス、てめぇぇーーーッッ!!」

「私は貴方達の主従ごっこも心底不快でした。子供のお遊戯会が。王を名乗るなど万年早い。死にゆきなさい!!」

「ぐはっ!?」

 

マリウスはスズネリアを斬りつけた。

しかも何度も彼の身体を滅多斬りにした。

本気で殺すつもりで。

本気で死ぬまで斬り続ける!

 

「うっ……あっ……!?」

「スズ……!!」

「スズネリア様!!」

「ヤメロォォォ!!」

 

致命傷を与えられすぎてよろけるスズネリア。

そんな彼を見て、目の前の景色にショックを受け、瞳を揺らすベル。

愛する男が殺されるその瞬間を見て、叫ぶリリルカ。

咄嗟に必死に訴えるヴェルフ。

しかし、全てが遅い。

スズネリアは……血を吐いて、倒れる。

 

「ごふっ……!?」

「さて、私は我が主の勇姿でも見に行くとしましょう」

 

そう言ってマリウスは倒れたスズネリアをそのままにダンジョンへ向かう。

その前に振り返り、ユウカ達に伝える。

 

「マリーン様を狙うなら着いてきなさい。有効な作戦も提供しますよ」

「……イカレすぎ~」

 

ユウカはドン引きした。

それでも2人と顔を合わせてついていく。

置いていかれたのは遺体となったキリエと瀕死のスズネリア。

 

「キリ、エ……っ!」

「スズ……っ!!」

 

這いつくばりながらキリエの遺体に手を伸ばすスズネリア。

そんな彼にベルが駆け寄る。

危険なマリウスが消えて、【ヘスティア・ファミリア】のパーティは彼に近づいた。

しかし、もう彼の命は長くない。

 

「ベル……」

「スズ!しっかりして!今、ヒーラーを……!」

 

ベルが涙目で顔を上げると、スズネリアは彼の腕を掴んだ。

そんな彼を再び見下ろす。

 

「……ベル。俺はもう……ダメだ」

「そんなことない!まだ助かる!諦めないで!!」

 

血色が悪くなってきたスズネリアの判断を、必死に否定するベル。

しかし、その背後で口元を抑えるリリルカと、苦しい表情で顔を逸らすヴェルフはもう察していた。

その後ろの命と春姫とアイシャも似たような反応だ。

皆の顔を見て、スズネリアは……覚悟を決める。

 

「ベル。よく……聞け。お前の想いを……誰にも、阻まれるな……」

「……っ!スズ!」

「出会いを……経て……っ。価値観は変えていい。でも、根幹は揺らがすな。ブレるな。英雄願望を……捨てんじゃねえぞ」

「スズ!スズ……!死なないで!いかないで!」

 

必死に泣きつくベル。

彼の顔が見えなくなったスズは、彼の頭を撫でながら空を見上げる。

 

「ベル。顔を上げろ。俺が死んでも……お前の冒険は終わらねえ。前へ進め。今までも、そうしてきただろ」

「嫌だッ!スズも一緒じゃないと嫌だッ!」

「……っ。し、仕方ねえ……野郎、だな……っ」

 

ベルの涙がスズネリアの顔に落ちる。

スズネリアは、何とか力を振り絞って腕を上げる。

そして、拳でベルの胸を叩く。

 

「ベル。お前に……俺の魔法を、託す……っ!」

「えっ?」

「俺の魔法は他人に与えることが出来る。本来は……想いを繋ぐためだが、俺の思想を受け継ぐな。お前の求める物の為に……使えっ!!」

「~~~~~~~っ!!」

 

スズネリアの拳を通して、ベルの体に電流が流れるのを感じる。

それは雷光。

迸る閃光の灯火。

暖炉の継承だ。

その速さで……憧憬まで、英雄まで、理想まで、駆け抜けろ。

 

「ベル。忘れんなよ。お前が進むべき道の先を……かはっ!?」

「スズ!!」

 

スズネリアが血反吐を吐く。

それも長い。

嘔吐のごとく、大量の吐血をした。

彼は……さらに色が薄くなり、荒い呼吸の中、ヴェルフを見る。

 

「ヴェルフ。悪ぃが……キリエの遺体を、俺の……隣に……っ!……連れてきてくれねえか」

「……っ。な、なんで……」

「ははっ。あいつ……寂しがりだかんな……。独りぼっちは……可哀想だろ……?」

「~~~~っ!……わかった」

 

ヴェルフがキリエを抱き上げ、スズネリアの隣に並べる。

スズネリアは……手を伸ばし、キリエの手を握った。

そして、彼女を見つめる。

 

「悪ぃな……キリエ。俺みてぇな弱ぇ王様になんか……っ。ついてこなけりゃ……かはっ!?うっ……!」

「スズ!!」

「バカ!もう喋るな、スズ坊!!」

「もうすぐヒーラーが来ます!」

「そうです!もう少しの辛抱です!」

「お気を確かに!!」

「皆……」

 

狭くなる視界の中に仲間が映る。

もう彼らしか見えない。

スズネリアの意識は遠のく一方で、アイシャは現実を教えてあげる。

 

「お前達……もうこの男は無理だ」

「なんだと!?テメェ!!」

「おやめ下さい!ヴェルフ様!」

「スズは死んだりしない!!」

『……!!』

 

ベルが叫び、全員が彼を見る。

ベルは今まで1番泣いていた。

ソロで孤独を感じていた時、【ヘスティア・ファミリア】の唯一の仲間で、寄り添ってくれた兄弟。

スズネリア。

そんな彼を失うことは半身を失うも同様。

ベルは大粒の涙をスズの顔に落とし、スズも最期にベルを見た。

 

「スズは死なない。死なないよね!?スズ!!」

「……ベル」

 

スズは最期にベルの名を呟く。

ベル。

ベル・クラネル。

前に進めなかった狼に、道標となり導いてくれた家族。

ずっと求めていた……家族。

彼と、皆と、もっと過ごしたかった。

 

 

―――ヘスティア様。皆に出会わせてくれてありがとな。それと、最初に失礼なことを言って……ごめんなさい。

 

 

 

スズネリアは、瞼を閉じた。

彼の最後の記憶は兄弟の顔。

想起するのは初めてヘスティアに出会った頃。

小さな狼の子供は、生意気にも女神を貶し、そのことを悔いながら

 

 

―――その人生を終えた。

 

 

 

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