原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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怪人リョーカ Lv.9相当

70階層。

ルシアはそこまで行って力尽きた。

モンスターも出くわした穢れた精霊も全て倒したが、それを最後に疲労と負傷で倒れしまった。

それをリョーカは見下ろす。

 

「……誰かの為にそこまで頑張れる心を、不特定多数にも持っていた貴様が……なぜこうなった」

「……」

 

問いかけるが返事はない。

リョーカは、ふんっと鼻を鳴らす。

 

「世話のやける奴だ」

「……」

 

リョーカはルシアを抱える。

このまま地上を目指す。

そう思い、上を見上げる。

同時にカリバーンとモルガーンを拝借した。

やはりこの剣はまだいる。

冷静になるとルシアはやはり憎いと思うし、それに…………とにかく、ここまで来るのも拾った剣では厳しかったしカリバーンとモルガーンは必要だ。

 

「……っ」

 

ルシアを運ぼうと歩き始めたその時。

気配を感じて振り返る。

すると、そこには赤い短髪の女がいた。

 

「……まさか貴様に会えるとはな。アルバート」

「……っ!」

 

リョーカは睨もうとするがやめた。

その名前で呼ばれるのは好きじゃない。

でも、なぜかこの人の呼び方は他とは違う気がする。

勝手な幻想とかじゃない。

本気で間違えてる時の声音だ。

彼女の目には、真実の景色とは異なる幻想が見えているのかもしれない。

そんなことすら思わせる。

 

 

そんな彼女の名は―――レヴィス。

 

 

「誰?」

「そうか。転生し、記憶を失ったか」

 

レヴィスは勝手に納得して目を伏せた。

さすがの彼女でも男と女の違いくらいはわかる。

アルバートが男で、目の前のリョーカは女だ。

そこを間違えるほど盲目ではない。

だが、その気配、その圧力、間違いなくアルバートだと睨んでいる。

レヴィスの頭の中ではリョーカはアルバートの生まれ変わり。

尚、1000年経ってるとはさすがに気づいてないが。

 

「今のお前は1人か。都合がいい。前から思っていた。その力、もっと研ぎ澄ますことができる」

「……何を言ってるの」

 

リョーカは困惑する。

不思議な人だとは思ったが、言ってる意味はまるで理解できない。

だが、レヴィスにとって今のリョーカは素晴らしい状況になる。

あのアルバートが精霊アリアから切り離されて、孤立し、尚且つ前世の記憶を失っている。

これはいい。

邪魔など入らず、この男を……今は女だが、好きなようにできる。

 

「精霊は付与しているが、アリアではないな」

「アリア……?」

「それすら覚えてないか。いや、寧ろいい。私はアリアを倒す。今のお前なら文句は無いな?」

「えっ。あ、はい」

 

とりあえず頷くリョーカ。

こういう抜けてるところは復讐鬼になっても変わらない。

彼女は今、世界で3番目に強いが、中身はおとぼけ一般人だ。

あるのは力だけで、感性と知性は普通。

こういう時にハッキリとものを言わず、適当に頷いて流されてしまう。

 

「お前らからも殺気を感じるな。これは……復讐か」

「……っ」

 

リョーカの目付きが変わる。

憎悪の目だ。

その瞳を目撃して、レヴィスはピクリと瞼を反応させる。

表情はいつもの鉄仮面だが、内心は高揚していた。

あのアルバートが(アルバートではない)復讐鬼になっている。

僥倖。

嬉しいということはないが、面白くはある。

あまり覚えが多くない感覚だ。

レヴィスの好奇心が珍しく刺激される。

 

「アルバート。私と共に来い。その女に勝てる方法を教えてやる」

「……っ!」

 

リョーカがさらに目を見開く。

彼女に担がれているルシアが復讐の相手だということも見抜かれている。

リョーカとレヴィスが互いに譲らない視線を交わした。

 

「……わかった」

「決まったな」

 

リョーカが頷き、レヴィスが手に握っていた魔石を自身の顔の前で握り直す。

そして、それを口にした。

舌を出して、リョーカに食すところをしっかりと見せる。

喉を鳴らして彼女は告げる。

 

「これが方法だ。アルバート、怪人(クリーチャー)になれ」

「なっ……」

 

リョーカが絶句する。

さすがに彼女でも理解できる。

それが人間を捨て、永遠の苦しみを担うことだと。

……それがどうした?

 

「どうした?躊躇ってい―――」

「ない。前なら抵抗があった。でも、今はない。今以上に苦しいことなんて、ないから」

「……!」

 

顔を上げ、凄まじい剣幕のリョーカにレヴィスが瞠目する。

初めて彼女に威圧を感じた。

リョーカは普遍な小娘だった。

けど、周囲の者たちが彼女から奪いすぎたせいで、普通から逸脱し狂気に踏み込み始めてしまった。

もう今のリョーカにこれ以上失うものはない。

躊躇うものなど何も無い。

 

「教えて。どうすれば怪人(クリーチャー)になれるの」

「……いいだろう。ついてこい」

 

レヴィスはリョーカを穢れた精霊のところへ連れていった。

彼女たちの前に巨大な醜い精霊が「コンニチハァ」と気持ち悪く挨拶する。

しかし、彼女はリョーカを見た瞬間固まり、狼狽と後退をし始める。

レヴィスは精霊に背中を向けてリョーカと向き合ってしまったせいで気づいていない。

リョーカは精霊を見上げて怯える彼女の様子をジッと見つめている。

 

「アルバート。お前はその肉体になり、弱体化しすぎだ。以前のお前の足元にも及ばん。怪人(クリーチャー)なら際限なく、簡単に強くなれる」

「……簡単に」

「そうだ。そこの女よりもさらに強く。それも早く。魔石を食うだけの低燃費(コスパ)だ。精霊から間接的に力を借りるよりよほどいい」

「いいね、それ。どうやってなるの?」

「穢れた精霊に身を捧げろ。奴に取り込まれ、奴に魔石を埋め込まれることでその肉体は変化する。……同時に奴と接続し、支配されるが」

「いや、それはない」

「なに?……!どうした?」

 

レヴィスも気づいた。

ずっとリョーカが話半分に見上げていることを。

本当はちゃんと聞いているが、そう見える。

リョーカの目はまるで獲物を狙う方の目だ。

まるでこれから支配され、利用される側には見えない。

その眼力に違和感を覚え、レヴィスは振り返った。

すると、瞠目する。

 

『ヤ、ヤダ。イヤだ!ソノ娘、嫌イ!取リ込ミタクナイ!』

「なっ……」

 

唖然とするレヴィス。

穢れた精霊はリョーカを拒否し、狼狽えながら情けなく下がっていく。

もう腰が抜けてしまっている。

それほどまでにリョーカを初めて見たその時から彼女に怯えているのだ。

穢れた精霊のこんな姿は初めて見た。

レヴィスは慌てて再びリョーカを見る。

リョーカはその視線を待っていたように同時に目を合わせた。

 

「私は精霊に支配されたりしない。するのは私だ。私は精霊に強い。穢れた精霊も、私に干渉すれば汚染より浄化が勝つ」

「なん、だと……?」

「だから怯えてるんだよ。私にめちゃくちゃにされる恐怖に……震えてる」

「……っ!」

 

口角を上げるリョーカに、レヴィスが震える。

そして、その震えにレヴィスは自分自身で驚いた。

恐怖など、何百年ぶりだろうか。

どれほど絶望的な状況だろうと、感情が希薄なレヴィスには関係ない。

そんな淡白な性格ですら揺らされた。

目の前のこの女に。

やはりアルバート(こいつ)は……!!

いつの時代も危険だ!!

 

「……面白い。奴は私が抑える。その間に奴を取り込め」

「わかった」

 

リョーカが頷く。

かくして、2人は穢れた精霊を取り押さえて無理やりリョーカと同化させた。

リョーカは怪人(クリーチャー)となり、魔石を食い始める。

そんな彼女の強さはLv.9相当に到達した。

 

 

そして。

 

 

レヴィスは決めた。

こんな女を利用すると。

これだけ精霊に干渉できて、しかも支配できて、さらに彼女達を強化できる存在。

彼女が居れば地上召喚もこれ以上ないものになる。

そして、なによりも彼女自身が常識を逸脱するほどに強くなれる。

そんな気がする。

リョーカを味方につけておけば、いずれ計画の邪魔となるものを全て力でねじ伏せられるかもしれない。

アリアとの決戦の邪魔になる者も退けることが出来る。

そうなればアリアとの戦いに集中できる。

素晴らしい。

これ以上はない。

 

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