原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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大海は天災を纏い、水底に帝国を築く。

 

「次はリヴァイアサンだ。奴を単独で討伐して君は遂にLv.12となる」

「……!」

 

海の上でボートに揺られ、レンはタレイアの言葉に目を見開く。

遂に。

ここまで待ち侘びたその時がきた。

ようやくレンの悲願が達成される。

人を辞め、神へと成り上がることができる。

 

「それでそいつはどうやって倒すんだ?」

「気合いだ」

「知ってた」

 

聞くまでもなかったが一応聞いた。

結局高いステイタスで殴るしかない。

レンの武器はそれだけだ。

 

「大丈夫さ。君は世界最強のLv.11。未だかつて、君ほどステイタスを成長させた者はいない」

「成長したステイタスしか持ち合わせてないけどな……」

 

レンが呆れる。

タレイアは適当に煽てて乗せようとしているだけだ。

ため息が出る。

身体能力だけで三大クエストを攻略しなくてはいけないのだから。

まあ、黒竜を相手にしない計画を組んでくれただけでも配慮してくれた方だろう。

 

「そういえば、なんで黒竜の討伐は計画に含めなかったんだ?三大クエスト全て攻略すればマキシム達を攻撃する必要はなかっただろ」

「……君は、奴がベヒーモスやリヴァイアサンと同格と見ているのか」

「えっ?」

「だとしたら認識を改めた方がいい。あれは恩恵(かみ)の手に余る」

 

海の上で、珍しく弱気なことを言うタレイアにレンが困惑する。

だが、彼女の言葉をホラ吹きだとも言えなかった。

彼女は確証がないことに手を出さない。

それはここまで時間を共にしてきたレンにはわかる。

これだけ長い間一緒にいれば、彼女の性格を嫌でも掴み取れる。

彼女が手を出してはいけないというのならば、それはそういうものなんだ。

 

「まあ、もう今更いいけどな。ここまで来たんだ。さっさとリヴァイアサンを倒してランクアップする。この近海にいるんだよな?」

「あぁ。そうだ」

「一体どこに……」

「さぁね」

「そうか。それにしてもこの辺りの海はやけに黒いんだ……な……っ――――――!」

 

レンは違和感に気づいた。

ずっと海が濁っていると思っていた。

暗くて殆ど海の中が見えないと。

違う。

これは、海が黒いんじゃない。

 

 

この海全体が―――モンスターの『()』なんだ!!

 

 

「まさか!これ全部がモンスターの肉体だって言うのか……!?」

「なっ……」

 

タレイアも気づなかった。

彼女すら絶句する。

水平線の向こうまで海は黒かった。

つまり、深海からこの水面まで奴の胴体が海中を埋めつくしていると言える。

そして、薄ら水面に見える模様は鱗だ。

鱗が、見渡す限りに広がっているんだ。

 

 

「この海そのものが、リヴァイアサンだ……!!」

「~~~~~~~~~っ!!」

 

レンが叫ぶと、水面が大きく脈打った。

それは高波を生み、船体が跳ねる。

奴が動き出すと、竜巻と渦潮が各箇所で発生し、天気は荒れて嵐が発生した。

奴が生み出すその得意空間に強制的に引きずり込まれ、宙に打ち上げられたレンは、タレイアを抱えて海を見下ろし睨みつける。

 

 

『―――――――――――――――ッッ!!』

 

「……っ!」

 

 

リヴァイアサンの『咆哮(ハウル)』。

音が僅かに篭っている。

恐らく奴の頭部はまだ深海にある。

つまり、寝返っただけでこの現象は起き、レン達は打ち上げられたのだ。

その巨体が海を支配しているということは、奴の身体が少し動くだけで、災害が起きる。

 

海中害性水龍王。

それが【リヴァイアサン】だ!!

 

「ク、クソ!」

 

レンは空中で悪態をついた。

これだけの天災が訪れると、景色が暗くなり、視認性が悪くなる。

ベヒーモスと違って、海中にいるリヴァイアサンを相手にこの視界不良では分が悪い。

それでも、もうこの領域から逃げられない。

あらゆる方角が人を木っ端微塵にするほどの天災で囲まれている。

この空間から脱出するにはもう、奴を討伐するしかない!!

 

「レン、君は飛べるようになったのか!」

「今そんな話してる場合か!!」

 

タレイアを抱えて空中で直立しているレン。

確かに飛べるようになった。

高いアビリティで空気を小刻みに蹴り続けることで浮遊を可能としている。

レンも今知った。

けど、クソほどどうでもいい!

今は目の前の奴に集中しなければ……死ぬ!!

 

「タレイア!お前を上空へ投げる。そしたら神威を発しろ!」

「神威を……?何故だ!」

「アイツだって元はダンジョンのモンスターなんだろ!なら神の力の行使による規定の違反で母なる迷宮の震撼に接触し、海王の逆鱗は刺激されるはずだ!」

「……っ!まさか、君は……!」

「海底から奴の頭をこんにちはさせてやる!もう日没だ!堕落野郎に目覚ましの1発を加えてやるぜ」

 

嵐の中、互いの言葉が聞き取りづらい状況で。

2人は叫び合う。

言葉を交わし、頷くレン。

タレイアは瞠目し、その瞳が揺れた。

 

「ダメだ!ベヒーモスと同じやり方は……!奴の口の中は!」

「喋るな!噛むぞ!!」

「う、うわああああああああーーー!!」

 

レンはタレイアを遥か上空に投げた。

タレイアは絶叫しながら神威を発揮する。

すると、見渡す限りの海が1つの大きな渦を巻いた。

その中心は見る見るうちに水位を下げていき、深い穴を作る。

海底から覗く眼光。

その瞳だけで階層主に匹敵する大きさがある。

レンは顔を顰める。

こいつ、ベヒーモスよりデカイ……!!

 

「ちくしょう……!ちくしょう!!」

 

レンは腹を括った。

やがて、水帝がその頭部を現す。

奴は大きく口を開いてそれと肉体の隙間が渦を生んでいた。

つまり、小さな沢山の渦潮は奴の巨大すぎる肉体が生み出した隙間から発生したもの。

災害全てに原理があった。

こいつはベヒーモスとは違う。

あれは自然現象ではあっても精神汚染が多かった。

だが、こいつは自己の意思で天災を起こしてるんじゃない。

物理法則で自然発生させてるんだ。

そして、それを生み出す奴の口が海中で開かれた時、海面の景色は水平線までその口の中の景色で満たされる。

その中にはおびただしい数の鋭利な触手が今か今かと口に侵入した者を木っ端微塵にしようとしている。

 

「……っ」

 

レンは上空で躊躇った。

こいつの口の中は危険すぎる。

突っ込んだが最後バラバラ遺体の完成だ。

しかも口がデカすぎて中にはまだ呑み込まれていない海洋モンスターが無数に存在する。

そいつら全てを相手にしながらあの触手の斬撃の嵐を防がなくてはいけない。

いくらLv.11でも水中戦でそれは無理だ。

それでも。

 

「や、やるしかない……!」

 

レンは腹を括った。

こんなバケモノを討伐する方法はひとつしかない。

 

『――――――ッッ!!』

 

「俺は神になるんだ!!」

 

咆哮浴びながら、レンはその口の中に突入する。

 

「レン……!」

 

海の中に姿を消したレンに、タレイアが叫ぶ。

だが、彼女も人の心配をしている場合ではない。

重力に引かれて奴の口の中にまっしぐらだ。

 

「……っ」

 

タレイアが思わず目を瞑り、顔を逸らす。

しかし、次の瞬間。

 

『~~~~~~~~~~~ッ!!』

 

「……っ!!」

 

その悲痛の叫びにタレイアが目を開けると、海一面を満たすその巨体は瞬きの間に忽然と消失した。

代わりに人間の四肢が水面に浮かぶ。

リヴァイアサンの体内は、魔石に到達するまで触手に満たされていたのだ。

Lv.11すら分解された。

 

「レン……!」

 

タレイアが叫ぶ。

レンの心臓と背中の皮膚がギリギリ引っ付いて浮かんできた。

タレイアは海に飛び込み、泳いで彼の元へ向かう。

 

「レン……!」

 

タレイアが手を伸ばし、その紋章に触れると、『繁栄』が発動した。

これにて、リヴァイアサンを討伐。

 

 

【タレイア・ファミリア】は1ヶ月かけて泳いで地上へ戻った。

 

 

そして、最後のステイタス更新が始まる。

 

 

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