見つけた。
2人目の神だ。
いや、ふたりめの標的だ。
レンはその神に近づく。
対神特攻の神殺しのスキルで殺す為に。
その神もレンに気が付いた。
「あれ?君、どうしたの?こんなところで」
「……っ」
いきなり振り向かれてレンはビックリした。
さすがは神。
察知されるか。
その神は呑気に尋ねてきた。
レンから神殺しの殺気が溢れていることにまだ気づいていないのか?
「俺、初めてだよ。こんな砂漠のど真ん中で誰かと会ったの。君も旅をしてるの?良かったら次の街まで一緒にどうかな?」
「……そうだ。俺は旅をしてる。一緒に行こう」
レンはその男神と共に行動した。
隙を見て殺す為に。
神殺しのスキルは神に擬態することも出来た。
無論、神そのものの能力を全て使えるわけではないが、神威を発するくらいはできる。
これで同種の神だと思わせて油断させる。
しかし。
「ねえ、何のために旅をしてるの?」
「……言えない」
「そっか。じゃあなんで俺たち神の真似をしてるの?君」
「……!?」
レンが立ち止まった。
瞠目する。
その男神はキョトンとして「ん?」と首を傾げたあと、何かを察したのか少し口元を緩める。
「あぁ。ごめん。それで隠せてるつもりだったんだ。でも、バレバレだから。神殺しの威圧感が」
「お、お前」
スキルまで言い当てた。
マズイ。
初っ端から手強い神を引き当てたかもしれない。
レンは警戒する。
「あぁ、待って待って!そんなに警戒しないで!俺、別に責めてるわけじゃないから。なんで人間の君が神の真似をしてるのかな?ってちょっと気になっただけで……」
「神の真似をする理由だと?それは……お前たち神を皆殺しにするためだ!」
「うわ!?」
レンはその男神に飛びかかった。
彼は倒れる。
レンは彼を殺そうとした。
しかし、違和感を覚える。
その男神は今にも振り下ろされるレンの拳に怯える様子もなく見上げ、瞬きすらしなかった。
「どうしたの?やらないの?」
「な、なんで恐れない。死ぬのが怖くないのか?」
「いやいや、怖いよ。怖いに決まってるじゃん。でも、そうだな。君が俺を殺して楽になるなら……いいかなって。それは思ったかな」
「は?」
「だって、君なんか辛そうだから」
「……っ!」
レンは瞠目する。
そして、彼から離れた。
彼はレンが殺さなかったことに不思議そうに首を傾げて身を起こす。
さっきまで殺されそうだったのに、なぜか平然と砂埃を払ってケロッとしている。
レンは背筋が凍った。
この男神は、どこか変だ。
「お前……名前は?」
「俺?俺はオーズ。よろしくね」
「……っ」
レンは畏怖する。
なんだ、この神は。
いや、タレイアで慣れてるつもりだったが、神とは本来こんなに得体がしれなくて、怖いものだったのか?
この男は何を考えてるのかわからない。
意味がわからない。
これから殺すと言ってる相手が実査に神を殺せる力を有していることを分かっていて、「よろしくね」だと?
狂ってるのか?
いや、この男は素で言っている。
証拠に少し微笑んでいる。
怖い。
その笑顔が壊れた玩具のようだった。
「ねぇ。君は?」
「は?」
「いや、君の名前!なんていうの?」
「……」
レンは不気味に思う。
しかし、なんだかペースが崩されて殺す気も失せてきた。
「……ナガト・レン、だけど」
「レンかぁ。よろしくね、レン」
「……」
手を差し出された。
レンはそれを見下ろす。
何を考てるんだこの男は。
レンは、いつの間にかその手を取っていていた。
「よし、じゃあ次の街まで一緒に行こうよ。俺の仲間も紹介するからさ!」
「……俺は神を皆殺しにするんだぞ。その俺に他の神の場所を教えていいのか?」
「でも、君殺さないだろ?」
「……っ!」
レンは目を見開く。
「なぜそんなことが言える」
「君に神は殺せない。だから、言える」
「はぁ?」
意味がわからない。
まるで説明になってない。
よくわからないが、レンは黙ってついていくことにした。
神を一気に仕留められるチャンスだからだ。
「……チッ。待たせやがって」
「なんだよ~。ヴィヴィアンだってこの前待たせただろ?」
「それは邪神を叩いてたからって言ったろうが」
「どっちが邪神か分かりかねますけど……」
「あ?」
「ひっ!」
街に着くと2人の神がいた。
1人は誰を見る時も睨みつけている小さい女神。
もう1人は高貴そうな外見とは裏腹に気弱そうな態度の女神。
そんな2人がレンを見る。
「あ?んだ、こいつ」
「ナガト・レン。さっきそこで知り合ったんだ!彼も旅をしてるみたいで」
「そうじゃねえ。なんで下等生物なんて連れてきた」
「……っ」
また一発で看破された。
なんなんだ、この神々は。
鋭すぎる。
レンは後ずさった。
もう1人の女神だけ「えぇ!?彼、人間ですの!?」と驚いてる。
こいつだけ大したことなさそうだ。
「チッ。しかも人間が神威を発してやがる。気に入らねえ。どういう原理だ?」
「神殺しのスキルだよ。誰かが恩恵を与えて、その誰かが彼に恨まれて発現したんだ」
「んなスキルまであんのかよ。だから、恩恵なんて胡散くせぇもん信用してねえんだ。どいつもこいつも頭空っぽで娯楽優先。そんで手を出す」
「その恨まれた神はなんで断定してるんですの?第三者の神の可能性は?」
「無いよ。多分恩恵を与えたのはタレイアだ」
『……!』
2人は目を見開いた。
いや、レンもだ。
なぜわかった。
「はっはっはっはっは!!あいつ、下等生物になんざ恨まれてやんの?しかもここに一緒に居ねえってことはやられたのか!ハッハッハ!こりゃ傑作じゃねえか!!」
「笑ったら悪いよ、ヴィヴィアン」
「いや、笑わねえ方が失礼だろ。あいつ、ギャグ脚本書いてたのか」
腹を抱える女神。
彼女はレンを小馬鹿にしたように見ていた。
「ヴィヴィアン……」
1人の女神の名が判明した。
タレイアから聞いたことがある。
湖を司る女神、ヴィヴィアンだ。
司るものを闘争か何かと間違えてる気がするが。
「で?こいつはあのバカがバカして生まれたバカってわけか。んで、そのスキルで私達を殺しに来たと。ご丁寧にオーズは案内してくれたみてぇだな」
「……っ!」
レンは身構える。
ヴィヴィアンは彼を睨んだ。
だが、オーズが慌てて間に入る。
「あーあーあー!この子は大丈夫だよ。そういう目的でここに来たんじゃないってば!」
「なんでてめぇにそんなことがわかる。オーズ」
「……わかるよ。だって、ロキが面倒を見たんだ。そんなことするような子に育つわけないよ」
『……!』
全員が驚いた。
ヴィヴィアンはロキとレンに関わりがあったことに。
レンはなぜそんなことまでバレているのかという顔で、オーズを見る。
「神は、そんなことまでわかるのか……?」
狼狽えて身構えるレン。
しかし、ヴィヴィアンが鼻で笑った。
「ハッ。馬鹿言え。こんなデタラメ全員ができてたまるか」
「オーズは人に絡みついた欲望を目で見ることができるんですの」
「欲望……?」
「えぇ。彼は欲望を司る神、オーズですもの」
「
「アイタッ!?」
ヴィヴィアンにしばかれるグウィネヴィア。
でも、そのおかげでオーズの正体がわかった。
彼には、レンの身体に絡みついた様々な欲望が見えている。
特に大きのは2つ。
神の欲望だ。
ひとつは醜く気持ち悪く複雑に絡みついているが、彼の心臓に絡みつくのはもう1つの欲望が防いでいる。
そのもう1つをその瞳に捉えて、オーズは微笑んで頷く。
「うん。ロキの欲望は相変わらず表面的には私欲にまみれてるけど、本質は綺麗だ。君を守ってる」
「……っ。ロキが……俺を……」
レンの瞳が初めて揺れる。
やっと警戒が解けた。
それをヴィヴィアンは絶対に見逃さない。
だが、彼女はその隙をついたりしない。
視線を下に向けて、ロキを……想う。
「あいつも下界に来て、下等生物なんざに情が湧くようになっちまったか」
「あら、寂しいんですの?」
「やかましい。沈めんぞ」
「怖すぎませんこと!?」
奥で漫才をする2人。
オーズはレンに近寄り、彼の肩にそっと手を置いた。
「だから、君は神を殺したりなんかしない。皆殺しにするなんて……無理だ。君にロキは殺せないよ」
「~~~~~~~~っ!!」
膝から崩れ落ちるレン。
確かにロキを殺せない。
そんなこと……できない。
彼は下唇を噛んで、項垂れて挫折した。
「じゃあ、どうすればいい?俺はどこへ向かえばいい?タレイアへの復讐しか……もう残ってないのに」
「残ってるじゃないか。だから、ロキを殺せないんだろ?君の本当の望みはタレイアへの復讐なんかじゃない。タレイアなんて本当はどうでもいいんだ」
「どうでも……いい?」
「そうだよ!思い出すんだ!君が本当に求めたものを。タレイアに見ないように隠されたものを」
「……っ!」
レンにオーズの言葉が響く。
そうだ。
本当は。
本当はずっと前に、手に入ってたんだ。
信じられる仲間。
愛すべき友達。
欲しかったものは……もう、貰ってたんだ。
みんなに。
神になんて、ならなくてよかったんだ。
あの時、彼らに『出会った』その瞬間から。
「み、みんな……」
「君はロキの
「~~~~~っ!」
レンは崩れた。
オーズは微笑ましく見る。
ヴィヴィアンも呆れながら、何も言わずに居てくれた。
レンは、本当の望みを思い出した。
そして、既に手に入れていたことも。
きっと、この先に彼らと共に過ごす幸せが待っている。
空に、黒い竜が現れるまでは。