原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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会合する物語のピースその1ページ

 

 闇派閥(イヴィルス)の作戦は一部損壊。

 神々の強制送還、都市の包囲、市民の行動制限。ただ一点を除いては全て達成された。

 しかし、万単位になるはずだった死傷者はどこにもいない。1人のハイエルフがそれを防いだ。

 自爆装置を破壊したからだ。

 

「資源の問題だが、市民の爆発も時間の問題。篭ってる方が立場の弱い完全にさせられている籠城戦。それに、敵は邪神エレボスに最強のLv.7二人」

 

【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)にて、顔を顰めるフィン。

 ロキや負傷から何とか立ち直ったガレスが彼を見つめる中、更なる不安点をあげる。

 

「死傷者が予想の万単位どころか4桁にすら至っていないのは……ルシア・マリーンの作戦が上手くいったのだろう。だけど、当の本人の消息は不明。本来億単位の被害を3桁に収める程の手腕、あの自爆装置を突き止めたのはデカイ。……だからこそ」

 

 顎に手を当てるフィンは眉間にシワを寄せる。

 それに対して、ロキが溜息をついた。

 

「惜しいなぁ。死んどったら最悪や。ルシア・マリーン……まさかアストレアのところにあんな期待の新人がおったとはな。作戦手腕、考案っていう1点なら悔しいけどフィンより上かもしれへんのにな」

「まだ死んだと決まった訳ではなかろう。縁起の悪い話はナシじゃ」

 

「―――その通りです……っ」

 

『……っ!!』

 

 一同が声のした方、部屋の入口に注目する。

 そこにはラウルに連れられた満身創痍のルシアがいた。

 フィンとロキ、ガレスがその姿を前にして目を見開く。

 

「ルシア・マリーン……っ!そうか、生きていたか。よかった」

「はい。勝手に殺さないでください」

 

 心外だとでも言うように表情を顰めるルシア。

 しかし、気持ちから苦い顔をしている訳じゃない。肩で息をして、ラウルに身を預けて支えてもらっている。

 彼女は明らかに戦闘後だ。

 

「すみません、ラウルさん。もう少しだけご助力願えますか?」

「は、はいっす!全然自分は大丈夫なんで……!」

「そうですか。では、お言葉に甘えて……フィンさん達に話しておかなければいけないことがあります。事が終わり、ここを後にするまでお願いします」

 

 ラウルに断りを入れて、今すべきことに集中するルシア。

 高潔たるエルフ、その中でも比にならないハイエルフではあるが、ルシアはその身を男に預けている。

 ルシアからしても、普段ならば気にするが、切迫すれば無視する。

 なぜならば自身は自身がエルフであることも忌み、そもそも半身はドラゴンである。それに、エルフの迫害を受けた時から自身はエルフより1人の人間であるという意識がある。

 さらに、彼女は戦争人間。オラリオの冒険者たちの経験値を悪くいうつもりはないが、またジャンルの違った修羅場をくぐって来ている。

 なりふり構っていられない、という窮地は冒険者よりもルシアの方に軍配が上がる。

 それ故の行動だ。

 ルシアは、思うところはありながらも気にしないということも得意として、フィン達と向き合う。

 

「よく戻ってきたのぉ……!しかして、悪かった。そういうつもりはなかったんじゃが」

「いえ。構いません。それよりも、現状の打開について話しましょう。Lv.7二人は厄介ですが、一番解決すべきは彼らの打倒ではなく都市の包囲網です。そこさえ解決すれば供給が復活し、市民のストレスも緩和できます」

「現れて早々、そないな話するんかいな。ほんま何(もん)や?……まあ今はええわ。んで、自分から切り出したっちゅーことはなんかまた考えがあるいうことと受け取ってええか?」

「……すみません。そういう訳では。なので、ここに来てフィンさんと話し合う必要があると考えました」

「……っ!なるほど。確かに策があるなら早急に君が現場でそれを実行すればいい。そうしなかった時点で僕と考案したかった。そういうことかい?」

「はい」

 

 ガレスが髭を触る中、全員で言葉を交わして、フィンの問いかけにルシアがこくりと頷く。

 フィンはそれを確認して改めた。

 

「……状況を見つめ直そう。とにかく君のおかげで被害は抑えられた死傷者は約200人。……だが、その分守るべき市民も多くなっている。冒険者の人手が足りない」

「まるで多くが死んでおけばよかった、とも聞こえますがそうではないですよね。すみません、意地悪でした。私も昔、同じような状況判断した経験はいくつもあるので気持ちはわかります。ですが、死傷者は216人です」

「……っ!……すまない。これ以上は1人も被害者を出したくないね」

「はい。全くその通りです」

 

 フィンに全面同意のルシアは怒りをその顔に載せる。

 ルシアは作戦が上手くいったとは思っているが、満足はしていない。

 闇派閥(イヴィルス)。よくも216人も私の手から零れ落ちさせたな、クソが。

 

「……包囲網は絶対解きます。そして、解けたらすぐに敵の殲滅。恐らく敵の作戦はまだ終わってません。ここから何かしらもっと動いてくるはずです。市民を足枷にしても少数精鋭ならこっちもまだ打つ手があることくらい向こうもわかってると思うので」

「と、なると次に連中がする動きは、戦力の増強か」

「頭数と僕らのような上級冒険者と多少はやり合える実力。そんな『人材』は彼らがまだ何かしら戦力を隠していないと、新しく仕入れることは難しいだろう。つまり、彼らが補強するとすればその伝手(アテ)は……」

「―――ダンジョン、やろうなぁ」

「……」

 

 ロキが口にした言葉を耳にして、ルシアはここに来るまでに見た数多の光の柱を想起する。

 あれは、神が強制送還された時の現象だ。そして、強制送還には神の力(アルカナム)が用いられる。神の力(アルカナム)の使用は御法度だ。ダンジョンとの古の契りに反する。

 故に、ダンジョンの暴走に繋がる。

 恐らく敵の新戦力はそれによって生まれる。強制送還の目的は演出などの意味もあるが、同時にダンジョンの地上に対する憎悪の活性化もあるだろう。

 敵も『計画』を実行している身。効率は大事だ。そして、実際利口だとルシアは思う。

 

「……」

 

 ルシアは考える。

 次なる作戦を。

 できるなら今すぐにでも考案するべきだ。

 今、盤面は早さを制するものが正義となっている。

 後手に回ればそれだけ詰められる。間違いない。

 だが、敵の包囲網、これを破るのが現状の問題で1番解決の難しい事項だとルシアは睨んでいる。恐らくは最終的には包囲は諦めて都市内で敵を攻略するといった方向性にフィン()が変えるだろう。

 ルシアもそっちの方面で考えるべきか悩む。

 故に、彼女は視線を落とし、脳内を巡らせる。

 が、その結果が実る前に、新たな入室者が現れた。

 

「―――フィンはいるか?」

『……っ!?』

 

 一同が声を聞いただけで目を見開く。

 ルシアも、顔こそ俯かせたままだが、大きく目を開けた。

 誰もが思った。まさか『彼』が【ロキ・ファミリア】に足を踏み入れようとは。

 ルシアが振り返ると、『彼』―――屈強なガタイの猪人(カウズ)、【フレイヤ・ファミリア】の【猛者(おうじゃ)】オッタルは一人のハーフエルフの少女と極東の希少種族鬼人(きじん)の女性を連れていた。

 

「オッタル……?驚いたな、まさか君が……どうしたんだい?君と一緒にいるのは……」

「なんや随分珍しい光景やなぁ。フレイヤの眷属(おとこ)が女侍らせとるで!」

「……お前たちにどうしても早急に会わせたかった。それだけだ。お前たちというより都市の最前線に立つ者たちだが」

「……?どういうことですか?その人たちは……」

「……っ!」

 

 オッタルの言葉を聞いて一同の注目が彼の連れである二人の女性冒険者に集まる。

 冒険者……いや、鬼人(きじん)の女はともかくハーフエルフの方は、武装を纏っているのにどうも戦う人間には見えない。フィン達の目があれば片方はLv.4の手練なのは一瞬で見抜けた。

 彼女たちは、【グウィネヴィア・ファミリア】のLv.1ハーフエルフのリョーカ・アーサとLv.4の鬼人(きじん)のイブキ。

 全員の視線に晒されて、経験豊富なイブキとは裏腹に小心者のリョーカは目を逸らす。

 

「敵にザルドがいた……もうお前達の耳には届いているか」

「あぁ。アルフィアもいる。敵は邪神と彼らだ」

「……そうか」

 

 フィンの返しにオッタルは呟く。

 そして、気を取り直してリョーカ達に、いやリョーカに目線だけ向けた。

 

「……信じられないかもしれないが、この女はそのザルドに対抗していた」

「……っ」

『なっ……!?』

 

 オッタルの紹介に当然ながら誰もが信じられないものを見るような目で改めてリョーカを見る。

 リョーカはオッタルが言ったその瞬間から嫌そうに顔を顰めて俯いた。

 

「俺もあの頃の冒険者達以外であのゼウスとヘラの眷属に……それも【暴食】や【静寂】に傷を付けられた者を見たのは初めてだ。故に、お前達と同じ気持ちだ」

「……オッタル。僕らはまだ信じ難いんだけれど……本当かい?」

「あぁ。俺はこの目で見た」

『……』

 

 どれだけ実際に見たと言われても、にわかに信じられない。

 それでも、あの【猛者(おうじゃ)】が言っているという一点の信頼は大きい。

 だから、どう見ても何でもない少女がそのように映ってきた。

【ロキ・ファミリア】とルシア、その注目を集めるはリョーカ1人。

 彼女は、いかにもひ弱そうな態度で嫌々だが断ることも出来ないと言った感じでみんなの前にでる。

 

「……リョーカ・アーサ……です」

 

 大袈裟な神々はきっとこの状況を前にすれば、英雄への第1歩を踏み出したと表現するだろう。

 しかして、その大英雄の末裔と称された少女はそれを感じさせない小さな声で呟いた。

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