作戦が一部失敗した。死傷者が予定の1割も出せていない。
故に、街中に放出された無数の構成員は上ならの圧力のままに市民を殺そうと彼らを襲っていた。
しかし。
「アイズ……!出過ぎるな!」
「平気。いける……!」
暴れるは【ロキ・ファミリア】から二名、否ほぼ一名。
敵が叫ぶその名は【
アイズ・ヴァレンシュタイン。そして、彼女を後ろから見守るのがリヴェリア・リヨス・アールヴ。
「クソ!爆弾さえあれば……!」
「あっても無駄」
「同感でごじゃる~」
「……っ!?!!?」
アイズは人生で初めてにして最大の二度見をした。
目の前の白装束に身を包んだ敵も突然割って入ってきたその声に、目を見開き、ようやくその存在を認識した。
そして、それはアイズも同様。遠くで見ていたリヴェリアすらもその者に同じタイミングで気づいた。
「アイズ……!」
「……っ!」
敵か味方かわからない。
特に現れたその者の外見は怪しかった。
極東風味の着物生地ではあるが、ところどごろ切られて動きやすいように肌に密着している。
さらに、口元は濃い紫のマスクで隠されており、結んだ黒髪は長いのに目立たない。
そして、何より上級冒険者の視界に入ってもその存在を発見させない高度な気配遮断。
ハッキリ言って不気味だった。
リヴェリアはそんな存在に接近を許してしまった事実にこれ以上ないほど焦燥し、アイズの名を叫びながら彼女の元へ駆ける。
だが、心配は杞憂。
「うえっ~!?拙者、そんな不審者に見えるでごしゃるかぁ?あ、忍者ならそうあるべきでごじゃったか。今時絶滅して流行ってないのを嫌々継いでるからあるべき姿とかは忘れがちでごじゃるなぁ……」
「なっ……がっ……」
「「……!?」」
忍者のくせにベラベラと喋りながら目立つ【ヴィヴィアン・ファミリア】のLv.3忍者、御門。
印象とは裏腹の陽気さを披露しながらアイズが相手をしていた
それは少なくとも敵は同じという証明。
この場にいる
そして、服装に特徴はあってもその正体が何者なのか外見からは何も情報がない。
それでも、リヴェリアは目敏く見つけた。
御門のマフラーにつけられた湖に剣が突き立つ紋章を。
「オラリオにはない派閥……都市の冒険者ではないな。手助けしてくれたことは感謝するが……」
「リヴェリア」
戦闘が終わって、御門も敵ではなかった。
安堵しつつリヴェリアは自身の名を呼んで駆け寄ってくるアイズを迎え入れて、それでも視線は御門から決して話さなかった。
御門は二人を見て、目的の人ではないことに嘆息する。
「あー……拙者、そもそも冒険者ではないでごじゃる。あと助けたつもりもないでごじゃる。正直そこの子供は拙者が助ける余地がないくらい強くてビビったでごじゃる」
「……では聞く。お前は何者だ」
「ごじゃる……?」
リヴェリアが訝しみ、アイズが困惑気味に首を傾げる。
御門は尋ねられたが答える義理はないとみた。
「拙者、貴殿らに用事はないでごじゃる。故に、これにて失礼」
「待て!どこへ行く?それと、どこの派閥の者だ!?」
立ち去ろうとしたところに背中に呼びかけられて御門は面倒くさそうに天を見上げる。
ここは、都市の状況を利用するとした。
「そんなこと聞いてる場合でごじゃるか?拙者、さっきの通り
「何故そこで自信なさげなんだ……」
急に態度が曖昧になる御門に、顔を顰めるリヴェリア。
御門は言いながら自分の主神を思い浮かべてしまった。
『やくざ』って悪党でごじゃるよな……?と過ぎったのだ。
でも、大丈夫。表向きは社会性主張してるから。世間体はいいから。大丈夫大丈夫。嫌だなぁ~、拙者ら何も悪いことしてないでごじゃるよぉ?という態度で押し通せばいい。
「と、とにかく拙者のことを気にする余裕も必要もないでごじゃろう。拙者、次の戦場に向かわなければならぬ事情故、構わないで欲しいでごじゃる」
「……!だ、だったら……!」
「……っ。アイズ……?」
リヴェリアが困ってる……!
そう思ったアイズはここまで大人しくしていたが、急に乗り出して御門の前に出た。
御門は今度はなんでごじゃるかぁ……?勘弁して欲しいでごじゃるぅ。仕事に取り掛かれないと絞られるでごじゃるぅ!と泣きそうだった。
「あの!私達も
「拙者、臓器とお別れでごじゃる……今、なんて言ったでごじゃる?」
涙ぐんでる間になんかすごい提案された?と御門は目の前のおチビちゃんを見下ろす。
対するアイズは目を輝かせて御門を見上げている。
アイズは珍しく興奮していた。
なぜならば、目の前の忍者が子供には魅力的だったからだ。
アイズは思った。
この人、なんかカッコイイ……!もうちょっと一緒にいたい!
その眼差しに嫌な予感を覚えて御門は顔をめちゃくちゃ顰めた。