原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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大英雄再来

 

「……横槍が入ったとはいえ包囲網すら維持できんとは。闇派閥が聞いて呆れる」

「闇派閥!覚悟ぉ……!」

 

都市を練り歩き、冒険者たちを薙ぎ払って回るアルフィア。

そこにまた新たな冒険者がアルフィアと知らず、ただの闇派閥だと認識して襲いかかる。

 

そして、鐘の音が響く。

あとは言うまでもない。

塵芥と化した。

 

「よもや私が尻拭いに回るとはな。時代とは、経過するものだ。そして、私1人で都市中の冒険者が束になろうとも闇派閥の包囲網と同じ効果が得られることを幸運と思うべきか、嘆くべきか」

 

アルフィアはため息をつく。

彼女は戦いながらよそ見をした。

とある協会の方角を眺める。

 

「私の休暇は丸潰れだ。祈りを捧げることもできん。貴様達有象無象など興味はない。が、喜べ。このアルフィアの力を実感させてやる。存分に八つ当たりさせてもらうぞ」

 

アルフィアは機嫌が悪い。

故に冒険者を薙ぎ倒す。

ついでに女神ヴィヴィアンなる者の眷属もかなりの数を吹き飛ばした。

だが、それでも次から次へと出てくる。

これでは際限がない。

とはいえ都市の中にいる冒険者の、2割は吹き飛ばしたはず。

かなり働いた。

いくら相手にならないほどの差があるとはいえ、力を制御(セーブ)して数をチマチマ倒すのは今でも骨が折れる。

労ってもらいたいものだ。

 

「冒険者共よ。モンスターが誕生するまで、私の腹いせに付き合ってもらうぞ。……ん?」

 

辺りの冒険者は全て吹き飛ばし、消えた。

今、周囲には誰もいない。

いたとしても亡骸だ。

だというのに人の気配がする。

 

なのに、"()()"。

 

人が今、背後にいるのにその者からは人から聞こえる"音"がしない。

アルフィアは瞼を開ける。

少し震える。

遂に来たか。

 

「……待っていたぞ、『無音の女』」

「【静寂】のアルフィア。す、凄い。綺麗。お人形さんみたい……」

 

振り返ると、凡人が立っていた。

立ち姿からしても明らかに戦いに慣れていないのが丸わかり。

開口一番容姿を褒められて、アルフィアは瞼をピクリと反応させる。

 

「なるほど。確かに凡。無力な民に見える。だが」

「……!」

 

リョーカを前にしてアルフィアは彼女を観察する。

彼女からは何も感じない。

取るに足らないゴミにしか見えない。

それが逆に不気味。

いかに駆け出しの冒険者といえども多少は威圧感(オーラ)がある。

神の力、恩恵がそうさせる。

しかし、目の前の気弱そうな女からその感覚を微塵も覚えない。

 

この女―――"異常"だ。

 

「ザルドが言っていたことも、あながち寝言ではなかったわけか。よい。このつまらん仕事の中で、多少の娯楽にはなりえるだろう」

「……!い、いきます」

 

女が構える。

その後ろにゾロゾロと冒険者が降り立った。

 

「ちょ、ちょっと。本当にあの()1人で【静寂】と戦うの?」

「何者か知らんが無謀だ。殺されるぞ」

「はい。私もそう思うのですが……」

 

リョーカの背後には【アストレア・ファミリア】、リヴェリアとアイズ、マリウスと威吹鬼が合流する。

リョーカのステイタスはLv.1。

しかも装備は安物の剣と最低限の防具だけ。

誰が見ても【静寂】のアルフィアの相手にはならないと判断する。

とはいえあの【猛者(おうじゃ)】のお墨付きがあるのも事実。

兎が竜に挑むレベルのこの無謀な対戦(マッチアップ)

それでも尚、成立すると言われている。

そんなことを言われてもアリーゼや輝夜を始めとして、誰もが困惑する。

これも至極当然の反応だ。

 

「一体何を考えてるのだ、フィンは……」

「……あの人」

「……?どうした?アイズ」

 

リヴェリアも困惑する中、アイズだけがリョーカの背中を見て訝しんだ。

そんな彼女の珍しい反応にリヴェリアも怪訝に思う。

問われたアイズはリヴェリアを一瞬一瞥して、すぐにリョーカに視線を戻す。

しかも熱視線。

リヴェリアは驚き、目を見開いた。

この()がここまで他人に興味を示す様子は滅多に見たいから。

同時にリヴェリアもリョーカを見る。

あの半同胞(ハーフエルフ)の小娘の何がアイズを惹かせるのか。

 

「あの人、似てる」

「似ている?」

「うん。"()()()()"に」

「なっ……!?」

 

目を見開くアイズがボソッと何気なく口にした衝撃の一言。

リヴェリアは慌ててリョーカ・アーサの背中を見た。

まさかあの女が【ロキ・ファミリア】が求めていたアイズの謎の鍵を握っているとでもいうのか!?

 

「小娘。力を見せてみろ。多少は受けてやる。が、つまらんものを見せれば即座に殺す。いいな?」

「えっ」

 

よくないんですけど、とは言えない。

リョーカが振り返ると、マリウスが頷く。

いや、"良し。いきなさい"じゃないんですけど。

 

「えっと。じゃあ……―――"エーラ"」

「……!?」

 

アルフィアが瞠目する。

リョーカは風を纏った。

しかし、アイズのように魔法ではない。

スキルでもない。

これは……。

 

「馬鹿な!?精霊の加護だと!」

「えっ、精霊!?精霊って、あの御伽噺とかに出てくる精霊!?」

 

ハイエルフのリヴェリアは即座に見抜いた。

彼女の大きな一言にアリーゼを始めとして全員が驚く。

アルフィアも目を丸くした。

 

「精霊だと……小娘、貴様何者だ?」

「えっ。えっと。リョーカ・アーサです……?」

「阿呆よのぉ……」

 

アルフィアに問われ、困惑しながら適当に答えるリョーカ。

味方は思った。

馬鹿、それはただの自己紹介だと。

威吹鬼が救えないものを見る目で目元を抑える。

 

そんな寸劇(コント)を前に、1人。

皆とは違う衝撃を受けている者がいる。

 

「あ、あれは……()()()()の精霊……?なぜ、リョーカさんが……」

「何?」

 

ルシアの呟きを拾ったのは輝夜。

アリーゼにも聞こえたが、彼女は瞠目してルシアに察知されないように傍目で捉えるだけ。

ルシアも輝夜の反応でハッとして、口を塞いで彼女と目を合わせた。

そして、3人とも気付く。

マリウスが口角を上げて、そのやり取りを見ていたことを。

 

そんな背後の事情や反応など、全くの無視で。

リョーカは自身に力を授けてくる傍迷惑な精霊に呼びかける。

 

「いくよ、【風のエラ】」

「……面白い。魔法でもスキルでもなく、神の力や恩恵に頼らない力。精霊の補助か。よもや……。ザルドの奴、隠していたな?」

 

アルフィアは少し高揚する。

面白い存在だ。

 

待ち侘びてもいたかもしれない。

いや、予想はしていなかったが。

 

アルフィアもザルドも冒険者の中から新しい芽が出ればと、面白いスキルがあればと淡い期待くらいしかしていなかった。

とはいえ思い入れのある後継たちに希望は持っていた。

 

だが、それら全てを、思い出を一旦置いておくほどに衝撃。

昔はいなかったたった一人の小娘に興味を全てもっていかれている。

 

なんだこの女は。

精霊の加護だと?

神に頼らぬ力を振るうのか?

 

面白い。面白い。面白い……!

神時代以降、稀有すぎる存在(ケース)

 

もしかすると、この女の力ならば【奴】に通じるかもしれない―――。

 

「くらえっ!【エーラ】!」

「受けてやろう。いや、この威力……!【魂の平静(アタラクシア)】。いやそうか。これは魔法ではない。【福音(ゴスペル)】!」

 

アルフィアが余裕をすぐに捨てるほどに、吹き荒れる風の暴力が一人の剣により生み出され、リョーカの前方を吹き飛ばす。

その威力に後方にいた者達は全員驚き……言葉を失う。

およそLv.1の冒険者が放つ攻撃ではない。

第二級冒険者すら遥かに凌ぐ。

そんな攻撃。

しかし、相手は最強。

土埃が晴れると、当たり前のように人影が見える。

 

「小娘……やるではないか。見世物としては悪くなかったぞ」

「……」

 

無傷で現れるアルフィア。

これはこの場にいた全員が予測の範囲内。

確かにリョーカの一撃は想像を超えていたが、あくまで予想より上だっただけ。

さっきのはLv.4相当くらいの攻撃だった。

ならばLv.7のアルフィアに通じないのは当然。

しかも彼女は魔法を使用したから尚更。

本番はこれからだ。

 

「もっと魅せてみろ。それとも今のが貴様の一芸か?」

「……それは」

 

リョーカが振り返る。

マリウスを見た。

彼は首を横に振るう。

リョーカは俯く。

 

……【火の彼】は使っちゃダメか。

 

かといって、【水の彼】もここじゃ使えない。

【風の彼女(エラ)】だけでやり過ごさないと。

 

「今のが私の技。今のだけ。でも、もっと早く使え……ます」

「"早く"、だと?」

 

アルフィアの眉がピクリと動く。

言っている意味が、彼女の経験をもってしても理解できないが。

それはさほど問題ではない。

まだ芸があるなら見たい。

それだけだ。

 

「じゃあ……いきます」

「……」

 

妙な流れになった。

まるで本当に芸を見る流れ(ノリ)だ。

だが、それでいいと思えるまでに今この場にいる全ての冒険者に興味は彼女にある。

だから、誰も手出しをしない。

無論、彼女が1人で戦うとはなから決めってはいるが。

当初のLv.1の印象とは異なり、強さを示した彼女に助太刀する気も起きない。

 

「……すぅ」

 

深く、息を吸う。

リョーカは構えた。

アルフィアも待ち受ける。

そして。

 

「【エーラ】」

「【福音(ゴスペル)】」

「【エーラ】」

「【福音(ゴスペル)】」

「【エーラ】」

「【くどい(ゴスペル)

「【エーラ】」

「【他に芸はないのか?(ゴスペル)】」

「【エーラ】」

「【いい加減に―――ッ!!福音(ゴスペル)】!!」

 

ワンパターンな攻撃かと思えば、途端に畳み掛けてきた。

アルフィアは慌てて魔法を速射に変え、対応するも。

リョーカの攻撃の威力も上がっており、完全には捌ききれなかった。

故に。

 

「貴様……!」

『なっ……』

 

一同が唖然とする。

あのアルフィアが。

【才禍の怪物】と呼ばれた才能の塊である完全無欠の女が。

1歩。

 

1歩だけ、退()()()

 

「嘘だろ!?あの化け物を退けやがった……!」

「なんて女だ。何者だ?奴は」

「リョーカ・アーサ……」

 

後ろの【アストレア・ファミリア】がザワつく。

アリーゼが名を呟き、リヴェリアが自身の記憶を探る。

果たしてあんな稀有な同胞がいただろうかと。

その様子全てが、アルフィアは気に食わない。

 

「調子に乗るなよ、小娘めが」

「……!」

 

アルフィアの表情が変わる。

リョーカも警戒した。

その時、リョーカの剣がボロボロと崩れ落ちる。

 

「なっ……」

「……っ」

 

アルフィアが瞠目する。

リョーカは武器を失った。

しかし、当の本人は驚く素振りはなく、すぐに次の剣を抜刀する。

そういえば最初から腰にいくつか帯刀していた。

ということはつまりこれは彼女たちにとって珍しい出来事ではなく、いつも起きていること。

なるほど、とアルフィアは理解した。

 

「有象無象の武器では貴様の力に耐えられんわけか。武器は使い捨て。思っていたよりも使い勝手の悪い力だ」

 

アルフィアは1歩、前進して元の位置に戻る。

リョーカについてはだいたい分かった。

もういい。

 

「もう貴様の技も見飽きた。そろそろ終わりにしよう。多少は楽しませてもらったぞ」

「……!」

 

アルフィアが勝負を終わらせると告げる。

よほど後退させられたのが気に食わなかったらしい。

リョーカとしても剣を構えながら少し冷や汗を流す。

正直……その気になった彼女を止める手立ては、()()()ない。

 

「レディ・アーサ」

「……!」

 

マリウスの声に振り返る。

嫌な予感がする。

まさか、とリョーカは顔を顰める。

そして、その予想通りのことが彼の口から告げられる。

 

「女神グヴィネヴィアから【ストライク・エーラ】の使用許可が出ています。【暴食】の時と同じように【静寂】にも通用するか試しなさい」

「で、でも……」

 

マリウスから指示が出て、リョーカが嫌そうな顔をする。

使いたくない、とでも言いたげだ。

一同もその【ストライク・エーラ】という代物の名が気になる。

 

「まだ大技があるというのか……」

「【ストライク・エーラ】……すとらいく……お父さんの技じゃ、ない……」

「一体どんな技なんだ」

「【暴食】にも使った、ってことは……それって」

「まさか【猛者(おうじゃ)】が言っていたという【暴食】にダメージを残したやつか。【静寂】にも効くというのか。馬鹿な。なんなんだ、あの女は……」

 

ただ技名が出ただけで、後ろが賑やかになる。

リョーカはこの空気が苦手だ。

期待しないで欲しい。

こんなものに応えたくない。

これまで散々、浴びてきた人の汚い欲望だ。

吐き気がする。

 

「……五月蝿い」

「……!」

 

アルフィアの一言にリョーカの視線は前に戻る。

 

観衆(ギャラリー)が騒ぐな。女、まだ見世物があるならなぜそれを早く言わない。焦らすな。見せろ」

「いや、そ、それは……」

「見せぬなら全員殺すぞ」

「~~~~~っ!」

 

リョーカが渋っているのはバレている。

だが、アルフィアの目的としても彼女からその技を引き出すのは必至だ。

ここは引けない。

見ておかなければならない。

Lv.7にダメージを与えられるほどの力を。

その力が【奴】に通用するかの見極めを行う。

 

「……っ」

 

リョーカが下唇を噛み、悩む。

"あれ"は使いたくない。

けど、使わなきゃみんな殺される。

最強の冒険者からの脅し。

聞かない訳にはいかない。

 

―――やるしか、ない。

 

「よせ、リョーカ!【ストライク・エーラ】は使ってはならん!」

「……!い、威吹鬼……」

 

覚悟を決めたことは、親友にはすぐ看破される。

これまで黙りだった威吹鬼が突然大声をあげて制止しだしたから、その場にいた全員が目を丸くし、彼女達に注目した。

静観していた者が焦り出すほどの代物が今、解放されようとしている。

そして、それを使うことに相応の代償(リスク)がいるのはもう全員察しがついた。

内情を知る【グヴィネヴィア・ファミリア】だけが周囲を置いてけぼりして、叫ぶ。

 

「使うでない!お主の体が持たんぞ!!」

「使いなさい!これは女神グヴィネヴィアの命令です!レディ・アーサ!!」

「……!!」

 

真逆の意見が後方から放たれるリョーカ。

瞠目し、視線を落とす。

その間に威吹鬼がマリウスに掴みかかる。

 

「いい加減にせんか!【ストライク・エーラ】はそう何度も使えんと前にも言ったろうて。この短期間で連続して使えば、あやつの体は―――!」

 

力強く訴える威吹鬼。

それでも涼し気な顔で飄々としているマリウス。

そんな彼の顔がさらに口角を上げて歪む。

威吹鬼も途中でやめて、哀しそうに彼女のその後ろ姿を目に映す。

 

―――リョーカは、既に低く構えを取っている。

 

「決断したか、小娘。あまり待たせるな」

「……すぅ」

「……!」

 

挑発に返事がないのも当然。

アルフィアの苛立ちすらもはや本人にとってもどうでもいい。

今、目の前にいる雑魚だったはずの女が、凄まじい"威圧感"を放っている。

その瞳が、これまでの温厚なものとはまるで違う。

気迫が、常軌を逸している。

 

 

風が。

 

風が、彼女を。

 

 

―――包み込む。

 

 

「ぬっ……!ぬああああぁぁぁぁぁーーーー!!」

「なっ……」

 

言葉を失う。

アルフィアだけじゃない。

この場にいた全員が。

 

ビキビキと音を立てて、身体の様々な部位があらゆる方向に曲がりそうな彼女を見て。

荒れ狂う力を抑え込もうとワナワナと震え、踏ん張る彼女を見て。

 

風が、彼女を通して、血管を裂いて、外へと抜けていく。

鎧のように纏われる。

 

妖精が可視化し、彼女に宿る。

リョーカの眼光が翠色に発光し、彼女がこれまで妖精から力を借りていたり利用していたわけではなく、寧ろ妖精に利用されていたことが明らかになる。

 

 

―――これは、妖精に勘違いされ、妖精に過度に求められ利用される。

 

 

―――不幸な少女の、聖なる風の"一撃"。

 

 

「全員伏せろーーーー!!余波で吹き飛ばされて砕け散りたくなくばな!!」

『……!!』

 

威吹鬼の警告に全員がリョーカに背を向けてなるべく遠くへ飛び込む。

そして。

 

「―――標的固定(ロックオン)

 

「……っ」

 

アルフィアは逃げられない。

逃がさない。

逃げる必要も一応はない。

だが、彼女は焦る。

この技はヤバい―――!!

 

 

「ストライク……エーラァァァァーーーー!!!!」

「大技は間に合わん!【福音(ゴスペル)】!!」

 

 

景色が、白飛びする。

大きな力が2つ、ぶつかり合い、都市中にその"音"が響いた。

 

その日、迷宮都市オラリオにて。

災害が訪れた。

暴風から生み出されし竜巻が、うねりをあげて、都市の一部(エリア)を1つ抉り、天へと放たれた。

 

やがて、残るのは1つの人影。

 

「小娘め……!」

 

土埃の中から出てきたのはアルフィア。

しかし、その腹からは流血が。

それなりに大きな怪我をしている。

 

「皆さん、無事ですか……!」

「あ、あぁ。なんとか」

「なんという威力だ。あの【静寂】に、最強にあれだけの傷を負わせるとは」

「ですが、回復薬(ポーション)で治せる程度の傷だ。あれではまだ戦闘を続行できる!」

「来るわよ!悪いけど、あの()にもっと戦ってもらうしか―――

 

「無理じゃ!!」

 

『……!?』

 

一同が威吹鬼の声に驚き、まさかとリョーカを見る。

すると。

 

アルフィアの前。

血まみれでズタボロのボロ雑巾になったハーフエルフが横たわっていた。

まるで無防備。

それどころか瀕死!!

 

「えっ!?ちょ、あれ……!」

「おいおいおい!死にかけてるじゃねえか!」

「【ストライク・エーラ】は1発撃つと血管が全て裂け、風に体も切り裂かれるんじゃ。つまり、威力が高すぎて自傷ダメージも入りおる。アレを撃った後のリョーカは戦えん!!それどころか1歩間違えれば死ぬんじゃ!」

『なっ……』

 

言葉を失う。

つまりさっきのは捨て身の一撃。

諸刃の剣だったという。

しかし、敵は未だ健在。

今の戦力でアルフィアに対抗できるのはリヴェリアのみだが、そのリヴェリアも前回完敗している。

アルフィアとマトモに戦えるリョーカが倒れた今、この状況で選択肢はもう……ひとつしかない。

 

「撤退じゃ!ワシはリョーカを連れて逃げる。お主も異論はないな!?あるとは言わせんぞ!」

「無論。我々は彼女を失う訳にはいかない。【静寂】にダメージを与えた時点で目的は達成されている」

「言うたな!?よし、逃げるぞ!」

 

威吹鬼がリョーカの元に一瞬で移動して回収。

彼女を抱えて走り出した。

その動きはLv.3のそれ。

そして、彼女の動きを見て一同が驚く。

 

「えっ!?ちょ……!」

「マジかよ。ズラかる気かよ!」

「私達も逃げるぞ!」

「し、しかし【静寂】にダメージを与えた今、彼女を倒すチャンスでは!?」

「馬鹿か、リオン!あんなの負傷してても化け物だろうが!」

「そうだ、たわけ。相手を見誤るな。リョーカ・アーサがいなければ我々に勝ち目はない!」

「行くわよ、リオン」

「私も皆に賛成です。行きましょう!リューさん」

「りょ、了解!」

 

【アストレア・ファミリア】がまとめて戦場に背を向けた。

それをみすみす見逃すアルフィアではない。

 

「私が妨害せんとでも思ったか?」

「―――あぁ、だから私が撹乱する。【レア・ラーヴァテイン】!」

「……!」

 

逃げる者たちを追おうとしたアルフィアの前に、リヴェリアが躍り出て既に準備していた魔法砲撃を放つ。

無論、それをマトモに受けるアルフィアでもない。

 

「【魂の平静(アタラクシア)】」

 

魔法を無効化。

視界を埋め尽くす豪炎の限りは瞬く間に無に帰した。

しかし、視界がクリアになった時には誰もいない。

 

「逃げられたか……」

 

大して真剣に追う気もなかったが、格好だけとりあえず呟いておく。

【無音の女】の力を確認した時点で、アルフィアの目的も達成されている。

故に、深追いする必要はない。

寧ろ、あの女を殺してはならないから見逃したかったくらいだ。

 

「……リョーカ・アーサ。精霊に愛され、加護を受ける

 

 

()()()()()()()

 

 

よもや、御伽噺……いや、昔話の伝説に頼る刻が来ようとはな」

 

 

アルフィアは月夜を見上げ、自分で口にした言葉をバカバカしいと鼻で笑う。

まだ彼女を【奴】に通用する希望と見出す希望と判断するのは早い。

だが、今1番楽しみな存在なのは確かだ。

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