原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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竜人形態 モード岩石竜

 

「ば~~~~~~か!諦めるわけねえだろ。私はこんなところで死ぬ格じゃねえんだよ!」

『……!』

 

ベロを出し、煽るヴァレッタ。

全員が警戒し、構える。

彼女が次にとった行動は……()()だった。

 

「えっ!?」

 

何も無いところで回避行動をとったヴァレッタにアリーゼが驚く。

が、次の瞬間。

ヴァルガング・ドラゴンの砲撃が、さっきまで彼女がいた立ち位置を貫いた!

 

「ハッハッハ!じゃあな、冒険者共!私は下から逃げるぜ!」

「待て!」

 

ヴァルガングドラゴンの砲撃で空いた穴にヴァレッタが飛び込む。

リューがその背中に呼びかけ、追いかけようとするが。

 

「待て!僕とアレンとガレスで追う!Lv.5が3人。3対1で追い詰める。下の階層は人が少なく我々も分散しやすい。各個撃破されたら無駄死にだ。君達はオリヴァスを仕留めろ!」

「わかったわ、フィン。でも、気をつけて!ガレスのおじ様達もね!」

「おうよ!必ずやあの女の首を土産に帰るわ!」

「チッ。面倒かけやがって。死にかけのネズミが。轢き殺してやる」

「行くぞ!」

 

アリーゼの激励を受けて、フィンとガレス、アレンが降りた。

下の階層に着地した3人。

既にヴァレッタは奥の道へと逃げたあと。

 

「どうする?手分けして探すか?」

「いや、Lv.5が3人一緒にいることでヴァレッタを確実に殺せる。分散したら意味がない。このまま追う!」

 

フィンが2人を連れてヴァレッタが逃げたであろうルートを追跡する。

道の奥へと消えた3人。

その様子を岩陰に隠れて確認したヴァレッタ。

彼女は姿を現して、誰もいないフロアで口角を上げる。

 

「バカやったなぁ?フィ~ン。私はここにいるぜ。【暴食】と【猛者(おうじゃ)】も激しい戦いで離れてるみてぇだしこりゃついてる。やっぱり私はここで死ぬ役者じゃねえなぁ」

「―――自分が世界に、世界の【物語(ミィス)】に必要不可欠と。そう信じてやまない自己評価の高さには感服します」

「……っ!?」

 

ヴァレッタが慌てて振り返る。

すると、フィン達が消えた通路とは真逆の通路から……ルシアが現れた。

彼女はペンドラゴンを装備している。

 

「ル、ルシア。なんでてめぇがここにいる……!」

「ここまでことごとく作戦を潰されてまだ気付きませんか?このくらい予測するのは簡単だということを」

「てめぇ……!」

 

ルシアを睨むヴァレッタ。

しかし、辺りにルシア以外の気配はない。

つまりルシアとヴァレッタは1対1の構図だ。

こいつ馬鹿か?

ヴァレッタはまた口角を上げる。

 

「おいおいおいお~い。予測は素晴らしいが、肝心のところは詰めが甘ぇじゃねえか。Lv.1のてめぇ1人がノコノコと私の前に現れて一体何ができるってんだ?いつもみてぇに虎の威を借るなんたらでお仲間連れてこねえとダメだろぉ?」

 

ヴァレッタが煽る。

彼女の指摘は正しい。

 

本来なら。

 

「フッ。ここには誰もいない。貴女と私しか。確実に貴女を殺せば口外される心配もない」

「あ?何言ってんだ」

「もう忘れたんですか?それとももうお腹の痛みは引きました?」

「……!」

 

ヴァレッタが瞠目する。

思い出した。

ルシアはLv.1とは思えぬ鉄拳を繰り出し、Lv.5のヴァレッタに傷をつけた。

恐るべきパワーの持ち主。

そして、オリヴァスからの報告では信じられない戯言があって。

 

だが、もしあのバカの報告が本当なら?

ここはダンジョン。

この場には2人だけ。

導き出される答えは……1つ。

 

「この状況なら力をセーブする必要もない。ヴァレッタさん、貴女は1人で下層以降の階層主を倒せますか?」

「なっ……」

 

ヴァレッタが固まる。

もし、オリヴァスの言っていたことが本当なら。

こいつが……こいつの言う通り、階層主くらい強いモンスターと人間のハーフなら。

 

―――ヤバい。

 

「見せてあげます。ルノアさんと一緒に戦った時に見せた、人型のままドラゴンの力を使える姿。ドラゴンと人間の中間」

 

ルシアが構える。

あの時も、ルノアに言った。

ルシアはその姿を人間にもドラゴンにも寄せられる。

そして、その度合いをコントロールできる。

ならば、ドラゴンと人間の中間……龍人間になることも可能。

 

それが。

 

「……っ。うっ、ぁぁぁぁ……!ぁぁぁぁ……!!」

「なっ……お、おい。は?待てよ。てめぇ……」

 

ヴァレッタが絶句する。

ルシアの身体が変貌していくからだ。

その背中には竜の翼が生え、尻尾が生え、肌の鱗と腕や足がどんどん膨れ上がっていく。

ルシアの普段の小さな身体からは想像できないほどに筋肉が膨れ上がる。

服は破けて、竜の如く身体が露になった。

そして、その姿はまるで、深層の竜種のそれだ。

 

つまり、目の前にいるのはLv.1の雑魚ではなく、深層級の暴力の化身。

肉だるまの化け物だ。

 

「―――お待たせしました。これが、私の【竜人形態】。Lv.5相当です」

「なっ……」

 

ヴァレッタが言葉を失う。

その衝撃を置き去りにルシアはさらにもう一段階変化する。

 

「このままだとヴァレッタさんと互角くらいなので、腕をもう少し竜化させます。これが【竜人形態 モード岩石竜】Lv.6相当です。さぁ、戦いましょう。殺します」

「いや、ちょ、は?待てよ!……は?」

 

あまりの急展開に頭が追いつけないヴァレッタ。

しかし……。

 

待てよ?

 

仮にルシアに人間の血が含まれてなければ、律儀に待つモンスターはいるだろうか。

いるはずがない。

ここはダンジョン。

そんな悠長なことは言ってられない。

目の前の理不尽に柔軟に、瞬発に対応しなければならない。

それを今、行動で示す。

 

「いきます」

「ちょ……!クソ!このクソバケモンが……っ!!」

 

迫るルシアにヴァレッタがすぐに臨戦する。

が、速い!!

この前のLv.1と同一人物とは思えないほどに肉薄するスピードが半端ない!

 

「ちょっ!おい!なんなんだよ、お前!」

「説明しません。今から死ぬ人に言う必要ありますか?」

 

ヴァレッタはルシアの鉄拳を捌くのに必死。

ルシアはこの状況を誰にも説明するつもりはない。

その責任がない。

自分が理解していればそれでいい。

あとは、目標を撲殺するだけ。

 

「ふ、ふざけんな!なんなんだよ、お前!なんなんだよ!」

「あ、これ防がないと脳震盪になりますよ」

「ひっ……!」

 

接近戦の中でルシアは隙を見つけてヴァレッタの頭部に拳を素早く振り抜き、突く。

ヴァレッタは反射で武器を盾にして防いだが、その身体は余裕で吹っ飛びダンジョンの壁に背中を打ち付け、両膝をついた。

 

「かはっ……!?ちょ、嘘だろ……!?んだよ、このパワー……!」

「下層階層主級のドラゴンパンチです。じゃあ、トドメ刺しますね」

「は!?待て!待て!!」

「はい?」

 

ルシアは大きく振りかぶった拳を構えて駆けたが、ヴァレッタが両手を前に出して制止するから止まる。

いつでも殺せるから言うことは聞いた。

 

「ル、ルシアぁ。お前、闇派閥に来いよぉ。どうせ化け物のお前なんて、正体がバレりゃ誰も受け入れてくれねえだろぉ……?」

「……」

 

何を言い出すかと思えば、なんてことはない。

予想通り。

出てきたのは交渉のように見せたていのいい命乞い。

ルシアは冷めた目で彼女を見つめる。

 

「なっ?なっ?冒険者なんて捨てて私達のところに来いよ。闇派閥ならお前を受け入れられる。そんな身体、悪にしか身を置けねえだろうが……!」

「……」

 

ヴァレッタに訴えられ、ルシアは真顔で待ち続ける。

その後、ヴァレッタから続く言葉はなかった。

 

「あ、終わりました?じゃあ殺していいですか?」

「えっ」

 

ヴァレッタの表情が固まる。

まるで。

まるで響いていない。

 

聞く耳を全く持っていない。

大体ルシアからすれば命懸けのこの場面だからそんなことが言えるとしか思えない。

 

闇派閥なら、悪なら受け入れることが出来る?

じゃあフリテンの王森は受け入れてくれたか?

答えは否。

 

大体、化け物の体だからと闇堕ち前提みたいに喋られると、寧ろそれはルシアの地雷だ。

魅力的な提案どころか刺激している。

 

ルシアは思った。

"よし、殺そう"、と。

 

「じゃあ殺しますね」

「ひっ……!」

 

ルシアが止めていた拳を再開し振り抜いた。

ヴァレッタは慌てて避けて、広いところに逃げ、ルシアの拳は壁を粉砕・崩壊させた。

瓦礫の雨を浴びながら邪魔なのは拳で払い砕いて、ルシアがヴァレッタの方へ身を向けゆっくりと歩みを寄せる。

 

「クソ!クソォ!!この化け物が。醜いゴミが。例えここで私を殺してもてめぇの居場所なんて何処にもねえからなぁ!どうせてめぇは信じた仲間に、味方の冒険者共にぶっ殺される未来しか待ってねえんだ!!ざまぁみろ!ハーハッハッハッハー!」

 

ヴァレッタは肌で感じている。

ルシアの方が強い。

殺される、と。

 

しかも力の差を圧倒的に感じる。

ルシアはまだ本気じゃない。

なのに一方的にやられている。

 

そのことを直感で察知しているヴァレッタは恐怖で頭がおかしくなった。

口が早く回り、まくし立てて死を受け入れるしかないから、最後に本能で爪痕を残そうと吐ける言葉は全部出力している。

 

当然、ルシアの知能ならそんな背景は透けて見える。

だから、何も感じないし、何も思わない。

 

もう()()()()()相手に何を言われたって、気にする必要ありますか?

 

「―――【居合の間合い】」

「……っ」

 

もはや会話などしてくれないルシアに。

明らかに必殺を繰り出そうと低く構え、拳を引いたルシアに。

輝夜を模倣した間合いで空間を支配するルシアに。

ヴァレッタは怯える。

 

「ク、クソ……!」

「……!」

 

ヴァレッタが逃げ腰になった。

おそらくもう戦闘意欲はない。

このままでは大技は回避されて逃げられる。

ルシアは考えを巡らせる。

 

そして、彼女が自ら向かってくるように煽ることにした。

 

「ヴァレッタさん。貴女は私に何者かと問いましたね?」

「は?あ、あぁ……」

「私はドラゴンとハイエルフのハーフです。半分は人間だから、恩恵(ファルナ)を受けることもできる」

 

ルシアは自身を開示することで興味を引き寄せる。

 

「でも、こうしてドラゴンとしてLv.1以上の戦闘力を持ち、強い相手も倒せます。そして……恩恵(ファルナ)はドラゴンとして倒した相手のことも経験値(エクセリア)として認めてくれる。便利ですよね、ステイタスって」

「……っ!!」

 

ヴァレッタが瞠目するのを確認して、ルシアの口角が上がる。

もうルシアが何を言いたいか理解できただろう。

つまり。

 

「Lv.1でLv.5を倒す。きっと大量の経験値(エクセリア)が手に入り、【偉業】の達成も……これ以上ないでしょうね」

「……ざけんな。ふざけんじゃねえ!!私を経験値扱いだとぉ?てめぇ如きカスに経験値(エクセリア)になんざされちゃ―――たまんねぇだろうが……!!」

「……ようこそ」

 

頭に血が昇って突っ込んできたヴァレッタにルシアがニヤッと笑う。

 

そして―――拳を振り抜き、ヴァレッタの振った剣を砕き、彼女の腹に拳をめり込ませた。

 

これは―――友から学んだ正拳突き。

 

「【グランドインパクト】」

 

「かっ……はっ……!?」

 

ヴァレッタがまた壁に叩きつけられた。

今度は角度をつけたから、天井近くまで飛んだ。

おそらく……全身の骨が砕けただろう。

彼女は、重力に従って落ちてくる。

そこに。

 

「終わりだ、【殺帝(アラクニア)】」

「……!!」

 

ルシアが拳を振りぬいた。

その拳によりヴァレッタは粉砕され、肉片となり飛び散り、跡形もなくなった。

 

 

―――闇派閥(イヴィルス)幹部、【殺帝(アラクニア)】ヴァレッタ・グレーデ。

 

―――ルシア・マリーン・()()()()により、死滅。

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