原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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竜人形態 モード飛竜

 

「うっ……ぁ……」

 

ルシアは瓦礫の中から這い出て何とか身を起こす。

もう戦うどころか動く元気すら残っていない。

それでも。

 

「――――――!」

「……っ!!」

 

ルシアが瞠目して振り返る。

瓦礫の下からジャガーノートの唸り声が聞こえる。

ここにいてはマズイ。

まず間違いなく今のルシアでは殺される。

ルシアにジャガーノートは倒しきれない。

幸い、【アストレア・ファミリア】の皆は置いてきた。

ジャガーノートはルシアが作った縦穴を……登れはするだろうが時間はかかるはず。

その時間で彼女達は十分逃げることが出来る。

ならば、今優先すべきは自身の逃亡だ。

死ぬ覚悟はあったが、死ぬつもりはない。

 

「はぁ……!はぁ……!」

 

ルシアはさらに下の階層に逃げる。

ここはおそらく49階層。

50階層まで逃げ込むことを決めたルシア。

その道中、ルシアは追っ手の気配がないことに気づく。

 

「――――――っ!」

「……!?」

 

ルシアは気配で察知した。

追っ手の気配が無機物からモンスターのそれになった。

それだけでルシアは理解する。

なるほど。

ジャガーノートもダメージを負った。

回復するためにモンスターを取り込んでキメラとなったのだと。

そして、普通は階層を移動することはない『彼』はルシアが破壊者と断定して執拗に追っている。

おそらくダメージを負いすぎて壊れているのだ。

破壊者の抹消という入力だけが残り、デタラメな出力をされている。

 

「……っ」

 

キメラ化したジャガーノートが近づいている。

1つの階層に留まるのはマズイ。

ルシアは仕方なく51階層より下に降ることにした。

その道中、デフォルメス・スパイダーに追われて52階層へ。

 

すると。

 

「オオオオオォォォー!」

「うっ……ぁ……!」

 

ヴァルガングドラゴンの狙撃をルシアは必死に避け続ける。

とにかくジャガーノートから逃げてどこか安全な場所―――ルームに逃げ込まなければいけない。

この階層で今のルシアじゃ生き残る術はない。

 

「オオオオオォォォー!」

「イッ……!?」

 

ルシアが逃げ回っていると、イル・ワイヴァーンも現れた!

ルシアを狙って飛んでくる。

彼女の敏捷では振り切ることはできない。

仕方なくルシアは竜人形態になり、拳を構える。

 

「オオオオオォォォー!」

「うあ……っ!?」

 

ルシアは弱りきっていた。

イル・ワイバーンと衝突するもその衝撃でヴァルガングドラゴンが狙撃で作った縦穴に落ちてしまう。

そこにイル・ワイバーンも飛翔して追ってくる。

 

「……っ」

 

ルシアは必死に疲労で限界が来てる頭を回転させる。

下にはヴァルガングドラゴン。

上にはイル・ワイバーン。

挟まれた。

この窮地を脱するためにはまずは迫ってるイル・ワイバーンをどうにかしないとヴァルガングドラゴンの狙撃も避けられない。

やるしかない。

ここで、新たな機転を利かせ、打開策を得る!

生き残る為に!

 

「……!そうだ!」

 

ルシアは見様見真似で仲間のエルフを模倣することにした。

ヴァルガングドラゴンが作った縦穴の側面に身体を寄せ、壁に足をかける。

 

「……っぁ!」

 

足を火傷した。

しかし、構うものか。

降下してくるイル・ワイバーン。

ルシアはない力を振り絞って、竜人形態となり、翼だけドラゴン態の大きさに肥大化させた。

そして。

 

「【竜人形態 モード飛竜】!」

 

ルシアは足を折りたたんで壁を足場に蹴る!

これが私の仲間の魔法(ルミノス・ウィンド)、偽造技。

高速遊撃!飛竜の竜人形態!

 

「疾風一閃!【グライダー】ァ!!」

「オオオオオォォォー!?」

 

ルシアは高速で飛翔して、イル・ワイバーンの胸部を穿った。

通過したその時にはイル・ワイバーンの魔石を手に掴んでいる。

魔石を失ったイル・ワイバーンは消滅する。

 

「しゃおらぁっ!!」

『オオオオオォォォォォオオオオーーーッッッ!!』

 

ガッツポーズを作るルシア。

同時に竜の喉で吠えた。

そして、魔石を手に叫びながら重力に従って降下する。

それを飛翔して留め、再び飛び上がる。

 

「……っぁ」

 

なんとか縦穴から這い上がったルシア。

52階層に落ちずに済んだ。

上がってきた時と同時に力が尽きて竜人形態も解けて倒れ込む。

 

「オオオオオォォォー!」

「……っ!イッ……!?」

 

ルシアに力尽きている暇などない。

ここで寝ていたらヴァルガングドラゴンの狙撃の格好の餌だ。

すぐに立ち上がって駆ける。

ルシアがいた場所は炎の柱で貫かれた。

それをギョッとしながら一瞥して、すぐに前を向いて必死に走る。

たしかこの先にルームがあったはず。

ギルドの探索調査報告書に書いてあった。

ルシアは全て借りて目を通して暗記している。

 

「はぁ……!はぁ……!うっ!……っ。はぁ……!」

 

ルシアは転倒ながらおぼつかない足取りで走り続ける。

正直真っ直ぐ進むことも出来ない。

それでも。

生きたい。

 

「……っ!見つけた!」

 

ルシアは遂にルームを見つけた。

直線距離にして5M。

砲撃はすぐ後ろまで迫っている。

飛び込めば……いける!

 

「うわっ!?」

 

ルシアは真後ろで砲撃を受けて、それに背中を押される。

そして、大の字で情けなくルームに転がり込んだ。

ルームに入るとルシアは……広げていた四肢をペタっと下ろす。

 

「……っ。……っ」

 

少し胴体だけ起こし、四つん這いのままルシアは息をつく。

そして、疲労困憊の顔を上げ、虚ろな目でまた倒れ込む。

 

ルシアは、そのまま眠りについてしまった。

その手の中にはイル・ワイバーンの魔石が握られたまま。

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