原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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正義は堕ちた

 

ルシアには、自身が思い描く【計画(シナリオ)】がある。

全ては【アストレア・ファミリア】を救う為に。

大切な仲間以外を踏みにじることにした。

 

「ゴブニュ様。今日は面会(コンタクト)を許してくださりありがとうございます」

「構わん。が、俺は忙しい。手短にしろ」

「はい」

 

ルシアは手始めにゴブニュのところに来た。

頼みたいことがあるからだ。

 

「では、さっそく。この竜の鱗。白の鱗と黒の鱗で剣を作ってください。あとは(かぶと)も。あとこのハイエルフの……フリテンの大聖樹の枝で杖を作ってください」

「多いな。そして……またこれほどの素材を。どこで調達してくる?」

「秘密です」

「そうか」

 

深くは追求しない。

ゴブニュの興味は素材の方にある。

白の鱗はルシアがキメラジャガーノートに追われていた時に落としたルシア自身の、つまり【アヴァロニク・ドラゴン】のドロップアイテムだ。

黒の鱗はルシアが黒い竜種の魔石を取り込んだ後に肌が黒化し、その時のドロップアイテム。

 

「1つ、注文があります。できれば剣のうちのどちらかと兜はゴブニュ様が作ったとわからないようにしてください」

「……癪に障るが、お易い御用だ。理由は?」

「言えません」

「そうか」

 

またしても追求なし。

ゴブニュは素材を奪い取るように持っていき、奥へと籠ろうとしたが、その足を止めて横顔だけ向ける。

 

「他は何かあるか?」

「製作者不明の剣と兜だけは手早くお願いします」

「了解した。制作に少しかかる。できたら呼ぶ。それまで俺に近付くな。邪魔をするな。集中したい」

「わかりました」

 

ルシアは頷いてすぐに立ち去った。

数週間後、ルシアはゴブニュに呼ばれ、1本の剣と兜を授かる。

 

「注文の剣だ。他は時間をかけて作る。出来はどうだ?」

「もちろん完璧です」

 

剣を試しに振るって、ルシアは頷く。

その様を見てゴブニュは意外そうにした。

 

「お前……剣も使えるのか」

「まあ。多少は」

 

ほんとはフリテン王国剣術をガッツリ使えるが適当に答えた。

 

「剣の名はどうする?」

「……【カリバーン】にします」

「兜は?」

「【キャリオット】で」

「なるほど。いい名前だ」

 

ルシアは白の鱗で作った白い剣を懐に収める。

それを見てゴブニュはまた背中を向けた。

 

「続きをやる。それを持っていけ」

「わかりました。ありがとうございます」

 

ルシアももう用はない。

他二つは急がない。

剣を持って、【ゴブニュ・ファミリア】を後にした。

 

そして、ローブを深く被り、千里眼を使用する。

その瞳には、【闇派閥(イヴィルス)】の残党の居場所が全て映っている。

 

ルシアの計画の第2段階。

【アストレア・ファミリア】はダンジョンにて滅ぶと予言があった。

しかし、それが誰の手によって為されるのかは判明していない。

モンスターかもしれないし、人かもしれない。

人だとすれば……【アストレア・ファミリア】が積極的に関わり、彼女たちを脅かすものはひとつしかない。

 

「ぎゃああああ!?」

「なんだお前……!」

「こいつ、強い!?」

「嫌だ!やめてくれ!」

「見逃してくれ!」

「死にたくない!た、助けてくれぇ!」

 

数回の夜に渡り、迷宮都市オラリオでは悪人の喚きが響いた。

面を被り、剣を振るう。

カリバーンは悪の血を吸い付くし、闇派閥の残党は次々と死滅していく。

彼らがどこへ逃げても、ルシアは千里眼で居場所を見抜く。

やがて、その刃は【ルドラ・ファミリア】も手にかける。

 

「ま、待てよ……!なんなんだお前!なんなんだよ、お前!!」

「……生き延びていたのだな。私について、言う必要は無い。知らずに死ね」

「なっ―――」

 

【ルドラ・ファミリア】のリーダー格、ジュラの首も切り落とした。

そして、その光景を高みから笑う者あり。

 

「ひゃっひゃっ!まさに修羅だな。……次の標的は俺か?」

「はい」

 

高笑いする神ルドラに頷き、彼を高みから引きずり下ろした。

彼は抵抗せず束縛された。

よほど今の状況が面白いようだ。

おそらく仮面の下の正体に気づき、正義が堕ちていることに愉悦を感じている。

 

こうして次々と闇派閥の人間を殺し、神は捕縛した。

 

その刃は、闇派閥だけに留まらない。

 

「なんだねぇ!お前はァ!」

「な、なんだあいつは……!フリュネを圧倒してやがる!」

「……」

 

闇派閥と繋がりのあった【イシュタル・ファミリア】にも姿を現した。

そして、最強のフリュネを一方的になぶっている。

その信じ難い光景に娼婦たちも、アイシャも目を疑っていた。

 

「そうか。最近闇派閥を狩ってるのはお前か……。何者だ?」

「言えません」

「お前のせいでこっちの商売は上がったりだ。どうしてくれんだい」

「知りません」

 

女神イシュタルに問われるも一点張り。

仮面の女はフリュネの胸を貫き、そのまま上に振りぬいて彼女を胸から頭部まで真っ二つにした。

フリュネは死滅。

そして、イシュタルの頭を掴む。

 

「てめ……!離せ!」

「離しません」

 

仮面の女はイシュタルを引きずり、邪神達を収容している倉庫にぶん投げた。

これで全て片付けた。

 

「……いや、まだ残っている」

 

仮面の女はそのまま【クノッソス】へ。

 

「お待ちしておりました。お初にお目にかかります。【イケロス・ファミリア】の皆さんと……ディックスさん、で合ってます?」

「あ?なんだ?テメェは―――

 

クノッソスへ入ろうとしていたディックスを始めとした【イケロス・ファミリア】。

だが、先に仮面の女の方が早く動いた。

そして、全員薙ぎ倒し、ディックスを拘束。

締め上げて手に持っていた『鍵』を回収する。

 

「てめ……っ!最初から『(それ)』が狙いか!何者だ!?」

「いえ。鍵ではなく貴方達を殺すことが目的です。人工迷宮に逃げられた時に追いかけるために回収したまで。あと口の動きで名前を当ててみたんですけど、合ってました?って聞いたんですけど返事とかってできます?」

「がっ……はっ……!?なんだ、このパワー……!動けねえ!」

 

物理的に締め上げてるから答えられるかと聞いたわけではなく、礼儀を問うてるのだが。

と、思いながらもどうでもいいのでルシアはディックスを解放する。

 

「なっ……!?」

 

手を離されたディックスは驚きつつも槍を手にして、仮面の女と向き合った。

そして、睨む。

迂闊に仕掛けないのは相手の方が遥かに強いのを肌で感じ取ってるからだ。

 

「どうしたんですか?かかってこないんですか?逃げますか?逃げれますか?死にますか?」

「……っ!」

 

壊れたブリキ人形のようにギギギと首を傾けて、ルシアは質問を連呼する。

ディックスの警戒度は増す。

ジリジリと距離を保ちながらも後退していく。

その様子を見てルシアはため息をつく。

 

「はぁ。クノッソス、でしたっけ?その建築に必要な費用の確保で闇派閥とモンスター販売。自身の欲求とあとはダイダロス?の呪いでしたっけ。全部から解放してあげますよ」

「は?」

 

ルシアはとある紙面を放り投げる。

無造作にディックスの前に落とされたそれは建造物の設計図だ。

 

「女神タレイア様は繁栄を司る女神。建築も通じてるそうです。神の建造物とダイダロス、どっちの方が上なんでしょうね?」

「……!!」

 

その言葉を聞いてディックスは飛びつき、設計図にかじりついた。

設計図に目を通す彼の瞳はやがて……生まれながらの黒目へと変わる。

 

「呪いが解けましたね。おめでとうございます。まあ、新しい呪いで上書きしたみたいなものですが」

「なぜ俺にこれを見せた?これを描いた神はどこにいる!?会わせろ!」

「強い冒険者との無駄な戦闘を避けたかったので。設計図の最終ページに所在地を書いています」

 

ルシアは質問に答えて、クノッソスへと向かう。

ディックスはそんなルシアを気にも止めず慌てふためいて転けながらもタレイアの元へと向かった。

ルシアは奪った鍵でクノッソスを開ける。

 

「……はぁ」

 

中に入って所定の場所に行くと千里眼で見た通り、モンスターが檻に捕らわれていた。

このモンスター達をどうするか。

闇派閥とそれに関わる勢力を潰すことだけが目的のルシアからしたら、モンスター達をどうしようがなんでもいいが、そもそも【イケロス・ファミリア】が彼らという問題を抱えていたのが厄介すぎる。

 

「アナタ、同胞ネ?助ケニ、来テクレタノ?」

「……めんどくせぇ」

 

テシレアの言っていた異端児(ゼノス)とやらの正体が判明したルシア。

気だるそうに項垂れたあと、天を仰いで。

 

檻を全て破壊した。

 

『……!!』

「【イケロス・ファミリア】は1人を除いて全員殺した。イケロスも捕縛した。お前達は自由だ。お仲間が迷宮(ダンジョン)にいるならさっさと帰れ。これ、地図な」

 

ルシアは無造作に賢そうな異端児の前に自前で用意した地図を放り投げた。

千里眼で見たダンジョンへの帰路、道筋をバカでもわかるように簡単に描いただけのものだ。

放流、そしてあるべき場所へ帰す。

ルシアが考えた中で、異端児問題はこれが一番ベストだと考えた。

めんどくさくない、という点でベストだ。

彼らの抱える問題を全て解決する義理はない。

 

「……あと私は異端児じゃありません。勘違いすんな」

 

それだけ言い残してルシアはクノッソスを後にした。

 

タレイアの元に帰ったルシアは、タレイアに縋るディックスを傍目に報告する。

なんか【繁栄の役者(アクターズ)】増えてるじゃねえかよ、という思いは捨ておく。

 

「【イシュタル・ファミリア】と【イケロス・ファミリア】も片付けました。【グウィネヴィア・ファミリア】として演出を用意し、演説したあとにクノッソスはギルドに寄付します」

「手際がいいね」

「皮肉で言ってます?」

「もちろん」

 

タレイアはルシアを見てすらいない。

ディックスが提出した設計図の独自解釈に目を通している。

ルシアは1番雑な惨殺という方法を用いて闇派閥を壊滅させた。

あとは邪神を送還するだけだ。

決して優れた手腕とは言えない。

 

「で、僕に何か用かな?」

「はい。異端児の問題は一時的に解決しましたが、【イシュタル・ファミリア】の特殊な狐人(ルナール)がいまして」

「知ったこっちゃないね。ヴィヴィアンにでも頼んだらどうだい?もう彼女の善性に気付いてるんだろ?」

「……そうですね」

 

ルシアは頷いて、狐人をヴィヴィアンのところに連れていくことにした。

 

 

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