原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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暴力

 

「迷宮攻略と黒竜討伐のためにリョーカさんと私を強化します」

「どうやってやるってんだ」

 

ルシア、ヴィヴィアン、グウィネヴィア、リョーカ、マリウス、威吹鬼が集まりルシアが言い出す。

ヴィヴィアンの問いに、ルシアは。

 

「リョーカさんのステイタスを育てます」

「は?何言ってんだテメェ。恩恵(ファルナ)は奴に効かねえって言ったろ」

「はい。なので攻撃にステイタスは使わないです」

 

ルシアはキッパリ否定する。

そして。

 

「リョーカさんの戦闘を見るに攻撃力はあるが、肉体が耐えられない様子。ならば、耐えられる肉体を手に入れるべきです」

「……なるほどな」

「はい。リョーカさんの攻撃は今が上限とは限りません。身体が耐えられる許容量が増えれば精霊はもっと力を与えてもいいと判断してくれるかもしれません」

 

そうすれば、さらに精霊の力を使い、強くなる。

リョーカ自身が強くなることはなくても、彼女はまだ使えてない力があると判断した。

つまり、本来のリョーカはもっと強いと。

そうルシアは力説する。

 

「なので、【グウィネヴィア・ファミリア】は暫くオラリオで活動しましょう。そして、ダンジョンでリョーカさんのステイタス、特に耐久を育てます」

「いいぜ。採用だ」

「ありがとうございます」

 

ルシアはヴィヴィアンに頭を下げて、その足でリョーカの前に立つ。

 

「というわけでリョーカさん。オラリオに行きましょう」

「……い、嫌だ」

「はい?」

 

まさかの拒否にルシアは顔を顰める。

すると、気弱なリョーカはビクッとするも意外とここは引かない。

少し睨んでくる。

 

「わ、私がグウィネヴィアに従うのはグウィネヴィアの【神の力(アルカナム)】でグウィネヴィアを信仰させられて逆らえないようにされてるから……ってだけ。だから、貴女の指示には従わない」

「ま、そういうことじゃな。お主に聞く耳を持つ意味がないんじゃ。分かったら首を突っ込まずに大人しく帰るんじゃな」

 

リョーカと威吹鬼で言葉を繋いで受け入れない。

ルシアは訝しむ。

 

「前と違って人と戦うわけではないんですよ?相手はモンスターです。それに、リョーカは冒険者が好きなはず。ダンジョンに行くのです。憧れの冒険をするチャンスでは?」

「私……戦うの、嫌い。冒険者は見たり聞いたりするのが好き。私は……冒険したくない」

 

リョーカはおずおずとしながらもキッパリと拒否した。

ルシアは、彼女の言葉を聞いて息を吐く。

 

「なるほど」

 

ルシアがそう、簡潔に言い放った瞬間。

 

―――ルシアの拳が音速でリョーカの前を横切り、その拳は威吹鬼の顔面にめり込み、彼女を殴り飛ばす。

 

『……!?』

 

殴られた本人も、リョーカも驚愕する。

威吹鬼は口元を拭い、殴られた箇所を抑えた。

リョーカはそんな親友を目を丸くして見る。

 

「すみません。まさかお願いしてるように見えてるとは思わず、つい。リョーカさん、これは命令です。逆らえば威吹鬼さんを痛めつけます」

「は!?」

「なんじゃと……っ!―――っ!!」

「やめて!!」

 

ルシアは、また威吹鬼を殴りつけた。

そして、馬乗りになりさらに殴り続ける。

 

「やめて!やめて……!―――やめろ!!」

「……!」

 

リョーカが遂に剣に手をかけ、ルシアが威吹鬼の胸ぐらを掴みながらそちらを見る。

 

「うっ……ぐっ……!うあっ……ぁ……。リョー……カ……」

「威吹鬼……!」

 

血まみれでぐったりとしながらリョーカの名を呟く威吹鬼。

リョーカは、剣を触ってしまった。

それは、合図だ。

威吹鬼は止めようとするも、制止する手が上がらない。

 

「……()りますか?」

「……っ!!」

 

ルシアが正気ではない大きく見開いた目で振り返りながらリョーカに問う。

リョーカはそこでやっと状況を理解し、走る緊張感に喉を鳴らした。

リョーカが剣を抜けば―――殺し合いが始まる。

これは、そういう場だ。

 

「いいですよ。私は。勝てる自信があるので。それに、殺せるんですか?リョーカさんに。私が」

「……っ!なっ……。こ、殺すってそんな……」

「殺すかやめるかそれだけですよ。私は殺されるまで止まらない。実力的にもどちらが死ぬしか決着はつきませんが」

「……っ」

 

リョーカは剣に手をかけたまま固まる。

視線は迷い、泳いだ。

親友が殺されるかもしれないその時でも、彼女は剣を手に取ることはできても抜けなかった。

その時点でもう答えは見えている。

彼女に……人は殺せない。

 

「リョーカ……っ!ワシに構うな!ワシはもう十分面白おかしく生きたわい。死んでもよい!ワシを見捨てて汝は自由に生きよ!」

「……っ!」

 

威吹鬼が叫ぶ。

ルシアはまた威吹鬼に視線を戻して拳を振りかぶる。

 

「黙りなさい」

「あ……がっ……!?」

「やめて!!」

 

ルシアが殴打を再開した。

殴られ続ける威吹鬼。

リョーカは迷い、やがて……下唇を噛んで目を伏せる。

 

「……わかった」

「はい?」

「わかったから!私、従う!ダンジョンに行く!だから……っ!もう……やめて」

「リョー……カ……ダメ、じゃ……」

 

手を伸ばす威吹鬼。

泣きそうな顔で彼女を見るリョーカ。

ルシアはそれを交互に見て……威吹鬼を離す。

 

「威吹鬼!」

「バカもんが……」

 

重力に従ってバタリと倒れる威吹鬼に駆け寄り寄り添うリョーカ。

ルシアのやり方を黙って見ていたヴィヴィアンは鼻で笑う。

 

「……ハッ。暴力で支配か。典型的だな」

「どうも」

「褒めてねえよ。このやり方じゃいつかテメェの首を絞めるぞ」

「そうならないようにするので大丈夫です」

 

言われてもまるで響いていない。

こうしてルシアはリョーカを支配した。

そして、オラリオに【グウィネヴィア・ファミリア】が君臨する。

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