原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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円卓

 

「まだ生きていたか。この薄汚い化け物めが!王に代わり、この私が惨殺してくれるわ!ええいっ!」

「息災なようでなによりです」

 

ルシアは、老いたエルフの騎士の斬撃をよそ見しながら避ける。

老エルフはマリウスの父だ。

フリテンに手紙を出し、発注した……じゃなくて呼び寄せた。

相変わらずルシアを迫害してくるが、ランクが低いので相手にならない。

 

「避けるな!化け物め!」

「なぜ我が父を取り寄せ……呼んだのですか?」

「まあ。便利なので」

「なるほど」

 

剣を避けて淡々と答えるルシアにマリウスはニコッと笑う。

 

「リョーカさん。紹介します。マリウスくんの父上にあたるガリウス・グラウェインさんです」

「死ね!悪魔め!」

「えぇ……」

 

めちゃくちゃ殺そうと剣を振り続けるガリウスと、当たり前のようにそれを避けて気にもとめないルシアにリョーカは困惑する。

そこでガリウスはリョーカに気づく。

 

「おぉ……お労しや。見れば分かる。貴女は王そっくりだ。きっとこの化け物に利用されて……あぁ、可哀想に。このガリウス、貴女を必ず救い出してみせますのでご安心を」

「あっ。えっ」

 

手を取られて哀れな目を向けられ熱っぽく語られるリョーカはどう反応していいのかわからない。

言葉は有難いが、ルシアを迫害しようとする人間性は問題視する。

それに申し訳ないが彼に自身は救えないというのは手に取るようにわかる。

 

「あとは団員の募集を午後に始めます」

「化け物め!私はグウィネヴィア様の眷属となり、貴様からこの娘を解放するぞ!」

「あ、はい。最初からそのつもりですのでもう黙っててください。暴力で従わせる手間が省けて助かります」

「我が主。我々のような特殊な派閥に団員が集まるのですか?」

「私の存在を敬遠する者は多いでしょうが、公言の内容に興味を示したり利用しようと乗っかってくる輩はいるはずです。その中から厳選します」

「なるほど」

 

ガリウスを無視して話が進んでいく。

途中、あまりにもガリウスが剣を振るってくるのでルシアは殴って気絶させた。

鮮やかな流れで手際が凄まじくよかった。

森を出てから両者の実力はかなり乖離があるようだ。

ガリウスもLv.2はあるのだが。

 

「どういう人選をなさるつもりですか?」

「強い。ランクが高い。あと私の敵にならない。善意がなく、リョーカさんの問題に首を突っ込まない。あたりですかね」

「なるほど」

 

リョーカは下を向く。

外部から人が入っても救援は期待できそうにない。

 

そして、午後。

【グウィネヴィア・ファミリア】の本拠、キャメロットにて。

長机と椅子を用意し、面談が始まる。

面接官はルシア、マリウス、リョーカ。

向かい合って加入希望者が一人一人座る予定だ。

 

「な、なんで私まで……」

「名目上、団長はリョーカさんでギルドに提出しているので。まあ座ってるだけでいいです。寧ろ喋らないでください」

「……」

 

もうリョーカは抵抗しなくなった。

すぐに黙って手元の資料を適当に眺める。

 

「それでは、入ってください」

 

副団長のルシアが言うと、まずは猫人が入ってきた。

彼女は椅子に腰を下ろし、ルシアは質問する。

 

「名前は?」

「ユウカ・パシヴァルで~す」

 

ルシアは顔を上げて、前を見た。

ユウカと名乗る猫人は毛先が気になるようで、弄り、前を見ていない。

なるほど。

そういうタイプか。

 

「ランクは?」

「Lv.2?3?んー、覚えてなーい」

「なんで【グウィネヴィア・ファミリア】に入ろうと思ったんですか?」

「うーん。なんか面白そーって思ったから?」

「なるほど。採用です」

 

まさかの即決。

ルシアは以上ですとだけ言って、ユウカにはけるよう指示した。

そして、サクサクと次の者を呼んでいく。

 

「名前は?」

「……シロウ・ラオネル」

「ランクは?」

「Lv.2」

「動機は?」

「……」

「採用です。次」

 

狼人の資料に赤いインクで丸をつける。

めちゃくちゃ適当でリョーカは困惑する。

 

「名前は?」

「ラン・トーリスタ!猫人。にゃーにゃー」

「ランクは」

「Lv.2。にーにー」

「動機は?」

「【半怪物(モンスター・ハーフ)】、興味あり。異端。超異端。迷宮完全攻略わくわく。高揚。高揚」

「検討……いや、採用で」

 

一瞬悩んだが丸をつけた。

そして、次。

アマゾネスでスラッとした背丈。

褐色ではあるが、高身長で細身で容姿が美形。

彼女は、剣を腰に美しい所作で腰をかける。

 

「名前は?」

「彼女は……っ!!」

「……?」

 

ルシアが質問を投げかけたと同時に、現れたアマゾネスを一目見た隣のマリウスがガタッと立ち上がる。

瞠目していて衝撃を受けているようだ。

ルシアは訝しみながら尋ねる。

 

「どうしました?マリウスくん。お知り合いですか?」

「えぇ。彼女―――胸部がとてもふくよかです!!」

「は?」

「しかも良い(ヒップ)をしている……素晴らしい」

「マリウスくんもう帰っていいですよ」

 

ルシアは座りながらマリウスの首根っこを掴み、彼の部屋にぶん投げた。

中庭から窓ガラスを割って、彼は自室に外からぶち込まれる。

強制退場だ。

しかもなぜか投げ飛ばされる際に彼は嬉しそうに頬を緩めていた。

懐かしいやり取りなのかもしれない。

ガラスが降ってくる中、ルシアは真顔。

気を取り直して咳払いする。

 

「すみません。お見苦しいところを。気にしないでください。続けます」

「えっと、大丈夫かい?彼」

「大丈夫です。体調が悪いようで早退してもらいました。それで、お名前は?」

「あ、あぁ……キリエ・スロットルだよ。是非キリエと呼んでくれたまえ」

「なるほど。ランクは―――待ってください。【ガネーシャ・ファミリア】?」

 

手元の資料を見て、ルシアが二度見する。

前にいた派閥の名が【ガネーシャ・ファミリア】と記載されている。

【イシュタル・ファミリア】の件でまだ関わりがあるとはいえ、ルシアの突然の改宗に対するシャクティの追求は避けられなかった。

その時は真顔で交渉だけを淡々とこなし、はぐらかしたが、彼女は腑に落ちていないはず。

【アストレア・ファミリア】と共にルシアについて気にかけているのは容易に想像できる。

そして、キリエはその【ガネーシャ・ファミリア】だと言う。

ならば訝しむのは当然。

端的に言うと、ルシアは彼女が【ガネーシャ・ファミリア】が偵察のために寄越した偵察員(スパイ)なのでは?と睨んだ。

 

「答えないと思いますが一応確認してもいいですか?」

「もちろん。どうぞ」

「シャクティさんから【グウィネヴィア・ファミリア】に潜入するよう指示されていますか?」

「……?いや?」

「ならばなぜ【グウィネヴィア・ファミリア】に?【ガネーシャ・ファミリア】から改宗するメリットを感じませんが」

「君の演説に感動したのさ。迷宮完全攻略と黒竜討伐という目標。そして、それを実現できるという証明。崇高な目的に私も共にしたくてね」

「なるほど」

 

ルシアは手元の資料に三角をつける。

受け答えした際の表情や態度を見てもおそらく嘘は言っていない。

シャクティから何か言われてる様子もなし。

正直で誠実、それがキリエから受けた印象。

評価だ。

だからこそ、【グウィネヴィア・ファミリア】にとって彼女は危険。

……必ずリョーカの問題に難色を示すから。

 

「ちなみにランクは?」

「Lv.3。ランクアップも可能だが……今はステイタスを育ててる途中かな」

「なるほど」

 

高いな。

ルシアはそう思いながら三角をペンでつつく。

強く、魅力的だがどうしたものか。

何より誠実なこと以外に欠点がない。

おそらく知能もそこそこ高い。

でなければこの性格でルシアを受け付けない。

他の3人のように興味が薄かったり変わり者で逆に興味を持ったりするならまだしも、彼女はルシアという存在を認め、良しとした上で声明の内容に触れている。

つまり価値観が優れているということだ。

この要素は強い。

ルシアのことを抜きしても仲間にすれば有能だし、様々なことに有効だ。

柔軟性があるということなのだから。

 

「……」

 

ルシアは今度はペンで自身の頭をつつき、考える。

彼女を引き入れるリスクとメリット。

果たしてどちらを取るべきか。

悩んだ末に……答えを導き出した。

 

「……わかりました。仮採用。いや、一次審査を突破とします」

「おや。他の皆は即採用だった気がするけど。なぜそのような対応か伺ってもいいかな?」

「よく聞いてましたね……。安心してください。先程の3人も同じ対応に変えるつもりです。確かめたいこともあるので」

「なるほど。それなら納得するよ。すまない、無礼を働いて」

「いえ。こちらの説明不足でした」

 

2人とも礼儀正しく頭を下げる。

その態度もルシアは評価した。

気品あり、良識ありと。

 

「以上です。次の選考は後で案内するので表で待っていてください」

「了解した」

 

キリエを案内して、ルシアは次のことを考える。

あと何十人も残っているがめぼしいものはいない。

大体が低ランクで興味本位とこっちを下に見て付け込もうとしている冷やかし目的の連中だ。

とにかくこれで4人、新しく団員を確保した。

ルシアとリョーカとマリウスとガリウスとイブキを合わせれば9人。

あと前衛中衛後衛のバランスを考えれば3人は欲しいが……まあ今はいいだろう。

 

「ちなみに今回の人選、リョーカさんはどう思いましたか?」

「えっ」

 

長机を片付けながら一応団長であるリョーカにも各々の印象を聞いておいた。

これも選考の基準にしようと思っている。

リョーカを中心に、リョーカを強化するためだけのパーティを組むそのメンバーだ。

彼女のコンディションを左右する各印象は割と重要とも言える。

聞かれたリョーカは片付けを手伝いながら……困った表情でしどももどろしたあと、少し考えて絞り出すように呟く。

 

「え、えっと……良い人そう、だった。特に最後の……アマゾネスの人。優しそう」

「そうですか」

 

悪くない答えだ。

おそらく受け答えが一瞬すぎてパッと見の印象しか口にできてないだろうが、まああの短い時間の直感でそう思えたならリョーカの感覚を信じたい。

ルシアは頷いて彼女を連れながら表口まで来た。

 

「では、一次審査を突破した4人は私達についてきてください」

「えー。さっきので合格って話じゃなかったー?」

「すみません。事情が変わりまして。まあ、仮にさっきので合格でもこれから案内する場所は連れて行っていたので気を悪くしないでください」

 

そう言ってルシアが4人を連れて行くのは、地下。

階段をどんどんと下っていく。

もうその時点でリョーカは察した。

まさか、と思いながら"あそこ"へ向かっていくのだと道中の道筋で確信を持ち、足取りが重くなる。

嫌な顔になるし、汗もかくし、下を向いてしまう。

それでも、4人を連れて……ついてしまった。

 

『なっ……』

「……なんじゃ」

 

辿り着いた牢獄の前。

拘束され、血みどろで服もボロボロのイブキ。

そんな彼女を前に絶句する4人。

ルシアは、その柵の前に立って、4人に告げる。

 

「これが【グウィネヴィア・ファミリア】の特級秘密事項(トップシークレット)です。こんなことをしている理由は、リョーカさんを従わせるためです」

 

ルシアは悲惨な光景を背後にたんたんと説明を始める。

リョーカは戦いが嫌いで拒否していること。

それでも、リョーカには役目があり、代わりはいないこと。

迷宮完全攻略と黒竜討伐には、必要なことであること。

全て話した。

 

「このことに抵抗感がなく、リョーカさんの育成に貢献し、迷宮完全攻略と黒竜討伐に間接的に携わりたいと言える者だけが最終審査突破とします」

 

それ以降黙るルシア。

以上だ、さぁどうするとでも言うように彼女は仁王立ちで4人の返事を待った。

すると、最初に動いたのはユウカ。

あざとい猫人だ。

 

「はーい。私、抵抗ないでーす。ていうかぁ?どうでもいい?的なぁ?」

「そうですか」

 

ユウカが外れる。

彼女はルシアに認められ、グウィネヴィアは上の階にいると案内された。

そうして彼女は地下を後にする。

残るは3人。

 

「……問題ない」

「そうですか」

 

2人目はシロウ。

無口な狼人。

ボソッとそれだけ呟いて彼も上に行った。

あとは2人。

 

「非情。無情。人でなし。ロクデナシ。最低。悪魔」

「なんと言われようと構いません。それで?」

「俺は認めない。俺は許さない。でも……世界のためなら仕方ない、かも?」

「そうですか。それでは上へ」

 

抵抗はあるようだが、妥協はするようだ。

猫人のランも悩みながら上へ行った。

そして……残るは1人。

 

「……正直、到底受け入れ難いな」

「でしょうね」

 

やはりキリエは難色を示す。

心の底から不快そうな表情でルシアを見下している。

軽蔑しているのだ。

そして、虚ろなイブキの表情とリョーカの俯く顔を交互に見る。

 

「どうしますか?やめておきますか?」

「仮にそうだとしてもこんな行いをそのままにはしておけないが、わかっているのかな?私は彼女を解放する為に剣を取るよ」

「そうですか。私に勝てるといいですね」

「そうなったら君も困るんだろう?わかっているさ。君は私を正直欲しがっている。断られても困るはずだ」

「まあ……はい」

 

キリエに全て見透かさている。

彼女はもう既に剣を手をかけている。

が、それを下ろした。

ルシアもそこで少し体に力を入れていたのを脱力する。

 

「到底認められない。こんな所業、彼女達が可哀想だ」

「……それで?」

「君のその態度も鼻につくね。求める答えが出るまでそのような適当な対応をするつもりかい?」

「余計なやり取りは必要ありませんので」

「……まったく」

 

キリエがこめかみを抑える。

ルシアの態度と所業は相当彼女の倫理に反しているらしい。

だが……彼女は思い悩み、重いまぶたを半開させながらイブキを見る。

ルシアの言う迷宮完全攻略と黒竜討伐の為に必要だから仕方なくやっているというのもわからなくはない。

が、そこまでする必要があるのか。

迷宮攻略と黒竜塔婆にに彼女たちを不幸にしてまで達成する価値はあるのか。

キリエは天秤にかける。

そして。

 

「……ひとつ、条件を提示してもいいかな?」

「どうぞ」

「彼女の迷宮での世話と、彼女の戦闘に対する意欲の交渉を担当させて欲しい。そして、それを引き換えに鬼人の彼女への暴虐を減らして欲しい」

「"減らす"、ですか」

 

無くして欲しいと言わないだけ譲歩したというわけか、と思いながらルシアはキリエと視線を交錯する。

互いに駆け引きをしている。

やがて……ルシアは頷いた。

 

「まあ、いいでしょう。そもそもリョーカさんが素直に従えば、イブキさんへの暴行は不要なので」

「それは良かった。恩に着るよ」

「ただし、リョーカさんをその気にさせられなかったらやめません」

「そこは私の手腕の問題だね。大丈夫だ。任せて欲しい」

 

どうやら相当自信があるようだ。

まあ本人がそれでいいというのなら、それ以上はない。

キリエがリョーカを説得できてもできなくてもルシアは困らない。

成功するならルシアからすればイブキをいちいち暴行しにいく手間も省けてキリエも手に入る。

一石二鳥だ。

むしろ出来るならその方がいい。

 

「では、任せます。それと、よろしくお願いします」

「あぁ」

 

そうして彼女を連れて上の階へと登った。

リョーカ、ルシア、マリウス、ガリウス、ユウカ、シロウ、ラン、キリエ。

そして、グウィネヴィアと。

地下にいるイブキ。

円卓を囲み、椅子は空席のイブキを含め10席埋まった。

 

「この会議室の円卓が背中の紋章の他に【グウィネヴィア・ファミリア】である証です。あと3席。円卓に集いし、この10人で迷宮探索を行います」

 

ルシアは主導して、今後のパーティ編成について説明した。

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