原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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十一席の騎士

37階層。

白宮殿(ホワイトバレス)

 

【グウィネヴィア・ファミリア】は、深層の階層主ウダイオスに挑もうとしている。

 

「あは~こんな深い階層まで来たの初めて~」

「……」

「驚愕必至。そもそもLv.2。来れない階層。てかここまで途中から何もしてない」

「それでいいんです。下手に死なれても困るので私の後ろにいてください」

 

深層に来てからは殆どルシアとキリエが戦っている。

リョーカも多少戦っているが、メインは2人だ。

こういう時にLv.3のイブキを使えないのはキツイ。

やはりもう少し強い団員と数が必要だ。

 

「出てきますよ」

 

そうこうしているうちに階層主の部屋に侵入し、無限のスパルトイと、階層主―――ウダイオスが出現する。

 

『ウオオオオオオォォォォォーーーー!!!!』

「いきます」

 

ウダイオスの咆哮をガン無視でルシアが飛び出す。

彼女は装備を捨てて竜人形態 モード赤竜 Lv.7相当となり、スパルトイを薙ぎ倒して進行していく。

そして、ウダイオスの足元まで接近すると跳躍。

そのまま天井へと移り。

 

彼女の身体は肥大化し、表面には竜の鱗が。

大きな双翼と鋭利な竜爪。

ドラゴン形態。

 

―――【アヴァロニク・ドラゴン】出現。

―――推定Lv.7。

 

「オオオオオオオオォォォォォーーー!!」

 

ウダイオスより迫力のある麻痺を起こす咆哮を轟かせたあと、彼女は業火を放つ。

それは地上を焼き尽くし、ウダイオスがダメージを受けることはもちろん。

無数のスパルトイは塵と化した。

あとはリョーカが剣を取り、走り出すのみ。

 

「任せました」

「あっ。はい」

 

人型に戻って降りてきたルシアに、通りすがりにローブを被せてあげて返事するリョーカ。

入れ替わりでリョーカが敵に向かい、ルシアが皆の元へ歩いて戻る。

 

「……ストライク・エーラ」

 

リョーカは風の精霊に後押しされ、突きを繰り出し、ウダイオスの胸部を突破する。

背中を突き破り、ウダイオスの背後に着地したリョーカ。

 

魔石は……砕いた。

 

『ウオオオオオオォォォォ!?』

 

ウダイオスが叫びながら散っていく。

ウダイオスより強い階層主級のドラゴンと、攻撃力だけはLv.7相当あるリョーカ。

そのタッグにより難なくウダイオスを攻略してしまう。

パーティに戻ったルシアとは逆に前方へ向けてリョーカは歩みを進める。

 

「38階層も見るだけ見て帰りましょう」

 

後からリョーカの後をついていくパーティもルシアの言葉に頷いた。

そして、38階層の景色だけを確認して引き返す。

そのまま地上へと戻り、【グウィネヴィア・ファミリア】初の迷宮探索。

遠征を終えた。

あとはギルドに報告するだけで"初めての探索でウダイオス討伐!38階層到達"という紙面が出るはずだ。

 

「む……?」

 

本拠へ帰ってくると何やら玄関口でグウィネヴィアがおろおろとしていた。

そして、ルシア達の姿を確認すると、ぱあっ!と顔が晴れやかになる。

ルシアは乾いた笑いを浮べる。

 

「グウィネヴィア様。どうかなさいましたか?……この2人は?」

「い、良いところに戻ってきましたわ!助けてくださいまし!」

「はい?」

 

ルシアに目で縋るグウィネヴィア。

実に情けない女神。

クソほども役に立たないというヴィヴィアンの評もなんとなく察しがついてきた。

そんな彼女の隣にいるのは全身を目元以外の顔まで隠した銀髪の義腕のヒューマンと……どう見ても子供の狼人(ウェアウルフ)

 

「えっと、このおふた方は一体―――」

「うおおお!!やっと会えた!―――俺のママ!!」

『はい?』

 

狼人の子供がルシア達を見た瞬間駆け寄り……ルシアを通過して1番奥にいるリョーカに抱きついた。

一同振り返り、困惑した顔でリョーカに注目を集める。

抱きつかれた当の本人は……1番困惑していたし、注目が集まりギョッとした。

 

「リョーカさん……まさかこんなに大きなお子さんがいたとは」

「えっ!?いないいないいない!?い、いないから……!」

 

全力で否定するリョーカ。

ルシア以外にも必死に弁明する。

ユウカが「あは~。おもしろ~」と茶化す。

まあさすがにルシアも冗談で言った。

彼女の年齢を考えればこんなに大きな子供がいるはずがない。

 

「失礼。僕、リョーカさんがママというのはどういうことですか?」

「うわ!なんだお前!もんすたーか?化け物!しね!」

「よし、このクソガキ沈めましょう」

「うわぁ~!こ~ろ~さ~れ~る~!助けて、ママぁ!」

「えぇ……」

 

子供の首根っこを掴むルシアに、リョーカがさらに困惑する。

まあなんというか、子供らしい素直さだ。

とにかくキリエがまあまあとルシアをなだめた。

 

「キリエさんに免じて延命させてあげましょう。なので先程の質問に答えてください。なぜリョーカさんをママと呼ぶのですか?」

「ばけものめ~。ママは俺を助けてくれた!かっこいい!だから、俺のママにする!」

「意味不明なんですが……」

 

やはり子供の説明能力と、奇抜な思考回路は解析できない。

ルシアの苦手分野だ。

やはりギルドにでもぶん投げて迷子のアナウンスを流してもらうべきでは?

 

「あっ」

『……?』

 

リョーカが呟き、注目が集まる。

どうやら思い当たる節があり、それを思い出したようだ。

 

「この子……私が【静寂】から助けた子。た、多分」

「……なるほど」

 

ルシアは納得すると同時に目元を抑える。

面倒なことになった。

つまりこの子供はリョーカに救われ、リョーカに憧れてここまで来たということだ。

確かにあの声明でリョーカの居場所は【グウィネヴィア・ファミリア】にあることがわかり、【グウィネヴィア・ファミリア】の本拠は調べれば出てくる。

 

……待てよ?ママはどこから出てきた?

 

「おれ、孤児院から来た!シスター言ってた!さとおや?ってのが俺のママになるって!だから、この人をママにする!」

「里親のシステムって自分の足で探すものではないと思うんですけど……」

 

自分からバラした子供に、ルシアはまた困惑する。

さて、どうしたものか。

 

「孤児院に返しますか?」

「ですわね。それしかないですわ」

「―――ま、待って!」

『……!』

 

ルシアとグウィネヴィアで即刻方針を決めたその時。

リョーカに横槍が入った。

彼女は勇気をだして声を出した。

 

「こ、孤児院に戻ったら……この子、親……いない。そ、それは可哀想だから……その、できれば……」

「……リョーカさん。我々に子育てしてる余裕などありません。同情するのは勝手ですが、出来ることと出来ないことがあります。割り切るべきです」

 

リョーカの内心が大体わかったルシアは、先手を打って断る。

だが。

 

「ふざけんな!俺はママの子供になるんだ!おまえきらいだ!どっかいけ!」

「いーきーまーせーん!なんですか、さっきから生意気ですね貴方は!」

 

ルシアと子供がいがみ合い、とっくみあう。

……子供と背丈が変わらないのは、虚しいのかそうでないのか。

 

「レディ・マリーン。子供の世話なら私でもできる。ここでそんなつまらない事でレディ・アーサの機嫌を損ねるなら受け入れる方が話が早いのでは?」

「むっ」

 

子供と顔をつねり合うルシアは、マリウスに耳打ちされて考え直す。

確かに、この程度の我儘なら叶えてやってもいいか。

なによりこの子供も育てれば多少は戦力なるだろう。

 

「わかりました。認めます」

「おぉ!よっしゃあ!ないす、ちび!」

「誰がチビですか」

 

ルシアは呆れながらも受け入れる。

教育は必要だなとは思った。

まあその辺は世話好きのキリエにでも投げておけばいいだろう。

人がいい彼女だ。

どうせ断れないし、彼女の性格の元で育てばある程度矯正されるはず。

 

「で、君の名前をまだ聞いてませんが」

「すずねりあ!」

「セカンドネームは?」

「ママの名前なに?」

「……リョーカ・アーサ、ですが」

「じゃあアーサ!」

「……まあいいでしょう」

 

ルシアはもうめんどくさくなった。

後で孤児院に確認したところ、彼の名は『スズネリア・モルドレッド』。

以降、モルドレッド姓で呼ぶと機嫌を損ねるようになった。

 

「……それで、グウィネヴィア様。そちらは?」

「えっ?あ、あぁ……」

 

問題はもうひとつある。

ルシアが振り返り、グウィネヴィアに尋ねると銀髪のヒューマンがこちらを見る。

……面識はないはずだが、どこかで感じたことのある眼差しだ。

瞳の色は赤色か。

 

「彼女はアイラ・ベディヴィアン。Lv.3。入団希望者ですわ」

「ランク高いですね。その割に聞いたことない名前ですが。どこの所属ですか?」

「えっ!?えっと……」

「都市の……エッおっほん!うっふん!……都市の外から来ました。無名です」

「な、なんで低音に変えたんですか……?」

 

困惑するルシア。

よくわからないが、一見クールそうなのになぜかそう見えない不思議な人だ。

一応入団希望者とのことだが。

 

「オラリオでは声明を出しましたが、外には届いていなかったと思います。どうやってウチを知り、なぜ加入したいのですか?」

「えっ。えっっとぉ~……」

「か、彼女はヴィヴィアンの眷属だったのです!そ、それで……!」

「さっき無名って言いませんでしたっけ……?」

「あっ。いや、えっとそれはぁ~……」

 

グウィネヴィアもしどもろもどろになり始めた。

2人ともなんだか様子がおかしい。

どうにも不自然だ。

 

「まあいいです。どうしてウチに入りたいんですか?」

「……ヴィ、ヴィアン様からの推薦?です」

「なぜ首を傾げながら言うのですか……」

 

どうも何を聞いても掴みどころのない返答しか貰えない。

しかも「皆を助けたいから……ルシア、貴女も……」と謎の呟きも漏らしている。

本当によくわからない。

 

「……まあいいです。とりあえず仮採用とします。あと最終選考ですが……ついてきてください」

「わかりました」

 

ルシアはアイラを案内する。

連れていくのは無論……あの地下室だ。

彼女は捕らえたイブキを前にまたあの説明をする。

 

「と、いうわけで彼女を拘束しています」

「……っ。ル、ルシア……あんた……」

「はい?あれ。私名乗りましたっけ」

 

ルシアは狼狽えるアイラを見て疑問に思うが、そういえば声明で名乗ったし、ヴィヴィアン経由なら知っていてもおかしくはないかと自分の中で処理して納得した。

アイラはイブキの状態を見て後退る。

 

「やはり到底受け入れませんか?」

「……っ。も、問題……ありません」

「そうですか。それはよかった」

 

アイラが目を逸らしながら受け入れて、ルシアは会釈する。

目元以外顔が良く見えないのでルシアは彼女の反応を快諾と捉えた。

こうして、スズネリアとアイラも加入。

円卓は十一席まで埋まった。

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