原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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尾ひれ付の噂、竜だけに

 

「あの忌々しき正義の派閥……【アストレア・ファミリア】に駆け出しの新入りが加入。自ら弱点を抱えるとは。奴らも存外マヌケだな!」

 

 同じ神の恩恵を受ける闇派閥(イヴィルス)の構成員。その者の報告を受けて、オリヴァス・アクトは下品に高笑い、それでいて不敵な笑みを浮かべる。

 

「それで? その格好の餌は何という名前だ。どんな奴だ。如何なる愚か者だ……っ!」

「は、はっ! 少々お待ちを。今情報を纏めます」

 

 オリヴァスが構成員に問いかけ、複数の構成員が発言役に情報を共有する。オリヴァスは纏まるのを待つ。

 

 第二級冒険者を複数抱え、平均も高く少数ながら精鋭揃い。その上、それによる機動力と正義を掲げた邪魔な思想。これまであの中堅派閥には大派閥とはまた違った意味で手を焼いていた。

 

 だが、駆け出しの雑魚を抱えたのなれば打つ手が生まれる。

 簡単な話。捕虜としてその者を捉えて彼女達との交渉手段にするのだ。

 正義の派閥である奴らが仲間を見捨てる筈もない。

 

 間違いなく人質は効果的で、都市の民衆にも広く認知されている、かの正義の派閥は闇派閥(イヴィルス)の言いなりとなる。

 ともなれば、これまでのように邪魔をしてこないように脅すことができる。

 

 そして、何よりも二大派閥(ロキとフレイヤ)憲兵(ガネーシャ)、ギルドなど邪魔な奴らにぶつけることもできる。

 オリヴァスはそこまで考えて自身に酔いしれ、笑い揺れた。従来の強敵が、強力な味方……っ! なんと痛快な状況だろうか! 

 

 面白い。そして、何より素晴らしくスッキリする。

 今まで良い様にやられてきた、面倒で強く厄介な奴らを。散々その強さを見せつけてきた奴らを。一網打尽にも、動けぬ化石にも、操り人形にもできる。

 

 最高だ、実行しないなんて選択肢はない。

 そうと決まればその新米の情報が必要だった。纏めあげたその情報を今か今かと胸を踊らせがら待つ彼を前に構成員がようやく報告をする。

 

「名はルシア・マリーン。小人族(パルゥム)よりも小さいエルフのようです。迷宮探索でもサポーターを務める程、ごく普通で非力な駆け出しの冒険者、オリヴァス様の認識で間違いありません」

「ふはははっ! 本当に格好の餌だな! 狙ってくれと言わんばかりだっ!」

「どうされますか?」

 

 誰が実行役を行うか、それを問われオリヴァスはカッ! と目を見開く。

 

「当然、私だ。私が行こう! そんなひよっこ一人このオリヴァスの手にかかれば簡単に手に入る……!」

「はっ! では、我々は待機ということで。計画に必要なものは手配します」

「ふむ。ところで、本当にただの娘か? 中堅といえどあの【アストレア・ファミリア】だ。自分たちの立ち位置を理解してない奴らでもあるまい」

 

 事は順調に進みそうだが、どうも相手が不用心過ぎるのが引っかからないでもない。

 彼女達の性質上、弱き者を餌にした罠を張ることなどないが、罠の可能性も捨てきれない……。

 

「え、えっと……特に問題ないかと。奴らが本当に愚かだったとしか……。あぁ。でも、そういえば」

「何だ?」

「噂では、その新米があの【剣姫】を泣かせたとの情報も入ってますが……」

「えっ」

 

 そもそも彼の情報が回ってきたのはかの【剣姫】とじゃが丸くんを取り合い、その結果彼女を泣かせたからだ。それにより民衆が少し騒ぎ、オリヴァスの耳にまで入ってきた。

 否、オリヴァスの耳には結果のみが届いた。故に。

 

「……計画は変更だ。貴様らでまずその娘と接触してこい」

「は、はぁ……」

 

 オリヴァスは、明確な格下しか相手をしなかった。少しでも不安要素があれば、引く質だ。

 それはいずれ、『口にしたものは精々自分と同じ蟲止まり』と評される程に。

 

 要するに、ちょっとビビった。

 本当はただの腹ぺこドラゴンだとはこの時の彼は知る由もなかったのだった。

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