「スズネリアくぅ~ん!何日も君がいないなんて僕には耐えられないよ~!行かないでおくれ~!」
「悪ぃな。ヘスティア様。俺もそうしてぇところなんだけど……」
協会の前でスズネリアが振り返ると、キリエが困り顔で肩をすくめる。
彼女の隣のルシアも目を閉じて真顔で動かない。
「ま、すぐ帰ってくっからよ!それまで留守は頼むぜ」
「任せたまえ!こうなったら君がいない間、団員集めに本気出しちゃうぜっ?帰ってきたらうんとビックリするくらい集めてやる!」
「ハッハー!その意気だぜ、ヘスティア様!」
2人は二カッと笑って顔を合わせ、Vサインの甲を見せ合う。
そして、スズネリアは背を向ける。
「じゃあ行ってくるぜ!すげードロップアイテム持って帰ってくるから期待して待っててくれよな!」
「おうさ!期待してるぞっ!頑張れ、スズネリアくん!」
ヘスティアに激励されて「よっしゃー!」と拳を掲げて飛び上がるスズネリア。
気合十分だ。
そんな彼は、彼を待つ【グウィネヴィア・ファミリア】のパーティの中に入る。
本来の仲間のところに加わるその背中をヘスティアはどこか遠くを見るような目で眺めた。
そうしてヘスティアと別れを告げて彼らは都市を横断する。
『見ろよ、【グウィネヴィア・ファミリア】だ……』
『じゃあアレが
『あぁ。【
『【騎士王】もいるぞ。精霊力を使うっていう……』
「……」
通りすがる冒険者や一般人の衆目に晒される一行。
ユウカだけ呑気に手を振っているが、リョーカは下を向き、他は気にも止めていない。
ルシアはリョーカを小突いて上を向かせ、威風堂々、王の風格を演出させる。
そして、王が連れる配下10名と共に彼らはハベルの麓まできた。
「レディ・マリーン。スズネリアは6階層に挑戦する予定だった。この遠征にその予定を組み込んでもいいかな?」
「もちろん。サポートします」
「それと我々の
「戦力増強です。今回は前回の37階層とは異なり、27階層を目指します。そして、アンフィス・バエナを狩ればキリエさん以外はランクアップ予定です」
「皆あとは偉業だけだからね。なるほど。了解した。なら私はスズネリアと18階層に残ってもいいかな?」
「はい。お好きにどうぞ」
ルシアは承諾する。
それでキリエは離れ、スズネリアの隣に移った。
代わりにマリウスがルシアの隣にくる。
「
「はい。だいぶ前にゴブニュ様に依頼していたものです。あと剣もありますが」
「素材はフリテンの大聖樹の枝ですか。よろしいかったのですか。それに触れて」
「フリテンは大嫌いですが、この杖なら私の回復魔法を使える領域は増えるはずです。【アストレア・ファミリア】を救う為なら使えるものはなんでも使います」
「なるほど」
マリウスはニコッと微笑んで下がった。
ルシアは一同と大荷物を連れ、リョーカの前隣を歩く。
そんな彼女の手には新しい杖が。
名は【ロッド・フリテン】。
フリテンの枝はルシアの力を引き出す。
【アストレア・ファミリア】を救う為には背に腹を変えられないと思い、それを手にすることを選んだ。
そして、彼女の腰には2本の剣が。
1本はカリバーン。
もう1つは白いカリバーンと対になる黒い剣。
名を【モルガーン】。
黒い竜種の魔石を摂取したルシアの鱗から作成したカリバーンより強力な剣だ。
ルシアは、カリバーンを鞘ごと自身の腰から外す。
「王よ。この剣を授けます。今日の遠征から貴女がお使いください」
「えっ……」
急に手渡され、目を丸くするリョーカ。
思わずルシアを見ると、少し睨まれて咳払いされた。
リョーカはハッとして、嫌だなと思いながらも自身の腰に装着し、怖い顔を作って歩き出す。
優れた剣を帯刀し、彼女の風格が増した。
傍から見れば本当に強力な王に映ることだろう。
「我々はこれより!双竜の首を絶つ!そして、我とマリーン卿は人類未到達領域―――即ち砲竜を乗り越えた先へと踏み入れる」
カリバーンを抜き、掲げるリョーカ。
茶番の演出をルシア達は聞く。
「我の騎士達よ!進軍せよ!!」
リョーカがカリバーンを振るうその時、【グウィネヴィア・ファミリア】はダンジョンへと走り出す。