「エイナさ~ん!アイズ・ヴァレンシュタインさんについて教えてくださーい!」
迷宮都市オラリオにて、真っ赤に染ったヒューマンの男の子が駆け抜ける。
ギルドのサポーターであるエイナはギョッとした。
そして、彼にはその夜、スキルが発現した。
「―――リアリス・フレーゼ。早熟する。想いが続く限り、効果は持続し、思いの丈で効果は向上する」
女神ヘスティアは、そのスキルを読み上げた。
そして、彼は神々が欲する特異存在だと認識する。
「―――そいつ、真っ赤なトマトみてぇになっちまったんだよ!」
「―――雑魚じゃ釣り合わねえんだ!アイズ・ヴァレンシュタインにはなぁ!」
翌日の夜。
狼人の言葉に彼は悔し涙を流す。
「ちくしょう……!ちくしょう……!ちくしょうーーーー!!」
彼はダンジョンに潜り、激情のまま戦いに没頭する。
「僕は許せない……!何もせず期待してた自分自身に!」
―――やるんだ。そこに辿りきたいなら。
彼は戦い続け、ボロボロで朝に帰った。
そして、主神の胸に倒れ込み。
「神様……僕、強くなりたいです」
切実な想いだった。
それが、彼の冒険の始まりだった。
女神はその思いに応えたいと思った。
「僕は……彼の力になりたいんだ」
そうしてできたナイフは―――【ヘスティア・ナイフ】。
「うおおおお!」
少年は、怪物祭において、主神を狙うモンスターを討伐した。
ベルは、ヘスティアを守ったのだ。
その事件の夜、ベルはヘスティアの思いを知る。
「僕は、君の力になりたいんだ」
「神様……!」
ヘスティアに抱きつくベル。
その時、彼は思い出す。
「そういえば神様。前に神様が言ってた神様のもう1人の眷属って、いつ帰ってくるんですか?」
「へっ!?いやぁ……いつかなぁ」
首を傾げて明後日の方を見るヘスティア。
ベルはキョトンとしたあと、胸の内を晒す。
「神様。僕、その人に会いたいんです」
「……!」
「頼っちゃいけないってわかってるんですけど、ここ最近色々あったじゃないですか?」
「……そうだね」
「もちろんアイズ・ヴァレンシュタインさんに追いつくためには自分1人でも強くならなきゃって思うんですけど……やっぱり、心細くて」
「ベルくん……」
肩を落とすベルに、ヘスティアは手を伸ばすも彼に触れるのをやめる。
彼の気持ちが弱ってるのはわかる。
それでも、強くあろうと頑張ってるのもわかる。
けれど、その存在を知っているから。
恋しくなるのも仕方ない。
ヘスティアは、彼を励ますことにした。
「大丈夫さ!もうすぐ帰ってくるよ!……多分」
「ホントですか!?」
ベルの表情が晴れやかになる。
彼は、楽しみに思った。
「どんな人なのかなぁ。神様から口は悪いけど凄く明るくて良い人だって聞いてるけど……」
1人で昼間に歩いてる時も、ダンジョンに潜ってる時も、ベルは思い浮かべる。
一方、バベルの出口から地上へと戻った大派閥の1人が街の声に聞き耳を立てる。
『おい。聞いたか?怪物祭で暴れたモンスターの一体、【ヘスティア・ファミリア】の新米が倒したらしいぜ』
『ホントかよ!』
「……あ?」
久々に戻ってきたスズネリアはバベル付近で噂話をしていた冒険者の言葉に反応する。
自身の派閥の名前が聞こえた気がするが……気の所為か?
そう思うも、どうやら隣のキリエも同じ耳を持っていたらしい。
「おやおや。君の派閥は注目の的みたいだよ?」
「俺、なんもしてねえんだけど……」
「新しい眷属が加わったんじゃないですか?出かける前、ヘスティア様がそんなこと言ってませんでしたっけ」
「マジか!?てっきりいつもの口だけかと思ってたぜ!」
「……ヘスティア様を敬ってる割に評価は低いんですね」
ルシアが微妙な顔をする。
だが、スズネリアの意識はもう興味の対象に移っている。
「ヘスティア様の新しい眷属か~!ワクワクするぜー!」
そう快活に叫んで彼は、自身の帰るべき場所である教会へと足を進めた。