「ヘスティア様ぁ!帰ったぜ~!」
スズネリアは教会について開口一番、声を張上げた。
すると、どてどてと激しい音を立てて、途中で転げ落ちてきたのは……ヘスティアではなかった。
彼は、スズネリア前に倒れ伏せて、やがて、顔を上げてパアッと晴れやかになる。
「あ、貴方がもしかして……!」
「おうよ!俺様が【ヘスティア・ファミリア】最初の眷属スズネリア・アーサ様だ!っておおおおおお!?誰だ、てめぇ!?」
流れで名乗ったが知らない顔が自身の住処から出てきて2度見するスズネリア。
だが、すぐに合点がいった。
「ハッハー!そうかそうか!お前がヘスティア様の新しい眷属か!良い奴そうじゃねえか。さっすがヘスティア様は見る目があるなぁ!なぁ、おい!!」
「は、はい!って痛っ!?痛い!痛い!痛いです!」
バシバシとベルの肩を叩くスズネリア。
相変わらずだ。
「スズネリアくん!帰ったのかい!?」
「おうよ!俺はいつでもヘスティア様の元に帰るぜ!」
満面の笑みで出てきたヘスティアに、スズネリアはブイサインの甲を見せる。
そのおなじみのポーズにヘスティアの顔も晴れやかになった。
「ア、アーサさん……って言うんですね!」
「ハッハッハ!んだよ、その堅苦しい呼び方!気軽にスズでいいぜ」
「ス、スズ……!」
「おうよ!」
ベルは笑顔で興奮する。
仲間も、あだ名で呼ぶのも初めてだ。
とてつもなく嬉しい。
「んで?お前は名前なんて言うんだ?」
「ベル・クラネルです!」
「おー!ベルか!はっはっはっ!なんだよ、いい名前じゃねえか!!」
「痛い!だから、痛いですって!」
またバシバシと叩くスズネリア。
ベルは思った。
ヘスティアに聞いていた通り、陽気の化身のような人だと。
「スズネリアくん、お腹空いてないかい?」
「あー……いや、全然。ルシアに『年頃の男の子なんですからもっと食べなきゃいけないですよ』とか言われて無限に食わされてもう飯は夢に出そうだぜ……」
ゲンナリするスズネリア。
ドラゴンの胃袋と張り合うのはやめようと決意していた。
「怪我はないかい?どこまで行っていたんだい?疲れてないかい?」
「ハッハッハ!ヘスティア様は相変わらず母ちゃんみてぇだな!最高だぜ!!」
スズネリアは快活に笑って幸せを噛み締め、部屋に上がる。
そして、荷物をほっぽり投げてドカッと座った。
「俺ぁ大丈夫だ!母上達は強えーからな!守ってくれんだ」
「母上……?」
「おうよ!」
ベルが尋ねてスズネリアがよくぞ聞いてくれたと如く、笑う。
「俺の母上はな。【グウィネヴィア・ファミリア】の【騎士王】って呼ばれてるマジ強えーカッケェ最高の母上なんだ!」
「そうなんだ!【グウィネヴィア・ファミリア】の―――ってええ!?それって大派閥じゃ!?」
「まあな!って言っても義理だけどな~」
「ぎ、義理……?」
「おう。俺は元々孤児だからな~」
「えっ?」
ベルが固まってるのを他所にスズネリアは「あぁ~疲れた疲れた」とくつろぐ。
ヘスティアは穏やかな表情で彼を見る。
彼にとって孤児であったことや都市であまり良い印象のない【グウィネヴィア・ファミリア】と繋がりがあること、【騎士王】を敬い憧れてることを隠す気が全くない。
それら全てを隠す必要が無いと、後ろめたいと思っていないからだ。
「ちなみにベルはどんくらいの頻度でダンジョン行ってんだ?」
「僕は……週に5回くらいかな」
「おっ。めっちゃ行ってんじゃねえか!なんか目標とかあんのか?」
スズネリアが尋ねると、ベルは1拍置いた。
その間だけで彼にとっては大事なことで、根幹なのだとスズネリアは気づき、手を止めて真剣に待つ。
ベルは下を向いてその憧憬を思い浮かべる。
それはもう大切そうに。
「憧れてる人が……いるんだ。その人に早く追いつきたいから、だから早く強くなりたい」
「……そっか。わかるぜ、その気持ち」
「わかるの?」
「あぁ。俺も隣に立ちたい人がいるからな。ま、それが母上なんだけどよ」
「へぇ。じゃあスズにとってお母さんは憧れの人なんだ」
「おうよ。マジ尊敬する最高にカッケェ人だぜ。いつかあの人に追いついて隣に立つことが俺の目標だ」
「じゃあ僕と一緒だ!」
「だな!俺たち、似たもん同士の相性バッチシだぜ!」
2人は手を取った。
ベルも心の底から喜びを感じる。
まさか同じファミリアの仲間が同じ志を持つ者だったとは。
これほど嬉しいことは無い。
性格は違うが、思想は同じ。
2人が仲良くなるのに、時間はいらない。