原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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スズネリアの秘密

 

「そもそもスズネリアくんは本来、僕の眷属じゃないんだ」

「えっ?ど、どういうことですか?神様」

 

いつもの部屋のベッドの上で正座して、話を聞くベル。

彼は開口一番そう告げられて困惑した。

ヘスティアは彼の反応を受けて、説明する。

 

「彼はグウィネヴィアの子だ。だけど、昔の彼は性格に問題があって、彼女のファミリアは受け入れることを拒否したんだ。そこで僕に依頼があった。1年間だけ、面倒を見て彼を矯正してくれと」

「なっ……!?」

 

言葉を失うベル。

しかし、これで終わりではない。

 

「【グウィネヴィア・ファミリア】には、予言を齎す竜人がいると言う。君も聞いたことくらいはあるだろう?竜とハイエルフのハーフ。千里眼を下界に顕現させた超半怪物(モンスター・ハーフ)

「……っ!」

 

確かに聞いたことはある。

【グウィネヴィア・ファミリア】にいる特異な存在。

ダンジョン攻略と、黒竜の討伐に3番目に近い女。

その通り名は―――。

 

「【花の魔術師(メイガース)】……"ルシア・マリーン"」

「そう。そのマリーンなる女が千里眼を有する下界唯一の特異点。そして、千里眼の能力のひとつに【予言】が存在する」

「【予言】……?」

「あぁ。その名の通り、未来の事象を言い当てるんだ。そして、彼女は言った。拾われた狼人の少年が彼女達の派閥を崩壊させると」

「えっ!そんな……!」

 

その狼人が誰を指すのかは言うまでもない。

そんなはずはないとベルは立ち上がった。

ベルの知る彼はそんなことをしないと確信が持てるから。

弾力でヘスティアも少し上下する。

それでも、彼女は落ち着いていた。

 

「スズネリアくんはいずれファミリアに破滅を齎す。その予言を信じたルシア・マリーンは彼を殺そうとし、キリエくんが止めた」

「……っ!?ま、待ってください……」

「そして、僕に預けることでその破滅を回避できるという予言も出たんだ」

「待って!」

「……」

 

ベルに止められるまで淡々と話したヘスティア。

ヘスティアも最初は聞かされていなかった話だ。

だが、スズネリアが落ち着いた頃にスズネリアに障りだけ聞いて驚き、グウィネヴィアを問い詰めたら吐いた内容。

それを今、ベルが受けとめきれるわけがないのはヘスティアにも簡単に予想できる。

だから、彼女は黙って待つ。

 

「そ、そんな……なんなんですか?その予言って。千里眼って!」

「千里眼は本来神が持ってるものだ。全てを見通す力、その心眼。それがなぜか人間とモンスターのハーフにも付与された」

「なんでそんなことが……!」

「わからない。グウィネヴィアは、マリーン君が王森にて受けた迫害の結果だと睨んでいるみたいだけど。精霊の生き血につけられたり、色々あったみたいだから」

「……!?」

 

ベルは瞠目する。

もう理解が追いつかない。

少なくともルシア・マリーンなる人物は意味不明だ。

だから、彼はスズネリアに絞って思考することにした。

 

「そんな予言なんて曖昧なものでスズはファミリアを追い出されて神様のところに来たんですか……?」

「曖昧じゃないだ、それが。元々神が有する力だからね。強力だ。だから、予言もいずれ起こる事実なんだ。だから、彼女はスズネリアくんを恐れた」

「そんな……それでスズは大好きなお母さんとは離れ離れになったって言うんですか?」

「そうだ。彼は紛争孤児だ。色々酷い目にあって、それでもその中で光を見つけたんだ。それが―――」

 

彼が母上と呼ぶ者。

剣を取り、勇気を出し、罪のない無力な人々のために戦った英雄。

その背中に憧憬を求めた。

その者は、スズネリアが加害を受けた性別だったが気にならないくらい惹き付けて、彼の価値観を塗り替えた。

だからこそ、彼にとって彼女は絶対の聖域なのだ。

 

「英雄……スズにとっての……」

 

ベルは噛み締める。

やはりスズネリアは性格は違えどベルに似ている。

彼も彼なりの英雄に憧れたのだ。

 

「彼は色々抱えている。グウィネヴィアの眷属達も。複雑で、恐ろしいんだ」

「恐ろしい……?」

「あぁ、彼女達は世界救済を掲げていて、その戦力も十分有している。それはロキの派閥もフレイヤの派閥も認めているって話だ。それでも、彼女達のそれは正義や善意ではない。醜く、汚い、個人の欲に塗れた怖い派閥だよ」

 

ヘスティアは、下を向く。

そして、真剣にベルを見た。

 

「ベル君。君がスズネリアくんを思う気持ちはわかる。彼はいい子だ。僕も好きだ。けど、あまり深く干渉するのはお勧めしない。彼の出身は怖いところだ。近づけば……火傷するよ」

「……っ!」

 

ベルは息を飲む。

けれど、彼にとってスズは……ずっと求めていた仲間だ。

 

「神様。それでも僕は……」

「ベル君。あと半年だ。彼はあと半年しか【ヘスティア・ファミリア】にいない」

「えっ?」

「そういう契約なんだ。加入して一年後に彼は【グウィネヴィア・ファミリア】に行く」

「……!そんな……!」

 

ベルは瞠目する。

スズが出ていくなんて、信じらない。

 

「ベル君。スズネリアくんは君の仲間だ。僕の眷属(こども)だ。でも、それは期間限定なんだ。一時的な関係の彼の秘密に……迫るべきじゃない」

「……!」

 

ベルは狼狽する。

彼には……到底受け入れられない。

 

「……嫌だ」

「ベル君?」

「僕は嫌だ!スズだって仲間だ!例え改宗するとしてもそれはずっと変わらない!僕はスズと上辺だけの関係を続けるなんて絶対に嫌だ!!」

「ベル君……!」

 

彼は出ていってしまった。

それを止めることは、ヘスティアには出来ない。

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