ベルは都市中を駆け回って彼を探した。
そして、息が切れて膝に手を付き肩を上下させるその時、彼を見つけた。
彼は、バベルと星空が見える建物の展望台にいた。
「よぉ。来たか、ベル」
「スズ……」
ヘスティアに1人にしてあげた方がいいと言われた本人は、ベルが来ても逃げずに穏やかな笑みを向けてくれた。
ベルは息を整えて彼と向き合う。
彼はそんなベルに背を向けたまま星空に視線を戻した。
「探したよ。スズ」
「ヘスティア様から聞いたんだろ?」
「……っ」
いきなりぶっ込んできたスズにベルは瞠目する。
スズはベルを見てない。
でも、動揺バレバレの沈黙、間があった。
彼はどんな表情をしてるかわからないが、背中が揺れるくらい笑ってるのが聞こえる。
「ハハッ。わかりやすいな、お前」
「ご、ごめん」
「いいよ、謝らなくて。寧ろ仲間なのに開示してなかった俺が悪い」
「そんなことないよ。仲間でも……言えないことはある」
「そうだな。全部大っぴらにするなんて、人には無理だよな」
ベルは彼の隣に恐る恐る並び、彼の顔を見た。
すると、彼は「ん?」と穏やかに微笑みを向けてくれた。
いつものスズだ。
でも、今日はちょっと大人っぽい……気がする。
「ベル。俺な、母上になりてぇんだ」
「えっ?」
ベルがスズを2度見する。
彼は思った通りの反応だと待っていたかのように頬を弛めてベルの視線を待っていた。
「俺は……
「スズ……」
言ってる意味全てを理解出来てはいないが、なんとなくベルにはわかる気がした。
やはり、自分に似ていると。
「母上はさ。めちゃカッケェし、強ぇし、もうダメだ!って時に人々を助けてくれるし、マジスゲェ人なんだ」
「そうなんだ。なんだか御伽噺の英雄みたいな人なんだね」
「そうなのか?俺あんま小せぇ頃、読めなかったからな」
「あ、ご、こめん!」
「ハッハッハ!気にすんな!マジこれからそういうのいちいち気にしなくていいぞ!」
「あ、うん。ごめん。そうだよね」
「……」
スズネリアは星空を見上げる。
「ま、御伽噺に出てくるかは知らねえけど確かに母上は英雄って感じだな」
「えっ?」
「人柄がまさしくって感じするし、きっとその気になれば……いや、ならなくても皆から求められる。そんな人かもしれねえ」
彼は、視線を落とす。
そして、想起する。
「けど、母上はそういうの嫌なんだ」
「嫌……?って……」
「あぁ。母上は戦うのあんま好きじゃねえんだ。英雄視されるのも嫌いだ。だから、約束したんだ」
「約束?」
「おう」
スズは頷く。
彼は、大切そうにその約束を口にする。
『俺が。俺が、英雄になって。そんで母上の代わりに戦って、母上を守ってやるよ!』
「俺が
『……そっか。じゃあ、待ってるね。スズネリアが、私の
その時の彼女の表情は忘れられない。
一度目を丸くして、そう言って、一瞬暗い顔で俯いたけど……その後は凄い穏やな顔で本当に嬉しそうに、噛み締めるように微笑んでくれた。
その時のことを思い出すと今でも高揚する。
力が湧いてくる。
「母上すっっっっげぇ喜んでくれたんだよ。俺、それが嬉しくてさ」
「スズ……」
本当に嬉しかったんだろう。
彼の横顔からは当時の子供の純粋な気持ちが伝わってくる。
自分の
スズネリアは、決意を胸に空を再び見上げる。
「だから、俺は
「そっか。じゃあ……強くならなきゃ、だね」
「あぁ。強くならなきゃだ。俺も、ベルもな」
スズネリアはニカッと笑う。
ベルは指摘されて少し顔を赤くする。
「愛しのヴァレンシュタイン様に惚れてもらわねえとだもんな?」
「ス、スズ~!今日は僕じゃなくてスズの番じゃないの!?」
「ハッハー!油断してんのが悪ぃんだろ~?気抜くなよ、ベル」
彼はいつもの彼に戻った。
ベルに対してケラケラと笑い、星空に背を向けて、柵に背中を預け肘をかけ、笑いながら仰け反る。
そんな彼の表情を見て、ベルは安心した。