リリルカはまたパーティに参加し、ベルの正式加入の誘いを受け入れた。
そして、ベルとリリとスズはダンジョン探索に来ていた。
「うわっ!?」
「ベル様!」
「ベル!」
倒れたところをキラーアントに襲われるベル。
そこでリリルカは。
「ダメぇーーー!!」
「なっ……!?」
スズが手助けするより先にリリルカが懐から出した魔剣でキラーアントを焼き尽くす。
モンスターが消え、ベルとスズは唖然とする。
「……っ!あっ……」
2人に見られてリリルカは慌てて隠す。
「リリ!今の何!?魔法!?」
「い、いえ……魔剣です」
「魔剣!?そんな貴重なものを使ってくれたの?」
「ベ、ベル様の為ですから。あはは……」
苦笑いするリリルカ。
その後ろで彼が顔を顰めていることに彼女は気付いていない。
「魔剣……」
スズは嫌な顔で呟き、剣を収める。
3人はルームで休憩することにした。
「それにしてもさっきの凄かったな。僕も魔法使えるようになりたいんだけど……そうだ!スズって魔法使えるの?」
「あ?」
突然話を振られたスズは、恐ろしい色をしたサンドウィッチをマジかと思いながら見つめていたところで顔を上げる。
彼は顔を顰める。
「まあ……」
「凄い!どんな魔法使うの!?見せて!」
「さぁ?使ったことねえからわかんね」
「えっ。使ったことが……ない?」
キョトンとしてから困惑するベル。
これにはリリルカも同意だ。
「なんで使わないんですか?便利でしょうに」
「……便利だからだよ。それに、母上は精霊の力は使えど殆どその技と腕1本で戦ってんだ。なのに俺がンな卑怯なもん使えっかよ」
「ひ、卑怯……?」
困惑しながら顔を見合わせるベルとリリ。
スズネリアの価値観はよくわからない。
そんな2人の反応を前に、スズネリアは面倒くさそうに後頭部をかく。
説明しなきゃダメか、とため息ついて諦める。
「魔法もスキルも俺の力じゃねえ。ヘスティア様の力だ。恩恵与えられなきゃ生まれねえ力。ステイタスは自分で育てるモンだからいいが、魔法とスキルはなんの努力もしねえでキッカケさえありゃ生まれる。だから、嫌いなんだよ」
嫌い、とまで言い切るスズネリア。
ベルには理解できない。
「スキルもあるの!?」
「まあな」
「折角そんな力があるのに……」
「だから、その力が
スズネリアは相手したくないとでも言うように不機嫌にサンドウィッチを齧る。
そして、サンドウィッチを2度見した。
こんな硬いサンドウィッチ知らない。
ザクッて言ったぞ、ザクッて。
「スキルはどんなスキルなの?」
「べ、ベル様。スキルは聞いちゃ……それに、これ以上は……」
「……」
スズネリアが明らかに不機嫌なのに好奇心が上回ってしまったベル。
彼はスキルや魔法に憧れている。
そんな彼の心の内を知ってるから、スズネリアは責めない。
が、立ち上がって背を向ける。
そして、ボソッとだけ呟く。
「……最低のスキルだよ」
「どこ行くの?」
「便所。腹痛てぇ。いや、マジで。ヤベぇだろ、このサンドウィッチ」
彼は機嫌を損ねて立ち去ったが、どうやら便意は本物らしい。
顔は真っ青だった。
「スズネリア様の
「……んでそんなこと聞くんだよ」
帰り道、ベルが中途半端に倒したモンスターの後処理をしてる間。
リリルカに尋ねられるスズ。
その質問に素直に答えるほど、スズはベルほど純粋ではない。
「い、いえ。少し気になって……」
「そうか。まあ、俺は値段知らねえけどな。使い方しか聞いてねえし」
いかにも
その背後をついていくリリルカは……。
「……ふーん」
スズネリアの腰に収められた剣を見て、獲物を狙う目をしていた。
その日の夜。
スズネリアは、キャメロットに訪れる。
そして、ルシアに会いに来た。
「今日はどうしたんですか?もしかして、気が変わりましたか?」
「いや、悪ぃ。その話の答えは変わらねえ」
「……こういう時に謝るの、ホントにいい子ですね。君は」
答えなどわかりきっていながら嫌味で言ったことが誠意で返されてルシアは、内心反省する。
彼には誠実でいたい。
それがルシアが過去に彼の命を狙ってしまった贖罪だと思っている。
だから、真剣に話を聞くことにして彼に椅子を用意し、自身も座った。
「それで?どうしました」
「いや、その……相談があんだけどよ」
「相談?私にですか?キリエさんもいますけど」
スズネリアが【グウィネヴィア・ファミリア】で1番信頼してるのはキリエだ。
リョーカに対しては憧れが強すぎて相談なんて恐れ多いだろう。
と、なるとルシアは3番手以降だ。
キリエを経由するならともかく、通過して来るところではない。
「や、今回の件はルシアが適任かと思ってよ」
「……なるほど」
ルシアは背筋を正した。
最近、味わってなかった感覚だ。
悪名高い彼女に対して、ここまで尊敬を向けてくる純粋さは中々ない。
今でもそんな態度を取ってくれるのは協力を要請してくる時のフィンくらいだろうか。
要するに利用したい時以外は存在しない。
「ベルがよ。今、サポーターと契約してんだ。ほら、この前ルシアも見た獣人の」
「あぁ。……獣人?」
「けどよ、多分リリルカは悪い奴なんだよな」
「……なるほど」
「でも、リリルカもきっとただ悪い奴って訳じゃねえんだ。だから、俺はあいつも助けてやりたい」
「……」
ルシアは、天井を見上げた。
無表情のままだが、今、彼女は必死に涙を堪えている。
なんと。
なんと、良い子なのだろうか。
ファミリアの末っ子ということもあってその成長に感動し、沁みている。
なるほど。
助けになってやりたいではないか。
「ちなみに、悪いというのは具体的に。何か企んでらっしゃるんですか?」
「いや、分かんねえけどあった頃から怪しいっちゃ怪しいんだよな」
「なるほど。では質問を変えます。スズネリアくんはその女の子とどういう関係になりたいんですか?」
ルシアが尋ねると、スズネリアは目を丸くして顔を上げる。
そして、少し考え、すぐに答えが出て真剣な顔を見せる。
「出来ることなら、ずっと仲間でいてぇ。ベルとリリルカと、3人で。ダンジョン探索がしてぇ」
「そうですか。良い出会いをしたんですね」
ルシアはニコッと微笑む。
こんなに微笑ましいことはない。
彼女はご要望通り考えることにした。
何が1番最善か。
妖精軍師の真価を全力で行使してあげようじゃないか。
だが、最善策じゃダメだ。
実行するのはルシアじゃない。
自身を基準にするのではなく、あくまでスズネリアができること。
彼らしい行いが大事だ。
ならば。
「……スズネリアくん。さっき彼女と契約していると言いましたよね?」
「ん?おう」
ルシアは思いつく。
「スズネリアくん。その契約、上塗りしましょう」
彼女は口角を上げた。