原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

95 / 100
Lv.8の景色

 

「……そう。負けたのね」

「申し訳ありません」

 

フレイヤに尋ねられ、オッタルは視線を下げる。

フレイヤは眷属たちを見渡し、少し考える。

 

「やはり面倒な存在ね。ルシア・マリーン……だったかしら」

「はい」

 

オッタルは頷く。

彼が知るよりもルシアは強くなっていた。

竜人形態ではLv.7相当という話だが……。

 

「恐らく、もう既にLv.8の領域が見えているのかと」

「そう。そういえば、最近ランクアップしたって聞いたけれど……」

「……っ。……なるほど」

 

女神の指摘で気づいた。

ルシアがこの短期間でさらに強くなった方法。

魔石を食べて強くなる彼女は、その天井が停滞していた。

だから、()()()()の方に目を向けたのだ。

結果は大成功。

見事オッタル達を倒して見せた。

 

「ならば、おそらく冒険者としてもLv.4が見えているかと思います」

「そのようね。ベルとは違う方法で急速に強くなる冒険者……あの子の場合、本来の実力の方が目立つから、盲点だったわね」

「その上、我々と戦い更なる経験値を得たかと」

「……堂々巡りね。彼女と戦えば、かえって彼女の強化に繋がってしまう」

 

最悪の悪循環だ。

強化方法が二つあるというのは、厄介すぎる。

手を出せば経験値を与え、出さなければ魔石を順調に食い進めて強くなる。

しかも千里眼や全癒魔法まで持っている。

厄介極まりない。

現状の格闘や知略でも他を圧倒している。

自分達が最強だと豪語するその筆頭は、過言ではないというわけだ。

 

「ルシア・マリーンは手に負えないわ。暫く放っておきましょう」

「……と、言いますと?」

 

オッタルが尋ねると、フレイヤは口元を緩める。

 

「手を出すべきは……はぐれた狼の方ね」

 

彼女が見下ろす先に―――彼はいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャメロットに戻ったルシアは、リョーカとグウィネヴィアを集める。

 

「それでは、【フレイヤ・ファミリア】に目をつけられたと?」

「まあ。おそらくは。とはいえ、撃退したので向こうも下手に触れてこないかと」

 

自身の傷を癒しながらルシアは淡々と述べる。

さらっと言っているが、【グウィネヴィア・ファミリア】がいなければ都市圧倒的No.1の派閥の主力8人を返り討ちにしているのは凄まじい。

リョーカは、冒険者好きとして【フレイヤ・ファミリア】のこともどれだけ恐ろしいか知識と知っている。

なのに、多少ボロボロになっただけで勝って帰ってきた彼女はもっと恐ろしい。

いざとなれば自分がルシアを倒してイブキを解放すればいいと考えていた。

だが、その目論見は甘いと考え直す。

 

ルシアは……強すぎる。

 

「そこで、リョーカさん」

「……っ!」

 

ルシアの背中を見つめて、考えを巡らせていたリョーカ。

声をかけられて自分が話を聞いておらず、ボーッとしていたことを自覚する。

彼女は、ルシアと目を合わせる。

 

「な、なんですか……」

「だから、ダンジョンに行きましょう」

「えっ?」

 

話を聞いていなかったリョーカはキョトンとする。

一体どういう話の運びでそんなことになるのか。

 

「【フレイヤ・ファミリア】に目の敵にされている今、現状はこちらの方が強くとも、警戒を怠ってはいけません。彼らも強くなります」

「それは……そう、ですけど……」

 

それとこれと何が関係があるんだという顔で困惑するリョーカ。

そんな彼女の察しの悪さに、ルシアはため息をついて包帯を置いて立ち上がる。

 

「狙われている以上、こちらも対策しなくてはいけません。さらに強くなって、向こうが何をしてきても対応できるようにしましょう」

「……っ!さらに、強く……?」

「はい」

 

ルシアは頷く。

そんな彼女が次のダンジョン探索で掲げる目標は1つ。

 

 

「―――私とリョーカさんで、49階層の階層主。バロールを討伐します」

「えっ」

 

リョーカは、また辛く、命の危険のある戦いに……身を駆り出すことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……違う。お前では、足りない」

 

オッタルは上層で鍛えるモンスターを探していた。

一体は見つけた。

ミノタウロスだ。

だが、もう1体。

女神の注文がある。

白兎に充てる牛と、赤兎に充てる……何か。

 

「……」

 

オッタルは仕事の傍ら、先の戦いを思い出す。

ルシア・マリーンを倒しきれなかった。

彼女もまた、オッタルを倒すまではいかなかったが。

それを未だに引きずっている。

仲間を連れ帰るため、冷静に判断し、気にしていない素振りをしていたが。

やはり……悔しい。

 

「……チッ」

 

オッタルは自身に苛つく。

仕事中にそんなことを考える時点で、身が入っていない証拠だ。

だから、お目当てが見つからない。

女神の指示だというのになんという愚行か。

 

「……そうか」

 

オッタルは、逆転の発想に至る。

忘れられないなら、仕事に持ち込めばいい。

思い浮かべるのは因縁の竜人。

彼女が寵愛する狼人にも、竜人を充ててやる。

自身で思いついて、思う。

 

……中々、粋じゃないか。

 

「……」

 

オッタルは……()()に向かった。

そして、練り歩くと、お目当てを見つける。

 

「決めたぞ、お前に」

 

オッタルは武器を手に取った。

そんな彼の前にいるのは―――。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。