原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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スズネリアの今後

 

「ベル達が……行方不明……?」

 

キャメロットに連れ帰られて、起き上がったスズネリアの耳にいきなりそんな情報が入ってくる。

確か、ベル達は中層に行くと言っていた。

そして、早速トラブルが起きたわけだ。

 

「た、助けに行かねえと……!」

「ダメです」

 

スズネリアがソファーから立ち上がると、視界の外から杖が伸びてきた。

その杖は、彼の進行を阻み、その持ち主を辿ると……ルシアがいた。

 

「ルシア……!なんでだよ!」

「君は永久謹慎に決めました。それに、君が行ったところで助けになるとは思えません」

「……っ。なんだと……!」

 

スズネリアがルシアに切迫する。

だが、尊敬するルシアに掴みかかることはできず、彼の行き場を失った手と共に、意気消沈、下を向いてしまう。

そんな様子をルシアは悲しそうに見つめていた。

 

「スズネリアくん。なぜ強制帰還させられたかは分かってますよね?」

「……俺が、冒険できねえからだろ」

「その通り。冒険できないものに成長はありません。そして、君を戦力として育てていた我々にとって、成長のない君を遊ばせておくことはできません」

 

これまで、放任していたというルシア。

人格矯正はとっくの前に終わっている。

もう【ヘスティア・ファミリア】に預けている理由などない。

なのに、彼の自由意志を尊重し、強制的に連れ帰ることはしなかった。

だが、それももう限界だ。

【ヘスティア・ファミリア】にとっても、【グウィネヴィア・ファミリア】にとってもスズネリアはこのまま冒険者にしておくわけにはいかなくなった。

冒険できないものは、先方に迷惑をかけるだけだ。

そして、成長できない者を、戦わせ続けることに意味は無い。

そんな無駄な出費を【グウィネヴィア・ファミリア】は最も嫌う。

 

「我々は迷宮完全攻略と黒竜討伐を必ず成し遂げなければいけません。その為に君を育てていました。なので、君にある程度お金も注いでいました」

 

しかし、とルシアは続ける。

 

「戦う必要性を失った君に、投資する価値も、自由を与える程の余裕もありません。我々は君を共に戦う仲間から保護対象に切り替え、子供として扱います」

「なっ……」

 

言葉を失うスズネリア。

正直に言えば絶対に嫌だ。

けれど、ルシアの言ってることも理解はできる。

反論する意見も彼は持ち合わせていない。

できることは……飲み込んで、項垂れることだけ。

そんな彼の落ち込む姿を、ルシアは心の底から哀れに思い見下ろしながらも、冷酷な判断を下す役割を自ら泥を被る。

彼の為に。

 

「今の君が冒険を続けるのは危険です。我々は君を失いたくない。分かっていただけますか?」

「……納得は、できねえよ」

「それでいいです。でも、受け入れてはもらいます。安心してください。生活に不自由は与えません」

 

昔のルシアなら、戦力的に価値のないものは追い出したり、始末していたりしただろう。

だが、もう彼に情を抱いてしまっている。

なんの利益もない生活保護には支出することを良しとした。

 

「君の性格を矯正したヘスティア様への謝礼はこちらで用意し、渡します。あと事情も説明します。君はただ、ここで生活してください」

「……」

 

はいともいいえとも言えないスズネリア。

俯いて、黙る。

それを肯定と受けとり、ルシアはこの場に集まった騎士たちにも共有する。

 

「スズネリアくんに関する今後の方針は以上です。異論はありますか」

『……』

 

誰も返答しない。

それが答えだ。

ルシアは、念の為、保護者であるリョーカにも尋ねる。

 

「リョーカさんも、それでいいですか?」

「……問題ない。寧ろ、賛成。スズネリアは……戦うべきじゃない」

「~~~~~~っ!!」

 

想う母にすら、切り捨てられたスズネリア。

誰にも見せない下を向いたその表情が、歪む。

彼にとってこれ以上の屈辱と辱めはない。

要するに、守ると約束した女にさえ、逆に守る対象だと思われている。

 

「さて、スズネリアくんの仲間の救出ですが……我々の中から誰か派遣しようと思っています。ヘスティア様に借りもあるので」

 

ルシアは、皆を見渡す。

だが、全員かったるそうにしていた。

 

「ユウカは絶対()~。ていうかぁ、別にぃ、零細ファミリアの冒険者が死のうが生きようがどうでもよくなーい?」

 

まず筆頭は心底めんどくさそうに髪弄りに夢中になり前すら見ていないユウカ。

ルシアは、顔を顰める。

 

「しかし、クラネル君はレコードホルダーです。なんらかの特別なスキルもあると睨んでいます。黒竜はともかく迷宮攻略には大事な鍵かと」

「あは~。でもぉ?最下層には恩恵の力だけじゃいけないんでしょー?だったらぁ、どの道【リトル……なんたら?は必要ないしぃ?」

「【リトル・ルーキー】、ベル・クラネルくんです。はぁ。もう貴女はいいです」

 

話にならないとルシアはユウカを候補から外す。

彼女は「別にそれでいいでーす。ていうかぁ、じゃあもう出て行ってもいいですか~?」とほざく。

ルシアは、ため息をつきながらジェスチャーで追い出した。

残るは8人。

 

「相違。契約に記載無し。不参加要望」

「……右に同じ」

 

ユウカとよくつるんでいるランとシロウも退出した。

あと6人。

 

「マリウスくんはどうですか?」

「……フッ。我が主(マイ・ロード)の命令とあらば行きますが」

 

マリウスがスズネリアを一瞥する。

すると、睨んでいた彼の鋭い視線と交錯する。

ルシアも気づく。

マリウスをよく思っていない彼からすると、信用出来ないマリウスをベル達の救出に行かせたくないようだ。

これで残り5人。

 

「……言い出しっぺなのに申し訳ありませんが、私もいけません。キャメロットを離れるわけにはいかないので」

 

ルシアは、リョーカを一瞥した。

リョーカからは珍しく反抗的な視線が返ってくる。

ルシアは違和感を覚えながらも、とにかくリョーカが本拠にいる間はイブキを救出しようとする彼女を監視するため動けないと暗に伝える。

今のリョーカは、マリウスやキリエでは止められない。

 

「これで実質3人ですが……」

 

ルシアの近くには寄りたがらないガリウスはここにはいないので、残るはリョーカとキリエとアイラだけ。

3人が顔を見合わせる。

 

「私は……」

「レディ・アーサ。大丈夫さ。皆、分かっている。戦いを好まない貴女には行かせないよ」

「……キリエ」

 

優しい言葉をかけて微笑んでくれるキリエに、リョーカは安堵し彼女には信頼の眼差しを向ける。

これで残るは2択だ。

 

「……さて、まあ答えはもう出てるようなものだが」

「……」

 

キリエとアイラが向き合う。

もはや聞くまでもない。

ここまで絞られたら寧ろ自分から立候補する。

キリエは挙手する。

 

「私が行こう。スズネリアの仲間を必ず生きて連れ帰るよ」

「すみません。頼みます。それと、千里眼で見ましたがどうやらヘスティア様が救援部隊を編成しているようです。そこに合流してください」

「了解したよ」

 

キリエが頷く。

話を聞いて、スズネリアも顔を上げる。

 

「ルシア!どうせ俺の今後についてヘスティア様に話すんだろ?だったら最後に話させてくれよ。編成部隊の合流まではついて行かせてくれ」

「……別にこれから先も話すだけなら縛っていませんが。まあいいでしょう」

 

ルシアは承諾する。

だが、2人が出かける時は念を押す。

 

「では、キリエさん。くれぐれもダンジョンにはついてこさせないように」

「わかっているさ。スズネリアもそこまで愚かじゃないよ。そうだろう?」

「……あぁ。分かってるよ」

 

キリエが問いかけると、スズネリアは嫌そうに顔を顰める。

そんな彼の頭をキリエは困り微笑でポンポンと叩いてあげた。

そうして、2人は【ヘスティア・ファミリア】へと向かう。

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