今回、処女作ということで、勝手があまりわからない部分ありますが精一杯頑張りますので、ご指導ご鞭撻に加えて応援していただければ幸いです。
でははじまりはじまり
一歩ずつ、一歩ずつ、どこか探るように靴底の擦り切れた革靴を鳴らしながら歩く。今から、暴虐の限りを尽くす邪王との対面であるというのに、なかなか格好のつかないものだ。
心臓は危険信号を発するかの如く素早く脈を打ち続ける。口の中の水分は全て汗として出ていってしまったのだろうか。それに、喉は焼けるように痛い。しんどいという言葉では言い表せようもない、この名前のない感情に支配される。それでも足を止めることは許されない。
これが私の選択なのだから。これしか取る選択肢がないのだから。
静謐さと悍ましさを併せ持つ廊下にやっとのこと終わりが見える。
おおよそ300フィートほどのこの距離が何よりも遠く感じてしまう。先刻まで踏み出すことのできていた一歩が、ほんの少しずつだけ狭くなっていく。
把握できている。そこに立ち入る器ではないと。
理解できている。これは無謀な戦いであると。
玉座の間へと誘う扉にそっと触れる。自分は何をしてきたのだろうか。ほんの少しだけ感傷的になりながら力を込める。
気に食わないアイツなら、いやアイツらなら蹴飛ばさんばかりの勢いと威力でこの扉を開けるのだろう。
くだらない。
あぁ、本当になんともまぁくだらない。
英雄病とは流行病なのかもしれないな。
一息に扉を開けるや否や、憎き異形の王が視界の中心を独占する。
遠近感が狂ったと錯覚するほどの彼我の身の違い。視線を切ることも、瞬ぐことも、ましてや声を出すことさえ許されない。
「ふはははは、其方のような凡人が己の身一つで来たるべき場所ではなかろうて。血迷ったか?まぁよい、その命譲り受けるぞ。」
心臓は警鐘を鳴らし、脳は警笛を吹いている。
同時に少しずつ意識が外界と遮絶されていく感覚が身を支配していく。
誰でもない自分自身こそが、誰よりも遠くから自分を見ている気がしてならなかった。
重度の緊張と差し迫った死の気配に垣間見た刹那の走馬灯。
私はアレックス=ジャクソン=ワルイージ。
祥が無い一人の凡人である。
いつからだったのだろうか。
持たない側の人間であると心が理解したのは。
いつからだったのだろうか。
蹴落とさなければならないと気付いたのは。
いつからだったのだろうか。
そんな自分を肯定するようなったのは。
私が生まれた落ちたこの国の名はキノコ王国と言う。なんとも気の抜ける国名であるが何よりここは治安が良かった。公衆衛生、衛生管理、環境衛生にしっかりとした対策が取られており、姫、ピーチ姫の手腕とそのカリスマ性により王政国家として、どの国家よりも安定していたと言えよう。
私は孤児だった。物心ついた頃には他の孤児たちと、そしてマザーと食住を共にしていた。孤児であることに不平や不満を抱いたことはない。
キノコ王国は人が温かく、生活の不自由も少しの貧しさを除けばないと言っても良いくらいだ。税に押し潰されることもなければ、高所得者に搾取されることもない。助け合うという言葉がこんなにも当てはまる国はキノコ王国以外にはないだろうと今の私をもってしても断言できる。
心優しい人が時に孤児院の近くで炊き出しを行ってくれた。時に日銭を稼ぐためのアルバイトをこの若干5歳だった私にも紹介してくれた。
幼いながら幸福を感じていたのだ。悪友のワリオと悪戯の範疇の超えない悪事だって働いたさ。キノコ王国の人たちは笑って許してくれたけども。
愛されていた。他の孤児の仲間にも、キノコ王国の住人にも、そして何より相棒のワリオにも。そして当然に私はそんな全員が大好きであったのだ。そんな幼少期だった。
だからこそ、この歪さに気づけなかった。
時は過ぎ6歳となった私は同い歳の腐れ縁、ワリオとキノコ王立学園へと入学することになった。私たちの門出ということで、ささやかなパーティが執り行われ、みんなで料理をして、みんなで踊って、みんなでゲームをした。
ムーンウォークとやら練習しておいてよかったな。
涙ながらに私たちを笑って送り出してくれた、孤児院の友達たちと別れを告げ、マザーの頬にキスをした。感謝しかない私たちは勿論、ワリオと2人で男泣きした。本当に幸せ者だと感じた瞬間だったよ。
入学式が始まり、私は不恰好にネクタイを締めて座っている。
ワリオ?横で寝ているよ。まったくほんとに懲りないやつだ。
肩にもたれてくるコイツを支えているうちに校長の話も終わり、新入生代表の言葉も終盤に差し掛かっている。
「新入生代表マリオ=マリオ。」
やけにその言葉が耳朶を震わせ、背筋を撫でた。
いかがでしたか?モチベーションに繋がります故、評価、感想心よりお待ちしております!