キノコ王立学園は一学年6クラスで構成されている。1クラスから順に入試成績を元にして選ばれているらしい。私、ワルイージはワリオと共に1クラスであった。とても誉れ高いことであろう。
私は勉学にも、運動にもそして容姿にも秀でていない。できることと言えば少し狡い事を考えるくらいだ。だからこそ寝る間も惜しんで勉学に励み、頭に詰め込んだ。少しやったくらいでは何も入ってこない、この容量の小さな脳みそに、少しずつ零さぬように知識を吸収させた。
ワリオ?アイツは結構賢い。
そう少し物思いに耽っているとホームルームの時間に自己紹介をすることになったようだ。トップバッターは先ほど新入生代表を務めていたマリオという男らしい。
先ほど感じた嫌な感じとはなんだったのかを明らかにするために彼の方を向こうと顔を上げた瞬間、目が合った。否、合ってしまった。
何故なのかはわからない。ただ只管に狂気を感じた。生まれて初めて恐怖を抱いたのだ。それも同級生の高々6歳の子供に。
「みなさん、初めまして。マリオと申します。双子の弟であるルイージと共にこの学園に入学しました。この6年間楽しく、そして充実したものにしたいと考えています。みなさんと仲良くなることがその第一歩だと思うのでどうかよろしくお願いします。」
柔和な笑みに耳によく馴染む声、彼はたった30秒に満たないその自己紹介で他生徒の心を掴んでいた。ピーチ姫とも似通ったカリスマ性をここに見たのだ。
マリオの自己紹介の内容だけは頭に残っているものの思考が進まない。何も彼におかしい点は見つからない。なのに何故私はこんなにも足が震えているのだろうか。そうして頭の中が整理されないまま、ワリオの自己紹介が終わり、次の番である私に自己紹介が促された。
席を立ち、言葉を発しようとした瞬間何かが頭の中を駆け巡った。それがなんだったのか今もまだわからない。ただその時は只管に
「強くあらなければならない。」と体が反応してしまったのだ。
誤作動と受容するには、あまりにもくっきりとした忌々しささえ感じ取ることのできるナニカが意識に芽生えた瞬間だった。
根底にあったプライドがマリオのカリスマに刺激されたのかもしれない。はたまた初めての学園生活に本当は息巻いていたのかもしれない。
紛れもない、6歳という未熟な精神状態がそうさせてしまった。
「オレの名前はワルイージ。世界に名を残す者だ。」
そう私はこの日自分を呪ったのだ。
自己紹介の印象が強過ぎたのだろうか。ワリオ以外に話しかけてくれる生徒がいない。しくじったという思いが体を支配し席を立つことさえ儘ならなかった。誰からも好意的に話しかけられ、優しく受け答えをしているマリオを横目に私は机に顔を伏せるのであった。
「今日は調子悪いな、相棒。柄にもなくオレとか使ったり、そう思ったら急に静かになったり何かあったのか?」
今日の授業が終わり、私の様子を見兼ねたワリオが咄嗟に話しかけてくる。友達思いのいいヤツだ、ほんとうに。
「なんでもねぇよ。オレたちは王立学園の1クラスなんだ。舐められちゃ世話ないだろ?あんま慣れないからどうしたもんかと悩んでたんだ。」
頬杖をつきながらもっともらしい言葉を吐く。ワリオも納得したようで何よりだ。これは自身で解決するべき問題だ、そっとこのナニカに蓋をしてワリオと寮へ帰ることした。
帰路に就き、寮が見え始めたその時、後方から声がかかる。
「ワルイージ君、ワリオ君、初めまして。わざわざ呼び止めてごめんね。2人とはまだ話せていなかったから追いかけてきたんだ。」
後ろを振り向くとマリオとその双子の弟であるルイージが見える。今回は2度感じたあの背筋を舐められるような寒気は感じなかった。
人好きのする笑みを浮かべたマリオと、困った顔がデフォルトのようにさえ感じるルイージ。対照的な2人であるが、どこか纏う空気が似ているような気がした。それが自分にないようなモノである気がして、少しだけ息苦しくなった。
「人気者さんたちがなんのようだい?生憎、こっちは忙しくてね。要件だけ言ってくれると助かるよ。」
口を衝いて出た言葉は無愛想でなにより相手を邪険にするものだった。気に食わないこの2人に対する口撃かあるいは。
それでも笑みを崩さないマリオと困り顔を少し深めるルイージ。同じ物を食べてここまでの性格の差が生まれるものなのか不思議なものだ。
「とても興味深い自己紹介を聞かせてもらったからその礼を言いたくてね。それにこれから少なくとも6年は一緒なんだ。こっちのルイージと共に仲良くして欲しいな。」
マリオより少し斜め後ろに立っていたルイージを隣に並ばせながら私の方へと手を差し伸べるマリオ。
「馴れ合うつもりはねぇよ。じゃあな。」
私はその手を無視して踵を返したのだった。ワリオは手を挙げるだけしたようで、走って隣に並んでくる。
「マリオってゲイなのか?」
訂正しよう。ワリオは阿呆である。
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