とりあえず歴史に名を刻みたかったヤツ   作:はごろも282

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なんか伸びてて草


続 とりあえず歴史に名を刻みたかったヤツ

 その夜、フールはようやく故郷に辿り着いた。昔とまるで変わらぬ風景に思わず笑みが溢れる。思い浮かべるのは村の男たち。きっと昔と変わらぬのだろうと、久々の対面に心を躍らせる。

 事実、フールは村についたときから彼らと会うことを楽しみにしていた。こんなしけた村で3年間のうのうと過ごした芋くさい男どもとの再会を。どれほどの田舎っぺに変貌してくれたのだろうか。フールは心から旅を続けて成長したシティーボーイたる自身との格の違いを見せつけたくてウズウズしていた。

 村にいた頃より煽りカスであったフールだが、旅を終えて煽りにも拍車がかかっていた。時代に取り残された化石人間どもにどんな話をしてやろうか、美人のチャンネーとの出会いかそれとも海を自在に泳ぐ人種の話か。

 

 また、出航したときよりの決め事の目的であったマキノのことも気がかりであった。あの小言を言うためだけに生まれてきたような少女は元気にしているのかはフールの中でも重要なことである。もしも、万が一のことではあるがこの3年の間にマキノに男なんてできていようものなら。フールは躊躇いなく男を亡き者にする自信があった。この男、無駄に高い独占欲は未だ健在である。

 

 そんな今後のことを考えつつ、フールはなんの気無しに過去に自分が使っていた自宅の扉を開いた。

 

 そこにいたのは、少女であった。絶賛お着替え最中の。

 

 ガチャリと開いた扉の方に振り向いた少女と目が合う。互いに硬直すること数秒、先に声を上げたのはフールであった。

 

「キ、キャァァアアアッッ!!??」

「え、えぇ!?そっちが叫ぶのー!?」

 

 赤面し身体を隠す少女の声が虚しく響いた。

 

 

 

 赤い髪の大きなお友達に殺されかけるというハプニングを乗り越えて、フールは一息ついていた。その横にはジト目でフールを見る少女とそのまた背後でフールを見る大きなお友達。ジト目、ギリギリジト目なのかもしれない。多くの人はそれを三白眼というし、三白眼はブチギレている人に見られるのだが、そんなことはどうでもいい。

 

「彼女のお父さんですか?」

 

 フールは柔和な笑みを浮かべ、至って落ち着いた声で尋ねた。

 

「……そうだ」

 

 夢だといいな。フールは心底そう願った。いったいどうして自分の家で懸賞金10億の凶悪犯の娘が着替えているんだろう。直面した現実が理解の範疇を超えすぎていた。

 

「お前は、何者だ?ここが赤髪海賊団の滞在地と知っての狼藉か?」

 

 男は、ハッキリとそう口にした。知るわけねぇだろ、フールは心からそう思った。

 

「村民はどこに?」

「悲鳴が聞こえてすぐに出てこないよう伝えた。滞在させてもらう身として用心棒くらいはするさ。誰も来ることはない」

「……」

 

 なにしてんだよボケカス。イイヤツぶってんじゃねェ犯罪者。フールは内心でそんな罵詈雑言を男に浴びせた。

 どうしようか必死に考えて、いよいよ脳がパンクするかといったところで、フールは『なぜ自分の家で下手に出る必要があるんだろう』とか考えだした。相手は海賊で犯罪者、どうしてここにいるのかはまるで分からないがその事実はかわりない。なによりここはフールの家である。10に満たないガキの裸見た程度で発情するような年齢でもない。

 自身への言われない誹謗が何よりも嫌いな自己中であるフールは先程までの焦りを忘れ、それに変わり憤りを覚えはじめた。

 

 そうして、フールは10億にメンチを切った。後先考えずに動くことはフールの得意とするところである。人はこれを短所という。

 

「おれの家におれが入ってなにが悪いんだ?」

「……ここは空き家だと聞いているが?」

「え、うそ。誰に?」

「村長だ」

「……」

「……」

 

 気まずい沈黙が流れた。知らぬ間に亡き者にされていたフールはもちろんのこと、事情を知らぬ赤髪の男も何かを察したのかスッと目をそらした。

 

「と、とりあえず酒場についてきて貰えるか?」

「わ、わかった」

 

 完全に信用したわけではないだろうが、男のフールに対する警戒度はガクンと落ちていた。

 

 

 

 酒場に向かう道中、名を教えあったフールたちは談笑に花を咲かせていた。

 

「へェ~、3年前に。いくつだお前?」

「当時が14だったから今は17になるね」

「まあ、それから音信不通なら空き家扱いも仕方ないか」

「それより!レディの裸を見ておいて何もないの!?」

「ごめんねウタ。でもどうせならボンキュッボンの子がよかったかな」

「失礼!シャンクスコイツすっごい失礼!!」

「フール。お前、ウタの身体が貧相だと言うのか?」

「9歳児に貧相とかないと思うよ」

 

 彼らは道中でわりと仲良くなっていた。男改めシャンクスは既にフールを悪人ではないと認識し、フールもまたシャンクスを話の通じる犯罪者であると思っていた。

 フールが聞くに、シャンクスら赤髪海賊団はつい最近この村に訪れたらしい。今はここを拠点としつつ村の少年ルフィを筆頭に仲良くなっているのだとか。

 フールは話題のルフィという少年にそれほど詳しくなかった。それもそのはずである。フールが村を出たとき、ルフィはまだ3歳になるかどうかといったところであった。

 そんな少年ルフィは結構なわんぱく小僧である。ルフィはシャンクスにたいそうなつき、将来は海賊になると言って憚らないという。フールはこれを聞いたとき『それほどのヤンチャ坊主は村始まって以来だろう』などと宣い口を大きく開けて笑った。

 村始まって以来の愚か者であるフールは自分を棚に上げるのが誰よりも得意だった。

 

 そうこうするうちに、3人は酒場に到着した。人も少なく発展もない寂れた村であるが、昔と変わらず酒場には確かな活気がある。

 

「戻ったぞ」

「ただいまー!」

 

 最初にシャンクスが酒場へと入る。その後ろにウタが続き、最後をフールが歩く。シャンクスに、酒場にいた人から声が返ってくる。

 

「おお!結局なんだったんだお頭?」

「ウタが漏らしてたのかー?」

「してない!!デリカシーなさすぎ!!」

「ハッハッハ!それよりお頭、後ろのは誰だ?」

「ああ、来客だ。なんでもマキノさんに話があるんだと」

「え、わたし!?いったい誰かしら──」

 

 喧騒の中で進む話にフールはついていくことができなかった。というか喋らなくても勝手にすすむからと端から口を挟むつもりもなかった。

 そうして話が進みマキノがフールを認識したことで、ようやくフールは口を開いた。

 

「おれの家、空き家になってんだけどなんか知らない?」

 

 直後、横から『えぇ……』だとか『マジかお前』だとか聞こえたがフールは気にしなかった。デリカシーとか感傷を母親の腹に捨ててきた男である。雰囲気への配慮だとかそういうのは一切なかった。というか思い至らなかった。

 

 対して、マキノはフールの言葉になにか確信を得たようであった。そうして手に持った酒瓶をそのままに、ゆっくりとフールの方へと歩みを進める。

 

 ゆったりとした足取りはいつしか駆け足となって、フールの元へたどり着く頃には普通の走りと遜色ないほどになる。

 周囲からすると、まるで感動の再会である。心なしかマキノの目尻には涙が浮かんでいるようにも見え、フールも柔らかな表情を浮かべているようだった。

 

 マキノはそのまま踏み込むと、大きく手を広げ──

 

「連絡も寄越さないで何してたのもう!?」

 

 ──手に持つ酒瓶がすっぽぬけ、フールの顔面に直撃した。

 そして、そのまま突進してきたマキノの頭部が鳩尾に突き刺さり、フールの意識は消し飛んだ。

 

 

 

『……なんで?』

 

 周囲の反応は完全に一致した。

 




続かない

なんか異常に伸びてるんだけどこれ続けた方がいいのか……?
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