とりあえず歴史に名を刻みたかったヤツ   作:はごろも282

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想定外の伸びに『コレもしかして日間乗るんじゃね??』と浅はかに考えた結果、総文字数1万を超えるため急ぎ仕上げました
旅立ってキリがいいですね

追記3/10
そこまで行けとは言ってない


続 あるいは冒険の夜明け

 山賊の来訪から少し後のことである。何故か清掃をすることになり納得がいかない中ぞうきんで床を拭いていたフールは人の腕が伸びる様を目の当たりにした。

 はちゃめちゃに動揺しているシャンクス達の話によると、ルフィはどうやらゴムゴムの実と呼ばれる悪魔の実を食べてしまったらしい。

 3年間海に出ていたため当然ながら悪魔の実の存在を知っていたフールではあるが、実際にゴム人間を見たことなどなかった為に興味津々であった。

 

 悪魔の実、それは海の秘宝とも呼ばれるお宝。食べた者は特殊な能力を身につけることができるかわりに海に嫌われ一生泳ぐことができなくなるとかどうとか。泳げなくなるのに海の秘宝なのはどうしてなのか、フールは当時からずっと疑問に思っていたりする。

 旅の途中で何度か能力者に出くわすこともあり悪魔の実の希少性や有用性は理解しているフールではあるが、知らぬ間に能力者になったルフィを羨んだりすることはない。一人旅をすることが多かったフールにとって泳げないのは致命傷であるからだ。その意味ではフールはルフィに同情さえしていた。

 

 

 

 それから数日後、村を離れていたフールが戻るとシャンクスの腕がなくなっていた。マキノに聞けばフールのおらぬ間に村に件の山賊が訪れていたらしい。山賊はルフィに乱暴を働き色々あって海賊に壊滅させられ、すったもんだの末シャンクスの腕は近海の主に千切られたそうな。目を離した隙に話が進み過ぎだろう、フールは純粋にそう思った。

 マキノから『肝心なときにいないんだから!』という至極真っ当な指摘を頂戴したフールは、けれども山賊の壊滅にいささか肩透かしを食らったような気持ちになっていた。

 

 フールが村を離れていた理由は簡単で、調子づいた山賊を分からせる為であった。

 酒場での行動は山賊たちに一種の成功体験のような余韻を与えているだろう、フールはそう考えていた。そのような経験から何度も村に来られるようで少々煩わしいと思ったフールは単身山賊のもとへ赴き『あんまり来ないでね』とお願いするつもりであった。幼いころに山賊と追いかけっこをしていたこともあるフールは山賊に恐怖とかはなかった。

 もちろん、山賊が聞き入れないようであれば手を出す準備はできていた。後始末をさせられたことに対する腹いせの一面もあったりするため、フールは手を出すことになんの躊躇いもなかった。この男、他人が何をしようとあんまり気にしないがそれが自身に被害が及ぶとなれば途端に動くようなヤツであった。

 

「おお、フールか。どこ行ってたんだ?」

「山へ芝刈りみたいな感じ。なんか色々あったらしいね」

 

 騒動後、フールと海賊団の会話である。彼らのノリは変わらず緩かった。

 

「腕千切れたんだってね」

「まァな。だが安いもんさ」

「赤髪のシャンクス改め隻腕のシャンクスじゃん」

「おいおい、お頭に変な二つ名をつけないでくれ」

「アリだな……」

「無しだよ落ち着けお頭」

「ちなみにおれも流浪の風車マンってあだ名があってね」

「ダセェ二つ名──聞いたことあるなソレ?」

 

 なんとも軽妙に話は進む。1年あまりの時間で海賊団とフールはいい感じに仲良くなっていた。

 

「おれ達は直にここを立つ。長らく世話になったな」

「ルフィたちには伝えたのか?」

「すぐ伝えるさ」

 

 どうやらシャンクスたちはここを離れるらしい。しばらくは出航の準備でバタつくことになるだろう、フールはそう考えて、あることを思いついた。

 

 

 

「この船出でもうこの町へは帰ってこないって本当!?」

 

 ルフィの声がこだました。シャンクスたち赤髪海賊団は今回の船出でフーシャ村から立とうとしていた。

 

「ああ。寂しいだろ」

「うん、まあ悲しいけどね。もう連れてけなんて言わねぇよ!自分でなることにしたんだ海賊には」

「どうせ連れてってやんねーよ」

 

 ルフィとシャンクスの会話は続く。

 

「お前なんかが海賊になれるか!!」

「なる!!」

 

 笑いながら指摘したシャンクスに対して、ルフィは強い口調で返した。

 

「おれはいつかこの一味にも負けない仲間を集めて!!世界一の財宝みつけて!!海賊王になってやる!!!」

 

 それは幼い少年の強い決意表明であった。そんな彼の言葉をシャンクスたちは面白いものを見るような顔をして眺めていた。

 

「ほう……!おれ達を超えるのか。じゃあ……この帽子をお前に預ける」

 

 動いたのはシャンクスであった。シャンクスは、自分の被る麦わら帽子をルフィに託した。

 

「おれの大切な帽子だ。いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな」

 

 シャンクスから少年への確かな激励であった。ルフィははじめて、託されることの重みを知った。

 

 そうして、シャンクスは船の方角へと向かっていく。その内心は良い別れができた満足で包まれていた。けれども、そう都合よく話は終わらないのが現実である。シャンクスの歩みを止めたのは、ある一報であった。

 

「お頭!船の中にへんな書置きが!!」

「ん?なんだ。見せてみろ」

 

 シャンクスは船員から紙を受け取ると、流れるようにソレを開封していった。黙っていく末を眺めていたマキノは、ここにきて猛烈に嫌な予感がした。

 書置きには、ハッキリとこう書かれていた。

 

《ごめん、資材借りるねありがとう。マキノには風がおれを呼んでいると伝えておいてほしい》

 

 愚か者は、海賊団の出航というドタバタに乗じて人知れず飛び去っていた。よその船の資材をパクったうえで。とんだクソ野郎であった。

 

 マキノは激怒した。




十年後
「とうとう行っちゃいましたね村長。さみしくなるわ」
「村のハジじゃ海賊になろうなんぞ!」
「まさか本気で行っちまうとはなー!」
「見送らせてくれただけいいじゃないですか。2回も勝手に出て行って一度も見送らせないバカと違って」
「そ、そうじゃな…」


続きを待つ声が意外とあってこわいですね。フール君の旅がみたいのかな。もし続いたとして掲示板形式とかでもいい?

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