この度、ヒーローのお目付け役を任されることとなりました   作:@蛇足

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出会いは!ある日の仕事の帰り道!

 

 

「ふい〜疲れたよ〜」

 

 

ただいま戻りました。終無事披露宴をやりきり事務所に戻ってきた私。今、やり遂げた満足感と責任感から解放され机の上に突っ伏しています。ほっぺたから机のひんやりとした冷たさが伝わってくる。ああこのまま眠りに落ちてしまいそう…。

 

 

「お疲れ様です先輩。今日の鷲尾夫妻ですけど、両家共にとても喜んでいましたよ」

 

「ほんとー?」

 

 

声をかけてきたのは同僚の前島結衣ちゃん。私の1年後輩にあたる子で同僚の中じゃ1番仲良い子。私にはない華奢でふわふわした雰囲気は会社内外問わずとても人気なんだぁ。

 

 

「ほんとですよ〜。麻里さん最後の挨拶の時ボロボロになるまで泣いてたじゃないですか。もう両家のお父様お母様が『私たちより泣かれたら泣くに泣けないじゃない!』って笑ってましたよ」

 

「そうだよね〜。私もさーこう見えて出来るだけ抑えようとしてるんだよ?でもやっぱね…込み上げてきちゃうだよね。クライマックスの新婦の手紙を聴くたびにさ、ああこの家族にはこんな背景があったんだなって。ほら。二つと同じ家庭なんてないからさ」

 

「麻里さんのそういうところほんと変わらないですよね。私も感動はしますけど、進行の方で頭いっぱいになっちゃってそんなゆとりなくなってきちゃいました」

 

「大丈夫だよ。結衣ちゃん私より飲み込み早いし。このまま続けていけば優秀なウエディングプランナーになれる。私が保証する」

 

「へへっ。ありがとうございます。そうだ。今日の飲み会の件なんですけど参加します?あと麻里さんだけ返事待ちになってて」

 

 

飲み会?

あれ。そんな話あったっけ。

んー。

2週間くらい前にそんな話し聞いたようなないような。

ここ最近あいつらのせいで毎日が怒涛のように過ぎていくからな…。

家に職場にとドタバタしてて記憶から飛んでたのかも。

最後に羽伸ばしたのいつだろうっていうレベルだし。

偶には羽目外してもいいか!

 

 

「うん!私も飲み会…」

 

 

 

 

 

『おい。こんなところに鍵のかかった引き出しがあるぞ』

 

『なんと!そんなところにまだ未開の場所が?』

 

『きっと高価なティアラが保管してあるのに違いありません。それか指輪、イヤリングかも』

 

『なにグズグズしてんだ。早く開けろって!』

 

 

 

「だぁーーー‼︎‼︎‼︎」

 

「うわぁ!え?え?どうかしました⁉︎」

 

 

ちっくしょう…。あやつらめ…。大人しくしていろとあれほど申したであろうに…。

 

 

「ごめん結衣ちゃん!飲み会やっぱ欠席で!私急用思い出しちゃった!」

 

「え?ちょっと先輩⁉︎」

 

 

折角の機会だというのに何しようとしてやがるんだ!

もう。せっかく羽を伸ばせると思ったのに。

残ってる仕事早く終わらせないとやばい。

でなきゃ。

でなきゃあいつらにまた部屋を好き勝手荒らされる!

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

よし。なんとか仕事は終えた。

速やかにダイヤをチェックするために携帯を開く。

次の電車は20分後か。

ここから最寄り駅までは徒歩30分。

最短で向かったとしても5分しか縮まらない。

ちくしょう。

このままでは間に合わないか。

……。

ならば仕方ない。

あの道を使うか。

それなら間に合う!

 

もう一踏ん張りだ!

いけ!

私の筋肉!

 

会社を出て駅に向かう。

そしたらいつも目の前を通る運動公園があるからそこを中に入って。

よし。

思った通り。

まだ早い時間だからか入り口が開いてる!

ランニングコースに設置された街灯はもう灯りがついてんだ。

ああ。この場所。この時間のこの景色。

なんだかあの日のこと思い出してきた。

現在進行形で振り回されている諸悪の根源。

頭を抱える問題の元凶。

それは。

ある5人の次期王様となる子供達たちとの出会い。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

1ヶ月ほど前。

 

 

「疲れたー。今日の夕飯何食べよっかな」

 

 

その日は確か最終回を迎える連ドラの放送を楽しみにしながら帰ってた。前の日に作り置きしたスープが終わっちゃって晩御飯のことも考えてたっけ。

 

 

「あ、そういえば。もうすぐ甥っ子ちゃんの誕生日じゃん!」

 

 

そうそう。もうすぐ甥っ子の誕生日だったんだ。今度は何あげようかな。何が喜ぶかな。今回のプレゼントは誕生日だっていう立派な理由があるし文句言われないだろうし。というのもね、以前会った時に姉ちゃんに怒られちゃたんだよね。可愛さのあまりなんでも買い与えていたらさ、甘やかしちゃうからダメでしょーって。

だってさ、ちっちゃい子だよ?ちっちゃい子ってだけでじゅうぶん可愛いのにそれが甥っ子となったらもうさ。最上級。極上。ヘブン。ユートピア。とにかくもうそんな気持ちになっちゃって。

 

初めて会ったとき思わず『おー!これかー!目に入れても痛くないってこのことかー!』て叫んだもん。そんな甥っ子がもう5歳の誕生日を迎えるなんて。

時の流れは早いもんだ。

 

世間からしたらまだまだ若い方と言われる私でもこの感覚だけはどんだん研ぎ澄まされてるように感じる。あの出来事もうそんな前か!ってなるあの感覚。頻繁に起こります。

甥っ子が生まれたのが5年前か。私は…成人式の年。うっ。なんか心に大きめの石が直撃したような痛みが。もうそんなに経つんだね。はは。そりゃ年取りますわ…。

 

 

「どんなおもちゃが欲しいんだろ? 流石にもう自分の好きなものとか出来てるだろうし。今度姉ちゃんに聞いてみるか…あれ?」

 

 

そんな思いに馳せていると約50mくらい先の植木に誰かが蹲っているのが見えたんだ。それも運動公園内の植樹帯に潜り込むようにして。

 

え。なにあれ。この時間のこの場所であんなことしてるなんて。何かしているの?それともまさか病気か何かで倒れたとか?そう思って駆け出そうと踏み出した右足からカリっと固い何かを踏みつけた音がした。見てみるとそこには不思議な形をした壺のチャームがついたペンダント。チェーンの長さから比較的大きいチャームだった。

 

 

「痛っ。全然気づかなかった。なにこれ?」

 

「あーそれは!」

 

 

急に声をかけられ、びっくりした私の前に現れたのは同じ背丈くらいの女の子。ところどころ服装の汚れが目立ち、深く被ったフードから垣間見える長い髪もぼさぼさだった。

 

 

「あ、もしかしてこれの持ち主ですか?」

 

「そうなんです。ここに来てすぐ落としたのに気づいて…ずっと探してたんです。よかった〜。ありがとうございます」

 

 

そっか。だからそんな汚れてたのか。街灯にライトアップされた彼女の全貌を見てみると、汚れよりも目立って見えたその服装はおとぎ話に出てくる使用人のような服装だった。ここら辺じゃあまり見ないファッションだけに結構勇気いると思うけど…まあ服の好みは人それぞれだよね。他人がとやかく言うことじゃない。

そんなことを考えていたら彼女がこちらに右手を差し出してきた。彼女がペンダントを待っている。そう思って私は慌てて拾ったペンダントを渡そう右手を伸ばした。

 

そのとき。

 

ペンダントのチャームである壺がキラキラと光り震え始めた。

 

 

「え!え?何これ⁉︎」

 

「⁉︎ 待って下さい皆さん!まだ呼んでなんか…きゃあ!」

 

「ニーヒッヒッヒ!この俺様が!この世界に1番乗りだ……だぁ⁉︎」

 

 

震えていた光る壺からなんと若い男の子が姿を表した…のだが女の子がペンダントを急いで掴み取ると、それを慌てて吸い込んだ。シュルシュルと男の子の姿が消えると吸い込んだ反動で女の子がコロコロ転がっていく。その一部始終を見た私はあまりにも奇想天外な出来事に目を丸くして固まってしまった。

 

 

「……。」

 

「あの…」

 

「……。」

 

「…見ちゃいました?」

 

「……。」

 

「……。」

 

「ぎゃあーー!」

 

「ひゃあ⁉︎ え⁉︎」

 

「人攫い! 誰か!助けて!警察!!!!!!」

 

「違います!私そんなんじゃ!待って!逃げないで!」

 

 

私は生まれたての子鹿のように立ち上がると高校の部活ぶりに全力疾走した。自分のスーツが、パンプスがどうなろうとお構いなしに現役の時ばりのフォームで体を回転させトップスピードで走る。けれどそんな私の全力を嘲笑うかのように女の子はすぐに追いつくと私の腕を掴んで引っ張った。急に腕を掴まれた私はバランスを崩してしまい、女の子と共に前方に転がるように転んでしまった。

 

 

「え…?え…?」

 

 

私こう見えて高校の時は陸上部だったんですけど⁉︎

それなのに、そんな私よりも華奢な女の子が息切れひとつもせずすぐ追いつくなんて。腕で体を支えて身体を起こした女の子は被っていたフードがはだけたのを気にせず私の元へ近づいてくる。

 

 

「誤解してます!私の話を聞いてください!」

 

「うわあ!」

 

「ひゃあ!もう!今度はなんですか!」

 

 

フードがはだけて、女の子の顔がしっかり映る。その顔を見て私はまた悲鳴をあげてしまった。街灯との逆光で映っている、その顔がなんと…

 

 

「顔…わ、私⁉︎」

 

「え…顔?」

 

 

女の子は懐から手鏡を取り出すと街灯の灯りを使って自分の顔を覗き込んで見ていた。なんで。なんでこの女の子私と同じ顔をしているの…?

 

 

「もう何…?意味わかんない…!」

 

「これは…。王よ。これはこれがあなたの言う思し召しなのでしょうか」

 

 

女の子はしばらく手鏡を見つめた後、立ち上がって私の方へやってきた。すっかり腰の抜けてしまった私は何も出来ず女の子をただ見上げていると、私の手を取り立ち上がらせてくれた。

 

 

「…?」

 

「あなたにお話があります。ここではだめ。あなたの宿まで案内してくださいませんか?」

 

 

必死になっている自分の顔にお願いされるというなんとも不思議な感覚を抱きながらも、有無を言わさないその圧に私はただ頷くことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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