ローマにある旅をしている男がいた。彼は長い長い旅の末、漢と言う国で一人の女性と恋をした。
そして、時が流れ、時は後漢末期の中国。漢王朝の衰退により、大地は荒れ果て、人々は飢えや病気、戦争で苦しんでいく。そこに、一人の男の子が生まれた。性は如、名は水、字は光子、真名は如清、そして、親しい人間は彼が異国の父の子から、彼のことをこう呼んだ。ジョジョと。彼は文武両道で容姿端麗であり、家事も得意な面もあり、誰もが頼れる人間だった。しかし、彼はある力があった。それは、父も使え知られていた力。他人には見えず、その力を持っている者同士でしか見えない力だった。その名は、そばに立つ者という意から名付けられた。その名は『スタンド』。
この物語は、そんな異国の父から引き継いだ子供の、数奇で奇妙な戦いが描かれた訪れるはずのない歴史を生き抜いてきた冒険譚である。
町外れにある森の中、ここに一人の少年がいた。少年は年の割りには幼く見えず、凛々しい顔立ちをしていた。腰には小刀と刀を差しており、髪は長く束ねている。中国の兵士というより日本の武士に似た立ち振る舞いをしていた。
少年は拳を構えて頭の中であるものをイメージする。それは、生命力をビジョンであり、自分の力でもある。その名はスタンドと呼ばれる力。それは少年の後ろに立ち、少年が攻撃をする対象に向かってそのビジョンはその対象に攻撃する。
「白銀星!オラァ!!」
バコォォォォン!!と大きな音を立てて放たれたビジョンの拳が大きな木に当たる。木は大きく揺れ、木の葉を舞い散らす。
そして、その舞い散る木の葉に向かって、スタンドの無数の拳が振るわれる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!」
木の葉が全て地に落ちると、スタンドの拳の中には先ほど舞い散っていた木の葉は数十枚握られていた。
「こんなものかな?」
少年はスタンドを引っ込めて何もなかったかのようにその森を出て町に戻っていった。
彼の名は如水、字は光子、真名を如清という。親しい人は彼を名の如と真名の如を合わせてジョジョと呼ぶ。真名はこの時代では大切な名であり、許しを得ず呼ぶと切られても仕方ないと言われるくらい大切な名前だが、彼自身は真名なんてどうでもいい。だから彼は親しみを込めて、ジョジョと呼ばれるのが好きだったりする。大抵の人はこの名前と真名を組み合わせたあだ名を言う人は彼に真名を預けている。
そんな彼の父と母は既に他界しており、如清はある人に拾われた。その人は彼が今仕えている人。曹一族の一人、曹嵩だ。彼はまだ幼いジョジョを引き取り、まるで我が子のように育ててくれた。如清も曹嵩を父と同じくらい尊敬しており、心の支えになった。妹分である曹嵩の娘である曹操(真名は華琳)からも兄上と慕われている。しかし、スタンド能力に関しては彼らには内緒にしている。
「兄上!」
町の入口前にいるのは妹分の華琳が手を振っている。ジョジョはそれを見て手を振り返してやると、それに反応するように華琳が走ってくる。
華琳はジョジョに飛びつくと、ジョジョはそれを受け止める。
まだ6歳の女の子。兄に甘えるように顔を猫のようにスリスリと擦り寄せる。
「ハハハッ、いい子にしてたか?華琳」
「はいっ!」
と元気に返事をする華琳。
お供として一緒にいた夏侯惇(真名は春蘭)と夏侯淵(真名は秋蘭)も走ってくる。彼女らは直属のジョジョの部下であり、華琳の右腕だ。
「如清様。ご無事で何より・・・」
「如清様!お帰りなさいませ!」
「・・・二人共・・・俺のことはジョジョでいいよ。もし言いにくいなら呼び捨てにしてくれよ堅苦しいの嫌いなんだよ」
「いえ、我らがそんな恐れ多いこと・・・」
「別に身分とかそんなの関係なく言ってるんだが・・・これが主従関係というヤツなのか?難しいな」
ジョジョは今年で12歳。軍を率いるには若すぎるが、本当に12歳なのかと思わせる冷静沈着な指揮、華麗な武から、正に天才と言われる人材だった。見える。しかし、如清の悪いところは誰にでも甘く、誰にでも優しいところだ。自分の隊の兵士には呼び捨てかあだ名で呼んでもらおうとし、さらに功績より仲間優先という変わったところを持っている。ハッキリ言って、彼の中に主従関係と言うものはない。だからこそ彼には人が集まるカリスマ性を持っている。しかし、誰も彼がスタンドという摩訶不思議の力を使えることを知っているのは誰もいない。知っているのは当の本人と彼の父だけだ。そして、彼にはもう一つ不思議な特徴があった。それは首筋に付いている星型のアザだ。話によると、彼の父もこのアザを持っていたらしい。
ジョジョは首筋の星アザを触りながら町を歩く。
「どうしたの兄上?」
「いや、なんでもないよ」
本当はなんでもある。最近はその星型のアザが疼くことが多々あるのだ。しかし、如清はそれを内緒にしていた。理由は至って簡単。華琳たちに心配かけたくないからだ。
「おお、ジョジョ、お帰り」
「曹嵩様。ただいま戻りました」
ジョジョは曹嵩の前で跪いて言う。
「ジョジョ。様付けはやめないか?それとその態度も。お前も周りにしているではないか」
「しかし、曹嵩様は私を拾ってくださった恩人で・・・」
「なら、恩を返そうと思うなら、私とは本当の父と思ってくれ。私はそれだけで十分だ」
如清はまいったなと困った顔で頭をボリボリかいて、少し考えた後、立ち上ある。
「わかったよ。義父さん」
「うむ」
「最近の町はどうなんだ?義父さん」
「うむ、相変わらず十常侍たちが好き勝手やっている。いつか乱が起きるかもしれんな」
「十常侍のやつら・・・覚悟してろ・・・俺がぶっ潰してやる・・・!」
如清の目に覚悟が宿った目になっていた。如清の思いはたった一つ。誰もが笑顔で暮らせる素敵な世の中。それを実現するため、如清は武を磨き続けた。
その日はゆっくりと休むため、風呂に入って部屋に戻って寝た。
そして、9年後。如清は21歳に、華琳たちは15歳になった。如清の背は高くなり、その幼かった顔は凛々しい男の顔になった。しかし、未だに嫁の貰い手がいないでいた。
華琳も9年で成長。幼く可愛らしい姿は、大人になっていき美人と思えるくらいになった。兄に依存をいているという点を除けが、華琳はどの面でも優秀だった。それは夏侯姉妹も同じだった。如清を想いすぎるとこから、彼女らは武を磨き、彼を支えている。
「は?袁家が俺に?」
「ああ。なんでも、あの周辺で賊が出たらしく、人手不足もあって出陣するための人が欲しいと言われてな。そこで、悪いが汝南に行ってもらえないか?」
「また遠征に出られるのですか?兄上」
隣で華琳が言う。最近は特に賊の出現が多く、如清はほとんど出ずっぱりだった。しかし如清は嫌がる顔をせず首を縦に振った。
「わかった。この如光子民の為に尽力するとしよう」
「そうか。今回は華琳たちも連れて行きなさい。お前の働きを見せてやってくれ」
「だとよ。華琳もこの数年武術を鍛えたんだ。行けるか?」
「はい。いつでも覚悟は出来ています」
「春蘭たちも大丈夫だよな」
と後ろに立っている春蘭と秋蘭に声をかける。二人共あの頃と比べ、背も伸び、女性らしく美しくなっていた。彼らは正式に如清の忠臣になり、懐刀として如清を支えていた。だが、二人共如清のことを相変わらず「如清様」と呼んでいた。
本人はジョジョか呼び捨てが良いと言っているが、それも9年もすれば慣れてしまい、如清は諦めた。
「はいっ!この夏侯元譲、如清様と華琳様の為なら火の海にも飛び込む覚悟です!!」
「私も姉者と同じ考えです。何なりと使ってください・・・」
相変わらずの硬さに如清は苦笑いしてしまう。
「相変わらずだな・・・せめて呼び名くらい軽くていいのに・・・」
「ふふっ・・・諦められよ。如清様・・・」
優しく笑みを浮かべる秋蘭。そんな秋蘭を見て、如清もまた、笑みを浮かべた。
「既に諦めてるよ・・・」
すぐに出陣をするために四人は準備をする。
出陣時には町の出口に多くの人たちが見送りに来てくれた。
馬を歩かせること数時間で目的地である汝南の近くにある陣に辿り着く。兵士たちのいい声が外からでも聞こえる。入口のところであらかじめ曹嵩からもらった袁成の書状を番兵に見せる。
「入ってください」
と結構な歳の番兵が自分より年下に頭を垂れる。
「あ~そういうのやめてください。俺はただのひよっこですから。一兵卒のように扱ってください」
「し、しかし、あなた様は・・・」
「じゃあ、俺のあだ名でジョジョと呼んでいただきたい。できればタメ口で」
番兵は困り果ててしまい、どうしようかと互いに顔を見合う。
「良いではないか。そうしてもらいたいのならそうさせてもらえば」
とそこに現れた男性が言葉にした。
「え、袁成様!?」
番兵たちは袁成を見てすぐに跪こうとしたが、袁成がそれを止める。
「あ~よいよい・・・そのままで、お主名前は?」
「はっ!曹嵩が家臣、性は如、名は水。字は光子、真名を如清というものです。お気楽に、私のことは如清か、ジョジョとお呼びください・・・」
「真名を簡単に預ける割に硬いの~。もう少し柔らかくできないものか・・・」
「いえ、自分は減り張りを付けるように心がけているものでして、本人の許可なしに態度を崩すのは控えています・・・」
「そうか。じゃあ、その硬い態度を崩せ。そうさな、友人と話す感覚でどうじゃ?」
「・・・わかった。これでいいなか?袁成さん」
「うむ、その年で立派なものじゃな」
袁成は「ハッハッハー!」と大声で笑いながらその場を去った。
如清たちは馬を止めて客将のためのテントに通される。如清は腰に差した脇差と刀を置いて寝床に腰を下ろす。
「ふぅ・・・今日は疲れたな・・・」
「ええ。朝から馬に乗っていたから、お尻が痛いわ」
「とにかく、明日に備えて早く寝てしまいましょう」
「そうだな・・・しかし・・・ここに四人で・・・?」
客将用のだといっても、一人の男と三人の女が寝るには少し狭く、そして如清とっては神経を使ってしまう。昔はよく四人で昼寝や一つの部屋で寝ていたものの、今は大人。如清も健康的な一男子であることは変わりなかった。そして、如清が取る行動は一つだった。
「俺、外で寝るよ。後はご自由に~・・・」
とテントから逃げようとした瞬間、ガシッと華琳は如清の首を、春蘭は右腕を、秋蘭は左腕を押さえつけられた。
「ジョジョ兄様ぁ~♪外は寒くて風邪を引いてしまいます。私たちと共に眠りましょう」
如清の背中に冷や汗が伝わる。しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。
「っはは、華琳様はホント如清様は好きですな」
「当たり前でしょ?初恋相手なんだから」
「(えっ、そうなの!?)し、しかしだな華琳。いつまでも兄にくっついていてはダメだぞ?いつかは兄から離れてだな・・・」
「大丈夫。私が兄上のお嫁になるから♪」
「(おいおい・・・そういうもんは歳一桁の時に終わらせるものだと思うがな・・・)」
「とにかく、兄上は私たちと寝るわよ!」
ズルズルと引きずられていく如清。その時、テントから男性の悲鳴のようなものが聞こえたのは、誰も知らない。