AVENGERS:Eyes of Nunnish   作:とむじん

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フロストノヴァには丈の長いクラシックメイド服が絶対に似合うと思うの。黒いストッキングを履いて欲しい。ね、絶対に似合うから、ね、ね?


GUARDIANS OF THE GALAXY:Problem Solver MITSUHA〔part1〕

──数年前、聖ホロウ教会。

 

 

「ねぇラファエラ、地下の宇宙船貰ってもいい?」

 

 

訓練室での模擬戦を終えたラファエラを、一人の少女──山野光波が呼び止めた。肩甲骨まである艶やかな黒髪と、蝶と花を模したヘアピンが印象的で、身長が低く、同年代に比べると幼さを感じさせる雰囲気を出している。

 

光波は地下倉庫に指を差しながら、タオルで汗を拭うラファエラに質問すると、眉を寄せた微妙な表情を返された。

 

宇宙船──正しくは避難用の船だが、かつてラファエラの故郷が崩壊した際に義兄と一緒に脱出し、事故によって地球に不時着。義兄と生き別れになった経緯があり、ラファエラにとっては唯一の繋がりとも呼べるもの。同じ孤児院に住んでいるとはいえ、簡単には頷けなかった。

 

 

「何に使うの?」

 

「それは勿論、宇宙に行くのさ! 地球の人間にとって宇宙はロマンの塊だしね。色んなものを見てみたい!」

 

「……?」

 

「後はほら、宇宙の物を地球で売って、地球の物を宇宙で売る! 互いに珍しいものを売れば、大儲けができる! ほら完璧!」

 

 

両腕を大きく広げ、嬉々として話す光波。瞳にはドルマーク。背景にドル札の山が見えたあたりで、ラファエラは半目がちに呆れた表情で光波を見る。

 

 

「俗物的だね」

 

「褒めるな褒めるな。──それに、ラファエラにも利点はあるんだよ?」

 

 

首を傾げるラファエラ。今のところ、光波自身のメリットのみが掲げられており、その内容からはあまり良いメリットは想像ができず、苦い表情を浮かべる。

 

 

「ラファエラのお義兄さん、どこで別れたのか分からないんでしょ? 地球上にいる可能性は高いけど、宇宙の可能性も捨てきれない」

 

「それは、うん」

 

「だから、私が宇宙を探してあげる! そしてラファエラが地球を探せば、見つかる可能性が上がるとは思わない?」

 

 

手を差し伸べる光波。ラファエラは数秒、頭の中で考えた。悪くない考えだとは思う。どちらにせよ、地球上を優先して探すつもりだったラファエラにしてみれば、平行して宇宙を回って探して貰えるなら願ったり叶ったりと言えるだろう。主目的に目を瞑れば。

 

とはいえ、それを補って余りある魅力を感じたのも事実。ラファエラは光波の手を取ると、頷いて了承した。

 

 

「……分かった。でも、壊れてるよ? 運転席なんて無くなってるし」

 

「大丈夫、修理のアテはあるよ。ウチらのいる孤児院には、そういうのを得意とする人もいるしね──依頼料めっちゃボられたケド──んんっ、失礼」

 

 

一瞬にして悲壮感を漂わせ、ラファエラの視線に気付いて咳き込む光波。空気を切り替え、近くの扉のノブに手を掛けた。瞳を大きく開いて、芝居がかった声で扉を開く。

 

 

「では紹介しよう! 宇宙船修理の三銃士!」

 

「三銃士?」

 

 

入ってきたのは、同じ孤児院のメンバー。絡むことは少ないが、それぞれ特殊な力を持っており、藤乃の手伝いで時折一緒に行動したことがあるメンツだ。どこか呆れた表情で光波を見ているのは、小芝居に付き合わされたからだろうか。

 

そんな彼女達を気にせずに、光波は大きく声をあげる。

 

 

「機械修理はお任せ! 歯車で駆動する神秘のInitial-Yシリーズ壱番機、リューズ!」

 

「金の亡者に手を貸すのは大変遺憾ですが、仕方ありません。歯車による至高の動力を作れるのであれば、手をお貸ししましょう」

 

「システム構築はお手のもの! 『全知』の超天才清楚系病弱美少女ハッカー、明星ヒマリ!」

 

「ふふっ、白雪の具現こと、この天才美少女ハッカーにお任せください。素人でも操作しやすく、それでいてセキュリティ面も強固なものにいたしますね」

 

「それらを束ねる工学頭脳! 心技体揃った人類最高峰の天才ウサギ、篠ノ之束!」

 

「宇宙進出は束さんにとっても夢の一つだからねぇ。設計は任せてよ。最高峰の防御機構を搭載してあげる」

 

「究極の癒し! 自らも熊に成りきる熊使い、ユナ!」

 

「ねぇ、私いる?」

 

 

ベールを纏った歯車の少女、車椅子に座った少女、機械仕掛けのウサギ耳を装着した少女が、熊の着ぐるみを身に付けた少女を囲む。テンションの高い3人と違い、何故呼ばれたのか分からない様子で光波を半眼で見つめる。

 

そしてラファエラも、困惑の表情を浮かべていた。

 

 

「三銃士なのに、4人……?」

 

「四天王も5人いるから問題ナシ!」

 

 

ドヤ顔で腰に手を当て、得意気に鼻を鳴らす光波。手を開き、右腕を正面に伸ばすと、高らかに宣言した。

 

 

「さあ始めよう、私の大儲け計画を──!」

 

「判断、間違えたかなぁ……」

 

 

★☆★

 

 

──そして現在、惑星ザンダーにて。

 

 

「まっっっっったく、売れない!」

 

 

光波の悲鳴が広場に響き渡った。

 

 

──────

────

──

 

 

一昔前に日本で扱われていた木製の手押し式屋台の机に項垂れる光波を呆れた目で見るのは、熊の着ぐるみを着た少女──ユナ。屋台の側に椅子を設置し、卓上に肘をついている。

 

 

「だから言ったでしょ、リサーチが足りないって。ロマンを求めるのはいいけど、ザンダーで屋台は無理だー、ってさ」

 

「インパクトがあると思ったんだよぅ」

 

「インパクトしかないんだよ。ほら、周りを見なって。めっちゃ訝しげな表情だよあれ」

 

 

もにょもにょと言い訳を重ねる光波。ユナが手を向けた先には、恋人と思わしき男女や、老夫婦。広場で遊んでいた子供たちすら遠巻きにこちらを見ているのだが、近付いてくる気配はない──が、その視線は屋台というより、ユナの方へと向いていて。

 

 

「いや、あれはユナの格好が原因だよ! この星に熊が生息してるか分かんないけど、その姿は絶対に異様だって! 前の星でも奇怪な目で見られたでしょ?」

 

「これ脱いだら貧弱な体しか残らないんだし、諦めて──というか、異星で日本の文化を広めるのはいいけど、せめて対外的にイロモノに見える店は止めようって言ったのに、屋台を強行したのは誰だっけ?」

 

「ぐぬっ……そ、れはそうだけど……イロモノ代表みたいなユナに言われたくはないかな!」

 

「だぁれがイロモノ代表だ──!」

 

 

屋台を間に挟み、額が接触する程に顔を近付けて互いにぐぬぬと威嚇をする二人。その剣呑な雰囲気に圧され、ザンダーの人々は足早にその場から離れていく。

 

一触即発。そんな様子を見ていられなくなったのか、屋台の陰から顔に大きな切り傷を負った銀髪の少女が現れ、光波の頭を手の甲で軽く叩き、ユナの背中に氷の欠片を発生させた。

 

 

「痛い!」

 

「冷たい!」

 

「落ち着け、全員イロモノだからな?」

 

「エレーナぁ……!」

 

「フロストノヴァと呼べ」

 

 

長袖、足首まであるロングスカートで構成されたクラシカルなメイド服を身に纏ったフロストノヴァと名乗る少女は、泣き付く光波を引き剥がすと、ユナの隣に座る。

 

手首のカフスを調整しながら、ひらりとスカートを翻す。すらりとした彼女の体型と凛とした表情は、古式ゆかしいメイド服がとても似合っていて、光波とユナは思わず見入ってしまった。

 

 

「大体、なんなんだこの服は。お前たちには助けられた恩があるとはいえ、流石に恥ずかしいんだが」

 

「それは当然、可愛いからさ! エレーナが前に着てたヤツ、ボロボロだったし。女の子なんだから着飾って欲しかったんだよ! 可愛い子にはお洒落をさせよってね!」

 

「クラシカルメイド、いいよね。エレーナはスレンダーでスタイルが良いからよく似合ってる。眼の保養になるわー」

 

「お前たち……息が合っているのかいないのか分からないな……。後、私のことはフロストノヴァと呼べと言っているだろう、全く……」

 

 

片手で頭を抑えるフロストノヴァ。ふと思い出すのは、損壊した氷の惑星で彼女達に出会ったこと。空腹で死にかけていたところを救われ、居場所を得られたのは感謝している。賑やかなのも楽しかった頃を思い出すので好ましいのだが、行き当たりばったりな行動が多く、行く星々でやらかす(・・・・)ことが頭痛の種となっていた。

 

 

「そもそも、今回は何の店なんだ? 私はまだ聞いていないんだが。前回は確か──」

 

「前はラーメン。その前は寿司だっけ? 前の星じゃ、ラーメンは結構評判か良かった気がするけど」

 

「ふふん、今回は『ハンバーガー』! それも、アメリカンサイズの超高カロリーなヤツ!」

 

 

身に付けたエプロンを翻し、光波はテキパキと具材を卓上に並べると、慣れた手付きでパティを鉄板で焼き始めた。その間にあらかじめ作っておいたバンズを開くと、下地となるマスタードソースを塗り、みじん切りにしたピクルスとオニオンを敷く。

 

パティがこんがりと焼け、周囲に良い匂いが漂う。そろそろ頃合いだと光波はフライ返しでパティをバンズに乗せ、チーズ、ケチャップソース、ピクルスと、重ねた食材をバンズで挟む。それを紙で包むと、光波はフロストノヴァへと差し出した。

 

 

「ほれ、食べてみ? 地球において肥満の元となる脂質と糖質が詰まった禁断のバーガーだぜっ」

 

「それを言われて食べたいと思うわけがないだろう」

 

 

と言いつつも、バーガーを受け取るフロストノヴァ。啄むようにかぶりつくと、もぐもぐと咀嚼する。口内で肉の旨味とチーズのコク、ピクルスの酸味やマスタードの辛味などが混ざりあい、複雑な美味しさを醸し出している。今まで食べたことの無い味に驚きつつ、感想を述べた。

 

 

「……旨いな」

 

「でしょー?」

 

「だが、ザンダーには似た食べ物が無かったはずだ。ユナの言う通り、リサーチをしなければ売れないだろうな」

 

「ぐぐ、そっかぁ」

 

 

頭を抱え、うなだれる。色々な星に行く度に繰り返してきたリサーチ行動に、光波は割と辟易していた。ここ最近で回った星の中に、昆虫食が主食な星や、言語を話す知的生命体を食べる知的生命体が住む星など、地球人としては狂気を感じる惑星が多かったため、割と惑星特有の食品に対してトラウマを持っている部分があるのだ。

 

けれど、ユナとフロストノヴァが言うことも正しいと理解しているため、光波はどうしたものかと頭をひねった。と、そこで遠くから声が聞こえてくる。

 

 

「おーい、みんなただいまー! 美味しそうなの買ってきたよー!」

 

 

顔をあげてみると、ノースリーブの黒い鎧を見に纏った黒髪の少女──メイプルがたくさんの食べ物を買ってこちらへと向かってきていた。

 

 

「あれ、メイプル? 何その食材、いないと思ったらどこに行ってたの?」

 

「ユナに言われてお使い! 『どうせ光波は面倒くさがってリサーチしないから、代わりに美味しそうなものを買ってきて』ってお金を渡されたから、市場まで行ってきた!」

 

「……ユナ?」

 

「事実だったでしょ? それに、メイプルなら美味しい食べ物くらい見分けられるだろうし」

 

「『悪食』なメイプルに任せて変な食材を買ってきたらどうするの!」

 

「わー、ひどいこと言われてるー!」

 

「前科があるから言ってるんだよなぁ!」

 

 

前にヒトガタの芋虫を持ってきたこと忘れてないからね──なんて、むにむにとメイプルの頬を引っ張る。怒っている訳でもなく、大して力を入れている訳でもない。けれどメイプルもわざとらしくうにゃうにゃと悶えていた。いつものじゃれ合いだ。

 

 

「お前たち、落ち着け」

 

「だって姉御ぉ」

 

「フロストノヴァと呼べ。いやそうじゃなくてだな、客が来たぞ」

 

「え!? いらっしゃいませ!」

 

 

メイプルを放り投げ、裏返った声で挨拶をしながら振り返る。そこには無精髭を生やした長身の男性。革のジャケットやコートを着込み、いかにもアウトローと言わんばかりの風貌。両足にはブラスターを装備しており、体幹からそれなりに修羅場を潜ってきたことが窺える。

 

とはいえ、それは光波達も同じこと。光波は戦えないが、もしもの時はユナやメイプルが何とかしてくれるだろうと、楽観的に構えた。

 

 

「そこの嬢ちゃん達、それハンバーガーか?」

 

「イエス! 地球産の牛肉を使用した純正ですよ! ちなみにお値段はそちらの立て札に書いてあります」

 

「……おいマジか、ボリ過ぎだろ嬢ちゃん! この値段、ここらの店なら一週間はメシが食えるぞ?」

 

「へ?」

 

 

大仰に驚く男性。その動きにわざとらしさを感じたが、視線をメイプルに向けると縦に首を振っていた。食材に吊るされた値札を見ると、格段に安い値が付けられている。男性の言う通り、この星の食材を使えばそれくらいの値段設定になると脳内で試算される。

 

 

「……まじ?」

 

「本当みたいだな」

 

「だからリサーチしろと言ったのに」

 

 

売れなかった理由の中に、高すぎる値段も含まれていたようだ。イロモノ、怪しげな屋台と合わされば、そりゃ買う人もいないと理解できてしまった。呆れた様子で見てくるユナに、額を押さえる光波。そんな彼女に、男性は値引き交渉を持ちかける。

 

 

「大マジだよ。せめて7割引きで売ってくれ」

 

「ぐぬぬ……3割引きなら。」

 

「6割」

 

「4割!」

 

「……5割だ。懐かしさで寄ってみたが、それ以上なら買うのは諦めるさ」

 

「……あーもー! それで売った!」

 

「ありがとさん」

 

「ちくしょー赤字だぁ!」

 

 

泣きながらパティを焼き始める光波。テキパキとハンバーガーを調理し、料金と引き換えに渡す。男性はどこか寂しさを感じさせる表情を浮かべた後、光波に手を振って離れていく。

 

その後ろでは、ユナがタブレット端末を操作していた。写真を画面上に開いて、フロストノヴァとメイプルに見せる。そこには、先程の男性が紙面に掲載されている姿が写っていた。

 

 

「エレーナ。あいつ、確かピーター・クィルだ。この前の星で懸賞金が掛けられているのを見たよ。ほらこれ」

 

「懸賞金を出しているのはラヴェジャーズか。……捕まえるか? 値段だけを見るなら、旨味はあるが」

 

「えぇー止めとこうよ。こんな街中で争ったらこっちが捕まっちゃうよ! この星の軍警察は厄介だって話してたのはユナでしょ?」

 

「……そうだね。海賊が懸賞金をまともにくれる確証も無いし、メイプルの言う通り今回は諦めよう」

 

「ああ、私もそれで構わな──」

 

 

ユナの言葉に返事をしようとフロストノヴァが口を開いたその時、クィルが向かった中央の噴水広場から悲鳴のような声が響いてきた。複数の小規模な爆発音と、ブラスターの発射音。石材が砕ける音が混ざり、周囲は騒然となる。

 

そして、自身の視線の先に、緑の肌をした長髪の女性が走り行く姿をとらえた。瞬間、フロストノヴァの血液が沸き立ち、憎しみの感情が爆発する。

 

 

「ぁ、ぁぁああ──!」

 

 

それは、フロストノヴァの故郷や家族を虐殺し、星に大穴を開けたタイタン人サノス、その娘である悪名高き暗殺者──ガモーラであった。




【山野光波(MCU)】
・出典『老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます』
・便利屋68宇宙支店、通称『便利屋ミツハ』店長。
・幼さの残る顔立ちだが、以下メンバー内では最年長。

【ユナ(MCU)】
・出典『くまクマ熊ベアー』
・便利屋ミツハの副店長。火力担当。
・クマの着ぐるみで戦うイロモノ枠。

【メイプル(MCU)】
・出典『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』
・便利屋ミツハの平店員。タンク担当。
・カチカチ装備で戦う天然枠。

【フロストノヴァ〈エレーナ〉(MCU)】
・出典『明日方舟』
・滅んだ故郷の惑星で死にかけていたところ、便利屋ミツハに拾われた。
・今は平の店員として雇われている。

【明星ヒマリ(MCU)】
・出典『ブルーアーカイブ』

【篠ノ之束(MCU)】
・出典『IS〈インフィニット・ストラトス〉』

【RyuZU〈リューズ〉(MCU)】
・いろいろあって歯車による機械類の構築、修復が可能となった。
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